Ob-La-Di Oblako 文庫

帝国日本の侵掠戦争と植民地支配、人権蹂躙を記憶し、再現を許さないために、ひたすら文書資料を書き取る。姉妹ブログ「歴史を忘れる民族に未来はない!」https://obladioblako.hateblo.jp/ のデータ·ベースを兼ねる。

「主義者は最後迄、革命万歳を高唱せり」 九月五日 戒厳司令官宛 北警備区司令官近衛師団長報告 1923


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  九月五日午後九時 於近衛師団司令部
          北警備区司令官 近衛師団
 戒厳司令官宛

    報告

一、警備に就て

 逐次新部隊の増加に伴ひ、明日より別紙要図の如く配備を変更す。

二、治安維持に就て

 各警備管区共に引続き人心安定しつつあるも尚、不逞鮮人·主義者と一般市民若くは軍隊と争闘其の跡を断たざるを遺憾とす。昨夜来、之に関する二、三の出来事を挙ぐれば左の如し。

1. 九月四日午後八時、亀戸付近に於て四名の壮漢、凶器を以て警官に抵抗したるを以て、騎兵第十三連隊の応援隊は即時、抵抗しある暴漢を刺殺せり。内鮮人の区別、目下調査中。

2. 九月五日午前一時三十分、亀戸警察署検束中の凶悪なる内地人主義者及び不逞鮮人六名は、警察官の命を奉ぜず暴行するのみならず、他の拘禁者を煽動し暴動を為さんとし、到底、秩序の維持困難なる旨、同署長の急報を受け、其の依頼に依りたる同連隊は全部を刺殺せり。主義者は最後迄、革命万歳を高唱せり。

3. 第二師団経理部長、白土哲郎氏は本五日、両国付近に於て暴漢より頭部及び眼下を凶器を以て斬られ、両国救護班に収容されたる後、目下、第一衞戍病院に入院中。経過険悪なりといふ。同人を連れ来れる警部補の言に依れば、不逞鮮人若くは主義者と誤解されたる結果なりといふ。
 巣鴨付近に於て他の一主計、自警団と衝突し、殴打されたるを以て、該方面の中隊長をして暴漢を捕へ取調中なり。

 以上の如く若干の行違ひありたるも、凶器の携帯を禁じ、私刑を戒め、極力、在郷軍人青年団等の自衛行為に其の権限以上に超越せしめざる様、指導中なるを以て、此傾向は近く絶滅するものと信ず。

三、救護に就て

 各救護班は今尚、負傷者を収容·救護しつつあり。
 市内の整頓に従ひて近親によりて救護所より他に運搬せらるる者少からざれども、重傷者の数は依然多数なり。目下、之に対し適当なる建築物なきを以て、師団は国技館を為し得る限り半永久的に設備し、他の収容したる傷者を逐次該所に収容する計画なり。

四、給養に就て

 戒厳司令部より受領したる糧秣は、前報告の計画に基き、概して故障なく実施せられたり。

五、将来の意見

1. 各地区と師団司令部との連絡指導若くは材料の分配の為め師団司令部に乗用自動車二、貨物自動車五(司令部一、各歩兵連隊各一)を増加支給せられ度し。

2. 衛生上の見地より出動部隊に成る可く甘味品等を多量に加給し、激動並びに伝染病流行に対し抵抗を持続し得る如く上司に於て計画せられ度し。

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  九月五日午後九時 於近衛師團司令部
        北警備區司令官 近衛師團長
 戒嚴司令官宛

    報告

一、警備ニ就テ

逐次 新部隊ノ増加ニ伴ヒ 明日ヨリ別紙要圖ノ如ク配備ヲ變更ス

二、治安維持ニ就テ

各警備管區共ニ引續キ人心安定シツツアルモ 尚 不逞鮮人、主義者ト一般市民 若クハ軍隊ト争鬪 其跡ヲ断タサルヲ遺憾トス 昨夜來 之ニ関スル二、三ノ出來事ヲ擧クレハ左ノ如シ

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1. 九月四日午後八時 亀戸附近ニ於テ四名ノ壮漢 兇器ヲ以テ警官ニ抵抗シタルヲ以テ 騎兵第十三聨隊ノ應援隊ハ即時 抵抗シアル暴漢ヲ刺殺セリ 内鮮人ノ區別 目下調査中

2. 九月五日午前一時三十分 亀戸警察署檢束中ノ兇悪ナル内地人主義者 及 不逞鮮人六名ハ 警察官ノ命ヲ奉セス暴行スルノミナラス 他ノ拘禁者ヲ煽動シ暴動ヲ爲サントシ 到底 秩序ノ維持困難ナル旨 同署長ノ急報ヲ受ケ 其依頼ニ依リタル同聨隊ハ 全部ヲ刺殺セリ 主義者ハ最後迄 革命萬歳ヲ髙唱セリ

3. 第二師團経理部長 白土哲郎氏ハ本五日 両國附近f:id:ObladiOblako:20200910222016j:image
ニ於テ暴漢ヨリ頭部 及 眼下ヲ兇器ヲ以テ斬ラレ 両國救護班ニ収容サレタル後 目下 第一衞戍病院ニ入院中 経過險惡ナリトイフ 同人ヲ連レ来レル警部補ノ言ニ依レハ 不逞鮮人 若クハ主義者ト誤解サレタル結果ナリトイフ
巢鴨附近ニ於テ他ノ一主計 自警團ト衝突シ 歐打サレタルヲ以テ 該方面ノ中隊長ヲシテ暴漢ヲ捕ヘ 取調中ナ

以上ノ如ク若干ノ行違ヒアリタルモ 兇器ノ携帯ヲ禁シ
私刑ヲ戒メ 極力 在郷軍人 青年団等ノ自衞行爲ニ其權限以上ニ超越セシメサル様 指導中ナルヲ以テ 此傾向ハ近ク絶滅スルモノト信ス

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三、救護ニ就テ

各救護班ハ今尚負傷者ヲ収容救護シツヽアリ
市内ノ整頓ニ従ヒテ近親ニヨリテ救護所ヨリ他ニ運搬セラルヽ者 少カラサレトモ重傷者ノ数ハ依然多数ナリ 目下之ニ對シ適當ナル建築物ナキヲ以テ 師団ハ國技館ヲ爲シ得ル限リ半永久的ニ設備シ 他ノ収容シタル傷者ヲ逐次 該所ニ収容スル計画ナリ

四、給養ニ就テ

戒嚴司令部ヨリ受領シタル糧秣ハ 前報告ノ計画ニ基キ 概シテ故障ナク實施セラレタリ

五、將来ノ意見

1. 各地區ト师団司令部トノ連絡指導若クハ材料ノ分配ノ爲メ师団司令部ニ乗用自動車二、貨物自動車五、
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(司令部一、各歩兵聨隊各一、)ヲ増加支給セラレ度

2. 衛生上ノ見地ヨリ出動部隊ニ可成甘味品等ヲ多量ニ加給シ激動並ニ傳染病流行ニ対シ抵抗ヲ持續シ得ル如ク上司ニ於テ計画セラレ度

 

↑JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.C08050994100
大正12年 公文備考 変災災害付属 巻1(防衛省防衛研究所)
一般関係(1)
https://www.jacar.archives.go.jp/das/image/C08050994100 p.24-p.29