訓示
湖東会戦に引続き勇猛果敢なる追撃に依り一挙 首都南京を攻略し、茲に歴史的壮挙を完成したるに方り、重て優渥なる聖旨を辱し感激措く所を知らず。
不肖石根、之を以て克く任務を達成し上聖明に対へ奉るを得たるは、実に参加将士の力戦奮闘に俟つものにして、深く其労を多とするものなり。然ると雖、時局の前途は遼遠にして、軍の任務は愈々重き秋、毫の倦怠を許さず、将兵相戒めて、一層、奉公の誠を竭さんことを期すべきなり。全軍須く統率の真義を確認し、一層、軍紀風紀を振粛し、経験に基く教育訓練に力め、戦力の充実を図り、以て次期作戦準備に遺憾なきを期すると共に、警備を厳密にし、軍機保護を密にし、治安維持を全くし、以て不逞の徒に蠢動の余地なからしむへし。
若夫れ所在民衆に対しては東亜百年の計に稽へ、皇軍の伝統に則り、悪政に呻吟せる彼等に寧ろ憐愍の情を加へ克く指導啓蒙する等、宣撫 宜しきに恊ふを要す。
抑々皇軍の操守は戦時の繁閑に依り差異あるの理なし。全軍将兵、相戒飭し、戦果の維持拡大に最善努力を傾到し、以て皇軍の威信を顕揚すべきなり。
右 訓示す。
訓示
湖東會戰ニ引續キ勇猛果敢ナル追擊ニ依リ一擧 首都南京ヲ攻略シ 茲ニ歴史的壯擧ヲ完成シタルニ方リ 重テ優渥ナル聖旨ヲ辱シ 感激 措ク所ヲ知ラス
不肖石根 之ヲ以テ克ク任務ヲ達成シ上聖明ニ對ヘ奉ルヲ得タルハ 實ニ參加將士ノ力戰奮鬪ニ俟ツモノニシテ 深ク其勞ヲ多トスルモノナリ 然ルト雖 時局ノ前途ハ遼遠ニシテ 軍ノ任務ハ愈々重キ秋 毫ノ倦怠ヲ許サス 將兵 相戒メテ一層 奉公ノ誠ヲ竭サンコトヲ期スヘキナリ 全軍 須ク統率ノ眞義ヲ確認シ 一層 軍紀風紀ヲ振肅シ 經驗ニ基ク教育訓練ニ力メ 戰力ノ充實ヲ圖リ 以テ次期作戰準備ニ遺憾ナキヲ期スルト共ニ 警備ヲ嚴ニシ 軍機保護ヲ密ニシ 治安維持ヲ全クシ 以テ不逞ノ徒ニ蠢動ノ余地ナカラシムヘシ
若夫レ所在民衆ニ對シテハ東亞百年ノ計ニ稽ヘ皇軍ノ傳統ニ則リ 惡政ニ呻吟セル彼等ニ寧ロ憐愍ノ情ヲ加ヘ 克ク指導啓蒙スル等 宣撫 宜シキニ恊フヲ要ス
抑々皇軍ノ操守ハ戰時ノ繁閑ニ依リ差異アルノ理ナシ 全軍將兵 相戒飭シ 戰果ノ維持擴大ニ最善ノ努力ヲ傾到シ 以テ皇軍ノ威信ヲ顯揚スヘキナリ
右 訓示ス
↑戦時旬報(第15号附録) 自昭和12年10月至昭和12年12月 第6師団司令部
https://www.jacar.archives.go.jp/das/image/C11111026400 35-36/38