Ob-La-Di Oblako 文庫

帝国日本の侵掠戦争と植民地支配、人権蹂躙を記憶し、再現を許さないために、ひたすら文書資料を書き取る。姉妹ブログ「歴史を忘れる民族に未来はない!」https://obladioblako.hateblo.jp/ のデータ·ベースを兼ねる。

「満洲建国は、八紘一宇の理想を顕現すべき使命を有する大和民族の、世界史的発展過程に於ける第一段階に他ならず」「満洲国の宗主権は実質上、皇道連邦の中心たる日本天皇に在り、皇帝は皇道連邦内に於ける一独立国家の主権者たるべく、関東軍司令官は天皇の御名代として皇帝の師伝たり、後見者たるべきものなり」 満洲国の根本理念と協和会の本質 関東軍司令部調製 1936.9.18


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永久保存
秘第 号
     調整年月日 昭和十一年九月十八日
     紙数 表紙 二枚 本紙 八枚

  満洲国の根本理念と協和会の本質

           昭和十一年九月十八日
           関東軍司令部調製

 

   注意

 本精神を部外者に伝ふる場合は、其の人と其の処とに応じ特に慎重の用語を以てし、就中、 皇帝に関する事項は機密の儀と承知相成度。

  昭和十一年九月十八日
        関東軍参謀長 板垣征四郎

 

 満洲国の根本理念並びに協和会の本質に関し、茲に永久に之を闡明す。

  昭和十一年九月十八日
        関東軍司令官 植田謙吉

 

   一、満洲建国の世界史的意義

 階級闘争を手段とする蘇聯の世界政策と、資本主義を基調とする英米の世界政策とは、共に其の内在的矛盾により幻滅の一途を辿るの時、独り 皇道に依る我帝国の世界政策にのみ燦然たる光明を認む。

 満洲建国は、八紘一宇の理想を顕現すべき使命を有する大和民族の、世界史的発展過程に於ける第一段階に他ならず。

 満洲国経営の基本理念は権益主義、即ち強権に依る搾取思想を排し、皇道を基調とする独立国家として之を育成するに存す。

 実に大和民族は、内に優秀なる資質と卓越せる実力とを包蔵しつつ、外に寛仁以て他民族を指導誘掖、其の足らざるを補ひ努めざるを鞭打ち、まつろはざるをまつろはせ、以て道義世界の完成に偕行せしむべき天与の使命を有す。

 彼の各種民族を操縦離間し、其の相剋により反噬の力を奪ひ、或は之を故意に低文化·無気力に導き、逐次絶滅せしめんとするが如き権謀的欺瞞政策は、我の断じて採らざる所なり。

 治外法権撤廃の真精神は、即ち在満大和民族が進んで特恵的条件を放棄し、喜んで平等の境地に立ち、堂々 仁愛を以て他民族を指導啓蒙すべき決意を内外に闡明したるものに外ならず。

   二、建国精神の真義

 満洲国建国精神とは究極する所、日満一徳一心、民族協和、王道楽土、道義世界の実現を理想とする 天皇の大御心に外ならず。

   三、天皇と軍司令官と皇帝との関係

 満洲国は叙上の建国精神並びに建国の歴史に鑑み、 天皇を大中心とする皇道連邦内の一独立国家なり。満洲国皇帝は天意、即ち 天皇の大御心に基き帝位に即きたるものにして、皇道連邦の中心たる 天皇に仕へ、 天皇の大御心を以て心とすることを在位の条件とするものなり。永久に 天皇の下に於て満洲国民の中心となり建国の理想を顕現する為設けられたる機関なり(其の状、宛も月が太陽の光に依りて光輝を発するに似たり)従つて万一皇帝にして建国の理想に反し天皇の大御心を以て心とせざるに至るが如き場合に於ては、天意により即時其の地位を失ふべきものなると共に、他面、民意による禅譲放伐も亦許されざるものとす。

 満洲国が日本と不可分の独立国なる真義、上述の如し。従つて満洲国の宗主権は実質上、皇道連邦の中心たる日本 天皇に在り、 皇帝は皇道連邦内に於ける一独立国家の主権者たるべく、関東軍司令官は 天皇の御名代として皇帝の師伝たり、後見者たるべきものなり。

 日満両国の間、固より条約其の他の関係により律せらるる所あるも、満洲国の育成は本質上、 天皇の大御心を奉じたる軍司令官の内面的指導によるべきものにして、日本政府の国務大臣が輔弼上の責任を以て之を指導するが如きは、独立国家として育成すべき理想に反するものなり。

   四、満洲国内面指導に関する

     軍司令官の任務遂行

 軍司令官が 天皇の大御心を奉体し、永久に満洲国指導の重任を負ふべきこと、正に前述の如し。然れども政治、経済等の細部に亘り自ら之を指導するが如きは、好みて之を行ふものに非ず。将来、軍司令官の心を以て心とする強力且つ公正なるものを発見したる場合に於ては、軍司令官は其の大綱を把握し、政治、経済、思想、教化の直接指導は、之を通じて行はしむるを理想とす。

 然らば如何なるものに之を期待すべきや。真の協和会員よりなる政府並び協和会の各首脳者、即ち之なり。真の協和会員とは軍、官、民を問はず、民族の如何を論ぜず、建国精神を体得し皇道宣布に身命を惜しまざるもの、是なり。

 従つて各民族を通じ真の協和会員たり得べき資質を有するものを簡抜訓練し、其の精鋭分子を政府、民間の要路に配置し得れば、軍司令官は安んじて軍事に専念しつつ、沈黙の威信を以て永久に満洲国指導の実績を収め得べし。

   五、軍司令官と協和会と政府との関係

 建国精神具現の核心は、 天皇の大御心を奉じ満洲国指導に任ずる関東軍司令官なり。

 建国精神を政治上に発動顕現せしむるものは満洲国政府にして、之を思想的に、教化的に、政治的に実践するものは協和会なり。

 政府は建国精神の上に築かれたる政治機関にして、其の官吏は正に最高熱烈なる協和会精神の体得者、即ち真の協和会員たるべきものなり。

 従つて協和会は政府の従属機関に非ず、所謂「求むることなき絶対愛」を以て政府を包容すべき精神的母体なり。

   六、満洲国政治の特質

 一、満洲国に於ては議会政治を否定す。

 議会中心政治は民主政治なり。満洲国は 天皇の大御心に依る道義世界創造の第一歩的顕現なり。従つて民主的、唯物的、西洋的政治に堕し易き処大なる議会政治は、満洲国の本質上、之を採用すべきものに非ず。

 二、満洲国に於ては専制政治の弊を排す。

 階級専制的ソヴェート政治、又は武権専制的中国政治等は、共に道義国家の運営に即せざるものなり。満洲に関する限りは建国精神を生命とし指導原理とし、之を熱烈に実践する真の協和会員を民衆の指導者として、民族協和·王道楽土を実践せしむべき独創的王道政治を採用す。

 三、王道政治とは何ぞ。

 王道政治は哲人政治なり。支那旧来の王道思想に非ずして、 天皇の大御心を顕現すべき意義を有す。支那に於ては堯舜以来、王道政治論のみありて王道政治存せず。是れ真の哲人なきに依る。

 現下、関東軍司令官が満洲国に於ける王道政治の中心たる真義は、軍司令官が 天皇の大御心を以て心とすべき公人的哲人なればなり。

 而して此の公人的哲人を中核とし、思想的、教化的、政治的実践を以て満洲建国の理想を実現すべき哲人的組織体たるべきものは、実に協和会なり。

   七、協和会設立の歴史並び其の意義

 協和会は旧東北軍権の暴政に対する三千万民衆の反発に胚胎し、満洲青年連盟及び有峯会となり、次で国家の機関たる自治指導部等の建国運動となりて、皇軍の討匪に随伴し、軍司令官の指導下に於て思想的、教化的、政治的実践を生命とし、建国の天業に参与し、克く大和民族を中核とする各種民族合作の独立国家建設に貢献したるものなり。即ち其の発達の過程に鑑み、協和会の重大なる一使命は、各民族間に道を同うし義を倶にする者を獲得し、扶植し、拡大し、以て真の民族協和を実現するに存す。

 而して満洲国に於ける独創的王道政治の完成は、単に官吏のみの力に期待し得るものに非ず。蓋し官吏は其の触るる所、自ら官治行政の分野に局限せられ、満洲国育成の全面に及ばず。従つて真の協和会員が政府に入り官吏として統治の任に当ると共に、又、真の協和会員が野に在りて民衆を指導し、被統治の立場に於て民情を未発に察し、正しき民意を政治上に反映せしむると共に、民生の内部に浸透し、民衆生活を向上せしめ、真の王道楽土を実現せざるべからず。協和会の期する所、正に此に存し、直接政治するを目的とせず、政治を生むを理想とす。従つて協和会は政権獲得を目的として党利党略に趨るが如き現存政党とは断じて其軌を一にすべからず。

 協和会は其の主張する所、権利に非ず、其の実践する所、法に縛られたる義務に非ず、国民自体より湧発する精神により偕に自己の国家を完成せんとする建国団体なり。即ち結合するも私せず、実践するも偏せざる所にして、又、満洲国に関する限り、協和会を以て唯一永久の思想的、教化的、政治的実践組織体となす所以なり。

 職を満洲国に奉ずるもの、誰か建国思想の実現を冀はざるものあらん。若し夫れ官吏にしてこの理念に反するものある時は、宜しく満洲国外に退去せしむべく、又、政府にして之に反するものは、一日も其の存在を許すべからず。真の協和会員が政府に入り、又は野に在りて政治経済を指導し、国民を訓練し、建国精神を以て全国民を動員する時、王道満洲国は完成せらるべし。

   八、協和会の将来性

 満洲建国は八紘一宇の理想に基きたる第一段階なること、前述の如し。従つて協和会の祈念する所は其の第一次に於て満洲国の完成にあり、第二、第三次に於て逐次支那に、印度に、濠洲に、西比利亜に同様の王道国家を完成すること、是なり。

 実に協和会終極の大使命は 皇国の道義的世界政策に随伴し之に寄与貢献するに存す。

 天皇の大御心を奉ずる万国協和会本部を東京に置き、支部を全世界に分派拡充し、皇道を八紘に光被せしむる時、道義による世界の再建は完成せらるべし。

 

満洲国の根本理念と協和会の本質 昭和11年9月18日 関東軍司令部調製 https://www.jacar.archives.go.jp/das/image/C13010095200