支受第６０３０号 其の４
（陸軍省大臣官房 昭和12.12.27 午後）
【極秘】丁集１野化報第６号
昭和１２年１２月１９日
於湖州 第１野戦化学実験部要報第７号
一、戦闘経過の概要
(1) １２月６日、丁集作命甲第５６号に依り、第一線と協力し南京に於ける化学捜索をなすべき命を受くるや、主力を以て直ちに湖州出発、１２月８日夜、東善橋に到着し、第六師団及第１１４師団司令部に各々連絡将校を派遣し緊密なる連携を保持す。
(2) 爾後、主力は第６師団師団司令部に続行し、連絡将校を第六師団司令部、第６師団右翼隊第一線及び第114師団司令部に派遣し、敵化学戦に関する情報の収集をなすと共に、師団の通報に依り花岩寺高地等、撒毒地域構成の疑ひある地点に対し化学捜索を実施し、其の結果を逐次、第一線部隊に通報せり。
(3) １２月１３日正午頃、第６師団掃蕩隊と共に南門より南京城内に突入し、先づ最も緊要なるクリーク、井水等に対し化学捜索を実施し、其の結果、撒毒なき旨を標示すると共に、適時、第一線部隊に通報し、軍をして危惧の念、無からしめたり。
爾後１６日迄化学捜索を引続き実施せり。
二、化学捜索を実施せる箇所
(1) 軍作戦地域境内に於ける各クリーク及び井水
(2) 金陵兵工廠
(3) 軍政部応用化学研究所
(4) 軍政部学兵隊
(5) 軍政部軍医署
(6) 軍政部軍官学校
(7) 軍政部
(8) 軍政部陸軍部
(9) 軍政部参謀部
(10) 国立中央大学
(11) 金陵大学
(12) 南京市立病院
(13) 其の他陸軍官衙諸学校
三、敵軍化学戦に対する判断
(1) 敵は化学戦を重視し、瓦斯使用に関し一応の準備を為しありしも、撒毒等に任ずる化学戦部隊は戦はずして南京より撤退せしを以て、今後、敵軍が瓦斯を使用するの懸念、全くなしとせず。然れども其の瓦斯使用は頗る幼稚なるものと判断す。
(2) 敵は瓦斯防護に関し相当の準備をなしあるも、之に関し猶ほ多大の欠陥を有しあるを以て、我が軍の瓦斯使用は極めて有利なり。
付記
鹵獲せし多種の敵軍化学戦資料に就ては今後、実験調査の上、詳報す。
支受第六〇三〇号 其四
（陸軍省大臣官房 昭和12.12.27 午後）
【極秘】丁集一野化報第六號
昭和十二年十二月十九日
於湖州
第一野戰化學實驗験部要報第七號
(一)､十二月六日丁集作命甲第五六號ニ依リ第一線ト協力シ南京ニ於ケル化學搜索ヲナスへキ命ヲ受クルヤ主力ヲ以テ直ニ湖州出發十二月八日夜東善橋ニ到着シ第六師團及第百十四師團司令部ニ各々連絡將校ヲ派遣シ緊密ナル連繫ヲ保持ス
(二)､爾後主力ハ第六師團師團司令部ニ續行シ連絡將校ヲ第六師團司令部第六師團右翼隊第一線及第百十四師團司令部ニ派遣シ敵化學戰ニ関スル情報ノ蒐集ヲナスト共ニ師團ノ通報ニ依リ花岩寺髙地等撒毒地域構成ノ疑アル地點ニ對シ化學搜索ヲ實施シ其結果ヲ逐次第一線部隊ニ通報セリ
(三)､十二月十三日正午頃第六師團掃蕩隊ト共ニ南門ヨリ南京城内ニ突入シ先ツ最モ緊要ナル｢クリーク｣井水等ニ對シ化學搜索ヲ實施シ其結果撒毒ナキ旨ヲ標示スルト共ニ適時第一線部隊ニ通報シ軍ヲシテ危惧ノ念無カラシメタリ
爾後十六日迄化學捜索ヲ引續キ實施セリ
二､化學搜索ヲ實施セル箇所
(一)､軍作戰地域境内ニ於ケル各｢クリーク｣及井水
(二)､金陵兵工廠
(三)､軍政部應用化學研究所
(四)､軍政部学兵隊
(五)､軍政部軍醫署
(六)､軍政部軍官學校
(七)､軍政部
(八)､軍政部陸軍部
(九)､軍政部參謀部
(十)､國立中央大學
(一一)､金陵大學
(一二)､南京市立病院
(一三)､其他陸軍官衙諸學校
三､敵軍化學戦ニ對スル判斷
(一)､敵ハ化學戰ヲ重視シ瓦斯使用ニ関シ一應ノ準備ヲ為シアリシモ撒毒等ニ任スル化學戰部隊ハ戰ハスシテ南京ヨリ撤退セシヲ以テ今後敵軍カ瓦斯ヲ使用スルノ懸念全クナシトセス然レトモ其瓦斯使用ハ頗ル幼稚ナルモノト判斷ス
(二)､敵ハ瓦斯防護ニ関シ相當ノ準備ヲナシアルモ之ニ関シ猶多大ノ缺陷陥ヲ有シアルヲ以テ我軍ノ瓦斯使用ハ極メテ有利ナリ
附記
鹵獲セシ多種ノ敵軍化學戰資料ニ就テハ今後實驗調査上詳報ス
↑第１野戦化学実験部要報の件（３）
https://www.jacar.archives.go.jp/das/image/C04120414400 p.8-p.9
