Ob-La-Di Oblako 文庫

帝国日本の侵掠戦争と植民地支配、人権蹂躙を記憶し、再現を許さないために、ひたすら文書資料を書き取る。姉妹ブログ「歴史を忘れる民族に未来はない!」https://obladioblako.hateblo.jp/ のデータ·ベースを兼ねる。

「此の種悪虐非道の戦法に対抗する為には、一見良民を裝ふて居る者と雖も正規兵又は便衣隊なりと認めらるる者は、之に適応する処置を執ることは真に已むを得ない正当防衛なる所以を知らねばならぬ」 陸軍省調査班 上海事件ノ情報(並支那事変ニ関スル陸軍省発表)より 「悪虐非道 天人倶に許し難き支那軍の行動に就て」 1932.2.23


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【供覧】

内閣官房總務課長【横溝】

内閣書記官【川島孝彦】【稲田】

悪虐非道 天人倶に許し難き支那軍の行動に就て
         二月二十三日 陸軍当局談

我が軍が挙措正々 進止堂々 秋毫冒す無き嚴肅なる軍紀の下に行動しあることは古来 我が軍の精華として卋界に誇り来った所である。

従て干戈 相見るも一般良民に對しては温和を第一とし愛撫を主義としてゐる。狡猾なる支那軍がこの奌に乘じ所謂便衣隊なるものを組織し 便衣を着用して良民の風を裝い 深く我が背後に濳入して撹乱を企圖するの戰法を採用したる結果 満洲事変勃發以来 我が忠勇なる將兵 其の奇禍に遭ふ者も決して尠くない。然るに今次上海事変に際しては勿論 前述の如き便衣隊の活躍も有るが 更に別種の便衣隊が出現し 其の悪虐なる 其の非道なる 天人倶に許すべからざるものがある。

事件発生当時 左傾學生 勞働者を以て改編救國義勇軍を編成し 其の数 約七八千に上ったが 此等は便衣の侭 正規軍の戰線に加入し 陣頭に立って各種の任務に服してゐる。即ち支那軍なるものは軍衣の正規兵と便衣の義勇軍との混合部隊であるといふことを先づ考へて置かねばならぬ。

次に支那軍は上海附近の水流沼沢に区劃され圬堵[土ヘン+完]工に圍繞せられた村落を據点式に占領し 各家屋を利用し遮蔽偽裝して銃眼を穿ち 此處から近距离の狙擊を繰り返してゐる。そして我が軍が村落を包囲し 又は迂囘すると 村落内の正規兵は直ちに便衣に替へ依然として抵抗を続け 我が兵 家屋内に侵入するや武器を匿して良民を裝ひ我が軍を欺𥈞してゐる。

こんな風であるから村落占領 及 通過後も其の背後は常に不安であつて 後方との連絡者 及 行李輜重等の兵員馬匹は所在に狙擊され 其の損害も却々多い。

然も上海附近 戰禍の巷たるべき地方の良民は殆んど大部避難し去り 各戸は廃墟同樣で 主なき犬のみが去来するといふ有様であるから 今尚村落内に居る男子は大体便衣隊に属するものである.

故に此種悪虐非道の戰法に対抗する爲には 一見良民を裝ふて居る者と雖 正規兵 又は便衣隊なりと認めらるる者は 之に適応する處置を執ることは眞に已むを得ない正當防衞なる所以を知らねばならぬ

斯くの如く便衣隊は一方に居る我が忠勇なる將兵を苦しめつつあるが 他方に於ては自國良民に迄 迷惑を及ぼしてゐるのである

良民と便衣隊、便衣隊と正規軍 この見分けは却々困難てはあるが 我が軍は周密なる注意を加へて良民へ迷惑をかけぬやう愼重に行動してゐる

吾人は支那軍が利己保身以外何者もなき其非道を憎むと共に 目的の爲には手段を擇ばぬ其暗愚を憫れむものである.洵に便衣隊の如きは平和と自由とを慾求する一般民衆の敵であつて 其戰法は野蠻にして非道極まるものであることを諒解せられ度い 又 此の便衣隊 此の戰法と対應しつつある我が軍の苦衷を賢察せられ度いのである。

 

陸軍省調査班 上海事件ノ情報(並支那事変ニ関スル陸軍省発表)より
悪虐非道 天人倶に許し難き支那軍の行動に就て
https://www.digital.archives.go.jp/das/image/M0000000000000758945