Ob-La-Di Oblako 文庫

帝国日本の侵掠戦争と植民地支配、人権蹂躙を記憶し、再現を許さないために、ひたすら文書資料を書き取る。姉妹ブログ「歴史を忘れる民族に未来はない!」https://obladioblako.hateblo.jp/ のデータ·ベースを兼ねる。

「慰安所と申せば一寸劇場か見せ物小屋の様にも想像せられますが、さにあらず。此の兵舎に起居する兵どもの貴重なる精力の排出箇所なのです。慰安所の兵力は僅に二十名そこそこの鮮人にて、然も国家総動員法に縛られ、芳子や花子など桃色配給券が分けられ、軍隊でなければ見られぬ光景です。」 黒竜江省北安地方の憲兵隊が郵便検閲で押収した手紙から 1941.10.16

北安地方検閲部『郵検月報』(1941年)より

 

十月十六日
発信者:黒河 武田●●●
受信者:秋田市●●● 村上●●●
内容:前文略。北満黒河市街を去る北方四里にある山神府兵舎[の川村、井上、綿引の諸氏は、復転[→耺=職]後の日々の話に夢中です。開墾の]果てもなき広野に村もなく、只一面に国威を示す各兵科の兵舎のみ。唯僅かに見えるのは陸軍官舎の一隅を利用して開設せられたる東西に慰安所あるのみ。慰安所と申せば一寸劇場か見せ物小屋の様にも想像せられますが、さにあらず。此の兵舎に起居する兵どもの貴重なる精力の排出箇所なのです。慰安所の兵力は僅に二十名そこそこの鮮人にて、然も国家総動員法に縛られ、芳子や花子など桃色配給券が分けられ、軍隊でなければ見られぬ光景です。おまけに公定価格という解にて安サラリーには向きません。配給券も職権乱用にて専ら将校連中専用の状態です。後文略。
処分:押収

 

↑小林英夫·張志強共編『検閲された手紙が語る満洲国の実態』2006年、小学館、p.155~p.156

但し小学館版で省略された[  ]内は下記『铁证如山』の中国語参考訳から推定した。

 

北满黑河市街北方四里的山神府兵舎的川村、井上、绵引诸氏,兴高采烈地谈论着复转后的日子。在一望开垦的旷野上,连个村子也没有,只有各兵科的兵舎孤零零显示国威。唯一看到的…


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見エルノハ陸軍官舎ノ一隅ヲ利用シテ開設セラレタル東西ニ慰安所アルノミ慰安所ト申セハ一寸劇場カ見セ物小屋ノ様ニモ想像セラレマスカサニアラス此ノ兵舎ニ起居スル兵トモノ貴重ナル精力排出ヶ所ナノテス慰安所ノ兵力ハ僅ニ二十名ソコ〱ノ鮮人ニテ然モ國家總動員法ニ縛ラレ芳子ヤ花子ナト桃色配給券カ分ケラレ軍隊テナケレハ見ラレヌ光景テスオマケニ公定價格トイフ解ニテ安サラリーニハ向キマセン配給券モ職權濫用ニテ專ラ將校連中專用ノ狀態テス
後文略

 

↑庄严(庄厳)主編『铁证如山 吉林省新发掘日本侵华档案研究』(鉄証如山 吉林省日本侵華檔案研究)2014年、吉林出版、p.174~p.176