Ob-La-Di Oblako 文庫

帝国日本の侵掠戦争と植民地支配、人権蹂躙を記憶し、再現を許さないために、ひたすら文書資料を書き取る。姉妹ブログ「歴史を忘れる民族に未来はない!」https://obladioblako.hateblo.jp/ のデータ·ベースを兼ねる。

「今日はただただ悲哀その物に捉はれ、責任感の太く胸中に迫るを覚えたり。けだし南京占領後の軍の諸不始末とその後地方自治、政権工作等の進捗せざるに起因するものなり。」 松井石根『戦陣日誌』より 1938.2.7

 午後、慰霊祭に参列す。予は去年、南京入城翌日、最初の慰霊祭を自ら祭主として営み、今日また50日祭ともいふべきこの祭事に遭ふものなれど、さきのものは戦勝の誇と気分にて、むしろ忠霊に対し悲哀の情少なかりしも、今日はただただ悲哀その物に捉はれ、責任感の太く胸中に迫るを覚えたり。けだし南京占領後の軍の諸不始末とその後地方自治、政権工作等の進捗せざるに起因するものなり。よつて式後参集各隊長を集め、予のこの所感を披露して一般の戒飭を促せり。(2月7日)

 

午後慰霊祭ニ参列ス 予ハ去年 南京入城翌日 最初ノ慰霊祭ヲ自ラ祭主トシテ営ミ 今日亦五十日祭トモ云フヘキ此祭事ニ遭フモノナレト 曩ノモノハ戦勝ノ誇ト気分ニテ 忠霊ニ対シ悲哀ノ情 少カリシモ 今日ハ只々悲哀其物ニ捉ハレ 責任感ノ太ク胸中ニ迫ルヲ覚エタリ 蓋シ南京占領後ノ軍ノ諸不始末ト其後地方自治、政権工作等ノ進捗セサルニ起因スルモノナリ 仍テ式後 参集各隊長ヲ集メ 予ノ此所感ヲ披露シテ一般ノ戒飭ヲ促セリ(二月七日)

 

南京戦史資料集 Ⅱ(偕行社、1993年)p.169

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