明治四十三年七月八日 内閣書記官 印
内閣総理大臣 花押 [桂太郎] 内閣書記官長 花押 [柴田家門]
統監ヘ通牒案
適当の時機において韓国併合を断行すべき旨、廟議決定いたしをり候ふについては、右実行に関する別紙閣議決定書写二通御交付に及び候ふ。ついては適当の時機において決行期日御打合せの上、相当御処理相成りたく、この段通牒に及び候ふなり。
秘 五月二十七日
花押 [桂太郎] 閣僚五名 花押
朝鮮に対する韓国併合実行に関する方針
一、朝鮮には当分のうち憲法を施行せず、大権によりこれを統治すること
一、総督は天皇に直隷し、朝鮮における一切の政務を統括するの権限を有すること
一、総督には大権の委任により法律事項に関する命令を発するの権限を与ふること
ただし本命令は別に法令または律令等、適当の名称を付すること
一、朝鮮の政治は努めて簡易を旨とす。したがって政治機関もまた、この主旨により改廃すること
一、総督府の政費は朝鮮の歳入をもってこれに充つるを原則となすも、当分のうち一定の金額を定め、本国政府より補充すること
一、鉄道および通信に関する予算は総督府の所管に組入るること。
一、関税は当分のうち現行のままになし置くこと
関税収入は総督府の特別会計に属すること
一、韓国銀行は当分のうち現行の組織を改めざること
一、合併実行のため必要なる経費は、金額を定め、これを予備金より支出すること
一、統監府および韓国政府に在職する帝国官吏中、不要の者は帰還または休職を命ずること
一、朝鮮における官吏には、その階級により、なるべく多数の朝鮮人を採用する方針を採ること
四十三年七月二日
太郎 閣僚花押
憲法の釈義
韓国の併合の上は、帝国憲法は当然此の新領土に施行せらるるものと解釈す。
しかれども事実においては新領土に対し帝国憲法の各条章を施行せざるを適当と認むるをもって、憲法の範囲において除外法規を制定すべし。
明治四十三年七月八日 内閣書記官 印
内閣總理大臣 花押 内閣書記官長 花押
統监ヘ通牒案
適當ノ時機ニ於テ韓國併合ヲ断行スヘキ旨 廟議
決定致居候ニ付テハ 右實行ニ関スル別紙閣議決定書
冩二通 及御交付候 就テハ適當ノ時機ニ於テ決行期
日 御打合ノ上 相當御處理 相成度 此段 及通牒候也
内閣總理大臣
秘 五月廿七日
花押[桂太郎] 花押[閣僚五名]
朝鮮ニ對スル
<韓国併合實行ニ關スル> 方針
一 朝鮮ニハ當分ノ内 憲法ヲ施行セス
大権ニ依リ之ヲ統治スルコト
一 總督ハ天皇ニ直隷シ 朝鮮ニ於ケル
一切ノ政務ヲ統括スルノ權限ヲ有
スルコト
一 總督ニハ大權ノ委任ニ依リ法律事
項ニ關スル命令ヲ發スルノ權限ヲ
與フルコト 但 本命令ハ別ニ法令 又
ハ律令等 適當ノ名稱ヲ付スルコト
一 朝鮮ノ政治ハ努メテ簡易ヲ旨トス
従テ政治機関モ亦 此主旨ニヨリ改
廢スルコト
一 總督府ノ會計ハ特別會計ト為スコ
ト
一 總督府ノ政費ハ朝鮮ノ歳入ヲ以テ
之ニ充ツルヲ原則ト為スモ 當分ノ
内 一定ノ金額ヲ定メ 本國政府ヨリ
補充スルコト
一 鐵道 及 通信ニ關スル豫算ハ總督府
ノ所管ニ組入ルルコト
一 關税ハ當分ノ内 現行ノ儘ニナシ置
クコト
關税収入ハ總督府ノ特別會計ニ屬
スルコト
一 韓國銀行ハ當分ノ内 現行ノ組織ヲ
改メサルコト
一 合併實行ノ為メ必要ナル經費ハ 金
額ヲ定メ 之ヲ豫備金ヨリ支出スル
コト
一 統監府 及 韓國政府ニ在職スル帝國
官吏中 不要ノ者ハ歸還 又ハ休職ヲ
命スルコト
一 朝鮮ニ於ケル官吏ニハ 其ノ階級ニ
依リ 可成多数ノ朝鮮人ヲ採用スル
方針ヲ採ルコト
四十三年七月二日
太郎[総理大臣] 閣僚連署花押
憲法ノ釈義
韓国ノ併合ノ上ハ帝国憲法ハ當然 此
新領𡈽ニ施行セラルヽモノト解釈ス
然レトモ事實ニ於テハ新領𡈽ニ對シ帝
国憲法ノ各條章ヲ施行セサルヲ適當
ト認ムルヲ以テ 憲法ノ範囲ニ於テ除外法
規ヲ制定スヘシ
⬆公文別録・韓国併合ニ関スル書類・明治四十二年~明治四十三年・第一巻・明治四十二年~明治四十三年
韓国併合実行ニ関スル方針
https://www.digital.archives.go.jp/das/image/M0000000000001692921