（９）
１．対ソ外交工作要領
２．時局に伴う対ソ要領
３．対英工作要領案
４．対米工作要領
５．対仏工作要領案
【極秘】
対ソ工作要領案
昭和１３年６月２１日
第５課
一、方針
ソ連邦に対しては、今次事変に参加せしめざるごとく諸般の工作を実施す。
二、要領
1. 武力的に対ソ弾撥力の保持増進を図り、対ソ強硬の輿論を喚起す。
2. 謀略的手段によりソ連邦内部、特にソ軍の攪乱を策す。
3. ソ連邦の不信行為および実力の薄弱性を海外、就中英､米､仏に対して宣伝して、その国際的地位を低落せしむ。
4. 日独伊防共勢力の強化拡充、英·米·仏対ソの離間により、反ソ包囲政策を具現す。
5. 直接対ソ外交工作は、毅然たる態度と不断の迫力とをもつて之に臨み、彼の参戦または対支援助企図を封殺す。（細部別紙）
対ソ外交工作要領
昭和１３年６月２１日
第５課
1. 諸懸案一括解決問題に対しては是々非々主義を以てころに臨み、必ずしもこれが解決を急がず。
2. 利権問題および領事館撤去強要問題に対しては、毅然として条約上の権利を主張す。これがため多少の営利上の損失はやむを得ず。
3. 満ソ国境衝突事件に対しては、努めて満ソ間の現地解決によらしむるも、日本軍に関する事件は東京においてもこれが解決に当たる。その態度は飽くまで強硬を旨とするも、事態の不拡大を期す。
4. 国境諸地点の帰属問題は必ずしもこれを急がず。
5. 邦人邦船等の拉致または抑留問題に対しても、飽くまで毅然たる態度をもつて釈放を要求す。この際、誠意の認むべきものあらば、我方抑留ソ人またはソ船を交換的に釈放するも支障なし。ただし我方より和協的態度を示すべからず。
6. 一般にソ側の不法行為に対しては、我が方も能ふ限りの報復手段を採る。ただし終局において実力行使を決意するを要す。
【極秘】
時局に伴ふ対ソ謀略
方針
ソ連邦の対日積極的行動を封止する目的をもつて所要の謀略を行ふ。
要領
1. ソ連邦の内部不安をますます激化せしめて、対日積極的行動の自信を喪はしむ。
2. ソ連邦の対外不信用を誘発·暴露し、列国との連衡を困難ならしむ。
【極秘】
対英工作要領案
方針
帝国は事変解決のため確乎たる決意とその実相を形而上下にわたり具体的に顕示し、英国をして蒋政権を放棄するのやむなき情勢に立ち入らしむ。
施策
1. 漢口、次いで広東を攻略し、対支連絡を遮断し、かつ英国の南方勢力に対し武力的威嚇を与ふ。
2. 我国力、特に経済耐久力を充実し、かつ新興支那中央政権の確立実現を期す。
3. 拝英的要人を覚醒し、自由主義者による反戦思想の醸成を警め、また対英出先外交経済宣伝機関を刷新し、 英国要路に我が対支政策貫徹に関する信念と我が実力とを認識せしむ。
4. 無用なる衝突を避け、感情的小策を弄せず、従つて在支権益等に関しては作戦および将来の政策に支障なき限り処理し、かつ不期の摩擦を防止するごとく工夫す。
【極秘】
対米工作要領
一 方針
米国をして本事変間、中立的態度を維持せしめ、特に経済的友好関係を持続せしむ。
二 施策
一、適切なる宣伝、特に現実の事態を事実によりて宣伝し、対日観の是正に努む。
これがため宣伝機関を統合強化し、特に在米機関を充実し、実効ある方法を採るを要す。
二、米権益の保全につき最善の努力を払ふを要す 為之
- 損害の調査､復、旧につき処理を迅速ならしむ。
- 布教、教育および通商再開の解決
- 新政権の施政において努めて門戸開放を妨げざるごとくすること。
三、経済的友好関係の維持増進は、対日観の是正、特に米権益保全の事実により獲らるべきも、なほ各般の手段を尽くし通商振興、米資導入を計るを要す。就中、新政権地域に対する米資導入は価値あり。
四、適時、外交的折衝により、事変に関する日米関係の調整につき工作す。本工作の主眼は、米国の中立維持における既成事実を容認せしむるにあり。
【極秘】
対仏工作要領案
昭和１３年６月２２日
仏班
仏国に対しては左記２項を適宜按排活用して、仏国自らをして反蒋に転向せしむるを第一義とするも、その反省せざるや断乎、威嚇工作を敢行して、反蒋親日への転向を図る。
１．懐柔案
仏国の在支権益、特に雲南、広西等、支那西南部における利権の保証ならびに助成を交換条件とする、仏国の反蔣政策への転向を要望す。
２．威嚇案
仏国にして依然、親蒋援支政策を採るにおいては、海南島を占領し雲南鉄道を爆破して、これを威嚇戦慄して反蒋親日に転向せしむ。
３．仏ソの離間を図る。
（９）
１．対｢ソ｣外交工作要領 昭和13.6.21
２．時局に伴う対｢ソ｣謀畧
３．対英工作要領案
４．対米工作要領
５．対佛工作要領案 昭和13.6.22
【極秘】
対｢ソ｣工作要領案
昭和十三年六月二十一日
第五課
一､方針
｢ソ｣聯邦ニ對シテハ今次事變ニ參加セシメサル如ク諸般ノ工作ヲ實施ス
二､要領
一､武力的ニ對｢ソ｣彈撥力ノ保持增進ヲ圖リ 對｢ソ｣强硬ノ輿論ヲ喚起ス
二､謀略的手段ニ依リソ聯邦内部 特にニ｢ソ｣軍ノ攪亂ヲ策ス
三､ソ聯邦ノ不信行爲 及 實力ノ薄弱性ヲ海外 就中 英､米､佛ニ對シテ宣傳シテ 其國際的地位ヲ低落セシム
四､日獨伊防共勢力ノ强化擴充､英､米､仏､對｢ソ｣ノ離間ニ依リ 反｢ソ｣包圍政策ヲ具現ス
五､直接對｢ソ｣外交工作ハ 毅然タル態度ト不斷ノ迫力トヲ以テ之ニ臨ミ 彼ノ參戰 又ハ對支援助企圖ヲ封殺ス（細部別紙）
對｢ソ｣外交工作要領
昭和十三年六月二十一日
第五課
一､諸懸案一括解決問題ニ對シテハ是々非々主義ヲ以テ之ニ臨ミ 必スシモ之カ解決ヲ急カス
二､利權問題 及 領事館撤去强要問題ニ對シテハ毅然トシテ条約上ノ權利ヲ主張ス、之カ爲 多少ノ營利上ノ損失ハ已ムヲ得ス
三､滿｢ソ｣國国境衝突事件二對シテハ努テ滿｢ソ｣間ノ現地解決ニ依ラシムルモ 日本軍ニ關スル事件ハ東京ニ於テモ之カ解決ニ當ル、其態度ハ飽クマテ强硬ヲ旨トスルモ 事態ノ不擴大ヲ期ス
四､国境諸地点ノ帰屬問題ハ必スシモ之を急カス
五､邦人邦船等ノ拉致 又ハ抑留問題ニ對シテモ 飽クマテ毅然タル態度ヲ以テ釈放ヲ要求ス、此際 誠意ノ認ムヘキモノアラハ 我方抑留｢ソ｣人 又ハ｢ソ｣船ヲ交換的ニ釈放スルモ支障ナシ 但 我方ヨリ和協的態度ヲ示スヘカラス
六､一般ニ｢ソ｣側ノ不法行爲ニ對シテハ 我方モ能フ限リノ報復手段ヲ採ル、但 終局ニ於テ實力行使ヲ決意スルヲ要ス
【極秘】
時局ニ伴フ對｢ソ｣謀略
方針
｢ソ｣聯邦ノ對日積極的行動ヲ封止スル目的ヲ以テ 所要ノ謀略ヲ行フ
要領
一､ソ聯邦ノ内部不安ヲ益々激化セシメテ對日積極的行動ノ自信ヲ喪ハシム
二､ソ聯邦ノ對外不信用ヲ誘發 暴露シ 列國トノ連衡ヲ困難ナラシム
【極秘】
對英工作要領案
方針
帝國ハ事變解決ノ爲メ確乎タル決意ト其實相ヲ形而上下ニ亘リ具體的に顕ニ示シ 英國ヲシテ蔣政權ヲ放棄スルノ已ムナキ情勢ニ立入ラシム
施策
一､漢口 次テ廣東ヲ攻略シ 對支連絡を遮斷シ 且 英國ノ南方勢力ニ對シ武力的威嚇ヲ與フ
二､我國力 特ニ經濟耐久力ヲ充實シ 且 新興支那中央政權ノ確立 實現ヲ期ス
三､拜英的要人ヲ覺醒シ 自由主義者ニ依ル反戰思想ノ醸成ヲ警メ 又 對英出先外交經濟宣傳機關ヲ刷新シ 英國要路ニ我對支政策貫徹ニ關スル信念ト我實力トヲ認識セシム
四､無用ナル衝突ヲ避ケ 感情的小策ヲ弄セス 從テ在支權益等ニ關シテハ作戰 及 將來ノ政策ニ支障ナキ限リ處理シ 且 不期ノ摩擦ヲ防止スル如ク工夫ス
【極秘】
對米工作要領
一 方針
米國ヲシテ本事變間 中立的態度ヲ維持セシメ 特ニ經濟的友好關係ヲ持續セシム
二 施策
一､適切ナル宣傳 特ニ現實ノ事態ヲ事實ニヨリテ宣傳シ 對日觀ノ是正ニ努ム
為之 宣傳機關ヲ統合 强化シ 特ニ在米機關ヲ充實シ 實效アル方法ヲ採ルヲ要ス
二､米權益ノ保全ニツキ最善ノ努力ヲ拂フヲ要ス 為之
1. 損害ノ調査､復旧ニツキ處理ヲ迅速ナラシム
2. 布敎､敎育 及 通商再開ノ解決
3. 新政權ノ施政ニ於テ努メテ門戸開放ヲ妨ケサル如クスルコト
三､經濟的友好關係ノ維持增進ハ 對日觀ノ是正､特ニ米權益保全ノ事實ニヨリ獲ラルヘキモ 尚 各般ノ手段ヲ盡シ通商振興､米資導入ヲ計ルヲ要ス、就中 新政權地域ニ對スル米資導入ハ價値アリ
四､適時 外交的折衝ニヨリ 事變ニ關スル日米關係ノ調整ニ就キ工作ス 本工作ノ主眼ハ 米國ノ中立維持ニ於ケル旣成事實ヲ容認セシムルニ在リ
【極秘】
對佛工作要領案
昭和十三年六月廿二日
佛班
佛國ニ對国シテハ左記二項ヲ適宜按排活用シテ 佛國自ラヲシテ反蔣ニ轉向セシムルヲ第一義トスルモ 其反省セサルヤ 斷乎 威嚇工作ヲ敢行シテ反蔣親日ヘノ轉向ヲ圖ル
一､懐柔案
佛國ノ在支米權益 特ニ雲南､廣西等 支那西南部ニ於ケル利權ノ保證 並 助成ヲ交換條件トスル佛國ノ反蔣政策ヘノ轉向ヲ要望ス
二､威嚇案
佛國ニシテ依然 親蔣援支政策ヲ採ルニ於テハ 海南島ヲ占領シ雲南鐵道ヲ爆破シテ 之ヲ威嚇戰慄シテ反蔣親日ニ轉向セシム
三､仏｢ソ｣ノ離間ヲ圖ル
↑支那事変関係一件 第十四巻
９．対「ソ」工作要領案
https://www.jacar.archives.go.jp/das/image/B02030538400
