陸甲三〇 印 大正十四年十一月十一日裁可
大正十四年十一月七日 内閣書記官長 花押[塚本清治] 内閣書記官 印 印 印
内閣總理大臣 花押[加藤高明] 法制局長官 印[山川端夫]
外務大臣 花押[幣原喜重郎] 内務大臣 花押[若槻禮次郎] 大藏大臣 花押[濱口雄幸] 陸軍大臣 花押[宇垣一成] 海軍大臣 花押[財部彪] 司法大臣 花押[江木翼]
別紙 陸軍海軍兩大臣請議 化學兵器手當給與ニ關スル件ヲ審査スルニ 右ハ相當ノ儀ト思考ス 依テ請ノ
通 閣議決定セラレ可然ト認ム
勅令案
呈案附箋ノ通
法制局 陸二四号 拾月廿九日 印
陸普第三八九〇號 官房第三五三ノ乙
化學兵器手當給與ニ關スル件
大正十四年十月七日
海軍大臣 財部彪
【海軍大臣之印】
【陸軍大臣之印】
朕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・化學兵器手當給與ノ件ヲ裁可シ 茲ニ之ヲ公布セシム
御名 御璽
摂政名
大正十四年十一月十四日
内閣總理大臣
付箋
主任者 陸軍省監査課 大塚主計
海軍省經理局 [✕佐々木主計中佐✕]
横尾主計少佐
勅令第三百十四號
化學兵器二関スル研究ノ為 其ノ試驗､製造､檢査 及 取扱ニ從事シ 直接 其ノ危害ヲ受クル虞アル陸海軍人軍屬（軍屬ニ非サル職工ヲ含ム）ニハ 別表ノ化學兵器手當ヲ給ス
本令ヲ適用スヘキ化學兵器ノ範囲 及 化學兵器手當ノ給與細則ハ 主務大臣 之ヲ定ム
別表
階級
陸軍：將校､同相當官､高等文官､同待遇者
海軍：士官､特務士官､高等文官､同待遇者
月額：六十圓以内
陸軍：准士官､見習士官､見習醫官､見習薬剤官､見習獸醫官､判任文官一等
海軍：候補生､准士官、判任文官一等
月額：四十圓以内
陸軍：下士､判任文官二等以下､判任文官待遇者
海軍：下士官､判任文官二等以下､判任文官待遇者
月額：三十圓以内
陸軍：兵卒
海軍：兵
月額：二十圓以内
備考：
一 主務大臣ハ常時ノ勤務ニ非サル者ニ対シ 月額ノ二十分ノ一ヲ超エサル範囲内ニ於テ 日額ニ依リ化學兵器手當ヲ給スルコトヲ得 但シ一月内ニ於ケル支給額ノ合計ハ月額ヲ超ユルコトヲ得ス
二 特ニ危險ト認ムル作業ニ從事スル者ニハ・・・・・・・・・・・・別ニ月額ノ二十分ノ一以内ノ日額ヲ増給スルコトヲ得 但シ一月内ニ於ケル其ノ支給額ノ合計ハ 月額ノ五割ヲ超ユルコトヲ得ス
三 陸海軍ニ於ケル本表ニ揭ケサル者ニ對スル化學兵器手當ノ支給額ハ 本表ニ準シテ主務大臣 之ヲ定ム
附則
本令ハ大正十四年五月一日以後ノ給與ニ付 之ヲ適用ス
理由書
歐洲大戰以來 新兵器ノ進歩ニ伴ヒ 化學兵器（毒瓦斯）ノ硏究ハ軍事上 最緊要ナリ 然ルニ之カ試驗､製造等ノ現業ニ從事スルモノハ 常ニ萬全ノ注意ヲ拂フモ尚 絶エス其ノ中毒ニ罹リ 或ハ不慮ノ災害ニ依リ死亡 又ハ不具廢疾トナルノ不幸ヲ招クコトアルハ 歐洲ノ事例ニ徴シ明ニシテ 一般ニ嫌忌 且 危険視セラルルモノナルカ故ニ 航空勤務者ノ例ニ見做[→倣?]ヒ 特ニ手當支給ノ制ヲ設ケ 以テ其ノ發達獎勵ニ資スルノ必要アルニ由ル
化學兵器豫算説明
〔A〕歳出臨時部
款│項│目│
苐二款 國防充備費│苐四項 兵器充備費│兵器製造研究費│自十五年度 至□十年度 四百七万円
苐九款 研究費│化學兵キ研究費│□□│
〔B〕歳出經常部
苐二款 軍事費│苐□項 兵器及馬匹費│苐五目 兵器研究費│化學兵器加俸 一八､三七五円 十八年度〃〃 四二､一一一円
〔C〕 仝 臨時部
苐二款 國防充備費│苐四項 兵器充備費│彈藥費│自十五年度 至 廿八年度 特種彈藥 及 □彈□ヲ製造ス
苐五款 軍備改編費│苐一項 軍備改編費│器具機械及図書費│自十五年度 至十八年度 單位製造□備品 五十五万円計上
（毒瓦斯ノ例）
軍用毒物
(1) 塩素系毒物
ヂホスゲン
催涙性、催涙性 瓦斯彈用
吸入後 肺ニ□テ塩酸ヲ生成ス
(2) 臭素系
臭化ベンジル
窒息性、催涙性、刺激性 瓦斯彈用
臭素（毛皮ヲ腐蝕ス）
(3) 硫黄系毒物
發泡性、皮膚糜爛性 瓦斯彈用
(4) 砒素系毒物
ルイサイト
(5) 青酸系毒物
シヤン瓦斯
↑公文類聚・第四十九編・大正十四年・第十巻・官職八・高等官官等俸給及給与～旅費
化学兵器手当給与ノ件ヲ定ム
https://www.digital.archives.go.jp/das/image/M0000000000001757794
