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国際連盟 東洋への婦人および児童売買拡張実地調査 日本に関する報告 より 1931.7.31

  国際連盟C·T·F·E·東洋·第35号
   ヂュネーヴ·1931年7月31日
    ─日本に関する報告─

東洋への婦人および児童売買拡張実地調査

 [中略]

 これら取締法令は、調査員の訪問せる日本各地のものにつき日本政府より提出せられたり。しかしてこの報告の基礎たる連盟事務局保管の資料中にあるをもって、ついて参照するを得べし。ただし私娼の禁止、公娼の自由に対する干渉の禁止、および紹介業者のある種の行動の禁止に関する全国共通の規則の二、三に関しては付録 (4) 参照。

 他人の売淫による所得をもって生活する者 (擯夫) を罰するの法律なし。

(4)売淫の状況および法律の適用

 (a) 貸座敷営業

 1930 年現在、内地における貸座敷営業者数 11,154 人にして、経営者および同居者はすべて日本人なり。これら貸座敷は全国 541 の貸座敷指定地に存在し、うち指定地数の最も多き庁府県は北海道、山口県三重県にして、それぞれ 45、41、30 の指定地を有す。貸座敷営業者数の最も多きは京都府大阪府、東京都にして、それぞれ 2,305人、1,613人、765 人を有す。詳細は付録 (5) 参照。

 1930 年、朝鮮全12道を通じ、貸座敷営業指定智 25 ヶ所、貸座敷数 510、内日本人経営のもの 303 、朝鮮人経営のもの 207 なり。指定地数の最も多きは慶尚南道、京畿道、咸境北道にして、それぞれ 8 ヶ所、3 ヶ所、3 ヶ所を有す。詳細付録 (6) 参照。

 関東州においては大連および旅順に 147 人の貸座敷業者あり、うち70人は日本人にして 77 人は 支那人なり。満鉄沿線日本領事警察権の下には料理屋 76(うち日本人 42 人、朝鮮人 34 人)および免許を受けたる同居者数430人(うち日本人 116 人、朝鮮人 314 人)なり。右料理屋は奉天および哈爾賓に 61 存在す。台湾における貸座営敷業者数については統計を与へられざりき。(提出セズ)

 貸座敷への婦女の補充については相当組織立ちをり、主として職業紹介業者、周旋人を通じて行はるるがごとし。貸座敷営業者と婦女またはその父母との契約にして、娼妓稼を直接の対価とする金銭貸借は違法とせらるるも、事実上は婦女またはその父母が金銭を前借りし、時にはかなりの高利をもって金銭を前借りし、なほそのほか婦女の雇用期間中、追ひ借りを受くるをもって、婦女は楼主に対し一般的に債務を負ひつつあり。

 すでに述べたるがごとく、世論に刺激せられて 1900 年に制定せられたる命令にして規定の表面上はいかなる娼妓も地方警察署に申請すれば直ちに娼妓名簿よりその氏名を削除し得べきことを規定せるものあり。ただしこの法令の精神ならびに目的は常に必ずしも遵守せられざるもののごとく、警察当局が警察署に雇主を出頭せしめ、これと廃業希望者本人またはその父母親族と協議せしめ、または本人を圧迫するなどの事実は屡々本人をしてその年期満了または雇ひ主に対する債務完済に至るまで貸座敷に留まらしむるの結果を来す懼れあり。警察当局側に対する弁護としては、高額の金銭を貸与せる楼主を、悪意をもって身代金を受領し直ちに廃業せんとするがごとき娼妓に欺かれざる様これら婦女または両親より保護し、あるいは婚姻をなすがごとく装ふなど甘言をもって本人を誘惑して廃業をなさしめ、さらにこれより悲惨なる奴隷状態に陥れんとするがごとき無頼の徒に対し娼妓本人を保護するは警察当局の義務なりと信ずるによると称するを得べし。

 楼主側より見れば、もし娼妓廃業が実際上無制限に許可されんか、娼妓本人は強制執行の目的たり得べき[×何らの×]財産を有することほとんどなく、またその父母といへどもその子女を犠牲としてかかる生活に入らしむるほど貧困なる以上、楼主はその財産を失ひ、全公娼制度は崩壊の危険に瀕するものといふべし。

 したがって貸座敷営業者が自由廃業を規定する法令をくぐらんがため全力を尽くすは疑ひなきところなり。貸座敷に居住する娼妓本人より見れば、彼女らの多くは父母親族の病気または貧困の救助等、主に犠牲的理由に基づきてかかる生活に入りたるものにして、かくのごとく孝養のために貸座敷などにおいて働くことは、必ずしもその家御における地位を失はしむるものにあらず。

 (b) 公娼

 日本内地における公娼総数は 1930 年現在において 50,056 人なり。そのすべては日本人にして、すでに述べたるがごとく外国人の公娼は勿論、日本の国籍を有する朝鮮人または台湾人といへども存在せず。公娼の最も多きは大阪、東京、京都の 3 府県にして、それぞれ 8,677 人、6,424 人、4,495 人なり、詳細付録 (7) 参照

 [中略]

 日本政府もまた、警保局作成の公娼に関する調査――同報告は調査委員にその日本到着と同時に提供せられたり――において公娼制度廃止問題に論及せり。左の文句はこの報告中より引用せるものなり。

「   娼妓の自由廃業

 娼妓となるに当っては貸座敷業者より前借するを普通とする、しかして娼妓は貸座敷業者の下に寄寓して娼妓稼業をするのである。しかしかかる金銭前借と娼妓稼業とは全く別個の問題にして、理論上何等相互関係を有しない。当事者の有する債権担保の目的をもって他人の自由を拘束するが如き契約は民法第九十条により公助良俗に反するものとして無効である。娼妓取締規則第六条もまた『娼妓名簿削除申請ニ関シテハ何人ト雖モ妨害ヲ為スコトヲ得ス』と規定してゐる。ただし事実において前借金未済にて娼妓を廃業せんとせば、債権者たる業者は直接または間接にこれを妨害せんとし、種々陋劣なる手段を弄する者がいないでもない。

 1900 年娼妓取締規則制定当時、内務大臣は地方長官に対し『娼妓稼業ノ廃止ハ各自ノ自由ニ属スルヲ以テ名簿ノ削除ヲ申請スル者アルトキハ娼妓取締規則第五条ノ手続ニ違ハサル限リ総テ之ヲ受理スヘシ、而テ一旦受理シタル上ハ同条末項ニ依リ直ニ名簿ヲ削除スヘシ』との訓令を発した。政府当局はその後もしばしば地方当局に対し同種の訓示あるいは指示を発し、債務の弁済を終らざるの故をもって業者が娼妓稼業の廃止を妨ぐるがごときことなきやう努めてゐる。その結果最近かかる弊害は非常に減少した。

 貸座敷業者に対する債務を完済せざる娼妓が業者の反対を顧みずして廃業する場合、女の行為を自由廃業と称へてゐる。

 最近数年間において自由廃業をなした娼妓の数は 1925 年 128人、1926 年 248 人、1927 年 186 人、1928 年 158 人、1929 年 156 人、合計 5 年間 877 人である。」

 全国を通じて存在するすべての娼妓救済ならびに保護施設中、教育施設をもって最も重要視すべし。この教育施設中には娼妓の多くに欠除せる普通教育施設のほかから、職業教育その他徳育施設を含む。

(五)各種職業の売淫および婦女売買に対する関係

 娼妓または芸妓となりて金銭の前借をなす婦女の大多数が貧農または労働者の子女なるの事実は、この種階級に属する者の大多数が経済的にいかに窮乏せるかを物語るものなり。警察当局はこれら婦人の多数に正当なる職業を与ふる事は不可能なりとの意見を有す。かくのごとき意見の基づくところは、警察が、娼妓希望者にして他に生計を立つべき方法なき旨を述べ、かつ当局がその真実なるを認むる者に対してのみ、娼妓たるべきことを許可するの事実にあり。

(六)売淫および及婦女売買に対する輿論

 日本においては、現存公娼制度ならびにこれと連絡ある婦人もしくは少女に対する搾取的活動に対しては、強きしかしてますます熾烈ならんとする反対運動あり。調査委員に与へられたる公の報告によれば、

「従来我国に於て廃娼運動を継続的に行へる二個の団体あり。一つは廓清会にして、一つは婦人矯風会なり。前者は男女道徳の高揚をその目的とせる故に、公娼廃止をその運動の重要部門の一つとし来たり、後者は純潔、平和、禁酒をその三大綱領として掲げつつ、同時にまた公娼制度の廃止を要求し来りた

[中略]

 五、婦女売買の状況およびこれがその防遏のための努力に対する観察

 日本帝国は、関東州を除き、国際的婦女売買の目的地にあらず。すなはち内地、朝鮮、台湾において外国人醜業婦に対する需要はなく、なほ外国人は娼妓稼業を許可せらるる事なく、また密娼を営むことを許さるる事はなし。もしこれが発覚の場合は概ね退去処分に付せらるるなり。関東州においては、その住民の大部分は妻女を伴はずして入国する苦力階級に属する支那人なるが故に、支那本土よりの婦人輸入取引相当行はる。その他の外国人の売買は広く禁圧せらる。

 婦女の輸出取引に関しては、朝鮮より満洲、関東州より満洲及び支那、台湾より厦門港等へ輸出せらるるもの若干あり、しかして内地より満洲、朝鮮、支那各港に輸出せらるるもの相当数に上る。日本国民がこれらの地へ赴くには旅券または査証を必要とせざるが故に、日本当局にとりてこの種売買の取り締まりをなすは困難なり。世界各地への日本婦人輸出取り引きは年々顕著に減少しつつありて、ほとんど無視し得る程度となるに至れり。右は主として醜業婦、芸妓および酌婦の支那を除く海外への渡航を禁止せる日本政府の方針ならびに駐外日本領事が地方官憲と協力して自国民のかかる職業に従事することを禁圧し、また現に醜業に従事せる者の送還につき努力しつつあるに基づくものなり。調査委員の訪問せるすべて国における日本人醜業婦に関する一般的意見によれば、これらなほ海外に残れる者は、多くは年長にして、すでに該地に永年居住せるもののみなり。
          ―― 終 ――

 

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【秘】 10. 12 分類 B9100. 1−124

國際聨盟C·T·F·E·東洋·第三十五號
ヂュネーヴ·一九三二年七月三十一日
   ─日本に関する報告─

東洋への婦人及兒童賣買 擴張實地調査

 

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國際聨盟C·T·F·E·東洋·第三十五號
ヂュネーヴ·一九三二年七月三十一日
   ─日本に關する報告─

東洋への婦人及兒童賣買 擴張實地調査

 

https://www.jacar.archives.go.jp/das/image-j/B04122146900 17/125 右

 之等取締法令は、調査員の訪問せる日本各地のものに付日本政府より提出せられたり、而して此の報告の基礎たる聨盟事務局保管の資料中に在るを以て、就て参照するを得べし。但私娼の禁止、公娼の自由に對する干渉の禁止及び紹介業者の或種の行動の禁止に関する全國共通の規則の二三に関しては附録 (四) 参照。
 他人の賣淫による所得を以て生活する者 (擯夫) を罰するの法律なし。
(四)賣淫の狀況及び法律の適用

 

https://www.jacar.archives.go.jp/das/image-j/B04122146900 17/125 左

 (a) 貸座敷營業
 一九三〇年現在内地に於ける貸座敷営業者数一一、一五四人にして、経営者及同居者は総て日本人なり。之等貸座敷は全国五四一の貸座敷指定地に存在し、内指定地数の最も多き廳府縣は北海道、山口縣、三重縣にして夫々四五、四一、三〇の指定地を有す。貸座敷営業者数の最も多きは京都府大阪府、東京都にして夫々、二、三〇五人、一、六一三人、七六五人を有す。詳細は附錄(五)参照
 一九三〇年、朝鮮全十二道を通じ、貸座敷営業指定地二五

 

https://www.jacar.archives.go.jp/das/image-j/B04122146900 18/125 右

ヶ所、貸座敷数五一〇、内日本人経営のもの三〇三、朝鮮人経営のもの二〇七なり。指定地数の最も多きは慶尚南道、京畿道、咸境北道にして夫々八ヶ所、三ヶ所、三ヶ所を有す。詳細附錄 (六) 参照。
 関東州に於ては大連及旅順に一四七人の貸座敷業者あり内七〇人は日本人にして七七人は支那人なり。満鉄沿線日本領事警察権の下には料理屋七六(うち日本人四二人、朝鮮人三四人)及 [×其の×] 免許を受けたる同居者数四三〇人(うち日本人一一

 

https://www.jacar.archives.go.jp/das/image-j/B04122146900 18/125 左

六人、朝鮮人三一四人)なり。右料理屋は奉天および哈爾賓に六一存在す。台湾における貸座敷営業者数に就ては統計を與へられざりき。(提出セズ)
 貸座敷への婦女の補充に就ては相當組織立ち居り、主として職業紹介業者、周旋人を通じて行はるゝが如し。貸座敷営業者と [×被雇本人×] <婦女> 又は其の父母との契約にして、娼妓稼を直接の對價とする金銭貸借は違法とせらるるも、事實上は婦女又は其の父母が金銭を前借し、時にはかなりの高利を以て金銭を前借し、尚其の外婦女の雇用期間中追借を受くるを以て、婦

 

https://www.jacar.archives.go.jp/das/image-j/B04122146900 19/125 右

女 [×が×] <は> 楼主に對し、一般的に債務を負ひつゝあり。
 既に述べたるが如く、輿論に刺戟せられて一九〇〇年に制定せられたる命令にして規定の表面上は如何なる娼妓も [×其の×] 地方警察署に申請すれば直に娼妓名簿よりその氏名を削除し得べき事を規定せるものあり。但し此の法令の精神並に目的は常に必ずしも遵守せられざるものの如く、警察當局が警察署に雇主を出頭せしめ、之と廃業希望者本人又は其の父母親族と協議せしめ、又は本人を圧迫する等の事實は屡〻本人をしてその年期満了又は雇主に對する債

 

https://www.jacar.archives.go.jp/das/image-j/B04122146900 19/125 左

務完濟に至るまで貸座敷に留まらしむるの結果を来す懼あり。警察當局側に對する辯護としては、高額の金銭を貸與せる楼主を、悪意を以て身代金を受領し直ちに廃業せんとするが如き娼妓 [×より×] <に> 欺かれざる様 [×多額の金銭を前貸せる楼主を×] 之等婦女又は両親より保護 <し> 或は婚姻をなすが如く装ふ等甘言を以て本人を誘惑して廃業を為さしめ、更に之より悲惨なる奴隷状態に陥れんとするが如き無頼の徒 [×より×] <に対し> 娼妓本人を保護するは警察當局の義務なりと信ずるに依ると稱するを得べし。

 

https://www.jacar.archives.go.jp/das/image-j/B04122146900 20/125 右

 楼主側より見れば、若し娼妓廃業が實際上無制限に許可されんか、娼妓本人は強制執行の目的たり得べき [×何らの×] 財產を有すること殆ど無く、又其の父母と雖も <其の> 子女を [×斯る職業の×] 犠牲 [×とする×] <として斯る生活に入らしむる> ほど貧困なる以上、楼主は其の財產を失ひ、全公娼制度は崩壊の危險に瀕す [×べし。×] <るものと謂ふべし。>
 從つて貸座敷営業者が自由廃業を規定する法令を潜ぐらんが爲全力を盡すは疑なき處なり。貸座敷に居住する娼妓本人より見れば、彼女等の多くは父母親族の病氣又は貧困の救助等、主に犠牲的理由に基づきて斯る生活に入りたるものにして、斯の如く孝

 

https://www.jacar.archives.go.jp/das/image-j/B04122146900 20/125 左

養のために貸座敷等に於て働くことは、必ずしもその家御に於ける地位を失はしむるものに非ず。
 (b) 公娼
 日本内地に於ける公娼総数は一、九三〇年現在に於て五〇、〇五六人なり。其の総ては日本人にして既に述べたるが如く外國人の公娼は勿論、日本の國籍を有する朝鮮人又は台湾人と雖も存在せず。公娼の最も多きは大阪、東京、京都、の三府縣にして夫々八、六七七人、六、四二四人、四、四九五人なり、詳細附録 (七) 参照

 

https://www.jacar.archives.go.jp/das/image-j/B04122146900 31/125 左

 日本政府も亦、警保局作成の公娼に関する調査――同報告は調査委員に其の日本到着と同時に提供せられたり――に於て公娼制度廃止問題に論及せり。左の文句は此の報告中より引用せるものなり。
『   娼妓の自由廃業
 娼妓となるに當つては貸座敷業者より前借するを普通とする、而して娼妓は貸座敷業者の下に寄寓して娼妓稼業をするのである。然し斯る金銭前借と娼妓稼業とは全く別個の問題にして、理論上何等相互関係を有しない。當事者の

https://www.jacar.archives.go.jp/das/image-j/B04122146900 32/125 右

有する債権担保の目的を以て他人の自由を拘束するが如き契約は民法第九十条により公助良俗に反するものとして無效である。娼妓取締規則第六條も亦「娼妓名簿削除申請ニ關シテハ何人ト雖モ妨害ヲ爲スコトヲ得ス」と規定してゐる。但し事實に於て前借金未済にて娼妓を廃業せんとせば、債権者たる業者は直接又は間接に之を妨害せんとし、種々陋劣なる手段を弄する者がいないでもない。
 一九〇〇年娼妓取締規則制定當時、内務大臣は地方長官に対し「娼妓稼業ノ廃止ハ各自ノ自由ニ属スルヲ以テ名簿

https://www.jacar.archives.go.jp/das/image-j/B04122146900 32/125 左

ノ削除ヲ申請スル者アルトキハ娼妓取締規則第五條ノ手続ニ違ハサル限リ総テ之ヲ受理スヘシ、而テ一旦受理シタル上ハ同條末項ニ依リ直ニ名簿ヲ削除スヘシ」との訓令を発した。政府當局は其の後も屡々地方當局に對し仝種の訓示或は指示を発し、債務の弁済を終らざるの故を以て、業者が娼妓稼業の廃止を妨ぐるが如きことなきやう努めてゐる。其の結果最近斯る弊害は非常に減少した。
 貸座敷業者に對する債務を完濟せざる娼妓が業者の反對を顧みずして廃業する場合、女の行為を自由廃業と稱へて

 

https://www.jacar.archives.go.jp/das/image-j/B04122146900 33/125 右

ゐる。
 最近数年間に於て自由廃業を爲した娼妓の数は一九二五年一二八人、一九二六年二四八人、一九二七年一八六人、一九二八年一五八人、一九二九年一五六人、合計五年間八七七人である。』
 全國を通じて存在する総ての娼妓救済並に保護施設中、敎育施設を以て最も重要視すべし。此の敎育施設中には娼妓の多くに缺除せる普通敎育施設の外、職業敎育其の他德育施設を含む

 

https://www.jacar.archives.go.jp/das/image-j/B04122146900 33/125 左

(五)各種職業の賣淫及婦女賣買に對する関係
 娼妓 [×となり×] 又は藝妓と [×し×] <なり> て金銭の前借をなす婦女の大多数が貧農又は労働者の子女なるの事實は此の種階級に属する者の大多数が経済的に如何に窮乏せるかを物語るものなり。警察當局は之等婦人の多数に正当なる職業を與ふる事は不可能なりとの意見を有す。斯の如き意見の基づく䖏は、警察が娼妓希望者にして他に生計を立つべき方法なき旨を述べ、且當局が其の眞実なるを認むる者に對してのみ娼妓たるべき事を許可するの事實に在り。

 

https://www.jacar.archives.go.jp/das/image-j/B04122146900 34/125 右

(六)賣淫及婦女賣買に對する輿論
 日本に於ては現存公娼制度 [×其の他の婦人×] <並に之と聨絡ある婦人若は少女に対する> 搾取 <的活動> に對しては、強 [×く×] <き> 而て益〻熾烈ならんとする反對運動あり。調査委員に與へられたる公の報告によれば、
『従来我國に於て廃娼運動を継続的に行へる二個の團体あり。一は廓清會にして一は婦人矯風會なり。前者は男女道德の高揚を其の目的とせる故に、公娼廃止を其の運動の重要部門の一とし来り、後者は純潔、平和、禁酒を其の三大綱領として掲げつゝ、同時に又公娼制度の廃止を要求し来りた

 

https://www.jacar.archives.go.jp/das/image-j/B04122146900 34/125 左

 

 

https://www.jacar.archives.go.jp/das/image-j/B04122146900 35/125 右

 

 

https://www.jacar.archives.go.jp/das/image-j/B04122146900 35/125 左

 

 

https://www.jacar.archives.go.jp/das/image-j/B04122146900 36/125 右

 

 

https://www.jacar.archives.go.jp/das/image-j/B04122146900 37/125 左

 

 

https://www.jacar.archives.go.jp/das/image-j/B04122146900 57/125 左

  五、婦女賣買の状況及び之が其の防遏の為の努力に對する観察
 日本帝國は、關東州を除き、國際的婦女賣買の目的地に非ず。即ち内地、朝鮮、台湾に於て外國人醜業婦に對する需要はなく、尚外國人は娼妓稼業を許可せらるる事なく又密娼を營むことを

 

https://www.jacar.archives.go.jp/das/image-j/B04122146900 58/125 右

許さるる事はなし。若し之か発覺の場合は槪ね退去䖏分に附せらるるなり。關東州に於ては、その住民の大部分は妻女を伴はずして入國する苦力階級に属する支那人なるか故に、支那本土よりの婦人輸入取引相當行はる。その他の外國人の賣買は廣く禁壓せらる。
 婦女の輸出取引に關しては、朝鮮より満洲、関東州より満洲及び支那、台湾より厦門港等へ輸出せらるるもの若干あり、而 [し] て内地より満洲、朝鮮、支那各港に輸出せらるるもの相當数に上る。日本國民が之等の地へ赴くには旅券又は査証を必要とせ

 

https://www.jacar.archives.go.jp/das/image-j/B04122146900 58/125 左

ざるが故に、日本當局にとりて此の種賣買の取締を為すは困難なり。世界各地への日本婦人輸出取引は年々顕著に減少しつつありて殆んど無視し得る程度となるに至れり 右は主として醜業婦、藝妓及び酌婦の支那を除く海外への渡航を禁止せる日本政府の方針並に駐外日本領事が地方官憲と協力して自國民の斯る職業に従事する事を禁壓し又現に醜業に従事せる者の送還に就き努力しつつあるに基くものなり。調査委員の訪問せる總ての國に於ける日本人醜業婦に關する一般的意見に依れば、之等尚海外に残れる者は多くは年長にして既に該地に永年居住せるもののみなり。
          ―― 終 ――

 

↑「分割1」JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.B04122146900、国際連盟婦人児童問題一件/東洋ニ於ケル婦女売買実施調査ノ件/東洋ニ於ケル婦女売買実地調査ノ件(本邦関係調査報告書並帝国意見書)(B-9-10-0-1_1_4)(外務省外交史料館