Ob-La-Di Oblako 文庫

帝国日本の侵掠戦争と植民地支配、人権蹂躙を記憶し、再現を許さないために、ひたすら文書資料を書き取る。姉妹ブログ「歴史を忘れる民族に未来はない!」https://obladioblako.hateblo.jp/ のデータ·ベースを兼ねる。

「自殺者(軍医)3名あり。…兵にありては更らに著るしく、不慮外傷1,000件の大部分は喧嘩争斗に起因し、上官暴行は平均毎日1件の割にて発生する状况にて、まことに寒心に堪えず。国境隊内生活の物的心的慰安厚生策に就きては抜本的対策を必要とす。」 金原節三業務日誌摘録(当時陸軍省医事課高級課員)より 1939.3.31

3月31日

1,満州事情。細見大佐状况報告。

 イ。国境の状况

 匪賊は三江、東辺に若干。共匪は昨11月頃概ね駆逐され現在は大したものなし。

 国境線不明確なるためソ連との国境事件依然頻発す。3月初旬わが騎兵1ケ小隊拉致されたる事件あり(前事件の報復のためなる如し)。

 外蒙方面は鉄路の完成と共に頓に敵兵力増大す(前線は騎兵部隊なり)。これに対するわが兵力配備はきわめて薄弱なり。

 ロ、国内軍配備状况。

 一部移駐部隊ありたる外大なる変化なし。

 小衛戍地にありては髙級軍医をして軍医部長業務を代理せしむ。

 陸軍病院

 13年度計画の病院は全部完成す。

 病院勤務力は収容力に比し稍々薄弱なるところあり。例。ハイラル病院。

 病院の種類次の如し。

 病院(36)、分院(40)、分病院(4)(前分院のありしところ)、在隊入院(40)(交通干係輸送状况等よりみて入院のため輸送する時は症状増悪必至の場合 在隊の儘入院取扱をなすもの)。

 各病院共基幹となりて働くべき中堅幹部人少のため勤務力低下しあり。すなわち、少佐大尉級に著しき欠員あり。大部は臨床経験に乏しき短現等の中少尉なり。

 少佐大尉の欠員 112名
 中少尉の過員    36〃
 差引        67〃の欠員。

このことは、東寧、密山、牡丹江、チチハル等において顕著なり。[以下引用略]

 ハ、国境守備隊の軍医勤務状况。

 国境勤務の軍医に二種あり。一は僻地の不自由を克服し苦心努力しあるもの。他は勤務に倦み転任を熱望しあるもの。前者は極く少数にして大部は后者に屬す。

自殺者(軍医)3名あり。1は7Dの中尉、神経衰弱、ピストル自殺。2は飛行15の中尉。国境守備。平常とかわらず原因不明、遺書なし。3は大尉、神経衰弱、薬物による未遂あり注意しありしに、2週間后の病院移駐の際自殺。国境守備その他軍医中戦死2ある外、伝染病患者12名、内還5名等の減耗あり。

 尚若干の事犯者あり。何れにしても国境勤務は2年を限度とし後退せしむるを要す。

 又幹部将校は1ケ月若くは2ケ月に1回の割で出張あるも、中隊附将校、軍医には出張全然なく一考を要す。

 兵にありては更らに著るしく、不慮外傷1,000件の大部分は喧嘩争斗に起因し、上官暴行は平均毎日1件の割にて発生する状况にて、まことに寒心に堪えず。国境隊内生活の物的心的慰安厚生策に就きては抜本的対策を必要とす。

 ニ、給養

 米麦混食を廃止せる部隊あり。すなわち、23Dでは七分づき、独立守備隊では胚芽米を試験的に給与しあり。これらの部隊においては兵の嗜好に適い残飯量も尠し。医学的判断に関する調査未了。

 ホ、満州国側事情。

 A.民政部保健司の状况。

 保健司においては衞生防疫を掌りあるも、現在人事に起因し内部動揺しあり。長は満人なるも日本人官吏としてK技正あり。然るに最近(13年11月)関東局よりKo某なるものが入り、この人物が策動し波紋を起しあり。この人物につきては従来より兔角の風評えり。例えば(以下省畧)、本年2月これが露顕せる等。保健司の業務がこの一人物により本来の業務の活動を殺がれあるは遺憾なり。関東軍としては本人を処分するを可とし処置せんとせしか複雑なる背后干係もあり陸軍省の指令を希望す。
 B。満赤の状况。

 理事長問題等ありしも日赤本社久我部長の盡力にて大体の大組を決定したり。

 満赤においてもH某(上記Koと同窓、満大出身)なるものあり、これが又種々策動し波紋を起しあり、このHも上記Ko以上に評判の悪しき男にて扶済會(満州皇帝下賜金100万円を基金とする団体)の利子7万円(以下省畧)。伏魔殿中の人物なり。されど本人は関東軍参謀部(以下省畧)ありてこれに取入あるのみならず、満大出身者として大學干係者、満州官吏等の支援もあり、早急にこれを排除すること困難なる状況にあり。Hが総務部長となる様なことがあれば満赤は全く軍医部の手を離るることとなるべし(以下省畧)

 へ。その他。

 

↑昭和14.3.12~14.5.30 金原節三業務日誌摘録 前編 その一のイ 当時陸軍省医事課高級課員(防衛省防衛研究所、中央/軍事行政その他/68)より