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「朝鮮における労務動員の方式 およそ徴用、官斡旋、勤労報国隊、出動隊のごとき四つの方式がある。…徴用は別として、その他いかなる方式によるも出動は全く拉致同様な状態である。」 小暮泰用の復命書から 1944.7.31

    復命書

         嘱託 小暮泰用

 命により小職最近の朝鮮民情動向ならび邑面行政の状況調査のため朝鮮へ出張したるところ、調査状況別紙添付の通りにこれあり。右、復命に及び候うなり。

   昭和十九年七月三十一日

  管理局長 竹内徳治殿

 

    目 次

一、戦時下朝鮮における民心の趨勢
 ことに知識階級の動向に関する忌憚なき意見

二、都市および農村における食糧事情

三、今次在勤文官加俸令の官界ならびに民間に及ぼしたる影響

四、第一線行政の実情
 ことに府、邑、面における行政浸透の現状いかん

五、私立専門学校等整備の知識階級に及ぼしたる影響

六、内地移住労務者送出家庭の実状

七、挑戦内における労務規制の状況ならびに学校報国隊の活動状況いかん

             以 上

[中略]

六、内地移住労務者送出家庭の実状

 従来朝鮮における労務資源は一般に豊富·低廉といわれて来たが、支那事変が始まって以来、朝鮮の大陸前進兵站基地としての重要性が非常に高まり、各種の重要産業が急激に勃興し、朝鮮自体に対する労務事情も急激に変はり、したがって内地向けの労務供出の需給調整に相当困難を生じて来たのである。さらに朝鮮労務者内地移住は、単に労力問題に止まらず、内鮮一体という見地からして大きな政治問題とも見られるのである。

 しかし戦争に勝つためには、かくのごとき多少困難な事情にあっても国家の至上命令によって無理にでも内地へ送り出さなければならない今日である。しからば無理を押して内地へ送出された朝鮮人労務者の残留家庭の実情は果していかがであろうか。一言をもってこれを言ふならば、実に惨憺、目に余るものがあるといっても過言ではない。

 けだし朝鮮人労務者の内地送出の実情に当っての人質的略奪的拉致等が朝鮮民情に及ぼす悪影響もさることながら、送出、すなわち彼らの家計収入の停止を意味する場合が極めて多い様である。その詳細なる統計は明かでないが、最近の一例を挙げてその間の実情を考察するに、次の様である。

 大邸府の斡旋にかかる山口県下冲宇部炭鉱労務者九百六十七人について調査してみると、一人平均月七十六円二十六銭の内稼働先の諸支出月平均[上余白:?]六十二円五十八銭を控除し、残額十三円六十八銭が毎月一人当りの純収入にして、いわばこれが家族の生活費用に充てらるべきものである。

 かくのごとく一人当りの月収入は極めて僅少にして何人も現下のごとき物価高の時にこれにて残留家族が生活できるとは考えられない事実であり、さらに次の様なことによって一層激化されるのである。

(イ) 右の純収入の中から若干労務者自身の私的支出があること。

(ロ) 内地における稼先地元の貯蓄目標達成と逃亡防止策としての貯金の半強制的実施および払出しの事実上の禁止等があって、到底、右金額の送金は不可能であること。

(ハ) 平均額が右の通りであって個別的には多寡の凹凸があり、中には病気等のため赤字収入の者もあること、しかも収入の多い者といえどもそれは問題にならないほどの極めて僅少な送金額であること。

 以上のごとくにして、彼らとしてはこの労務送出は家計収入の停止となるのであり、いわんや作業中、不具廃疾となりて帰還せる場合においてはその家庭にとってはさらに一家の破滅ともなるのである。

 しかしこれらの事情に対する異論もある様である、すなわち労務援護や労務協会のことや残留家族殊に婦人の積極的活動による収入の確保等があるではないかというのがそれであるが、しかし朝鮮の労務援護についていえば左のごとき二つの方法があるであろう。その一つは隣保相助を挙ぐるであろうが、これも朝鮮の農民と労働者の大衆は未だかかる良風美俗の実践者たるためには余りにも貧困すぎる現状であり、その二は労務協会の援護であるが、これも労務者一人当り五円を財源とする本会の実情はこの予算も現実的には宴会その他の費用に充てられている現状である。

 さらに残留家族殊に婦女子の労働はどうであるかについて調査してみるに、朝鮮の都市においての一家支柱たりし男子に残留婦女子が代替し得ることの出来ないことはもとよりであるが、農村においても土壌の痩薄性と耕種法、ことに農具の未発達、高率の小作料、旱水害、その他各種夫役等の増加の多い今日においては、全家族総動員して労務に従事し、もって漸く家計を維持したる農民が、戸主または長男等の働き手を送出したる後、婦女子の労働をしてその損失を補償、代替、さらに進んでは家計の好転を図り得ないことは明白な事実であって、この点、自然的条件に恵まれ耕種法その他営農の発達したる内地農村と同一に考えることは出来ないのである。いわんや朝鮮農村の婦女子はその九割以上が殆んど無教育であり、青少年は徴兵実施と、それに伴う各種の錬成その他の行事のために、実際的には働き手たる意義を大いに減殺されているのである。

 かくして送出後の家計はいかなる形においても補われない場合が多い。以上を要するに、送出は彼ら家計収入の停止となり、作業契約期間の更新等により長期にわたるときは破滅を招来する者が極めて多いのである。音信不通、突然なる死因不明の死亡電報などに至っては、その家族に対して言う言葉を知らないほど気の毒な状態である。しかし彼ら残留家族は、家計と生活に苦しみながら、一日も早く帰還することを待ちあぐんでいる状態である、私が今回旅行中、慶北義城邑中里洞、金本奎東(二十三才)なるものが昭和十八年七月一日、北海道へ官の斡旋により渡航した家庭を直接訪問して調査したるに、最初、官の斡旋の時は北海道松前郡大沼村荒谷、瀬崎組において本俸九十円、手当を加へ合計月収百三十円となる見込みとの契約にて、北海道より迎へに来た内地人労務管理人に引率され渡航したる後、すでに一年近くになっても送金もなければ音信もない。家に残された今年六十三才の老母一人が、病気と生活難によりほとんど瀕死の状態に陥っている実情を目撃した。かくの如き実情はこの義城のみならず西鮮、北鮮地方に極めて多く、これら送り出し家庭にお!ける残留家族の援護は緊急を要すべき問題と思われる。

 そのなかにも軍方面の徴用者の中にはよく家庭との通信、送金等があって残留家族にありても比較的安心し、生活上にも左程不便を感ぜざるも、特に一般炭坑ならびにその他会社等の関係にありては、右のごとく送出後ほとんど音信を断ち、なほ家庭より通信するも返信なく、半年ないし一年を経るも仕送り金なきものもありて、その残留家族、特に老父母や病妻等は生不如死のごとき悲惨な状態であるのみならず、その安否すら案じつつ不安感を有する者極めて多く、かくのごときは当事者の家庭状況にのみ限らず、今後、朝鮮から労務者送出上、大なる影響を与ふるものとして憂慮に堪えないのである。

 また、かりに朝鮮農村における男子労力に代って婦女子勤労へと一層強化するにしても、今日の朝鮮婦女子の特殊立場を没却してただ盲目的に働かすことばかりは大いに警戒しなければならぬと思う。すなわち人口増強上、重要使命を持つ婦人の保健問題、または内地婦女子と異ってほとんど無教育である彼女たちが良く働ける様に仕向ける特殊施設と対策がなければならぬ。たとえば共同炊事、託児所、保健婦設置、食料特配等は、特に緊急を要する条件であろう。

 朝鮮農村の婦人、ことに南朝鮮地方の農村婦人は、勤労・増産意欲に乏しく、また家事と育児だけでも力一杯であって、実際問題として増産への勤労提供の余裕もない実情である。ここにまず問題となるのは農家の生活改善であり、勤労増産の意欲を旺盛ならしめ、容易に増産勤労部門へ挺身できる様、その環境を作り上げることが大切であろう。

 第一に増産勤労婦人隣組隊のごときものを組織して生活の共同化を期し、家庭生活も勤労作業もこの共同化された組織と精神においてなさねばならぬと思う。そして託児所を設け、また保健婦をなるべく多く嘱託し、農村妊婦の保護、育児の輔導等に努めて行けば、あるいは朝鮮婦人も容易に労働に親しみ得るであろうと思われる。

 これには従来と異った相当しっかりした指導者を多く必要とするが、さらに託児所、保健婦、協働炊事、食料の特配等の指導者を得ることが最も大切であるものと思う。しかし今日の朝鮮農村の現状として、農村自体では到底そういう適当な人を得ることは不可能であろう。ここでこの問題に対して真剣に考えさせられることは、中等以上の教育を受けた都会の女性たちが華やかに飾って喫茶店から映画館へと空虚な生活を送る嘆かわしい現実である。この女性らの胸中に果して国を想い非常時局を認識して勝つための仕事に尊い汗を注ぐ誠があるかという問題である。しかし全然ないのではないが、多くの場合生活の環境がしからしめたのであると思ふ

 ゆえにこの際、思い切った積極的錬成対策を樹立して、これらの女性を総動員してせめて農繁期の数ヶ月だけでも農村に住み込ませ、保健婦として託児所の保母として奉仕せしめれば、真に婦人労働力の完全なる活用が可能であるものと思われる。これは金肥を何百叺使ふ以上の実質的効果があるものと思われる。これがせめて朝鮮婦女子の勤労強化指導の一策ともなるであろうと信ずるのである。

 

七、朝鮮内における労務規則の状況ならびに学校報国隊の活動状況如何

 従来朝鮮内においては労務給源が比較的豊富であったために、支那事変勃発後も当初は何ら総合的計画なく労務動員は必要に応じてその都度行われた。ところがその後、動員の度数と員数が各種階級を通じて激増されるに従って、ほぼ大東亜戦争勃発ごろより本格的労務規制が行われる様になったのである。

 しかして今日においてはすでに労務動員はもはやほぼ頭打ちの状態に近づき、種々なる問題を露出しつつあり、動員の成績は概して予期の成果を納め得ない状態にある。今その重なる点を挙ぐれば次の様である。

(イ) 朝鮮における労務動員の方式

 およそ徴用、官斡旋、勤労報国隊、出動隊のごとき四つの方式がある。

 徴用は今日までのところ、極めて特別なる場合は別問題として、現員徴用(これも最近の事例に属す)以外は行われなかった。しかしながら今後は徴用の方法を大いに強化活用する必要に迫られ、かつそれが予期される事態に立ち到ったのである。

 官斡旋は従来、報国隊とともに最も多く採用された方式であって、朝鮮内における労務動員は大体この方法によってなされたのである。

 また出動隊は多く地元における土木工事、例えば増米用の溜池工事などへの参加の様な場合に採られつつある方式である。しかしながら動員を受くる民衆にとっては徴用と官斡旋、ときには出動隊も報国隊も全く同様に解されている状態である。

(ロ) 労務給源

 朝鮮内の労務給源はすでに頭打ちの状態にあるというのが実状であろうと思われる。

 今なお余裕があると見る向きも相当にあるが、しかしこれは頭数のみを見、人は男女ともに内地人男女と同等の能力を有するものという前提の下に立っている見解である。端的には労銀の想外の昂騰がその一つの証拠であり、また朝鮮人の婦女子は潜勢力としては存在するが、現実の家計収入をもたらすべき労働力としては一般に評価し得ない実状にある。かくのごとく観じてきたるときは、朝鮮内の労務給源は非常に逼迫を告げているというべきである。

 絶対的頭数の上から見て朝鮮の労務給源が今なお豊富であるという見解から、さらに男子を動員することは可能であるが、しかるときは婦女子のみが残ることとなり、朝鮮の特殊事情からその実質的労働力は実に薄弱なものとなるから、この点、深く実態の観察調査が必要であるものと思われる。

 一例を見ると、慶北安東郡のごときは総人口十七万人の内、農業労務者が六万人、一般労務者に登録されたのが九千九百二十九人となっている。この一般労務者約一万人からは、すでに昭和十四年以降内地へ供出したもの六千四百二十六人、北鮮地方へほぼ八百人、合計八千人近くすでに送出したのであるから、残有の労働力としては極めて僅少になっているにもかかわらず、今年さらに残留労務者数よりも多く内地送出を命ぜられてあるため、第一線における当局者および農村においては食料増産上多大なる影響を及ぼすものとして憂慮しある状態である。

(ハ) 動員の実情

 徴用は別として、その他いかなる方式によるも出動は全く拉致同様な状態である。

 それはもし事前においてこれを知らせばみな逃亡するからである。そこで夜襲、誘出、その他各種の方策を講じて人質的略奪拉致の事例が多くなるのである。何故に事前に知らせれば彼等は逃亡するか。要するにそこには彼らを精神的に惹き付ける何物もなかったことから生ずるものと思われる。内鮮を通じて労務管理の拙悪極まることは、往々にして彼らの身心を破壊することのみならず、残留家族の生活困難ないし破壊がしばしばあったからである。

 ことに西北朝鮮地方の労務管理は全く御話にならないほど惨酷である、故に彼らはむしろ軍関係の事業に徴用されるのを希望するほどである。

 かくて朝鮮内の労務規制は全く予期の成績を挙げていない。いかにして円満に出動させるか、いかにして逃亡を防止するかが、朝鮮内における労務規制の焦点となっている現状である。

(ニ) 労銀

 朝鮮の労働力も右の様にますます逼迫しているため、いかなる事業も請負人に労働者を官公署が斡旋するのでなければ到底事業遂行は不可能である。故に個人が自由契約により四苦八苦して労働者を雇い入れることになると、全く驚くほど想外の高賃金を要求されるのである。

 これに反し官公署の事業は予算その他の関係にて右のごとく高い賃金は支払えない。そこで多くは部落連盟に請負でやらせる。故に朝鮮の部落民は官の事業にはほとんど賦役(強制奉仕)の心構えにて参加するという実情である。

(ホ) 学校報国隊の活動状況

 朝鮮も最近は勤労教育の強調に伴い学校報国隊の活動は文字通り予期以上の成績を挙げているが、しかしそこには簡単に見過ごし得ない種々の問題が惹起していることも事実である。すなわち、

1. 上司または一般に対する見物式の出動で実績の挙らざるものあること。

2. 学校によって勤務の時間、程度において著しき差別のあること。

3. 児童生徒の個々人の身心の状態を無視し一律に過重なる勤労を課し、全く身心疲労し切って親たちの憂慮惻々たるものあること。

 一般に朝鮮の地方農村には勤労過重なる場合が多く、極端な□になれば三食とも草根木皮の粥腹であるため体操の時間にすら貧血卒倒する頑是ない子供が、勇々しくも鍬や鎌を手にし文字通り身を粉にして勤労に従事しあるのを目睹し、一掬の涙なきを得ない実情である。

 朝鮮の労務規制の現状と学徒報国隊の活動状況は大略以上のごとくであって、端的にいえば悲観すべき点極めて多く、これをいかにして今後是正し円滑化させるかについて考えて見るに、労務管理の根本的革新が先決問題であることはいうまでもない。上欄にも少し述べてあるが、一体朝鮮には戦争に必要な物資も豊富であり、労働力も過剰するほどにあったので、これを戦力化するか否かは一にかかって勤労管理の善否にあったのである。それが労務管理の根本対策が足らなかったために今日早や行き詰まりを示す悲観的状態に至ったことは、誠に残念と言わざるを得ないのである。

 朝鮮の労務者をして真に日本人としてのいわゆる玉砕的勤労をなさしむるためには、従来のごとき形式観念的勤労管理を捨て、まず日本人としての国体思想の自覚、戦争精神の興揚、特に彼らに対する後顧無憂の生活掩護、労力涵養の生活必需物資の充足など、精神的、生活的にわたる幾多の指導的条件が必要である。すなわち朝鮮の労務管理は思想管理、生活管理にまで及ぼさなければ万全を帰することは不可能であるものと思う。

 朝鮮における従来の労務管理がどうであったかについては、その現実の状況を要点だけ上欄に略述してあるが、今これを詳細にするには相当長文にもなるし、またもはや内外周知のことに属する故に、ここにあらためて蛇足を付するを避けるのであるが、しかし矛盾している二つの要点だけを指摘して速やかに改善したいのである。

 第一はいまだ朝鮮にはあらゆる部門にわたり資本利潤の確保とその増進を図る目的の下に行われていること。

 第二は自由主義者ないしはマルクス理論を肯定しかねない、すなわち反資本主義的インテリーによって組織せられていることの多いことである。そうしてこの二つの精神要点は必然的に相矛盾し、朝鮮の労務管理担当者は常にこの矛盾の中に苦悩しつつあることである。

 そこへ最近特に大東亜戦争勃発以後急に湧発された国体主義的大勢の前に、朝鮮人は官民上下ほとんど戸惑いしつつ、それぞれ異なった思想と考え方を内包しつつ、表面的に形の上でとにかく大勢に順応してきた様に見えることも事実であるが、しかし本当のことをいうと勢い朝鮮人の国体観念、戦争挺身は多く形式的ならざるを得ないのであり、従って幾多の内在的困難を生じてきている。

 さらに最近に至り非職業労務、すなわち徴用、学徒、女子挺身隊のごときものが混入され、朝鮮における勤労管理はその困難性をますます加重して来た感がする。

 要するに朝鮮における労務管理問題の根本対策としては、まず今までの様な官の斡旋とか一般募集のごとき方法をやめていわゆる皇国的制度を強化し、国民皆兵としての指導精神の下に日本的給与、国体的勤労管理に戻らなければならない。すなわち徴用をもっと強化し、一応等しく赤子としての報国性、いわゆる同一の資格と同一の重要性に、家族主義を融合したる絶対標準の保証を原則とし、これに内鮮間における特殊事情や勤労者個人の歴史的地位、能力、知識、技術、勤怠、労務量を加算条件とすることである。要するに原則としては全家族を養い、各員をして各々その性能に応じて尽忠報国をなし得るまでの向上をなさしめ得ることの絶対保証を速やかに実践しなければならないと思われる。

 以上をもって簡単ながら上司より内命を受けた調査事項の復命を終わることにする。

                    以上

 

https://www.jacar.archives.go.jp/das/image-j/B02031286700 1/31



https://www.jacar.archives.go.jp/das/image-j/B02031286700 2/31 右

    復命書

         嘱託 小暮泰用

依命小職最近の朝鮮民情動向並邑面行政の状況調査の為朝鮮へ出張したる処調査状況別紙添付の通に有之右及復命候也

   昭和十九年七月三十一日

  管理局長 竹内徳治殿

 

https://www.jacar.archives.go.jp/das/image-j/B02031286700 3/31

    目 次

一、戦時下朝鮮に於ける民心の趨勢
 殊に知識階級の動向に関する忌憚なき意見

二、都市及農村に於ける食糧事情

三、今次在勤文官加俸令の官界並に民間に及したる影響

四、第一線行政の実情
 殊に府、邑、面に於ける行政滲透の現状如何

五、私立専門学校等整備の知識階級に及したる影響

六、内地移住労務者送出家庭の実状

七、挑戦内に於ける労務規制の状況並に学校報国隊の活動状況如何

             以 上

 [中略]

 

https://www.jacar.archives.go.jp/das/image-j/B02031286700 22/31 左

六、内地移住労務者送出家庭の実状

 従来朝鮮に於ける労務資源は一般に豊富低廉と云はれて来たが支那事変が始まつて以来朝鮮の大陸前進兵站基地としての重要性が非常に高まり各種の重要産業が急激に勃興し朝鮮自体に対する労務事情も急激に変り従つて内地向の労務供出の需給調整に相当困難を生じて来たのである、更に朝鮮労務者内地移住は単に労力問題に止らず内鮮一体と云ふ見地からして大きな政治問題とも見られるのである
 然し戦争に勝つ為には斯の如き多少困難な事情にあつても国家

 

https://www.jacar.archives.go.jp/das/image-j/B02031286700 23/31 右

至上命令に依つて無理にでも内地へ送り出さなければならない今日である、然らば無理を押して内地へ送出された朝鮮人労務者の残留家庭の実情は果して如何であらうか、一言を以て之れを言ふならば実に惨憺目に余るものがあると云つても過言ではない

 蓋し朝鮮人労務者の内地送出の実情に当つての人質的掠奪的拉致等が朝鮮民情に及ぼず[ママ]悪影響もさること乍ら送出即ち彼等の家計収入の停止を意味する場合が極めて多い様である、其の詳細なる統計は明かでないが最近の一例を挙げて其の間の実情を考察するに次の様である

 大邸府の斡旋に係る山口県下冲宇部炭鉱労務者九百六十七人に就て調査して見ると一人平均[上余白:?]月七十六円二十六銭の内稼働先の諸支出月平均六十二円五十八銭を控除し残額十三円六十八銭が毎月一人当りの純収入にして謂はば之れが家族の生活費用に充てらるべきものである

 

https://www.jacar.archives.go.jp/das/image-j/B02031286700 23/31 左

 斯の如く一人当りの月収入は極めて僅少にして何人も現下の如き物価高の時に之にて残留家族が生活できるとは考へられない事実であり、更に次の様なことに依つて一層激化されるのである

(イ)、右の純収入の中から若干労務者自身の私的支出があること

(ロ)、内地に於ける稼先地元の貯蓄目標達成と逃亡防止策としての貯金の半強制的実施及払出の事実上の禁止等があつて到底右金額の送金は不可能であること

(ハ)、平均額が右の通りであつて個別的には多寡の凹凸があり中には病気等の為赤字収入の者もあること、而も収入の多い者と雖も其れは問題にならない程の極めて僅少な送金額であること

 以上の如くにして彼等としては此の労務送出は家計収入の停止となるのであり況や作業中不具廃疾となりて帰還せる場合に於ては其の家庭にとつては更に一家の破滅ともなるのである

 然し之等の事情に対する異論もある様である、即ち労務援護や

 

https://www.jacar.archives.go.jp/das/image-j/B02031286700 24/31 右

労務協会のことや残留家族殊に婦人の積極的活動に依る収入の確保等があるではないかと云ふのが其れであるが、然し朝鮮の労務援護に就て云へば左の如き二つの方法があるであらう、其の一つは隣保相助を挙ぐるであらうが、之れも朝鮮の農民と労働者の大衆は未だ斯る良風美俗の実践者たる為には余りにも貧困過ぎる現状であり、其の二は労務協会の援護であるが之れも労務者一人当り五円を財源とする本会の実情は之の予算も現実的には宴会其の他の費用に充てられて居る現状である

 更に残留家族殊に婦女子の労働はどうであるかに就て調査して見るに、朝鮮の都市に於ての一家支柱たりし男子に残留婦女<子>が代替し得ることの出来ないことは固よりであるが農村に於ても土壌の痩薄性と耕種法殊に農具の未発達、高率の小作料、旱水害、其の他各種夫役等の増加の多い今日に於ては全家族総動員して労務に従事し以て漸く家計を維持したる農民が戸主又は長男等の働き

https://www.jacar.archives.go.jp/das/image-j/B02031286700 24/31 左

手を送出したる後婦女子の労働をして其の損失を補償代替更に進んでは家計の好転を図り得ないことは明白な事実であつて、此の点自然的条件に恵まれ耕種法其の他営農の発達したる内地農村と同一に考へること<は>出来ないのである、況や朝鮮農村の婦女子は其の九割以上が殆んど無教育であり青少年は徴兵実施と其れに伴ふ各種の錬成其の他の行事の為に実際的には働手たる意義を大いに減殺されて居るのである。

 斯して送出後の家計は如何なる形に於ても補はれない場合が多い、以上を要するに送出は彼等家計収入の停止となり作業契約期間の更新等により長期に亘るときは破滅を招来する者が極めて多いのである、音信不通、突然なる死因不明の死亡電報などに至ては其の家族に対して言う言葉を知らない程気の毒な状態である、然し彼等残留家族は家計と生活に苦しみ乍ら一日も早く帰還することを待ちあぐんで居る状態である、私が今回旅行中慶北義城邑中

 

https://www.jacar.archives.go.jp/das/image-j/B02031286700 25/31 右

里洞金本奎東(二十三才)なるものが昭和十八年七月一日北海道へ官の斡旋に依り渡航した家庭を直接訪問して調査したるに、最初官の斡旋の時は北海道松前郡大沼村荒谷瀬崎組に於て本俸九十円、手当を加へ合計月収百三十円となる見込との契約にて北海道より迎へに来た内地人労務管理人に引率され渡航したる後既に一年近くになつても送金もなければ音信もない家に残された今年六十三才の老母一人が病気と生活難に因り殆ど瀕死の状態に陥つて居る実情を目撃した、斯の如き実情はこの義城のみならず西鮮、北鮮地方に極めて多く、之等送出家庭に於ける残留家族の援護は緊急を要すべき問題と思はれる

 其の中にも軍方面の徴用者の中には克く家庭との通信、送金等があつて残留家族にありても比較的安心し生活上にも左程不便を感ぜざるも、特に一般炭坑並に其の他会社等の関係に在りては右の如く送出後殆んど音信を断ち尚家庭より通信するも返信なく半

 

https://www.jacar.archives.go.jp/das/image-j/B02031286700 25/31 左

年乃至一年を経るも仕送金無きものもありて其の残留家族特に老父母や病妻等は生不如死の如き悲惨な状態であるのみならず其の安否すら案じつつ不安感を有する者極めて多く、此の如きは当事者の家庭状況にのみ限らず今後朝鮮から労務者送出上大なる影響を与ふるものとして憂慮に堪へないのである

 又仮りに朝鮮農村に於ける男子労力に代つて婦女子勤労へと一層強化するにしても今日の朝鮮婦女子の特殊立場を没却して唯盲目的に働かす事ばかりは大いに警戒しなければならぬと思ふ、即ち人口増強上重要使命を持つ婦人の保健問題又は内地婦女子と異つて殆ど無教育である彼女達が良く働ける様に仕向ける特殊施設と対策がなければならぬ、例へば共同炊事、託児所、保健婦設置、食料特配等は特に緊急を要する条件であらう

 朝鮮農村の婦人殊に南朝鮮地方の農村婦人は勤労、増産意欲に乏しく、又家事と育児だけでも力一杯であつて実際問題として増

 

https://www.jacar.archives.go.jp/das/image-j/B02031286700 26/31 右

産への勤労提供の余裕もない実情である、ここに先づ問題となるのは農家の生活改善であり勤労増産の意欲を旺盛ならしめ容易に増産勤労部門へ挺身出来る様其の環境を作り上げることが大切であらう

 第一に増産勤労婦人隣組隊の如きものを組織して生活の共同化を期し家庭生活も勤労作業も此の共同化された組織と精神に於てなさねばならぬと思ふ、そして託児所を設け又保健婦を成る可く多く嘱託し農村妊婦の保護、育児の輔導等に努めて行けば或は朝鮮婦人も用意に労働に親しみ得るであらうと思はれる

 之れには従来と異つた相当しつかりした指導者を多く必要とするが、更に託児所、保健婦、協働炊事、食料の特配等の指導者を得ることが最も大切であるものと思ふ、然し今日の朝鮮農村の現状として農村自体では到底そう云ふ適当な人を得ることは不可能であらう、ここで此の問題に対して真剣に考ヘさせられることは

 

https://www.jacar.archives.go.jp/das/image-j/B02031286700 26/31 左

中等以上の教育を受けた都会の女性達が華やかに飾つて喫茶店から映画館へと空虚な生活を送る嘆はしい現実である此の女性等の胸中に果して国を想ひ非常時局を認識して勝つ為の仕事に尊い汗を注ぐ誠があるかと云ふ問題である、然し全然ないのではないが、多くの場合生活の環境がしからしめたのであると思ふ

 故に此の際思ひ切つた積極的錬成対策を樹立して此等の女性を総動員してせめて農繁期の数ヶ月丈でも農村に住込ませ、保健婦として託児所の保姆として奉仕せしめれば真に婦人労働力の完全なる活用が可能であるものと思はれる、之れは金肥を何百叺使ふ以上の実質的効果があるものと思はれる、之れがせめて朝鮮婦女子の勤労強化指導の一策ともなるであらうと信ずるのである

 

七、朝鮮内に於ける労務規則の状況並に学校報国隊の活動状況如何

 従来朝鮮内に於ては労務給源が比較的豊富であつた為に支那

 

https://www.jacar.archives.go.jp/das/image-j/B02031286700 27/31 右

変勃発後も当初は何等総合的計画なく労務動員は必要に応じて其の都度行はれた、所が其の後動員の度数と員数が各種階級を通じて激増されるに従つて略大東亜戦争勃発頃より本格的労務規制が行はれる様になつたのである

 而して今日に於ては既に労務動員は最早略頭打の状態に近つき種々なる問題を露出しつつあり動員の成績は概して予期の成果を納め得ない状態にある、今其の重なる点を挙ぐれば次の様である

(イ)、朝鮮に於ける労務動員の方式

 凡そ徴用、官斡旋、勤労報国隊、出動隊の如き四つの方式がある

 徴用は今日迄の所極めて特別なる場合は別問題として現員徴用(之も最近の事例に属す)以外は行はれなかつた、然し乍ら今後は徴用の方法を大いに強化活用する必要に迫られ且つ其れが予期される事態に立到つたのである

 

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 官斡旋は従来報国隊と共に最も多く採用された方式であつて朝鮮内に於ける労務動員は大体此の方法に依つて為されたのである

 又出動隊は多く地元に於ける土木工事例へば増米用の溜池工事等への参加の様な場合に採られつつある方式である、然し乍ら動員を受くる民衆にとつては徴用と官斡旋時には出動隊も報国隊も全く同様に解されて居る状態である

(ロ)、労務給源

 朝鮮内の労務給源は既に頭打の状態にあると云ふのが実状であらうと思はれる

 今尚余裕があると見る向も相当にあるが然し之れは頭数のみを見、人は男女共に内地人男女と同等の能力を有するものと云ふ前提の下に立つてゐる見解である、端的には労銀の想外の昂騰が其の一つの証拠であり又朝鮮人の婦女子は潜勢力と

 

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しては存在するが現実の家計収入をもたらすべき労働力としては一般に評価し得ない実状にある、斯の如く観じて来るときは朝鮮内の労務給源は非常に逼迫を告げてゐると云ふべきである

 絶対的頭数の上から見て朝鮮の労務給源が今尚豊富であると云ふ見解から更に男子を動員することは可能であるが、然る時は婦女子のみが残ることとなり朝鮮の特殊事情から其の実質的労働力は実に薄弱なものとなるから此の点深く実態の観察調査が必要であるものと思はれる

 一例を見ると慶北安東郡の如きは総人口十七万人の内農業労務者が六万人、一般労務者に登録されたのが九千九百二十九人となつて居る、此の一般労務者約一万人からは既に昭和十四年以降内地へ供出したもの六千四百二十六人、北鮮地方へ略八百人合計八千人近く既に送出したのであるから残有の労

 

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働力としては極めて僅少になつて居るにも拘らず今年更に残留労務者数よりも多く内地送出を命ぜられてある為め第一線に於ける当局者及農村に於ては食料増産上多大なる影響を及ぼすものとして憂慮しある状態である

(ハ)、動員の実情

 徴用は別として其の他如何なる方式に依るも出動は全く拉致同様な状態である

 其れは若し事前に於て之を知らせば皆逃亡するからである、そこで夜襲、誘出、其の他各種の方策を講じて人質的略奪拉致の事例が多くなるのである、何故に事前に知らせれば彼等は逃亡するか、要するにそこには彼らを精神的に惹付ける何物もなかつたことから生ずるものと思はれる、内鮮を通じて労務管理の拙悪極まることは往々にして彼等の身心を破壊することのみならず残留家族の生活困難乃至破壊が屢々あつた

 

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からである

 殊に西北朝鮮地方の労務管理は全く御話にならない程惨酷である、故に彼等は寧ろ軍関係の事業に徴用されるのを希望する程である

 斯くて朝鮮内の労務規制は全く予期の成績を挙げてゐない、如何にして円満に出動させるか、如何にして逃亡を防止するかが朝鮮内に於ける労務規制の焦点となつてゐる現状である

(ニ)、労銀

 朝鮮の労働力も右の様に益々逼迫してゐる為如何なる事業も請負人に労働者を官公署が斡旋するのでなければ到底事業遂行は不可能である、故に個人が自由契約に依り四苦八苦して労働者を雇い入れることになると全く驚く程想外の高賃金を要求されるのである

 反之官公署の事業は予算其の他の関係にて右の如く高い賃金

 

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は支払へない、そこで多くは部落連盟に請負でやらせる、故に朝鮮の部落民は官の事業には殆んど賦役(強制奉仕)の心構にて参加すると云ふ実情である

(ホ)、学校報国隊の活動状況

 朝鮮も最近は勤労教育の強調に伴ひ学校報国隊の活動は文字通り予期以上の成績を挙げてゐるが然しそこには簡単に見過し得ない種々の問題が惹起してゐることも事実である、即ち

1. 上司又は一般に対する見物式の出動で実績の挙らざるものあること

2. 学校に依つて勤務の時間、程度に於いて著しき差別のあること

3. 児童生徒の個々人の身心の状態を無視し一律に過重なる勤労を課し全く身心疲労し切つて親達の憂慮惻々たるものあること

 

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 一般に朝鮮の地方農村には勤労過重なる場合が多く極端な□になれば三食とも草根木皮の粥腹である為め体操の時間にすら貧血卒倒する頑是ない子供が勇々しくも鍬や鎌を手にし文字通り身を粉にして勤労に従事しあるのを目睹し一掬の涙なきを得ない実情である

 朝鮮の労務規制の現状と学徒報国隊の活動状況は大略以上の如くであつて端的に云へば悲観すべき点極めて多く之を如何にして今後是正し円滑化させるかに付て考へて見るに労務管理の根本的革新が先決問題であることは云ふ迄もない、上欄にも少し述べてあるが一体朝鮮には戦争に必要な物資も豊富であり労働力も過剰する程にあつたので、之を戦力化するか否かは一にかかつて勤労管理の善否にあつたのである、其れが労務管理の根本対策が足らなかつた為めに今日早や行詰りを示す悲観的状態に至つたことは誠に残念と言はざるを得ないのである

 

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 朝鮮の労務者をして真に日本人としての所謂玉砕的勤労をなさしむる為には従来の如き形式観念的勤労管理を捨て先つ日本人としての国体思想の自覚、戦争精神の興揚、特に彼等に対する後顧無憂の生活掩護、労力涵養の生活必需物資の充足等精神的生活的に亘る幾多の指導的条件が必要である、即ち朝鮮の労務管理は思想管理、生活管理に迄及ぼさなければ万全を帰することは不可能であるものと思ふ

 朝鮮に於ける従来の労務管理が如何であつたかに就ては其の現実の状況を要点だけ上欄に略述してあるが、今之れを詳細にするには相当長文にもなるし、又最早や内外周知のことに属する故に、茲に更めて蛇足を付するを避けるのであるが、然し矛盾してゐる二つの要点丈を指摘して速に改善したいのである

 第一は未だ朝鮮にはあらゆる部門に亘り資本利潤の確保と其の増進を図る目的の下に行はれて居ること

 

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 第二は自由主義者乃至はマルクス理論を肯定しかねない即反資本主義的インテリーに依つて組織せられて居ることの多いことである、そうして此の二つの精神要点は必然的に相矛盾し、朝鮮の労務管理担当者は常に此の矛盾の中に苦悩しつつあることである

 そこへ最近特に大東亜戦争勃発以後急に湧発された国体主義的大勢の前に朝鮮人は官民上下殆んど戸惑ひしつつそれぞれ異つた思想と考へ方を内包しつつ表面的に形の上では兎に角大勢に順応して来た様に見えることも事実であるが然し本当のことを云ふと勢ひ朝鮮人の国体観念戦争挺身は多く形式的ならざるを得ないのであり、従つて幾多の内在的困難を生じて来て居る

 更に最近に至り非職業労務、即ち徴用、学徒、女子挺身隊の如きものが混入され朝鮮に於ける勤労管理は其の困難性を益々加重して来た感がする

 

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 要するに朝鮮に於ける労務管理問題の根本対策としては先つ今迄の様な官の斡旋とか一般募集の如き方法をやめて所謂皇国的制度を強化し国民皆兵としての指導精神の下に日本的給与、国体的勤労管理に戻らなければならない、即ち徴用をもつと強化し一応等しく赤子としての報国性所謂同一の資格と同一の重要性に、家族主義を融合したる絶対標準の保証を原則とし、之れに内鮮間に於ける特殊事情や勤労者個人の歴史的地位、能力、知識、技術、勤怠、労務量を加算条件とすることである、要するに原則としては全家族を養ひ、各員をして各々其の性能に応じて尽忠報国を為し得る迄の向上を為さしめ得ることの絶対保証を速に実践しなければならないと思はれる

 以上を以て簡単乍ら上司より内命を受けた調査事項の復命を終ることにする

                    以上

 

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JACAR(アジア歴史資料センター)

Ref.B02031286700、

本邦内政関係雑纂/植民地関係 第二巻

8.復命書及意見集/1 復命書及意見集の1(A-5-0-0-1_1_002)(外務省外交史料館