朝鮮半島出身のいわゆる従軍慰安婦について
平成 4 年 7 月 6 日
内閣官房内閣外政審議室
政府としては、昨年12月より、朝鮮半島出身のいわゆる従軍慰安婦問題に政府が関与していたかどうかについて、関係資料が保管されている可能性のある省庁において関連資料の調査を行っていたところであるが、現在までの調査結果を下記の通りとりまとめたので発表する。なお、政府としては、今後とも新たな資料が発見された場合には、これを公表してまいりたい。
記
1.調査期間
平成 3 年12月〜平成 4 年 6 月
2.調査を行った省庁と調査方法
警察庁 ···· ①警察庁所管資料を調査。②各都道府県の本部長に対して調査を依頼。
防衛庁 ···· 防衛研究所を始め、陸上、海上及び航空の各自衛隊、防衛大学校等の防衛庁関係の各機関において戦史資料を中心に調査。
外務省 ···· 外交史料館等において、外交史料を中心に調査。
文部省 ···· ①各国公私立大学附属図書館に対し調査を依頼。②各都道府県教育委員会(公立図書館関係)及び私立図書館に対し調査を依頼。
厚生省 ···· 復員関係資料及び軍人・軍属名簿を中心に調査。
労働省 ···· 本省関係部局及び関係機関並びに地方職業安定機関において調査。
3. 調査結果
(1)各省庁から発見された資料の件数
警察庁 ···· 0 件
防衛庁 ···· 70件
外務省 ···· 52件
文部省 ···· 1 件
厚生省 ···· 4 件
労働省 ···· 0 件
(2)今回の調査で発見された資料を整理すると次のとおり。(詳細は別紙のとおり。括弧内の件数は重複しているものもある。)
①慰安所の設置に関するもの( 4 件)
②慰安婦の募集に当たる者の取締りに関するもの( 4 件)
③慰安施設の築造・増強に関するもの( 9 件)
④慰安所の経営・監督に関するもの(35件)
⑥慰安所関係者への身分証明書等の発給に関するもの(28件)
(3)今回発見された資料の主な記述を上記分野に沿って整理すると次の通り。
①慰安所の設置については、当時の前線における軍船料地域内の日本軍人による住民に対する強姦等の不法な行為により反日感情が醸成され、治安回復が進まないため、軍人個人の行為を取り締まるとともに、速やかに慰安設備を整える必要があるとの趣旨の通牒の発出があったこと。また、慰安施設は士気の振興、軍紀の維持、犯罪及び性病の予防等に対する影響が大きいため、慰安の諸施設に留意する必要があるとの趣旨の教育指導参考資料の送出が軍内部であったこと。
②慰安婦の募集に当たる者の取締りについては、軍の威信を保持し、社会問題を惹起させないために、慰安婦の募集に当たる者の人選を適切に行うようにとの趣旨の通牒の発出が軍内部でもあったこと。
③慰安施設の築造・増強については、慰安施設の築造、増強のために兵員を差し出すべしとの趣旨の命令の発出があったこと。
④慰安所の経営・監督については、部隊毎の慰安所利用日時の指定、慰安所利用料金、慰安所利用にあたっての注意事項等を規定した「慰安所規定」が作成されていたこと。
⑤慰安所・慰安婦の衛生管理については、「慰安所規定」に慰安所利用の際は避妊具を使用することを提起したり、慰安所で働く従業婦の性病検査を軍医等が定期的に行い、不健康な従業婦においては就業させることを禁じる等の措置があったこと。
⑥慰安所関係者への身分証明書等の発給については、慰安所解説のため渡航する者に対しては軍の証明書により渡航させる必要があるとのする文書の発出があったこと。
⑦その他、業者が内地で準備した女子が船舶で輸送される予定であることを通知する電報の発出があったこと。
(4)以上のように、いわゆる従軍慰安婦問題に政府の関与があったことが認められた。