占領地軍政施行に関する基礎要綱
一、南方占領地域は総て之を版図とし、帝国の世界政策遂行の前進基地たらしむるを理想とす。
二、南方経略の中道に在りては一時、左の如き段階あるを予期す。
１、ビルマの独立
政略的に成るべく独立形態を取らしむるも、内面的に左の制約を設く。
イ、国防上、並に軍事上、帝国指導権の確保
ロ、帝国所要国防費の分担
ハ、帝国民に對する経済資源、交通開発の優先自由の確約。
２、泰国の独立保全
現状の如く、当分、全面的独立を保証し、駐兵を行ふ事なし。
但し経済資源、交通開発、提携に関しては一層密接不可分を確約せしむるも、顧問等を入るることなし。
３、仏領印度支那の処理
当分の間、現状を保持するも、軍事上、実力を把握するに足る駐兵を行ひ、且、経済資源等の開発に関しては最も積極的に提携を強要し、其の実力を把握するに努む。
４、比島、馬来、旧蘭印領
独立又は之を示唆する如き制度は一切之を排撃し、永久版図とす。
三、政治組織及運用
１、占領地に於ける統治は、当分の間、軍政に依るものとす。
〔註〕今後、大東亜戦争間、南域は常に敵の局部的回復攻撃を予想せらるべく、又、異民族統治の為には先づ威力を以て之に臨むを要し、南域の統治は治安、警備、経済に至る迄、総て軍事目的に制約せらるべきものなるを以て、軍事及政治を二元とせる統治は絶対に許容し得ざる処なり。
但し軍政施行の為、広く各種の専門的文官其の他特技者の活用に努め、軍人は最小限の指導統刮轄に任ずるものを置く。
２、軍政の施行は相当長期に亘るを予想す。
〔註〕大東亜戦の長期なるを予想するは勿論、現代政治家の思想は一朝にして脱皮し得べくもあらず、吾人の真に期待する次代青年の育成により、皇謨顕現の理想を抱懐し、之が具現の熱意に燃ゆる者にして始めて施政の長官たり得るものと確信するを以てなり。
３、軍政治下に在りても一部民族の政治参与組織は之を容認す。
〔註〕軍政は単に軍人による専政にあらず、民度、民情に即応し住民の政治参与の組織を設くることあるものとす。特に下部組織にありては、現地に即応せる自治形式を採用するは、軍政実施上、勿論、考慮せらるものとす。
四、統治区画
１、占領地を左の如く区分統治するを理想とす。
比島群島
馬來来、スマトラ、ボルネオ
ジャワ、セレベス、ニユーギニア
〔註〕右区分はハ人口·物資·経済的に各地域概ね独立統治可能なるを一単位とす。
２、現状に於ては取り敢へず左の区画に依る。
比島群島
馬来、スマトラ、西ボルネオ
ジャワ島
〔註〕海軍主担任区域は財政·経済的基礎薄弱なるも、現状に在りては中央に於ける財政収支相殺に依り相補ふものとす。
但しボルネオ通貨は海峡弗に統一するものとす。
昭和十七年 南方軍各方面作戦計画等綴
↑https://www.jacar.archives.go.jp/das/meta/C14060094600
占領地軍政施行ニ關スル基礎要綱
一、南方占領地域ハ總テ之ヲ版圖トシ 帝國ノ卋界政策遂行ノ前進基地タラシムルヲ理想トス
二、南方經略ノ中道ニ在リテハ 一時 左ノ如キ段階アルヲ豫期ス
(１)「ビルマ」ノ獨立
政略的ニ成ルベク獨立形態ヲ取ラシムルモ 内面的ニ左ノ制約ヲ設ク
イ､國防上 並ニ軍事上 帝國指導權ノ確保
ロ､帝國所要国防費ノ分擔
ハ､帝國民ニ對スル經濟資源 交通開發ノ優先自由ノ確約
２. 泰國ノ獨立保全
現狀ノ如ク當[×方×]＜分＞全面的獨立ヲ保證シ 駐兵ヲ[×保×]行フコトナシ
但シ經濟資源 交通開發､提携ニ関シテハ 一層密接不可分ヲ確約セシムルモ 顧問等ヲ入ルヽコトナシ
３ 佛領印度支那ノ處理
當分ノ間 現狀ヲ保持スルモ 軍事上 實
力ヲ把握スルニ足ル駐兵ヲ行ヒ 且 經濟資源等ノ開發ニ關シテハ 最モ積極的ニ提携ヲ強要シ 其ノ實力ヲ把握スルニ努ム
４､比島､馬來､舊蘭印領
獨立＜又ハ之＞ヲ示唆スル如キ制度ハ一切之ヲ排擊シ 永久版圖トス
三 政治組織 及 運用
１､占領地ニ於ケル統治ハ當分ノ間 軍政ニ依ルモノトス
〔註〕今後 大東亜戰爭間 南域ハ常ニ敵ノ局部的回復攻擊ヲ豫想セラルベク 又 異民族統治ノ爲ニハ先ヅ威力ヲ以テ之ニ臨ムヲ要シ 南域ノ統治ハ治安､警備､經濟ニ至ル迠
總テ軍事目的ニ制約セラルベキモノナルヲ以テ 軍事 及 政治ヲ二元トセル統治ハ絶[×体×]對ニ許容シ得ザル處ナリ､
但シ軍政施行ノ爲 廣ク各種ノ專問的文官 其ノ他 特技者ノ活用ニ努メ 軍人ハ最小限ノ指導統刮轄ニ任ズルモノヲ置ク
２ 軍政ノ施行ハ相當長期ニ亘ルヲ豫
想ス
〔註〕大東亜戰ノ長期ナルヲ豫想スルハ勿論 現代政治家ノ思想ハ一朝ニシテ脱皮シ得ベクモアラズ 吾人ノ眞ニ期待スル次代青年ノ育成ニヨリ皇謨顯現ノ理想ヲ抱懷シ 之ガ具現ノ熱意ニ燃ユル者ニシテ始メテ施政ノ長官タリ得ルモノト確信スルヲ
以テナリ
３.軍政治下ニ在リテモ一部民族ノ政治参與組織ハ 之ヲ容認ス
〔註〕軍政ハ單ニ軍人ニヨル專政ニアラズ 民度 民情ニ卽應シ住民ノ政治参與ノ組織ヲ設クルコトアルモノトス 特ニ下部組織ニアリテハ 現地ニ卽應セル自治形
式ヲ採用スルハ 軍政實施上 勿論 考慮セラルヽモノトス
四､統治區劃
１､占領地ヲ左ノ如ク區分統治スルヲ理想トス
比島群島
馬來 「スマトラ」「ボルネオ」
「ジヤワ」「セレベス」「ニユーギニア」
「ビルマ」
〔註〕右區分ハ人口､物資 經濟的ニ各地域 槪ネ獨立統治可能ナルヲ一單位トス
２ 現狀ニ於テハ取リ敢ヘズ左ノ區劃ニ依ル
比島群島
馬來 「スマトラ」 西「ボルネオ」
「ジヤワ」島
「ビルマ」
〔註〕海軍主擔任區域ハ財政經濟的基礎薄弱ナルモ 現狀ニ在リテハ中央ニ於ケル財政収支相殺ニ依リ相補フモノトス
但シ「ボルネオ」通貨ハ海峡弗ニ統一スルモノトス
↑https://www.jacar.archives.go.jp/das/meta/C14060097900 占領地軍政施行に関する基礎要綱 JACAR（アジア歴史資料センター）Ref.C14060097900、南方軍各方面作戦計画等綴 昭和１７年（防衛省防衛研究所 南西-全般-27）
