(日刊)朝日新聞
発行所 朝日新聞東京本社
東京市麹町区有樂町二丁目三番地
昭和二十年七月二十九日(日曜日)
第二万一千三百三十一号(一)面
敵 の 艦 上 千 八 十 機
中 部 · 四 國 · 東 海 へ
飛行場、船舶等を攻擊
廿八日午前六時半󠄁頃より十二時頃までに敵艦上機凡そ四百四十機が中部軍管區に侵󠄁入、松山、米子、八日市、廣島などを行動、また同時頃凡そ百八十機が東海軍管區に侵󠄁入、半󠄁田、名古屋、大井、浜松、淸水、豊橋、明野などに來襲、主としてわが飛行場を狙ひ一部は船舶、漁船などを攻擊した
東海軍管區司令部発表(七月二
十八日十五時三十分)
本二十八日敵艦載機の第一波約󠄁九
十機は六時頃より約󠄁一時間半にわ
たり第二波九十機は十一時より約󠄁
二時間にわたり何れも熊野灘方面
より侵󠄁入し東海地區の飛行場、交
通機関並に一部の生產施設に対し
攻擊を実施せり、被害は極めて軽
微なり
なほ敵機動部隊󠄁は依然本州南方洋
上を遊弋しあるものの如く引續き
警戒を要す(名古屋)
中國軍管區司令部発表(七月二十
八日十二時)
一、敵機動部隊󠄁よりの艦上機第一
波二百六十機は二十八日五時五十
五分紀伊水道および豊後水道を経
て中國地區に侵󠄁入、主として內海
沿岸および島根半󠄁島附近の飛行場
ならびに軍事施設を攻擊ほゞ同一
経路を経て八時五十四分脫去せり
第二波約󠄁三百機は九時二十三分豊
後水道および四國中部を経て侵󠄁入
廣島湾および沿岸附近の軍事施設
を攻擊の後十時十五分脫去せり
二、現在までに判󠄁明せる戰果(陸
軍部隊󠄁による)左の如し
擊墜九機、擊破四機
三、敵の第三次攻擊は目下續行中
なり
◇
敵機動部隊󠄁は二十八日もP51の硫
黃島基地航空󠄁軍に協力して午前󠄁五
時半󠄁すぎから艦上機延約󠄁一〇八〇
機をもつて四次󠄁に亙り四國、中國
近畿、東海の各地區に波狀來襲、
主として我が飛行場、軍需工場、
海上船舶に対し銃爆擊を加へ來つ
た、この日攻擊目標は我が作戰戰
力の直接破碎と一部海上交通の破
壞に指向されたとはいへ攻擊力は
頗る緩慢でむしろ波狀攻擊による
長時間の神経戰的󠄁な点に狙ひがお
かれたことは大いに警戒を要す
る、また午後から開始された第三
波の連襲には沖繩基地のB24P47
P38の戰爆連合約󠄁一三六機が参加
出擊、瀬戶內海方面に行動したこ
ともまた注目を要する處である
(大阪)
英 戰 鬪 機 も 混 る
二十八日中國地區に來襲した敵艦
上機は午前󠄁中のみで五百六十機を
算へたがこの日の敵の波狀攻擊は
極めて執拗で同一地点を執念深く
攻擊し來つた、なほこの日の來襲
機の中に英戰鬪機スピツトフアイ
ヤーが混つていたことは注目すべ
きである(廣島)
呉 で 在 泊 艦 船 を 攻 擊
二十八日午前中呉地方に敵艦上機
二波が來襲した、卽ち第一波は約󠄁
三十機で六時から約󠄁二時間に亙り
行動、偵察を兼󠄁ねて内海方面航空󠄁
基地の一部を攻擊し、次󠄁いで八時
二十分約󠄁二百五十機が來襲、主と
して在泊艦船を攻擊、その一部は
地上をも攻擊し十時退去した、戰
果並びに被害は調査中であるが擊
墜󠄁多数ある見込み、また十二時過
ぎB24二つに分れて呉地區に侵󠄁入
行動の後脫去した(廣島)
P 5 1 二 百 四 十 機 來 襲
千葉、土浦、帝󠄁都等を行動
二十八日午前九時四十五分頃より
正午過ぎまでにP51凡そ二百四十
機がいづれもB29少数機に誘導さ
れ三波に分れ分散來襲した、第一
波は午前󠄁九時四十五分凡そ百機が
勝󠄁浦より侵󠄁入、土浦、千葉などを
行動、第二波は午前十一五十分
頃凡そ百機を以て第一波と同樣
の行動をなし、第三波は十二時頃
約四十機を以て伊豆半󠄁島より侵󠄁入
八王子、立川、帝󠄁都方面に行動銃
擊を加へた
茨城でP 5 1 一機撃墜
二十八日P51の一部は茨城南部の
航空󠄁基地を狙つたが被害はなく、
わが航空󠄁部隊󠄁は十一時半󠄁頃北相馬
郡井野村上空󠄁でP51一機を擊墜󠄁、
醜翼󠄂は利根川南岸に落下した(士
浦)
通行人にも機銃掃󠄁射
二十八日午後十二時三十分頃熊谷
市に來襲したP51数機は爆彈を投
下したほか學校や往來の荷馬車、
通行人にも機銃掃󠄁射を加へた(熊
谷)
橫 濱 で 低 空󠄁 掃󠄁 射
二十八日京浜地區に侵入したP51
の第三波の一部十機内外は午後零
時四十分頃橫浜市内の工場及び民
家に低空󠄁で機銃掃射を行つたが被
害はなかつた(橫浜)
敵小型機農家を銃撃
二十八日午後零時四十分頃八王子
市上空󠄁に飛來した小型機編隊󠄁は市
外農家を銃擊、火災を発したが官
民防火陣は直ちに消󠄁し止めた
(八王子)
宇都宮でも一機擊墜󠄁
二十八日午前󠄁十一時十五分頃茨城
方面から栃木縣下に侵󠄁入したP51
の編隊󠄁は、宇都宮市周辺の軍事施
設及び列車、市街地などに機銃掃󠄁
射を行つたが、飛行場を始め軍事
施設の損害は皆無だつた、わが方
は対空󠄁砲火をもつてその一機を擊
墜󠄁した、尙列車銃擊では若干の死
傷者を出した(宇都宮)
農村も油斷がならぬ
今度の敵機來襲で熊谷市附近の農
家に相當機銃掃󠄁射を浴びせ、市内
の學校その他も鬼のごとき本性を
現した米兵の攻擊を受けてゐる
〝學校だから〟〝農村だから〟との
一切の安易感を投げ捨て、敵機來
襲の際は待避こそ肝要である(熊
谷)
廿八日午後一時小型編隊󠄁の一部は
相模湾に脫去の途中、平󠄁塚市に侵󠄁
入機銃掃󠄁射を加へて遁走、被害は
なかつた(平󠄁塚)
若 狹 灣 に 投 雷
二十七日夜B29七機が関西各地を
旋回行動したが、二十二時五十五
分から二十三時四十四分の間に熊
野灘から侵󠄁入したB29約󠄁十五機は
主力をもつて若狹湾に行動機雷投
下ののち脫去、同廿二時四十分頃
大分附近から北上侵󠄁入して來たB
29十数機は関門周防灘、廣島湾、
岡山南方海上を旋回行動、機雷投
下ののち脫去した(大阪)
朝鮮で船舶攻擊 沖繩
基地を出発せる敵大型十数機は二
十七日零時三十分頃より四時十五
分頃の間逐次󠄁南鮮地區に來襲、主
力約󠄁八機は三時頃釜山南方に侵󠄁入
船舶を攻擊、機雷若干を投下した
模様次󠄁、いでPB4Y二機は方魚
津附近に侵󠄁入、船舶を攻擊した
(京城)
船 舶 等 を 攻 擊
九州へ百四十機
沖繩の敵戰爆連合約󠄁百四十機は二
十七日九州各地へ侵󠄁入主として沿
岸地方の船舶その他工業都市など
に対し銃爆擊した
すなはち二十七日の來襲敵機は
B24約󠄁四十機、中型約󠄁五十機
(うちB25約󠄁四十五機、P38約󠄁
五機)P51五十機で午前󠄁十一時
二十分頃から九編隊󠄁に分れ侵󠄁入
主力は長崎縣平󠄁戶附近、薩摩半󠄁島
北部および熊本、八代両市附近そ
の他一部は福岡、大分、宮崎附近
を旋回行動沿岸の船舶その他を銃
爆擊十二時三十分頃から午後三時
過ぎまでに脫去した(福岡)
荒鷲 機 動 部 隊󠄁 を 攻 撃
十日以來 四百十八機を屠 る
七月十日以來旣に二旬に垂んとし
て本土沿岸に蟠踞し洋上補給によ
つて執拗に長期行動をしてゐる敵
艦隊󠄁は依然わが本土要地に対し反
復來襲しつゝある、敵はわが本土
基地航空󠄁兵力に挑戰せんとしてゐ
るが、わが満を持して放たざる態
勢に焦慮して反復來襲の擧に出て
ゐる、殊に二十四日には敵の基地
航空󠄁兵力と相呼應し大擧來襲、來
るべき次󠄁期作戰に対する前󠄁哨作戰
としての根强さを表してゐる、之
に対し我方は戰鬪機および地上砲
火によつて邀擊してゐるが、大本
營報道部の情󠄁報によれば二十一日
より二十九日までの間に主として
艦上機に対して次󠄁の戰果を擧げた
擊墜󠄁百十五機、擊破二十八機
十日以來の戰果を通算すると
擊墜󠄁二百七十五機、擊破百四十
三機、計四百十八機である
因みにこの期間におけるわが邀擊
は敵艦上機に主として力を注いだ
ためB29に対する戰果は二十一日
から二十五日までの間において擊
墜󠄁三機、擊破五機であつた、この
敵機動部隊󠄁に対しわが航空󠄁部隊󠄁は
二十五日薄暮ならびに夜間に決然
攻擊を決行したが戰果は確認され
てゐない
沖 繩 の 敵 艦 船 猛 攻
荒 鷲 、 三 隻 を 擊 沈 破
わが航空󠄁部隊󠄁は二十七日夜沖繩の
敵飛行場並に本島周辺の敵艦船を
攻撃少くも敵艦船一隻を擊沈二隻
に損害を與へた
プケツト島 英 艦 隊󠄁 を 猛 攻
二艦轟沈 上 陸 の 敵 再 擊 退
【南方前󠄁線基地発同盟】去る廿五
日マライ半󠄁島西岸泰領プケツト島
に上陸を企圖した敵はわが守備隊󠄁
の果敢なる邀撃に遭ひ瞬時にして
水際で擊退されるとともに二十六
日同島南方洋上でわが特攻飛行隊󠄁
の出擊によりその兵力の基幹たる
巡洋艦一隻擊沈、大型艦一隻(航
空󠄁母艦の公算大)擊沈の大損害を
蒙り敗退し去つた、敵今回の擧は
その兵力が大型巡洋艦、護送󠄁空母
駆逐艦、小型輸送󠄁船といふ小規模
なる点から見てわが配置に対する
威力偵察ならびにわが特攻隊󠄁の誘
致が目的と見られてをり、これが
神機を捕捉したわが反擊に敵は何
等なすところなくその企圖を完全
に挫折せしめられたのであつた
敵艦載機は二十四日数回にわた
つてプケツト島上空に飛來偵察
を行つた後、同夜八時頃に至り
護送󠄁空母よりなる敵機動部隊󠄁は
同島南方洋上に現出同夜は附近
海面に碇泊いよ〳〵その企圖を
露呈するに至つた
翌二十五日朝來敢然敵は行動を開
始し午前八時主力を以て南方海面
より同島南端附近を艦砲射擊する
とともに、午前󠄁八時三十分上陸用
舟艇五隻に分乘した約󠄁五百の敵別
働隊󠄁は、同島北方マイカオ附近に
上陸を企圖し來つた、これに対し
わが守備部隊󠄁は一齊に猛反擊を開
始、交戰いくばくもなく同九時敵
を完全󠄁に水際より擊退し去つたも
ので、敵は引續きわが態勢を覗ひ
つゝ同島周辺を遊弋中、越えて二
十六日夜九時頃わが特攻機は折柄
の夕暗をついて出擊、敵主力たる
大型巡洋艦を索めて相次󠄁いで突入
し二機命中轟沈一隻、擊破一隻の
大戰果を擧げた、此日主軸を失つ
た敵は忽ち混乱狀態を呈し潮を利
して印度洋に倉皇として遁走し去
つたのものである
B 2 9 爆 彈 攻 擊 を 混 用
沖 縄 基 地 擴 充 に 敵 躍 起
︹ ◇敵基地航空󠄁部
戰 隊󠄁 敵は沖繩基地の
局 設營 擴充 を 企圖 しあ
展 り、二十五日には欧洲
望 方面から同基地に航空󠄁
︺ 兵力が到着したと宣傳
してゐる、さらに敵は
太平󠄁洋方面海軍部隊󠄁および航空󠄁部
隊󠄁の指揮官の大幅な人事異動を行
ひ短期決戰を焦る色を濃厚にしま
た基地航空󠄁部隊󠄁に機動部隊󠄁の連合
作戰を試み廿四日にはこれらをも
つて延二千機に達する大空󠄁襲の擧
に出てをりこれを以て米英重慶の
共同宣言に先立ち謀略宣傳の具に
供すると共に漸く新たなる作戰に
突入せんとする兆候を濃厚