Ob-La-Di Oblako 文庫

帝国日本の侵掠戦争と植民地支配、人権蹂躙を記憶し、再現を許さないために、ひたすら文書資料を書き取る。姉妹ブログ「歴史を忘れる民族に未来はない!」https://obladioblako.hateblo.jp/ のデータ·ベースを兼ねる。

【工事中】佐藤信淵『宇内混同秘策』より 1823

https://dl.ndl.go.jp/pid/799392/1/327

   混同秘策序

四海を併呑し万国を征服するの大志を抱きたる英雄は千歳其の人なきに非
ざるべし然れども全世界を混同するの大系大法を立て夙に産霊の神教を講
明し造化の無尽蔵を開き人心の誠を竭し禍乱の根源を絶ち皇基を万世に鞏
固にし富国強兵以て海外に事あらんとする其の籌略の雄偉なる天風の雲物
を飛揚するが如く正論堂々秩序の井然たる七星の循環推歩愆らざるが如き
もの万古宇宙間独り佐藤翁の此の書ありて存するのみ嗚呼翁の家学は天地
の経緯に基き四海の困窮を救ひ終に全世界を嚢括するの素志にして実に神
州の大道と云ふべきもの即是なり固より欧亜百般の学術を網羅折衷するに
非るよりは焉ぞ能く説て此に至らんや聞く大久保内務卿は嘗て此の書を一
読し維新の始め江戸の東京と定むべき建言をなせりと云ひ明治十二年中海
江田議官は之を三大臣十参議の面閲に供せりと又在人の云く西郷隆盛をし

 

https://dl.ndl.go.jp/pid/799392/1/328

て夙に此の書を読ましめば蓋し別に顧慮する所ありしならん惜むべき哉と
試みに看よ今日西洋万国皆優勝劣敗の形勢にして其の実は貪婪優奪互に釁
隙を窺ふに外ならず此の有為の世に生れて先づ知らずんば或る可からざる
は実に此の混同大論なりとす而して此の書に関係ある経済大典天刑要録は
逸して未だ之を得ず但し翁の著書中天地鎔造化育論、天柱期、責何録、垂統秘
録、経済提要、経済要録、物価余論簽書、内洋経緯記、薩摩経緯記と、存華挫狄
論、禦侮儲言、西洋列国史略、呑海肇基論、防海策等の如きは悉く皆富国強兵の
籌算にして此の書の羽翼として観るべし世界に時殊なりと雖へども六十年
前予想の卓識全く今日の為めに規画するが如く尚ほ将来に期する所のもの
愈規模の洪大なるを覚ふ経国に志ある者宜く読誦して以て翁の家学の淵源
する所あるを知るべし
  明治二十一年九月
              織田完之識

 

https://dl.ndl.go.jp/pid/799392/1/328

宇内混同秘策

   宇内混同大論
皇大御国は大地の最初に成れる国にして世界万国の根本なり故に能く其根
本を経緯するときは則全世界悉く郡県と為すべく万国の君長皆臣僕と為す
べし謹て神世の古典を稽るに所[セル]知[シラ]青海原潮の八百重ヲ也とは皇祖伊邪那岐
大神の速須佐之男命に事依し賜ふ所なり然れば則世界万国の蒼生を安ずる
は最初より皇国に主たる者の要務たることを知る曾て予が著したる経済大
典及び天刑要録等は悉く産霊の神教を講究したる書にして即ち全世界を安
集するの法なり蓋し世界万国の蒼生を済救するは極て広大の事業なれば先
づ能く万国の地理形勢を明弁し従て天意の自然に妙合するの処置なければ
産霊の法教をも得て施すべからざるなり故に地理学も亦明にせずんばある
べからず今夫万国の地理を詳にして我日本全国の形勢を察するに赤道の北

 

 

佐藤信淵 著 ほか『佐藤信淵家学大要』,碑文協会,明39.11. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/799392 (参照 2024-04-28)