Ob-La-Di Oblako 文庫

帝国日本の侵掠戦争と植民地支配、人権蹂躙を記憶し、再現を許さないために、ひたすら文書資料を書き取る。姉妹ブログ「歴史を忘れる民族に未来はない!」https://obladioblako.hateblo.jp/ のデータ·ベースを兼ねる。

「在上海特務機関が吾々業者に依頼する処となり、同僚、神戸市湊東区福原町、目下上海在住貸座敷業、中野光蔵を通して約三千名の酌婦を募集して送ることとなつたので、既に本問題は昨年十二月中旬より実行に移り、目下二、三百名は稼業中であり、兵庫県や関西方面では県当局も了解し応援してゐる。」 群馬県知事発、内務大臣·陸軍大臣宛申報 1938. 1. 19


http://school.nijl.ac.jp/kindai/OSON/OSON-00072.html#10
   【警保局/13. 1. 25. 火/警 581号】
保第 242 号
 昭和十三年一月十九日 群馬県知事
            (警察部長)
   内務大臣殿 
   陸軍大臣殿
    北海道庁長官殿
    警視総監殿
    各庁府県長官殿
    高崎連隊区司令官殿
    高崎憲兵分隊長殿
     (県下各警察署長殿)

  上海派遣軍内陸軍慰安所における
  酌婦募集に関する件

   神戸市湊東区福原町 213
        貸座敷業 大内藤七

 右の者、肩書き地において娼妓数十名を抱え貸座敷営業を為し居る由なるが、今回支那事変に出征したる将兵慰安として、在上海陸軍特務機関の依頼なりと称し、上海派遣軍内陸軍慰安所に於て酌婦稼業(醜業)をなす酌婦三千人を必要なりと称し、本年一月五日、これが募集のため、

  管下前橋市連雀町 17
   芸娼妓酌婦等紹介業 反町忠太郎

方を訪れ、その後しばしば来橋、別記一件書類 (契約書〔一号〕、承諾書〔二号〕、借用証書〔三号〕、契約条件〔四号〕) を示し、酌婦募集かたを依頼したる事実あるも、本件は果して軍の依頼あるや否や不明、かつ公序良俗に反するがごとき事案を公々然と吹聴するがごときは、皇軍の威信を失墜するも甚しきものと認め、厳重取り締まりかた所轄前橋警察署長に対し指揮いたし置き候ふ条、この段、申報 (通報) に及び候ふなり。
 なほ大内藤七の言動、左記の通りにつき申し添へ候ふ。

追って兵庫 (貴) 県においては相当取締りの上、結果何分の御通報相煩はしたし。
  (県下各警察署長に在りては厳重取締りせらるべし。)

        記

 日支事変による出征将兵もすでに在支数ヶ月に及び、戦も酣はなところは終つたため、一時駐屯の体勢となつたため、将兵支那醜業婦と遊ぶため、病気に掛る者が非常に多く、軍医務局では戦争より寧ろこの花柳病の方が恐ろしいといふ様な状況で、そこにこの施設問題が起つたもので、在上海特務機関がわれわれ業者に依頼するところとなり、同僚

  神戸市湊東区福原町
   目下上海在住貸座敷業 中野光蔵

を通して約三千名の酌婦を募集して送ることとなつたので、すでに本問題は昨年十二月中旬より実行に移り、目下二、三百名は稼業中であり、兵庫県や関西方面では県当局も了解し応援してゐる。営業はわれわれ業者が出張してやるので、軍が直接やるのではないが、最初に別紙壱花券 (兵士用二円、将校用五円) を軍隊に営業者側から納めて置き、これを軍で各兵士に配布。これを使用した場合、われわれ業者に各将兵が渡すこととし、これを取りまとめて軍経理部からその使用料金を受け取る仕組みとなつてゐて、直接将兵より現金を取るのではない。軍は軍としての慰安費様のものからその費用を支出するものらしい。
 何れにしても本月二十六日には第二回の酌婦を軍用船で (神戸発) 送る心算で目下募集中である。云々。

〔一号〕 契 約 証
一、稼業年限
一、契約金
一、上海派遣軍内陸軍慰安所において酌婦稼業を為すこと。
一、賞与金は揚高の一割とす (ただし半額を貯金すること)。
一、食費、衣裳及び消耗品は抱主の負担とす。
一、年限途中において解約の場合には、元金残額、違約金および抱入れ当時の諸費用一切を即時支払ひ申すべきこと。
 右契約条項、確守履行つかまつるべく、よつて契約証書くだんのごとし。
    昭和 年 月 日
  本籍地
  現住所
        稼業人
  現住所
        連帯人
       殿

〔二号〕 承 諾 書
    本 籍
    住 所
      稼 業 人
           年 月 日生
 右の者、前線における貴殿指定の陸軍慰安所において酌婦稼業 (娼妓同様) をなすことを承諾つかまつり候ふなり。
  昭和 年 月 日
   右戸主または親権者
   稼   業   人

〔3号〕 金 員 借 用 証 書

一、金

 右の金員、拙者要用につき請取借用つかまつり候ふこと実正なり。しかる上は返済方法は別紙契約書に基き     酌婦稼業をなしし御返済申すべく、万一本人において契約不履行の節は、拙者ら連帯者におて速やかに御返金つかまつるべく、後日のため借用証書、よつてくだんのごとし。
  昭和 年 月 日
   本籍地
   現住所
         借用主
   現住所 
         連帯者
       殿

〔4号〕
拝啓、年内余日もこれ無く[さぞ]御繁忙の事と存じ奉り候ふ。のぶれば今回、軍部の御了解のもとに、中支方面に皇軍将士慰安を目的とする慰安所設立いたすことと相成り、左の条件をもつて約五百名の酌婦を募集いたし候ふにつき、何とぞ大至急御手配煩はしたく、御報知次第、直ちに出張つかまつるべく候ふ間、御一報下されたく願いたてまつり候ふ。
    昭和十二年十二月二十八日
          大 内 藤 七
        殿

      条  件
一、契約年限 満二ヶ年
一、前借金  五百円より千円まで
 ただし右前借金の内二割を控除し、身付金および乗込費に充当す。
一、年 齢  満十六歳より三十歳まで
一、身体壮健にして親権者の承諾を要す。ただし養女籍にある者は実家の承諾なきも差支へなし。
一、前借金返済方法は年限完了と同時に消滅す。
 すなはち年期中、仮令病気休業するとも、年期満了と同時、前借金は完済す。
一、利息は年期中なし。途中廃業の場合は残金に対し月一歩。
一、違約金は一ヶ年内、前借金額の一割。
一、年期途中廃業の場合は日割計算とす。
一、年期満了帰国の際は帰還旅費は抱主負担とす。
一、精算は稼ぎ高の一割を本人所得とし、毎月支給す。
一、年期無事満了の場合は本人稼ぎ高に応じ応分の慰労金を支給す。
一、衣類、寝具、食料、入浴料、医薬費は抱え主負担とす。

イ 営業者控
イ 元締控
派遣軍慰安所
イ 花 券
イ 派遣軍慰安所
   壱 花 券
     金 五 円
    本券一枚御一名限り
              
ロ 営業者控
ロ 元締控
派遣軍慰安所
ロ 花 券
ロ 派遣軍慰安所
   壱 花 券
     金 五 円
    本券一枚御一名限り


   【警保局/13. 1. 25. 火/警 581号】
保第二四二號
 昭和十三年一月十九日 群馬縣知事
            (警察部長)
   内務大臣殿 
   陸軍大臣殿
    北海道廳長官殿
    警視總監殿
    各廳府県長官殿
    高崎聯隊區司令官殿
    高崎憲兵分隊長殿
    (縣下各警察署長殿)

  上海派遣軍内陸軍慰安所ニ於ケル
  酌婦募集ニ関スル件

    神戸市湊東區福原町二一三
        貸座敷業 大内藤七

右者肩書地ニ於テ娼妓数十名ヲ抱エ貸座敷營業ヲ爲シ居ル由ナルカ今囘支那事變ニ出征シタル將兵慰安トシテ在上海陸軍特務機關ノ依頼ナリト稱シ上海派遣軍内陸軍慰安所二於テ


酌婦稼業(醜業)ヲ爲ス酌婦三千人ヲ必要ナリト稱シ本年一月五日之カ募集ノ爲

 管下前橋市連雀町一七
  藝娼妓酌婦等紹介業 反町忠太郎

方ヲ訪レ其ノ後屢々來橋別記一件書類(契約書〔一號〕、承諾書〔二號〕、借用證書〔三號〕、契約條件〔四號〕)ヲ示シ酌婦募集方ヲ依頼シタル事實アルモ本件ハ果シテ軍ノ依頼アルヤ否ヤ不明且公序良俗ニ反スルガ如キ事案ヲ公々然ト吹聴スルガ如キハ皇軍ノ威信ヲ失墜スルモ甚シキモノト認メ嚴重取締方所轄前橋警察署長ニ對シ指揮致置候條此段及申報(通報)候也
尚大内藤七ノ言動左記ノ通ニ付申添候
 追而兵庫(貴)県ニ於テハ相當取締ノ上結果何分ノ御通報相煩ハシ度
 (県下各警察署長ニ在リテハ嚴重取締セラルヘシ)

        記

日支事變ニ依ル出征將兵モ旣ニ在支數ヶ月ニ及ヒ戰モ酣ハナ處ハ終ツタ爲一時駐屯ノ体勢トナツタ爲將兵カ支那醜業婦ト遊フ爲病氣ニ掛ル者カ非常ニ多ク軍醫務局テハ戰爭ヨリ寧ロ此ノ花柳病ノ方カ恐ロシイトイフ樣ナ狀况テ其處ニ此ノ施設問題カ起ツタモノテ在上海特務機關カ吾々業者ニ依頼スル處トナリ同僚


 神戸市湊東區福原町
  目下上海在住貸座敷業 中野光藏

ヲ通シテ約三千名ノ酌婦ヲ募集シテ送ルコトトナツタノテ旣ニ本問題ハ昨年十二月中旬ヨリ実行ニ移リ目下二、三百名ハ稼業中テアリ兵庫縣ヤ關西方面テハ縣當局モ諒解シ応援シテヰル、営業ハ吾々業者カ出張シテヤルノテ軍カ直接ヤルノテハナイカ最初ニ別紙壹花券(兵士用二圓將校用五圓)ヲ軍隊ニ營業者側カラ納メテ置キ之レヲ軍テ各兵士ニ配布之ヲ使用シタ場合吾々業者ニ各將兵カ渡スコトヽシ之レヲ取纏メテ軍経理部カラ其ノ使用料金ヲ受取ル仕組トナツテヰテ直接將兵ヨリ現金ヲ取ルノテハナイ。軍ハ軍トシテノ慰安費樣ノモノカラ其ノ費用ヲ支出スルモノラシイ
何レニシテモ本月廿日ニハ第二回ノ酌婦ヲ軍用船テ(神戸發)送ル心算テ目下募集中テアル 云々


〔一號〕 契 約 證
一、稼業年限
一、契約金
一、上海派遣軍内陸軍慰安所ニ於テ酌婦稼業ヲ爲スコト
一、賞與金ハ揚高ノ一割トス(但シ半額ヲ貯金スルコト)
一、食費衣裳及消耗品ハ抱主ノ負担トス
一、年限途中ニ於テ解約ノ場合ニハ元金残額違約金及抱入當時ノ諸費用一切ヲ即時支拂ヒ申スヘキコト
 右契約条項確守履行仕ルヘク依而契約証書如件
    昭和 年 月 日


  本籍地
  現住所
        稼業人
  現住所
        連帶人
         殿


〔2号〕 承 諾 書
      本 籍
      住 所
       稼 業 人
            年 月 日生
右ノ者前線ニ於ケル貴殿指定ノ陸軍慰安所ニ於テ酌婦稼業(娼妓同樣)ヲ爲ス事ヲ承諾仕候也
  昭和 年 月 日
   右戸主又ハ親權者
   稼 業 人


〔3号〕 金 員 借 用 證 書
一、金

右之金員拙者要用ニ付キ請取借用仕候事實正也然ル上ハ返濟方法ハ別紙契約書ニ基キ        酌婦稼業ヲ爲シ御返濟申ス可ク萬一本人ニ於テ契約不履行ノ節ハ拙者等連帶者ニ於テ速カニ御返金仕ル可ク爲後日借用證書依而如件
  昭和 年 月 日
   本籍地
   現住所


       借用主
   現住所 
       連帶者
        殿


〔4号〕
拝啓年内餘日も無之嘸御繁忙の事と奉存候陳者今回軍部の御了解の元に中支方面に皇軍將士慰安を目的とする慰安所設立致す事と相成り左之條件を以て約五百名の酌婦を募集致候に付何卒大至急御手配煩し度御報知次第直ちに出張可仕候間御一報被下度奉願候
  昭和十二年十二月二十八日
          大 内 藤 七
        殿

      條 件
一、契約年限 滿二ヶ年
一、前借金  五百円ヨリ千円迄
   但シ右前借金ノ内二割ヲ控除シ身付金及乘込費ニ充當ス


一、年 齢  滿十六歳ヨリ三十歳迄
一、身体壯健ニシテ親權者ノ承諾ヲ要ス但シ養女籍ニ在ル者ハ實家ノ承諾ナキモ差支ナシ
一、前借金返濟方法ハ年限完了ト同時ニ消滅ス
即チ年期中假令病氣休業スルトモ年期滿了ト同時前借金ハ完濟ス
一、利息ハ年期中ナシ途中廢業ノ場合ハ残金ニ對シ月壹歩
一、違約金ハ一ヶ年内前借金額ノ一割
一、年期途中廢業ノ場合ハ日割計算トス
一、年期滿了歸國ノ際ハ歸還旅費ハ抱主負擔トス
一、精算ハ稼高ノ一割ヲ本人所得トシ毎月支給ス
一、年期無事滿了ノ場合ハ本人稼高ニ應シ應分ノ慰勞金ヲ支給ス
一、衣類、寝具食料入浴料醫藥費ハ抱主負擔トス


イ 營業者控
イ 元締控
派遣軍慰安所
イ 花 券
イ 派遣軍慰安所
   壹 花 券
     金 五 圓
    本券一枚御一名限
              
ロ 營業者控
ロ 元締控
派遣軍慰安所
ロ 花 券
ロ 派遣軍慰安所
   壹 花 券
     金 五 圓
    本券一枚御一名限

↑件名:支那渡航婦女の取扱に関する件(庁府県)
https://www.jacar.archives.go.jp/das/meta/A05032040800 p.10-p.16
JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.A05032040800、支那渡航婦女の取扱に関する件(庁府県)(国立公文書館