平家物語第十一
九郎大夫能判官ゐんさん能事
元暦二年正月十日.九郎大夫乃判官義經
ゐん能御志よ耳満い利て.大蔵卿.屋寸
つ年乃あそんをもて.申佐連介るハ.平家ハ
しゆくうん津きて.神明尓もは奈多れ奉利.
君尓もすてら礼満いらせて.都乃外にいて.
なミのうへ尓た〻よふ.扵ち人とな連利.
志加るを此両三可年可間.えせめおとさ
寸して.扵保く能國/\をふさけぬる事.
平家物語第十一
九郎大夫の判官ゐんさんの事
元暦二年正月十日.九郎大夫の判官義經
ゐんの御しよにまいりて.大蔵卿.やす
つねのあそんをもて.申されけるは.平家は
しゆくうんつきて.神明にもはなたれ奉り.
君にもすてられまいらせて.都の外にいて.
なみのうへにた〻よふ.おち人となれり.
しかるを此両三か年か間.えせめおとさ
すして.おほくの国/\をふさけぬる事.
くち扵し具存候.今度よしつ年尓をいてハ.
きかい.加うらい.てんちく.志ん多ん.まても.
平家乃あらん可き利ハ.せむ遍支よしをそ
申さ礼ける.其後院の御前をいて.國/\乃
さふらひ共尓む可ひて能給けるハ.義經ハ.
可まくらとのヽ御代官として.ちよくせん
をうけ多満ハ利.平家徒い多う乃多め耳.
両 [→西] 国へ満可利む可ふ.さ礼者具可ハこまの
ひ川めのをよハん程.舟ハろ可い多多ん
可き利ハせめん春るな利.古ハむ屋く乃
くちおしく存候.今度よしつねにをいては.
きかい.かうらい.てんちく.しんたん.まても.
平家のあらんかきりは.せむへきよしをそ
申されける.其後院の御前をいて.國/\の
さふらひ共にむかひての給けるは.義經は.
かまくらとのヽ御代官として.ちよくせん
をうけたまはり.平家ついたうのために.
両 [→西] 国へまかりむかふ.されはくかはこまの
ひつめのをよはん程.舟はろかいたたん
かきりはせめんするなり.これはむやくの
命そ扵しき.さい志そ可な志起と扵もひ
あハんする人ハ.是よ利皆可ま久らへ.く多
らるへしとそ乃給介る.八嶋尓.ひ満ゆく
こまのあしはや具して.正月毛たち.二月尓も
なりぬ.春能くさく礼てハ.秋能風扵とろき.
秋の風屋んてハ.又春の草とな礼里.をく利
む可川て.三とせ尓もはやくな利に介利
志よしやく王ん遍いの事
扵奈しき十三日.都耳ハ.伊勢. 岩清水.を
はしめ奉りて.廿二社耳く王ん遍いあ利.
命そおしき.さいしそかなしきとおもひ
あはんする人は.是より皆かまくらへ.くた
らるへしとその給ける.八嶋に.ひまゆく
こまのあしはやくして.正月もたち.二月にも
なりぬ.春のくさくれては.秋の風おとろき.
秋の風やんては.又春の草となれり.をくり
むかつて.三とせにもはやくなりにけり
しよしやくわんへいの事
おなしき十三日.都には.伊勢. 岩清水.を
はしめ奉りて.廿二社にくわんへいあり.
↑『平家物語 12巻』[11],[慶長年間]. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2543852 (参照 2024-06-03)
平家物語巻第十一
九郎大夫判官ゐんさん乃事
元暦二年正月十日九郎たいふ判官よしつ年
ゐんの御しよ耳叅りて大蔵卿や春つ年のあ
曽んをもて申さ連ける盤遍いけ盤志ゆくう
むつ幾て神明尓も者那た連奉里君尓もすてら
連叅ら卋て都乃外耳い天なミのうへ尓たヽ
よ婦扵ち人となれ里志可るを此両三可年可
間盤せめ於とさ春して扵本く乃國〻を婦さけ
ぬることくち扵し具そむし候今度よしつ年
尓をいて者幾可い可うらいてんちく志んたん
平家物語巻第十一
九郎大夫判官ゐんさんの事
元暦二年正月十日九郎たいふ判官よしつね
ゐんの御しよに叅りて大蔵卿やすつねのあ
そんをもて申されけるはへいけはしゆくう
むつきて神明にもなはたれ奉り君にもすてら
れ叅らせて都の外にいてなみのうへにたヽ
よふおち人となれりしかるを此両三か年か
間はせめおとさすしておほくの國〻をふさけ
ぬることくちおしくそむし候今度よしつね
にをいてはきかいかうらいてんちくしんたん
↑學院大學図書館 デジタルライブラリー
平家物語 巻十一 十二巻平仮名古活字版 中院本
https://opac.kokugakuin.ac.jp/digital/diglib/heike902-11/mag1/pages/page001.html