Ob-La-Di Oblako 文庫

帝国日本の侵掠戦争と植民地支配、人権蹂躙を記憶し、再現を許さないために、ひたすら文書資料を書き取る。姉妹ブログ「歴史を忘れる民族に未来はない!」https://obladioblako.hateblo.jp/ のデータ·ベースを兼ねる。

「茲に於て十一月十五日夜、軍司令官臨席の下に幕僚会議を行ひ、全力を以て独断、南京追撃を敢行するに決す。」 南京追撃 第10軍司令部決定 1937.11.15

南京追擊

一、中支那方面軍は崑山付近の地区に於て敵軍主力の捕捉殲滅を企図せしも、其の結果は撃退戰に終り、其の一部を捕捉殲滅し得たるに過ぎず。然れども本会戦と第十軍の嘉興方面への進出とにより、敵軍主力は総退却に陥り、其の指揮組織、根本的に混乱を来しあるの徴、歴然たり。故に此の躍動せり一大戦機を逸することなく、万難を排し猛烈果敢なる追撃を断行せば、敵軍主力を捕捉殲滅することは最早困難なるべきも、尚、徹底的打撃を与へて之を潰乱せしめ、南京要塞に於て組織ある抵抗を行ひ得ざらしめ、以て迅速容易に南京を攻略し得べし。
 敵国首都、南京の占領が敵に与ふる政戦両略上の打撃に就ては喋々を要せざるべく、又、南京攻略により初めて中支那方面の作戦は一段落を告ぐるものと謂ひ得べし。
 此の際、目標を近く常州等に選定し、或は十分なる準備を整へたる後、南京攻略を行はんとするが如きは、敵に戦力回復の余裕を与ふるものにして、断じて採らざる処なりとす。

二、今や大勢は南京攻略を中止し得べき情況に非ず。又、第六感的に南京は追撃により容易に奪取し得べしとの信念あり。

三、茲に於て十一月十五日夜、軍司令官臨席の下に幕僚会議を行ひ、全力を以て独断、南京追撃を敢行するに決す。

四、南京追撃の主眼点は、敵の政戦両略上の重要首都を占領するに在りて、本追撃により敵軍主力を捕捉繊滅せんとするものにあらず。軍に於ては最初、第二期作戦目標を常州に変更するの案が不成立に終り、其の後、湖東会戦に於て敵主力を逸したる際に於て、最早、中支那方面に於て敵の主力を捕捉繊滅するの機会は逸し去りたるものと判断せり。

五、追撃により南京を占領し得べき期日は、諸種研究の結果、軍作戦課に於ては、十二月五日には充分占領し得べしと判断せり。

六、軍に於ては右決心をなせしは勿論、此の躍動せる戦機を把握せば軍独力を以て南京を占領し得べき確信を有するものにして、上海派遣軍が仮令、急速追擊を困難とする状態に於ても、何等之に拘束せらるることなく、独断、追撃を敢行せんとするものとす。

 


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南京追擊

一、中支那方面軍ハ崑山附近ノ地區ニ於テ敵軍主力ノ捕捉殲滅ヲ企圖セシモ 其結果ハ擊退戰ニ終リ 其一部ヲ捕捉殲滅シ得タルニ過キス 然レトモ本會戰ト第十軍ノ嘉興方面ヘノ進出トニヨリ敵軍主力ハ總退却ニ陷リ 其指揮組織 根本的ニ混乱ヲ来シアルノ徴 歴然タリ、故ニ此ノ躍動セル一大戰機ヲ逸スルコトナク 萬難ヲ排シ猛烈果敢ナル追擊ヲ断行セハ 敵軍主力ヲ捕捉殲滅スルコトハ最早 困難ナルヘキモ 尚 徹底的打擊ヲ與ヘテ之ヲ潰乱セシメ 南京要塞ニ於テ組織アル抵抗ヲ行ヒ得サラシメ 以テ迅速容易ニ南京ヲ攻略シ得ヘシ
敵國首都 南京ノ占領カ敵ニ與フル政戰兩略上ノ打擊ニ就テハ喋々ヲ要セザルヘク 又 南京攻略ニヨリ初メテ中支那方面ノ作戰ハ一段落ヲ告クルモノト謂ヒ得ヘシ
此際 目標ヲ近ク常州等ニ選定シ 或ハ十分ナル準備ヲ整ヘタル後 南京攻略ヲ行ハントスルカ如キハ 敵ニ戰力回復ノ餘裕ヲ與フルモノニシテ 断シテ採ラサル處ナリトス

二、今ヤ大勢ハ南京攻略ヲ中止シ得ヘキ情况ニ非ス 又 第六感的ニ南京ハ追擊ニヨリ容易ニ奪取シ得ヘシトノ信念アリ

三、茲ニ於テ十一月十五日夜 軍司令官臨席ノ下ニ幕僚會議ヲ行ヒ 全力ヲ以テ独断 南京追擊ヲ敢行スルニ決ス、

四、南京追擊ノ主眼点ハ敵ノ政戰両略上ノ重要首都ヲ占領スルニ在リテ 本追擊ニヨリ敵軍主力ヲ捕捉繊滅セントスルモノニアラス、軍ニ於テハ最初 第二期作戰目標ヲ常州ニ変更スルノ案カ不成立ニ終リ 其後 湖東會戰ニ於テ敵主力ヲ逸シタル際ニ於テ最早 中支那方面ニ於テ敵ノ主力ヲ捕捉繊滅スルノ機會ハ逸シ去リタルモノト判断セリ

五、追擊ニヨリ南京ヲ占領シ得ヘキ期日ハ 諸種研究ノ結果 軍作戰課ニ於テハ十二月五日ニハ充分占領シ得ヘシト判断セリ

六、軍ニ於テハ右決心ヲナセシハ勿論 此躍動セル戰機ヲ把握セハ軍独力ヲ以テ南京ヲ占領シ得ヘキ確信ヲ有スルモノニシテ 上海派遣軍カ仮令 急速追擊ヲ困難トスル狀態ニ於テモ何等 之ニ拘束セラルヽコトナク 独断 追擊ヲ敢行セントスルモノトス

 

↑第10軍作戦指導に関する参考資料 其2(4)
https://www.jacar.archives.go.jp/das/image/C11111742800 p.5-p.8