内国新聞記者従軍心得 ◯明治27年8月30日
内国新聞記者にして従軍を許可せられたる者は堅く左の諸件を遵守すべし。もしこれに違背するときは相当の処分をなすことあるべし。
1.出征軍高等司令部は1~2の将校をもつて従軍新聞記者を監視せしむ。故に記者は万事この将校の指示に従ふべし。
2.この将校は新聞記者の至り得る場所および時刻を指示す。記者は猥りにこの指示以外の地点に赴くべからず。
3.許可せられたる場所に至る時といへども軍隊の妨害を為さざることに注意すべし。
4.渡航せし時はその地所在の最高等司令部に届け出で、その指示に従ふべし。その居所を転ずる時もまた然り。
5.新聞記者は常に従軍免許証を携へ、軍人よりその一閲を求むるときは直ちにこれに応ずべし。時として各自の写真を呈せしむることあるべし。
6.免許証を紛失したるときは速やかに出征軍最高等司令部に届け出で、その区処を受くべし。時としてこの紛失者の従事を禁ずることあるべし。
7.出征軍高等司令部において有害と認むるときは、帰朝を命ずることあるべし。
8.前2項の場合においては直ちに命に従ひ帰朝すべし。
9.新聞記者の発送せんとする信書は、必ず監視将校の指示する時刻においてこれを該将校に呈し、査閲を受くべし。
10..通信文を記するには左の諸件に最も注意すべし。
勉めて忠勇義烈の事実を録し、敵愾の気を奨励すべし。
およそ軍隊の運動を記するは必ず過去に限る。決して未来に渉るべからず。その社主あるいはこれを臆測し得るも、決して新聞紙に記載すべからず。
我軍の兵力もしくは隊号を明記するを慎み、もつてこれに因り我兵力もしくは軍隊区分の敵軍に漏洩するを戒むべし。
内國新聞記者従軍心得 ○明治廿七年八月三十日
内國新聞記者ニシテ從軍ヲ許可セラレタル者ハ堅ク左ノ諸件ヲ遵守スヘシ 若シ之ニ違背スルトキハ相當ノ處分ヲナスコトアルヘシ
一、出征軍髙等司令部ハ一二ノ將校ヲ以テ従軍新聞記者ヲ監視セシム 故ニ記者ハ萬事此將校ノ指示ニ従フヘシ
二、此將校ハ新聞記者ノ至リ得ル場所 及 時刻ヲ指示ス 記者ハ猥ニ此指示以外ノ地点ニ赴クヘカラス
三、許可セラレタル場所ニ至ル時ト雖トモ軍隊ノ妨害ヲ為サヽルコトニ注意スヘシ
四、渡航セシ時ハ其地所在ノ最髙等司令部ニ届出、其指示ニ従フヘシ 其居所ヲ転スル時モ亦然リ
五、新聞記者ハ常ニ従軍免許證ヲ携ヘ 軍人ヨリ其一閲ヲ求ムルトキハ直チニ之ニ応スヘシ
時トシテ各自ノ冩眞ヲ呈セシムルコトアルヘシ
六 免許證ヲ紛失シタルトシハ速に出征軍最髙等司令部ニ届出テ其區處ヲ受クヘシ 時トシテ此紛失者ノ從軍ヲ禁スルコトアルヘシ
七 出征軍髙等司令部ニ於テ有害ト認ムルトキハ 帰朝ヲ命スルコトアルヘシ
八 前二項ノ場合ニ於テハ直ニ命ニ従ヒ帰朝スヘシ
九 新聞記者ノ發送セントスル信書ハ必ス監視将校ノ指示スル時刻ニ於テ之ヲ該将校ニ呈シ査閲ヲ受クヘシ
十、通信文ヲ記スルニハ左ノ諸件ニ最モ注意スヘシ
勉メテ忠勇義烈ノ事実ヲ錄シ敵愾ノ氣ヲ奨勵励スヘシ
凡ソ軍隊ノ運動ヲ記スルハ必ス過去ニ限ル 決シテ未来ニ渉ルヘカラス 其社主 或ハ之ヲ臆測シ得ルモ決シテ新聞紙ニ記載スヘカラス
我軍ノ兵力 若クハ隊号ヲ明記スルヲ愼ミ 以テ之ニ因リ我兵力 若クハ軍隊區分ノ
敵軍ニ漏洩スルヲ戒ムヘシ
⬆陸軍省大日記>日清戦役>日清戦役>雑>明治27年6月より 「緊要事項集」
外国武官従軍心得、内外新聞記者従軍心得及新聞材料公示手続の件 https://www.jacar.archives.go.jp/das/image/C06060167900