Ob-La-Di Oblako 文庫

帝国日本の侵掠戦争と植民地支配、人権蹂躙を記憶し、再現を許さないために、ひたすら文書資料を書き取る。姉妹ブログ「歴史を忘れる民族に未来はない!」https://obladioblako.hateblo.jp/ のデータ·ベースを兼ねる。

外国新聞記者従軍心得 1894.9.14

甲号

   外国新聞記者従軍心得 ○9月14日 朝密第56号

外国新聞記者にして従軍を許可せられたる者は堅く左の諸件を遵守すべし。

1.出征軍高等司令部は1~2の将校をもつて従軍新聞記者を監視せしむ。故に記者は万事この将校の指示に従ふべし。

2.この将校は新聞記者の至り得る場所および時刻を指示す。記者は猥りにこの指示以外の地点に赴くべからず。

3.許可せられたる場所に至るときといへども、軍隊の妨害をなさざることに注意すべし。

4.渡航せしときはその地所在の最高等司令部に届け出で、その指揮に従ふべし。その居所を転ずる時もまたしかり。

5.新聞記者は常に従軍免許証を携へ、軍人よりその一閲を求むるときは直ちにこれに応ずべし。

 ときとして時各自の写真を呈せしむることあるべし。故に若干枚を用意すべし。

6.免許証を紛失したるときは速やかに出征軍最高等司令部に届け出で、その区処を受くべし。ときとしてこの紛失者の従軍を禁ずることあるべし。

7.出征軍高等司令部において有害と認むるときは従軍を拒絶することあるべし。

8.前2項の場合においては外務省を経て本国公使もしくは領事に通報すべし。

9.新聞記者の発送せんとする信書は、必ず監視将校の指示する時刻においてこれを該将校に呈し、査閲を受くべし。

10.通信文を記するには左の諸件に最も注意すべし。

 およそ軍隊の運動を記するは必ず過去に限る。決して未来に渉るべからず。

 通信文には必ず発信の場所および日時を掲ぐべからず。

 我が軍の兵力もしくは隊号を明記するを慎み、もつてこれにより我が兵力もしくは軍隊区分の漏洩するを戒むべし。

 

乙号

1.内地旅行券を得て大本営(広島)に至るべし。 (於東京の手続き)

2.大本営への送り状は与ふべし。

3.東京出発、広島着の時日を陸軍省に届け出づべし。

4.通弁を要するものは自身に雇入れ、その族籍、住所番地、年齢等を詳記せる書面を添へ、主人より陸軍省へ願ひ出で、その許可を受くべし。ただし本人をして管轄地方庁の許可を受けさしむべし。

5.通弁人なきときは謝絶することあるべし。

6.新聞記者従軍の心得を遵守すべし。

7.遵守するの証として證花押または記名せしむ。

 

参照 11月10日付をもつて大本営陸軍部副官大生少佐より通報ありて、爾後は外国新聞記者はあらかじめ大本営の都合を問ひ合はせ、しかる後、許否の回答をなすこととなる。これ漸次□人員増加し、従つて出征軍に煩累を増すによる。

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甲號

   外國新聞記者従軍心得 ○九月十四日 朝密第五六號

外國新聞記者ニシテ從軍ヲ許可セラレタル者ハ堅ク左ノ諸件ヲ遵守スヘシ

一、出征軍髙等司令部ハ一二ノ将校ヲ以テ従軍新聞記者ヲ監視セシム 故ニ記者ハ萬事 此将校ノ指示ニ従フヘシ

二、此将校ハ新聞記者ノ至リ得ル塲所 及 時刻ヲ指示ス 記者ハ猥リニ此指示以外ノ地點ニ赴クヘカラス

三、許可セラレタル場所ニ至ル時ト雖トモ軍隊ノ妨害ヲ為サヽルコトニ注意スヘシ

四、渡航セシトキハ其地所在ノ最髙等司令部ニ届出 其指揮ニ従フヘシ 其居所ヲ轉スル時モ亦然リ

五、新聞記者ハ常ニ従軍免許證ヲ携ヘ 軍人ヨリ其一閲ヲ求ムルトキハ直ニ之ニ應スヘシ
時トシテ各自ノ冩眞ヲ呈セシムルコトアルヘシ 故ニ若干枚ヲ用意スヘシ

六、免許證ヲ紛失シタルトキハ速ニ出征軍最髙等司令部ニ届出テ其區處ヲ受クヘシ 時

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トシテ此紛失者ノ従軍ヲ禁スルコトアルヘシ

七、出征軍髙等司令部ニ於テ有害ト認ムルトキハ従軍ヲ拒絶スルコトアルヘシ

八、前二項ノ場合ニ於テハ外務省ヲ經テ本國公使 若クハ領事ニ通報スヘシ

九、新聞記者ノ發送セントスル信書ハ必ス監視将校ノ指示スル時刻ニ於テ之ヲ該將校ニ呈シ査閲ヲ受クヘシ

十、通信文ヲ記スルニハ左ノ諸件ニ最モ注意スヘシ

凡ソ軍隊ノ運動ヲ記スルハ必ス過去ニ限ル 決シテ未来ニ渉ルヘカナス

通信文ニハ必ス発信ノ場所 及 日時ヲ掲ク可カラス

我軍ノ兵力 若クハ隊號ヲ明記スルヲ愼ミ 以テ之ニ因リ我兵力 若クハ軍隊區分ノ漏洩スルヲ戒ムヘシ

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乙號

一 内地旅行券ヲ得テ大本營(廣島)ニ至ルヘシ (於東京ノ手續)

二 大本營ヘノ送状ハ與フヘシ

三 東京出發 廣島着ノ時日ヲ陸軍省ニ届出スヘシ

四 通辨ヲ要スルモノハ自身ニ雇入レ 其族籍 住所番地 年齢等ヲ詳記セル書面ヲ添ヘ 主人ヨリ陸軍省ヘ願出 其許可ヲ受クヘシ 但 本人ヲシテ管轄地方廳ノ許可ヲ受ケサシムヘシ

五 通辨人ナキモノハ謝絶スルコトアルヘシ

六 新聞記者従軍ノ心得ヲ遵守スヘシ

七 遵守スルノ證トシテ花押 又ハ記名セシム

 

參照 十一月十日付ヲ以テ大本営陸軍部副官 大生少佐ヨリ通報アリテ 尓後ハ外国新聞記者ハ豫メ大本営ノ都合ヲ問合セ 然ル後 許否ノ回答ヲナスコトトナル 之レ漸次□人員増加シ 従テ出征軍ニ煩累ヲ増スニ依ル

 

陸軍省大日記>日清戦役>日清戦役>雑>明治27年6月より 「緊要事項集」
外国武官従軍心得、内外新聞記者従軍心得及新聞材料公示手続の件 https://www.jacar.archives.go.jp/das/image/C06060167900