今般、大本営において新聞記者の請願を許し戦地の景況等を告示するため、別紙の通りその手続きを規定相成り候ふにつき、なほ左の内規、御承知おきこれありたし。
1.戦地の景况等を新聞記者に告知するは、必ず陸海軍両省に電報したる後なること。
ただし事項の重要に属せざるものは、郵便をもつて電報に代ゆること。
2.陸海軍両省は、大本営より得たる戦地の景況等にして、世に公にし妨げなしと認むるものを、従前の手続きにより新聞記者に告示あるべきこと。
3.大本営に請願して告示を受くる新聞社の名は、あらかじめこれを通知しおくこと。
4.前項の新聞社の新聞に騰載しある戦地の景况に大本営よりの電報と齟齬するものあるときは、陸海軍両省は直ちに該社に詰問し、あるいは大本営に報告あるべきこと。
ただし在韓従軍記者よりの通信に係るものは、おのずから本文の外に属す。
右、御打合せ候ふなり。
明治27年9月17日
海軍参謀 樺山資紀
陸軍参謀 川上操六
陸軍次官 児玉源太郎 殿
新聞材料公示手続き
1.大本営において世に公にすべき事項あるときは、広島県警察部に掲示す。
2.前項の掲示を謄写せんことを希望する新聞記者は、あらかじめ大本営副官部に請願し、 各社連合して大本営員旅館の近傍に当直所を設け、届けおくべし。しかるときは新たに掲示するごとにこれを通知すべし。
3.この掲示の謄本は、即ち本月の省令(陸軍省第20号、海軍省第13号)に謂はゆる陸海軍大臣の許可を経たるものと同一なるが故に、直ちに新聞紙に騰載するを得。
4.掲示には必ず番号を付す。故に新聞紙に騰載のときこれを例へば(3)、(15)のごとく符号となし標証するを得。
5.この掲示の事項を騰載する新聞紙は、常に1通を副官部に寄送し参照に供すべし。
6.掲示の事項に関し疑義あるときは、副官部主任者の旅館に就き質問するを得。
7.掲示の事項を新聞紙に騰載するには必ずしも原文の侭なるを要せずといへども、敷衍に過ぎ事実を誤るに至らしむべからず。
(参照)
陸軍省令第20号
新聞紙条例第22条により、当分の内、軍隊の進退および軍機軍略に関する事項を新聞・雑誌に記載することを禁ず。ただしあらかじめ陸軍大臣の許可を経たるものは、この限りにあらず。
本令は発布の日より施行す。
明治27年9月13日
今般 大本營ニ於テ新聞記者ノ請願ヲ許シ戰地ノ景况等ヲ告示スル為メ別紙ノ通リ其手續ヲ規定相成候ニ付 尚 左ノ内規 御承知置有之度
一 戰地ノ景况等ヲ新聞記者ニ告知スルハ必ス陸海軍兩省ニ電報シタル後ナル事
但シ事項ノ重要ニ属セサルモノハ郵便ヲ以テ電報ニ代ユルコト
二 陸海軍兩省ハ大本營ヨリ得タル戰地ノ景况等ニシテ世ニ公ニシ妨ナシト認ムルモノヲ従前ノ手續ニ沿リ新聞記者ニ告示アルヘキ事
三 大本營ニ請願シテ告示ヲ受クル新聞社ノ名ハ豫メ之ヲ通知シ置ク事
四 前項ノ新聞社ノ新聞ニ騰載シ在ル戰地ノ景况ニシテ 大本營ヨリノ電報ト齟齬スルモノアルトキハ 陸海軍両省ハ直チニ該社ニ詰問シ 或ハ大本營ニ報告アルヘキ事
但 在韓従軍記者ヨリノ通信ニ係ルモノハ自ラ本文ノ外ニ属ス
右 御打合候也
明治廿七年九月十七日
大本營
海軍参謀 樺山資紀
陸軍参謀 川上操六
陸軍次官 児玉源太郎 殿
新聞材料公示手續
一 大本營ニ於テ世ニ公ニスヘキ事項アルトキハ 之ヲ廣島縣警察部ニ掲示ス
二 前項ノ掲示ヲ謄冩センコトヲ希望スル新聞記者ハ預メ大本營副官部ニ請願シ 各社連合シテ大本營貟旅館ノ近傍ニ當直所ヲ設ケ届ケ買[→置?]クヘシ 然ルトキハ新ニ掲示スル毎ニ之ヲ通知スヘシ
三 此掲示ノ謄本ハ即チ本月ノ省令(陸軍省第二十号 海軍省第十三号)ニ所謂ル陸海軍大臣ノ許可ヲ經タルモノト同一ナルカ故ニ直チニ新聞紙ニ騰載スルヲ得
四 掲示ニハ必ス番號ヲ附ス 故ニ新聞紙ニ騰載ノ時 之ヲ 例之ハ (3) (15) ノ如ク 符號ト為シテ標證スルヲ得
五 此掲示ノ事項ヲ騰載スル新聞紙ハ 常ニ一通ヲ副官部ニ寄送シ参照ニ供スヘシ
六 掲示ノ事項ニ関シ疑義アルトキハ 副官部主任者ノ旅館ニ就キ質問スルヲ得
七 掲示ノ事項ヲ新聞紙ニ騰載スルニハ必スシモ原文ノ侭ナルヲ要セスト雖トモ 敷衍ニ過キ事実ヲ誤ルニ至ラシム可カラス
(參照)
陸軍省令第二十號
新聞紙條例第廿二條ニ依リ 當分ノ内 軍隊ノ進退 及 軍機軍略ニ関スル事項ヲ新聞紙 雑誌ニ記載スルコトヲ禁ス 但 豫メ陸軍大臣ノ許可ヲ經タルモノハ此限ニ在ラス」
本令ハ發布ノ日ヨリ施行ス
明治廿七年九月十三日
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外国武官従軍心得、内外新聞記者従軍心得及新聞材料公示手続の件 https://www.jacar.archives.go.jp/das/image/C06060167900