Ob-La-Di Oblako 文庫

帝国日本の侵掠戦争と植民地支配、人権蹂躙を記憶し、再現を許さないために、ひたすら文書資料を書き取る。姉妹ブログ「歴史を忘れる民族に未来はない!」https://obladioblako.hateblo.jp/ のデータ·ベースを兼ねる。

昭和20年8月11日 日曜機密戦争日誌 陸軍省軍務課内政班長 竹下正彦 1945.8.11

   昭和20年8月11日 日曜

1.9日の御聖断は和平を基礎とすること勿論なるも、議案は軍にポツダム宣言に対する帝国の申し入れ要領を決定せらるたるに止まる。省部内騒然として、何らかの方途により和平を確せんとする空気あり。
 これがため、あるいはテロにより平沼近衛岡田鈴木迫水米内東郷らを葬らんとする者あり。また陸軍大臣の治安維持のための兵力使用権を利用し、実質的クーデターを断行せんとする案あり。諸氏橫議ようやく盛なり。

2.情報局は9日御聖断に基き所要の発表をなさんとす。陸軍は和戦両用の構ヘに基き、ソ連参戦以来2日、未だ何らの意思表示をなさずしては軍の士気の崩壊を恐れ、飽くまで軍隊は任務に邁進すべき大臣訓示を発せらる(部内)。ん

 余は右発表をラジオおよび新聞を通して部外に発表方処置す。

3.しかるに本件は聖旨必謹に反するものとして重大化し、軍事課長軍務局長より注意を受け、局長は各新聞社を歴訪し、発表停止に努めたるも及ばず。

4.この日、梅津参謀長、豊田軍令部総長、東郷外務大臣、平沼枢府議長、鈴木総理は交々参内し、上奏するところあり。

5.井田畑中、大臣を私邸に訪う。

 


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   昭和二十年八月十一日 日曜

一、九日ノ御聖斷ハ和平ヲ基礎トスルコト勿論ナルモ 議案ハ軍ニ「ポツダム」宣言ニ對スル帝國ノ申入レ要領ヲ決定セラレタルニ止マル 省部内騒然トシテ 何等カノ方途ニ依リ和平ヲ確摧セントスル空氣アリ
之カ爲 或ハ「テロ」ニ依リ平沼、近衞、岡田、鈴木、迫水、米内、東鄕等ヲ葬ラントスル者アリ 又 陸軍大臣ノ治安維持ノ爲ノ兵力使用權ヲ利用シ實質的「クーデター」ヲ斷行セントスル案アリ 諸氏橫議 漸ク盛ナリ

二、情報局ハ九日 御聖斷ニ基キ所要ノ發表ヲ爲サントス 陸軍ハ和戰兩用ノ構ヘニ基キ「ソ」聯參戰以来二日 未タ何等ノ意思表示ヲ爲サスシテハ軍ノ士氣ノ崩壞ヲ恐レ 飽ク迄 軍隊ハ任務ニ邁進スヘキ大臣訓示ヲ發セラル(部内)


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余ハ右發表ヲ「ラヂオ」及 新聞ヲ通シテ部外ニ發表方 處置ス

三、然ルニ本件ハ聖旨必謹ニ反スルモノトシテ重大化シ 軍事課長、軍務局長ヨリ注意ヲ受ケ 局長ハ各新聞社ヲ歴訪シ發表停止ニ努メタルモ及ハス

四、此ノ日 梅津參謀長、豊田軍令部總長、東鄕外務大臣、平沼樞府議長、鈴木總理ハ交ハ々参内シ上奏スル所アリ 井田、畑中 大臣ヲ私邸ニ訪フ

 

↑昭和20年8月11日 日曜 機密戦争日誌 https://www.jacar.archives.go.jp/das/image/C12120362400

JACAR(アジア歴史資料センター)

Ref.C12120362300、

機密戦争日誌 昭和20年8月9日~20年8月15日(防衛省防衛研究所)