これに關し本件に於いて提出された證據に對し言い得るすべてのことを念頭に置いて、宣傳と誇張をでき得る限り斟酌しても、なお殘虐行爲は日本軍のものがその占領した或る地域の一般民衆、はたまた戰時俘虜に對し犯したものであるという證據は壓倒的である。
問題は被告にかかる行爲に關し、どの程度まで刑事的責任を負わせるかにある。以上述べたように、被告に對する訴追は次の通りである。
(一) 彼らは特定の者をしてほの行爲を犯すことを命令し、授權し、かつ許可し、それらの者は實際にその行爲を犯したこと。(訴因第五四)
(二) 彼らは故意にまた不注意に、かような犯罪的行為を犯すことを防止する適當な手段をとるべき法律上の義務を無視したこと。(訴因第五五)
↑https://www.digital.archives.go.jp/file/3273693 38/209
Keeping in view everything that can be said against the evidence adduced in this case in this respect and making every possible allowance for propaganda and exaggeration, the evidence is still overwhelming that atrocities were perpetrated by the members of the Japanese armed forces against the civilian population of some of the territories occupied by the[m] as also against the prisoners of war.
The question is how the accused before us can be made criminally responsible for such acts. As I have pointed out above, the charge agains[t] these accused is
(1) that they ordered, authorized and permitted certain persons to commit these acts and such persons certainly committed them; (Count 54)
or (2) that they deriberately and recklessly disregarded their legal dut[y] to take adequate steps to prevent the commission of such criminal acts. (Count 55)
↑https://www.digital.archives.go.jp/file/3327762 42/211
この件で挙げられた証拠に対して言い得るあらゆることをこの点で視野に入れ、また可能な限りあらゆる宣伝と誇張を酌量しても、占領した領域の何箇所かの一般住民に対して、あるいはまた捕虜に対して、日本軍の構成員が残虐行為を働いた証拠はなお圧倒的である。
問題は我々の前にいる被告人たちがそうした行為にどこまで責任があると言えるかである。前に指摘した通り、これらの被告人に対すて訴追されているのは以外のことだ。
(1) ある人たちにこれらの行為を犯すことを命令、認証または許可し、そうした人たちが実際にそれらの罪を犯した(訴因第 54 )
あるいは (2) 故意にか無頓着にか自分の法的義務を無視してそうした犯罪行為が犯されることを防ぐ適切な措置を取らなかった(訴因第 55 )
いずれにしても、本官がすでに考察したように、證據に對して惡く言うことのできる事例をすべて考慮に入れても、南京における日本兵の行動は兇暴であり、かつベイツ博士が證言したように、殘虐?はほとんど三週間にわたつて惨烈なものであり、合計六週間にわたつて、續いて深刻であつたことには疑いない。事態に顯著な改善が見られたのは、ようやく二月六日あるいは七日過ぎてからである。
辯護側は、南京において殘虐行爲が行われた事實を否定しなかった。彼らは單に誇張されていることを愬えているのであり、かつ退却中の中國兵が相當數の殘虐を犯したことを暗示したのである。
↑https://www.digital.archives.go.jp/file/3273693 66/209
Whatever that be, as I already observed, even making allowance for everything that can be said against the evidence, there is no doubt that the conduct of the Japanese soldiers at Nanking was atrocious and that such atrocities were intense for nearly three weeks and continued to be serious to a total of six weeks as was testified by Dr. Bates. It was only after February 6 or 7 that there was a noticeable improvement in the situation.
The defence did not deny the fact of atrocities having taken place at Nanking. It only complained of exaggeration and suggested that a number of the atrocities were committed by retreating Chinese soldiers.
↑https://www.digital.archives.go.jp/file/3327762 72/211
なにはともあれ、すでに述べた観察の通り、証拠に対してなし得るあらゆる批判を酌量しても、南京における日本軍兵士の行為が残虐であったこと、そうした残虐行為が、ベイツ博士が証言した様に、三週間近くは激烈であり、合計六週間は深刻であり続けたことは疑いない。やっと状況に目立った改善が見られたのは、二月六日か七日以降のことだった。
弁護側は残虐行為が発生した事実を否定せず、ただ誇張があると文句を言ったり、一定数の残虐行為は退却中の中国兵が犯したものだと仄めかすだけだった。