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帝国日本の侵掠戦争と植民地支配、人権蹂躙を記憶し、再現を許さないために、ひたすら文書資料を書き取る。姉妹ブログ「歴史を忘れる民族に未来はない!」https://obladioblako.hateblo.jp/ のデータ·ベースを兼ねる。

第126回国会 会議録 参議院 予算委員会 第 7号より 日本社会党 清水澄子委員の質疑 1993. 3. 23

第126回国会 参議院 予算委員会 第 7号 平成 5年 3月23日

010 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/10
清水澄子君 部隊の移動に対して非常に安易なお考えだと思います。
 次に、私は昨年アジア六カ国を訪問してまいりました。そして、元従軍慰安婦の方々や戦争の被害者、そして関係団体、国会議員、政府関係者とお会いいたしまして、この問題に対する意見や要望を伺ってまいりました。韓国には四回、北朝鮮にも二回行ってまいりました。
 アジアには今もって正当な根拠を持ち、戦争の痛みがいやされない人々が数多くおられます。私はこうした人々がおられる限り、私たち日本人は勇気を持ってこの古傷にも触れながら人間社会の道義をわきまえた誠実な対応をしなければならないと考えております。そして、過去の責任は政府も国民も全員で負わなければならないという考えに基づいております。
 そうした立場から、きょうは従軍慰安婦問題に絞りまして質問させていただきたいと思います。
 まず最初に総理にお伺いします。
 今回、韓国の金泳三大統領が従軍慰安婦問題について発言をされました。これについて政府はどのように確認しておられますか、また、総理の御認識を伺いたいと思います。

011 河野洋平内閣官房長官
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/11
国務大臣河野洋平君) 総理へのお8尋ねでございますが、事実関係もございますので私からまず御答弁をさせていただきたいと思います。
 金泳三大統領が従軍慰安婦問題に関しまして、日本側がその真実を明らかにすることが重要であるとの趣旨の発言を行われたということを承知いたしております。
 政府としては、こうした韓国側の意向も十分に念頭に置いて、従軍慰安婦問題の事実関係に関する調査に引き続き誠意を持って取り組んでまいりたい、こう考えております。

012 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/12
清水澄子君 総理、大統領は発言の中で韓国の道徳的優位性というのを強調されました。その意味をどのように受けとめておられますか、ぜひ総理お答えください。

013 河野洋平
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/13
国務大臣河野洋平君) 金泳三大統領がただいま委員おっしゃいましたような趣旨のことを発言されたということも承知をいたしております。このことは、韓国政府がこの問題を非常に重要視しているということのあらわれというふうにまず思います。と同時に、韓国政府がこの問題について、補償の問題はみずから行う、道義的な問題について日本にその考え方をはっきりしてほしい、そういうお気持ちがあるというふうに受けとめたわけでございます。
 私どもは、かねてから申し上げておりますように、筆舌に尽くしがたい心の傷を負っておられる方々に対して我々の気持ちを誠心誠意示したい、そのためにまず誠実な姿勢で調査を尽くしたい、こう考えておるところでございます。

014 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/14
清水澄子君 昨年、総理は、ソウルでこの慰安婦問題で謝罪をされました。その謝罪の対象というのはどなたに謝罪なさったんでしょうか。政府の代表にですか、それとも韓国、そして朝鮮半島全体の皆さんに対してでしょうか。

015 宮澤喜一内閣総理大臣
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/15
国務大臣宮澤喜一君) 特にだれを対象にということは申しませんでしたけれども、私は韓国大統領に招かれまして韓国を訪問しておったのでございますから、当然のことながら韓国政府、韓国民に向けて発言をしたつもりであります。

016 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/16
清水澄子君 それは植民地支配で苦痛を与えたすべてのことを指しておっしゃったんでしょうか。

017 宮澤喜一
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/17
国務大臣宮澤喜一君) 別に植民地支配というようなことを申したことはございませんけれども、我々の戦時中の行為によって人々に耐えがたい苦痛を与えた、そのことに対して遺憾の意を表明したのでございます。

018 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/18
清水澄子君 非常にそこがあいまいだと思います。戦時中というのと植民地支配からというので随分認識が違いますけれども、次に進めます。
 調査の進展状況と見通し、そして発表の時期について御説明ください。

019 河野洋平
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/19
国務大臣河野洋平君) 昨年七月に中間的な発表をさせていただきましたが、それ以後も六省庁にわたりまして真実の解明のために懸命の努力をいたしております。大変膨大な資料の中から関係する文書を見つけ出すという作業も相当な作業でございまして、現在、誠心誠意その作業に取り組んでいるところでございます。

020 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/20
清水澄子君 もう少し具体的に中身を言ってください。

021 谷野作太郎内閣官房 内閣外政審議室長 兼 内閣総理大臣官房 外政審議室長)
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/21 
○政府委員(谷野作太郎君) ただいま官房長官から御説明したところでございますが、昨年とりあえず六省庁、警察庁防衛庁、外務省、文部省、厚生省、そして労働省に調査を御依頼いたしまして、その結果を発表させていただきました。その後、調査対象をいま少しく広げまして、法務省あるいは国会図書館それから国立公文書館等にわたっておりまして、そういったところも含めて調査を継続しておるということでございます。
 いつごろ発表するのかというお尋ねでございましたけれども、先ほど官房長官から御説明しましたように、かなりの作業量でございますので、ただいま申し上げられるところといたしましては、とにかく調査に全力を挙げましてできるだけ早い機会にその調査の結果を取りまとめて発表したいというふうに考えております。

022 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/22
清水澄子君 元軍人の調査もしておるということを報道で見ておりますけれども、そういう人たちはどういう目的でどういう人たちを対象にしておられますでしょうか。

023 谷野作太郎
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/23
○政府委員(谷野作太郎君) 資料に当たるだけでも不十分だと思いまして、直接当時の関係者の方々からお話を伺う努力も開始いたしております。どのような方、まして個人名にわたりますことはこういった方々とのお約束事でこの場で御説明できませんけれども、資料だけではなくて幅広くいろいろの方からお話も伺っておるということでございます。

024 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/24 
清水澄子君 そういう場合、政府の方だけが選ぶのじゃなくて、もっとやはり民間の広い協力を得ることを私は希望します。
 そういう中で、戦前の機関で拓務省というのがあったんですけれども、その省はどういう役割を持った役所でしたでしょうか。

025 高野紀元(外務省アジア局長事務代理)
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/25
○政府委員(高野紀元君) お答え申し上げます。
 拓務省は拓務省官制に基づきまして、昭和四年より昭和十七年まで設置されていたものでございます。拓務省の権限としては、拓務省官制第一条に次のように規定されていたものと承知しております。すなわち、
 拓務大臣ハ朝鮮総督府台湾総督府、関東庁、樺太守及南洋庁ニ関スル事務ヲ統理シ南満州鉄道株式会社及東洋拓殖株式会社ノ業務ヲ監督ス
 拓務大臣ハ渉外事項ニ関スルモノヲ除クノ外移植民ニ関スル事務及海外拓殖事業ノ指導奨励ニ関スル事務ヲ管理ス
 拓務大臣ハ前項ノ事務ニ付外務大臣ヲ経由シ領事官ヲ指揮監督ス
 以上でございます。

026 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/26
清水澄子君 それから、朝鮮半島での国家総動員体制というのはどういう状況でしたでしょうか。

027 高野紀元
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/27
○政府委員(高野紀元君) 恐縮でございますが、ただいまちょっと資料を持ち合わせておりませんので、調べて後日お答えいたします。

028 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/28
清水澄子君 ここに「拓務要覧」というこういう古いのが図書館にありました。拓務省を私も知らなかったんですけれども、いろいろ調べているうちに。これは戦前の植民地支配を統制した機関であるわけです。そして、そこでは朝鮮での、何といいますか、国家総動員体制が図で示されているように、もうすべて村の本当に字の里に至るまで住民の一人一人が愛国班に組織されて、その活動が警察と憲兵隊によって連絡、密接な関係で動いていた、こういうことが書かれてあります。
 ここで私は、こういう実際に植民地支配を管理した拓務省関係等をやはり調査すべきだと思いますので、ぜひ調査をお願いしたいと思いますが、いかがですか。

029 谷野作太郎
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/29
○政府委員(谷野作太郎君) 御要望に沿うように措置いたしたいと思いますが、ただ一言つけ加えさせていただきますと、外務省の所持しております資料の中から既にかなり多数の拓務省関係の資料が出てきております。それは公表されておるところでございます。

030 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/30
清水澄子君 そういう資料もぜひ公開をしていただきたいと思います。
 次に、国家公安委員長にお尋ねいたしますけれども、今、外政審議室が一生懸命調査をしていますけれども、どういうわけか警察関係の資料が一枚も出ておりません。その理由は何でしょうか。どういう指示を受けてどういう調査をされていらっしゃるのかお答えください。

031 垣見隆(警察庁長官官房長)
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/31
○政府委員(垣見隆君) お答えいたします。
 警察庁におきましては、平成三年の未、内閣官房からいわゆる従軍慰安婦に関係すると思われる資料の有無について調査を求められました。そこで、警察庁、本庁はもとより警察大学校などの附属機関、各管区警察局などの地方機関、さらには全国の都道府県警察において関係資料についての調査を行いましたが、現在までのところ資料の発見には至っておりません。
 以上でございます。

032 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/32
清水澄子君 一枚も出てこないというのはむしろ逆にみんな不自然だと思いますし、完全なものがなくてもやはりここは徹底的に調査をしていただきたいと思います。
 特にこの当時の内務省の警保局の特高警察とか朝鮮総督府、朝鮮憲兵隊などの関係は大体やはり警察庁で調べなければならないんじゃないだろうか。そういう意味で、国家公安委員長警察庁長官がもっと連携をとって本当に誠実な姿勢を示していただくことを私はここでお願いしたいんですが、どうぞ国家公安委員長、ひとつお答えいただきたいと思います。(発言する者あり)

033 遠藤要(予算委員長)
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/33
○委員長(遠藤要君) 静粛に。

034 村田敬次郎国家公安委員会委員長
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/34
国務大臣村田敬次郎君) お答え申し上げます。
 警察庁官房長からお答え申し上げましたように、当時、平成三年の末、十二月十二日でございますが、内閣官房からいわゆる従軍慰安婦に関係すると思われる資料の有無についての問い合わせがありました。そこで、官房長が申し上げたように、警察庁本庁、それから警察大学校、附属機関、管区警察局など全部詳細に調べたのでございますが、要は、内務省から戦後の警察庁になる、それは全く組織が違っておりまして、そういう資料が欠鉄をしておるという状態のようでございます。
 したがいまして、私もこの問題についてよく尋ねたのでございますが、先ほど官房長からお答えした以上のことが今の段階では申し上げられない、こういう状況でございます。

035 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/35
清水澄子君 調査をしていただけますか、どうですか。調査をしてくださいとお願いしているんです。

036 村田敬次郎
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/36
国務大臣村田敬次郎君) 調査はたびたびしておるようでございます。しかし、現在において清水委員にお答えするようなことが全く出ていないという報告でございました。

037 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/37
清水澄子君 調査を約束してください。

038 村田敬次郎
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/38
国務大臣村田敬次郎君) 調査はなおいたします。

039 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/39
清水澄子君 官房長官、本当にこの調査をもっと徹底してやっていただきたいと思います。
 私が韓国を訪問いたしました際、韓国政府は、どういうふうに慰安婦というものが連れていかれたのか、そしてそれはどういうふうにどこに慰安所が設置されたのか、そしてそういう人たちはどういうふうに管理されたのか、そして戦争が終わったときにその後どうされちゃったのか、そういうふうなやっぱり全体像を知り得る限りで解明してほしいという要望が出されたわけです。このことにつきまして、その全体像を出す努力をしていただいておりますでしょうか。

040 河野洋平
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/40
国務大臣河野洋平君) お尋ねがございましたし、こちらから何回もお答えを申し上げておりますように、当然全体像がわかるように誠心誠意調査をいたしております。現在もそれを続行いたしております。

041 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/41
清水澄子君 じゃ、全体像を解明されるということを約束していただけますね。

042 河野洋平
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/42
国務大臣河野洋平君) 解明するべく一生懸命調査をいたしております。

043 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/43 
清水澄子君 ところで、政府は強制を立証する資料がないと表明しておられるわけですけれども、政府が考えられる強制というのはどのような内容でございますか。

044 谷野作太郎
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/44
○政府委員(谷野作太郎君) お答え申し上げます。
 いろいろな意味合いがあろうかと思いますが、ごく自然に強制ということを受け取りまして、その場合には単に物理的に強制を加えるということのみならず、おどかしてといいますか、畏怖させてこういう方々を本人の自由な意思に反してある種の行為をさせた、そういう場合も広く含むというふうに私どもは考えております。

045 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/45
清水澄子君 まさに例えばだまされた場合があっても、それはもう現地で逃げ出せない状況、やっぱり心、体ともに自由が全く拘束されている、しかもその上に性的に奴隷の状態に置かれるということは、もはやそれ自体が強制だと思います。
 そこで、私は総理に、この韓国挺身隊問題対策協議会が一生懸命その証人たちの証言をもとに挺身隊研究会と共同編集しました「強制的に連行された朝鮮人慰安婦たち」というものを出されました。それを今一冊総理にお渡しいたします。その中に目次と、それから一部だけをちょっとお読みいただけるようにそこに翻訳しておきましたけれども、どうぞ総理、それをお読みいただきたいと思います。そして、その中からどういう状態で強制されたかということを、必ずそれを資料の中にあらわすということをぜひお約束いただきたいと思いますが、いかがですか。

046 宮澤喜一
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/46
国務大臣宮澤喜一君) わかりました。
 後段に言われたこと、ちょっとよくわかりませんですが、ひとつ読ませていただきます。

047 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/47
清水澄子君 私は、やはり資料だけでこの問題の全体像というのは難しいんじゃないかと思います。
 それで、やはり実際の被害者の体験こそがまさに生きた資料だと思います。そういう意味で、私はこの証言集を調査資料の中にきちんと加え公表をされることを今要望したわけです。
 そこで官房長官、私は、もっと現地に行って、自分たち日本の方が足を運んで元慰安婦の方と直接面接をされ、そしてその聞き取り調査をしなければ、私たちの本当の意味の反省とか誠意をあらわすことができないと思うわけですけれども、ぜひそのことを実行していただきたいのですが、いかがでございますか。

048 河野洋平
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/48
国務大臣河野洋平君) まずは文書を徹底的に調べるということが調査のスタートでございます。大分調査は進んでおりまして、先ほども御答弁を申し上げましたが、相当なところまで文書を探す調査は進んだようにも思います。この文書を探す調査だけでは十分でないという部分もございますから、関係された方々のお話もお聞きをするということを考えております。ただ、その関係された方々をどういう範囲でどういう人たちを選ぶか、考えるかということについては、よく慎重に考えていたしたいと思っておるところでございます。

049 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/49
清水澄子君 実行されるかどうか。

050 河野洋平
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/50
国務大臣河野洋平君) 慎重に今考えているところでございます。

051 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/51
清水澄子君 それはもう新聞に既に実行すると報道されているんですが、どうしてここで約束していただけないんですか。

052 河野洋平
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/52
国務大臣河野洋平君) 御意見としてはよく承っておきたいと思います。

053 谷野作太郎
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/53
○政府委員(谷野作太郎君) 若干補足させていただきますと、先生からそのようなお話はかねてから伺っておるところでございますし、官房長官も恐らくその御要望に沿った措置を考えておられるんだと思いますが、ただ、慎重にと官房長官がおっしゃいますゆえんは、これは私どもだけが決め得る話ではございませんで、相手国政府がございますし、それから当事者の方々の同意といいますかそういうことも必要でございますし、そういった今後の手続を念頭に置いての御答弁だと思います。

054 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/54
清水澄子君 もう予定におありなんだと思うんですけれども、やはりその場合には北朝鮮とかアジア各地にも行かれるかどうかということについてお尋ねします。

055 河野洋平
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/55
国務大臣河野洋平君) 聞き取り調査につきましては、我が国との関係、各地域の事情など考慮すべき点がまだございます。先ほどから申し上げておりますように、十分委員の御意見は承らせていただいて慎重に考えたいと存じます。

056 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/56
清水澄子君 ぜひそれは実行していただきたい。また、それを実行しなければこの問題は解決されていかないと思います。
 次に、政府はよく強制に関する資料がないと言うわけですけれども、岩波で「昭和天皇終戦史」というのが最近出ました。これを読みましてもはっきり、敗戦のとき、二週間の空白期のときにこれは徹底して文書を燃やしたということをここに書かれています。それが軍からの指令で、そして警察のルートを通じて余りにもたくさん燃やし過ぎて他のものまで燃やしたということが書かれているわけですけれども、こういう資料の隠滅というのは刑法でいう証拠隠滅罪に本来ならなるものだと思います。
 そういう意味で、資料がない、そういうものがないということの中で問題をいろいろ逃げていくのじゃなくて、やはりですからあらゆる人々の言葉、証言を聞いて、そして誠意をあらわすべきだ、こういうことを私は申し上げたいわけですが、もう一度そういう意味で聞き取り調査、それから民間の人たちの協力を得るということをお約束いただきたいと思います。

057 谷野作太郎
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/57
○政府委員(谷野作太郎君) 民間の方の御協力といいますか、先ほども御答弁いたしましたように、既に資料に当たるだけではございませんでいろいろな方々のお話を伺っておるということでございます。それから、聞き取り調査につきましては、先ほど来官房長官の御答弁のとおりでありまして、清水先生の御意見を重いものとして伺っておくということであろうかと思います。
 ただ、あえて申し上げますれば、従軍慰安婦の方々、時々東京に見えます。私自身かなり時間をかけてお会いいたしておりまして、全くこういった方々と私どもの間に接触がない、お話を伺っていないということではございません。

058 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/58
清水澄子君 次に、補償にかわる措置とおっしゃっているんですが、その措置とはどういうもので、被害者に届くものなのかどうか、お答えください。

059 河野洋平
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/59
国務大臣河野洋平君) 国会においても繰り返しお答えをいたしておりますが、法的には日韓間では、従軍慰安婦問題に関する補償の問題を含めて日韓両国及び両国民間の財産・請求権の問題は、一九六五年の日韓請求権・経済協力協定により完全かつ最終的に解決済みであるというのが政府の立場でございます。これはまず大前提として委員も御承知のとおりでございます。
 ただし、その後この問題について累次申し上げてきたところでございますが、本件の問題の性格などにかんがみまして、つまり従軍慰安婦として筆舌に尽くしがたい辛苦をなめられた方々に対し我々の気持ちをいかなる形であらわすことができるのか、現在各方面の意見を聞きながら誠意を持って検討いたしておるところでございます。この検討を引き続きいたしておりまして、どういう形であらわすかについてはもうしばらくお時間をかしていただきたいと思います。

060 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/60
清水澄子君 韓国では、日本が真相解明の前にこの基金構想を打ち出した、そのことに対して、まず日本というのはいつでも先に金で手を打つというやり方だということへの大きな国民的な反発が起きたわけです。そして、だから日本軍によるこの従軍慰安婦の生活支援というのは韓国人みずからの手で行おうと、挺身隊おばあさん生活基金募集国民運動本部というのができました。そして、韓国政府は生活保護や住宅などそういう生活支援をやはり予算化すべきだという国民の声が起きたわけです。
 ですから、そのことは一つは、もう解決済みというそういうことではなくて、やはり問題があったんだということを私たちが真摯に主体的に誠実に対応していくという中で私はこの問題を一緒に解決していかなきゃならないという立場で申し上げておりますので、ぜひそういう立場を貫いていただきたい。そうしなければこれは絶対相手の国民に納得を得られないということを再度私は申し上げたいんですが、官房長官、いかがですか。

061 河野洋平
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/61
国務大臣河野洋平君) 繰り返し申し上げることになりますが、金泳三大統領の御発言を私も伺いまして、大統領のお考えはお考えとして大変高い見地からの御判断というふうに伺いましたけれども、私どもには私どもの、先ほどから申し上げておりますように、筆舌に尽くしがたい辛い思い、悲しい思いをなさったに違いない方々に対する我々の気持ちをどうあらわすかということを考えているわけでございまして、この問題は大統領の御発言が仮にあったとしても、あるいはなくても、この我々の気持ちは変わりがないところでございます。

062 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/62
清水澄子君 昨年十二月に韓国言論会館が日本リサーチセンターにアンケートを依頼しています。これによりますと、五〇%の日本人がやはり心からの謝罪と補償をしなければならないということを回答しております。そういう気持ちをやはりあらわすようなそういう手だてをぜひお願いをしたいと思います。
 次に、婦人及児童ノ売買禁止ニ関スル国際条約というものがあったわけですけれども、これに日本は加盟をしていたでしょうか。

063 丹波實(外務省条約局長)
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/63
○政府委員(丹波實君) 先生の御質問は、一九二一年九月にジュネーブで作成された条約のことをおっしゃっておられると思いますけれども、正式な表題は婦人及児童ノ売買禁止ニ関スル国際条約と思います。
 日本はこの条約には同じ年の七月の三十日に署名いたしまして、一九二五年の十二月十五日に日本に対して効力を発効されておる、そういうことでございます。

064 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/64
清水澄子君 その条約の目的、内容は何ですか。

065 丹波
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/65
○政府委員(丹波實君) 実は、この条約の前に一九一〇年の五月に作成されました条約が一つございまして、醜業ヲ行ハシムル為ノ婦女売買禁止ニ関スル国際条約というものがあったわけです。
 今、先生が御質問の条約は十四条から成りまして、その前にできました一九一〇年条約に掲げられた未成年の婦人に対する違反行為の処罰のため一切の措置をとるべきことを定めているわけですが、この前の条約に掲げております未成年及び成年の婦女子に対する違反行為の未遂及び予備の処罰を確保するため必要な手段をとることを約するという、そういう条約でございます。
 この条約を含みます売春のための人身売買禁止に関する条約を一本化した条約として、さらに戦後一九五〇年に、人身売買及び他人の売春からの搾取の禁止に関する条約というものができておることも先生御承知のとおりだと思います。

066 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/66
清水澄子君 その条約を批准されたときに、どのような留保条件をつけられたんでしょうか。

067 丹波
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/67
○政府委員(丹波實君) 先生の御質問は、冒頭で御質問になられた一九二一年の条約のことをおっしゃっておられると思いますが、この条約に、先ほど申し上げましたとおり、日本が一九二五年十二月に入りましたときに、日本政府としてこの条約の署名に当たりまして次に申し上げる二つの留保と宣言を行っております。
 一つは留保でございますけれども、その内容は、この条約の「第五条ニ関スル確認ヲ延期スルノ権利ヲ留保」するということでございまして、要するに一九一〇年の条約は未成年の婦人と成年の婦人を区別しておるわけでございますけれども、この成年の基準で一九二一年条約第五条が満二十歳から二十一歳へ引き上げるということでございます。という意味は、当然未成年の年齢が下がるということで、未成年者の保護を厚くしようという目的でこういう規定があるわけですが、この部分につきまして留保したということです。しかしながら、一九二七年に至りましてこの留保を撤回しておるということでございます。
 次に、宣言でございますけれども、この条約への署名が朝鮮、台湾及び関東租借地を含まないという点を宣言で宣言しておるということでございます。

068 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/68
清水澄子君 要するに、日本では十八歳や未成年者を売春のいわゆる公娼制度もあったわけですから、しかし国際的には一応つじつまを合わせなければならない、しかし、年齢は守れないというので二十一歳以上というのを留保したんだと思います。それから、その当時の植民地地域をそこから除外をしていたということになると思います。
 そこで、今度は警察庁にお尋ねいたしますが、やはり警察庁の方から昭和十三年に内務省発警第五号というのが各庁府県長官に出されているわけですけれども、その通達の内容と理由を御説明いただきたい。

069 垣見隆
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/69
○政府委員(垣見隆君) お答えいたします。
 ただいま委員御指摘の通達につきましては、関係省庁のいわゆる従軍慰安婦関係の資料調査において判明したものと思われますけれども、警察庁において保管、管理していたものではございませんで、その通達の発出の事実について、また内容について、警察庁として責任を持ってお答えをすることができませんことを御理解いただきたいと思います。

070 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/70
清水澄子君 それでは、その資料の出てきたところからお答えください。

071 高野紀元
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/71
○政府委員(高野紀元君) お答え申し上げます。
 これは慰安婦に関連する資料の調査の一環として外務省の史料館にたまたまあった資料を外務省より提出したものでございますが、なぜこの資料が外務省にあったかというその経緯等については私ども必ずしもつまびらかにしておりません。

072 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/72
清水澄子君 不親切ですね。その資料をお読みいただければいいんです。
 これは内務省発警第五号として内務省警保局長が各庁府県長官、知事にあてているわけですね。「支那渡航婦女ノ取扱ニ関スル件」、なぜ外務省史料館にあったかわからないとおっしゃるんですが、これを読めばはっきりわかります。婦女売買に関する国際条約に基づいてこの文書を出しているわけです。だから、これに違反をすると困るんだと。この中では、そういう売春を目的とする婦女の渡航は、いわゆる満二十一歳以上、特に性病のない者のみを日本からは北支と中支だけに限って外務省は身分証明書を発給すると書いてあるわけですわ。ちゃんとそれは行政として出されたことですから、こういうことはやっぱり明確に資料の中から明らかになったということをお伝えいただきたいと思うんです。
 そこで、官房長官、前に私はここで外務大臣が日本の女の人も多かったんですよとおっしゃったのが非常に気になっていたんですけれども、朝鮮からなぜ従軍慰安婦が大量に駆り出されたか。ちょうどこの文書が出た昭和十三年ぐらいから慰安所ができてまいります。その当時の国際社会では、婦人及び児童の売買は国際的な犯罪であるというそういう条約がつくられていた。ですから、日本も加盟をせざるを得なかったんだと思います。そして、売春を目的とする渡航というのは、やはりそれは犯罪ですから、日本政府は国内の女性を慰安婦に送る場合も限定せざるを得なかったわけですね。ですから、そこではっきり限定しておいた。そのかわりに朝鮮、台湾、関東租借地はこの条約の適用地域から除外をしてあるわけですから、植民地の女性が慰安婦の草刈り場になったというのは当然であると思うわけです。
 ですから、当然この慰安婦に朝鮮女性が多かったというのは、これだけでも私は日本政府ははっきりこれは政策的に行ったことだと、こういうことはこれでわかると思いますけれども、それをお認めになりますか。どうぞ。

073 谷野作太郎
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/73
○政府委員(谷野作太郎君) ただいまのお話は、私どもがただいま行っております調査作業に一つの参考とさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

074 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/74
清水澄子君 どうぞ答えてください。

075 遠藤要
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/75
○委員長(遠藤要君) 委員長はこちらにおります。

076 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/76
清水澄子君 はっきり政策だったというのはこれでおわかりだと思います。

077 谷野作太郎
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/77
○政府委員(谷野作太郎君) ただいま明らかになっております文書だけをもって政策という重いものであったかというふうに断定することはできないと思いますので、いま少しく私ども勉強させていただきたいと思います。

078 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/78
清水澄子君 非常に率直じゃないと思いますけれども、じゃそれは改めて調査を約束していただきたいと思います。
 次に、総理にお伺いいたしますけれども、最近フィリピンのラモス大統領が来日されましたけれども、そのときにはどういう慰安婦についてのお話があったでしょうか。

079 高野紀元
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/79
○政府委員(高野紀元君) 今月十一日に行われました宮澤総理とラモス・フィリピン大統領との首脳会談におきまして、従軍慰安婦問題につきましてラモス大統領より、本件の早期解決を希望する旨の御発言がございました。これに対し宮澤総理より、衷心からのおわびと反省を述べ、同時に、日本政府としてさらに事実関係の調査を継続するとともに、我々の気持ちをいかなる形であらわすことができるのか、誠意を持って検討してきている旨の御発言をされました。

080 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/80
清水澄子君 総理はどういうふうにお答えになったんですか。

081 宮澤喜一
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/81
国務大臣宮澤喜一君) ただいま政府委員が記録に基づいてお答えしたとおりでございます。

082 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/82
清水澄子君 私は総理にお伺いしているんです。

083 遠藤要
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/83
○委員長(遠藤要君) 総理がただいまお答えになったでしょう。

084 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/84
清水澄子君 いや、総理はそれに対してどういうふうにお答えになったかと。

085 宮澤喜一
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/85
国務大臣宮澤喜一君) ただいま政府委員が記録に基づいてお答えしたとおりです。

086 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/86
清水澄子君 じゃ、総理は、フィリピンの従軍慰安婦というのは日本軍のフィリピン占領下で起きた問題、それから朝鮮半島の問題は旧植民地下で起きた問題なんですが、この二つの意味合いが違うということを御認識ですか。

087 宮澤喜一
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/87
国務大臣宮澤喜一君) ちょっとお尋ねの意味わかりかねます。

088 高野紀元
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/88
○政府委員(高野紀元君) 今の御質問に関しましては、政府といたしましては、さきの大戦中、フィリピンのようにその領域が我が国軍隊により占領されたことのある地域であれ、あるいは韓国等我が国の領域の一部であったが戦後独立した地域であれ、国籍、出身地のいかんを問わず、いわゆる従軍慰安婦として筆舌に尽くしがたい辛苦をなめられたすべての方々に対し衷心よりおわびと反省の気持ちを申し上げて、我々の気持ちをいかなる形であらわすことができるかということを現在誠意を持って検討してきているという立場でございます。

089 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/89
清水澄子君 それでは外務省の方、ハーグ陸戦法規の第四十六条と、それから一九二九年の捕虜の待遇に関するジュネーブ条約を説明してください。

090 丹波
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/90
○政府委員(丹波實君) ハーグの陸戦法規はジュネーブで作成されました条約でございまして、一九〇七年に作成されたものでございますけれども、陸戦ノ法規慣例ニ関スル条約ということでございます。
 で、陸戦のまさに法規慣例に関します種々の規則が国際条約として締結、ここにまとめられておるということでございますが、特に今の先生の御質問との関連で申し上げれば、この第四十六条を御質問しておられると思いますけれども、第四十六条は「家ノ名誉及権利、個人ノ生命、私有財産並宗教ノ信仰及其ノ遵行ハ之ヲ尊重スヘシ」と。これは占領国の軍が被占領国のこういうものを尊重すべしということでございまして、それからその四十六条の最後の文章は、「私有財産ハ之ヲ没収スルコトヲ得ス」というふうになっておるわけでございます。
 それから、二つ画の条約は一九二九年の捕虜の待遇に関する条約でございますけれども、これは捕虜がその人格及び名誉を尊重されるべきであるという考え方に立って種々の規定が規律されておるということでございます。
 陸戦法規につきましては日本は加盟しておりますけれども、この一九二九年条約には日本は入っていないということでございます。

091 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/91
清水澄子君 つまり、ハーグ陸戦法規の第四十六条というのは、日本は「家ノ名誉」なんということになっているんてすが、これはファミリーとなっています。家族の名誉。ですから、それは家族を構成されているすべての人々、女子、全部入れてのこれは権利であるということです。
 それから、このジュネーブ条約は批准していないと言いますけれども、これは第二次世界大戦が始まったときに連合国と日本はそれを守るという約束をしてあったはずですから、そのことはここで否定なさらない方が歴史を忠実に認識することになると思います。
 そこで、私はお尋ねしたいんですけれども、この二つの条約とも、やはり特に女性、こういう戦争中といえども最低個人の人権、一般民間人の人権を守らなきゃいけないと。そして、特に二九年ジュネーブ条約では、捕虜の人格とあわせてここに特に女性に対する一切の待遇、人権を守らなきゃいけないとなっているわけですけれども、フィリピン人、中国人、オランダ人の従軍慰安婦の場合は、敵国民に当たる一般市民に対して行った占領地の住民の保護義務に違反したということにおいて違いがあるのじゃないですかと私は先ほど伺ったんですけれども、特に二九年ジュネーブ条約、女性の尊厳を求めたその条約にも違反しているのではないか。この点について、外務大臣、いかがでございますか。

092 渡辺美智雄
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/92
国務大臣渡辺美智雄君) ちょっと法律の解釈上の問題ですから条約局長から解説をいたします。

093 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/93
清水澄子君 解説は聞いていません。

094 丹波
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/94
○政府委員(丹波實君) 先ほどの二九年条約、私が日本は入っていないと申し上げた趣旨は、したがって日本は何でもできたということで申し上げたつもりはございません。私は、先生がここでおっしゃる捕虜の人格、名誉は尊重されるべきである、あるいは一般論として婦人はきちっと待遇せられるべきだという考え方は、こういう条約を持ち出すまでもなく、基本的なそれは国際社会に常に通用すべき考え方であるというふうに考えております。
 それから、ハーグの陸戦法規につきましても、先生御承知のとおり総加入条項がございまして、条約としては第二次大戦中にそのまま適用はならなかったかもしれませんけれども、しかし陸戦法規の中で言っております今の個人の生命とかあるいは家の名誉、権利を尊重しろという考え方も、これは国際社会に共通する考え方であったと思います。
 こういう考え方に照らして、先生が問題にしておられる従軍慰安婦の問題については、先ほど総理、官房長官以下政府から答弁しておりますとおり、その筆舌に尽くしがたいいろんな災難をかけて申しわけなかったということを累次我々は表明しておるということでございます。

095 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/95
清水澄子君 それじゃ、その陸戦法規の第三条はどういうことが書いてありますか。

096 丹波
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/96
○政府委員(丹波實君) 条約附属書の方の第三条をおっしゃっておられると思いますけれども、そうでございましょうか。

097 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/97
清水澄子君 一九〇七年の第三条。

098 丹波
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/98
○政府委員(丹波實君) 承知いたしました。
 先生がおっしゃっておられるのは附属書の方ではございませんで、本文の方の第三条と思います。
 これは、第一条が「軍隊に対する訓令」、それから第二条がその条約の適用について書かれておりまして、第三条として「前記規則ノ条項ニ違反シタル交戦当事者ハ、損害アルトキハ、之カ賠償ノ黄ヲ負フヘキモノトス。交戦当事者ハ、其ノ軍隊ヲ組成スル人員ノ一切ノ行為ニ付責任ヲ負フ。」ということが書かれてございます。

099 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/99
清水澄子君 はっきりしています。損害賠償の責任は日本にあるということであります。
 次に、こういうことを総理はお聞きになっていて、この植民地下の女性であれ占領地における女性の虐待であれ、いずれもやっぱり日本は非常に非人道的なことをやってきたと思うわけですけれども、総理は、こういう女性を性的な奴隷にした慰安婦問題というのは、戦争当時ももちろん、及び今日の国際法から見ても、人道に対する罪の犠牲者とお認めになりますか。

100 宮澤喜一
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/100
国務大臣宮澤喜一君) 人道に対する罪というのはよくわかりませんので、お答えを正確にはいたしかねます。今法律的なやりとりでございますから、人道に対する罪というのをちょっと定義をしていただきますとお答えができると思いますが、非常に遺憾なことだということはもう申すまでもないことでございます。

101 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/101
清水澄子君 それならば、極東軍事裁判のときの人道に対する罪というところを読んでください。

102 丹波
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/102
○政府委員(丹波實君) 極東国際裁判所条例ということに基づきまして極東軍事裁判が行われたわけですが、この条例の第五条の一八)、「人道に対する罪 即ち、戦前又は戦時中為されたる殺戮、殲滅、奴隷的虐使、追放其の他の非人道的行為、若は犯行地の国内法違反たると否とを問はず本裁判所の管轄に属する犯罪の遂行として又は之に関聯して為されたる政治的又は人種的理由に基く迫害行為。」、以上でございます。

103 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/103
清水澄子君 総理、いかがですか。

104 河野洋平
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/104
国務大臣河野洋平君) ただいま条約局長から御説明を申し上げました人道に対する罪ということで、極東国際軍事裁判所が裁判をしたわけですけれども、同裁判において人道に対する罪について有罪とされた被告は存在しなかったものと承知いたしております。しかし、これは繰り返し申し上げますが、人道に対する罪について有罪とされた被告がなかったということを私が申し上げましても、そのことが委員が先ほどから述べておられます事柄について我が国がその罪の意識がないとか、そういうことを申し上げているわけではないことはぜひ誤解のないようにお願いをいたしたいと思います。
 いずれにせよ、いわゆる従軍慰安婦について我々が持っております気持ちというものは、この場で何回も申し上げたとおり、そのつらい悲しみ、そういった筆舌に尽くしがたい思いについて我々が何ができるか、何をしなければならないか、そういう思いは十分にあることをぜひ御理解いただきたいと思います。

105 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/105
清水澄子君 重大なことをおっしゃったと思います。私はあえて言わなかったんですけれども、ここでわざわざ人道に対する罪というのがわからないとおっしゃるから極東軍事裁判を申し上げたので、そうしたらそれにはその該当者がいないとおっしゃるんですが、そうなると極東軍事裁判どうぞお調べください。はっきりあります。しかし、そういうことまで否定されるんでしょうか。私はこの問題は後に残しておきたいと思います。

106 遠藤要
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/106
○委員長(遠藤要君) ちょっと、質問者もありのまま尋ねるというか、もっと明確にせぬと。

107 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/107
清水澄子君 じゃ、極東軍事裁判の結果も否定されるんでしょうか。

108 丹波
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/108
○政府委員(丹波實君) サンフランシスコ平和条約の第十一条におきまして、日本は極東国際軍事裁判所の判決の結果と裁判というものを受諾しておりますので、政府として極東軍事裁判の判決を否定するということはあり得ないわけでございます。
 今、官房長官が申し上げましたのは、先生も御承知のとおり、この極東国際裁判所は平和に対する罪、それから、先ほど申し上げたようなハーグの陸戦法規違反といったような通常の戦争犯罪、それから三つ目が人道に対する罪と三つの犯罪というものを基準に裁判した中で、直接人道に対する罪というものでその有罪の判決がおりたということにはなってないということで、前の二つによってその有罪ということは排除されてないわけでございますので、官房長官の御説明が極東軍事裁判上その判決を否定したという結論にならないことは先生御理解いただけると思います。

109 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/109
清水澄子君 余り理解できないんです。  女性の性的な奴隷化は重大な人権侵害だと思いますけれども、そういう侵害された人々の名誉の回復そして人権の回復をする私は義務があると思いますが、総理、そのことに同意なさいますでしょうか。

110 宮澤喜一
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/110
国務大臣宮澤喜一君) そのような耐えがたい苦痛をお与えしたことは、日本政府として極めて遺憾に思うということはしばしば申し上げておるとおりであります。

111 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/111
清水澄子君 同意されますか、名誉回復をする、人権を回復することに。(発言する者あり)

112 遠藤要
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/112
○委員長(遠藤要君) 質問者以外の方は御発言は許しておりません。発言者以外の方には発言を許しておりませんので。

113 谷野作太郎
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/113
○政府委員(谷野作太郎君) したがいまして、ただいま日本政府におきまして進めておりますこの問題についての真相の解明ということがとりもなおさずそういう先生の今御指摘なさったことに通ずるのだと思います。韓国政府もそのように申しております。

114 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/114
清水澄子君 総理、もう一度伺います。
 人権を侵害された人たちの人権を回復する義務、名誉を回復する義務があるんじゃないでしょうかということを申し上げているんです。

115 宮澤喜一
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/115
国務大臣宮澤喜一君) そういう意味で、今事実関係を一生懸命調査をしているということを申し上げておるわけです。

116 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/116
清水澄子君 それでは本当に納得されないと思います。
 次に、昨年十二月十八異国連安保理ボスニア・ヘルツェゴビナヘの女性の残虐行為を非難する決議とかそのほかの戦争犯罪を裁く国際法廷の設置については賛成なさったんですが、そのことと過去のこの問題はどういう関連があるのでしょうか。これは外務大臣お答えください。

117 澁谷治彦(外務省国際連合局長)
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/117
○政府委員(澁谷治彦君) 御指摘の安保理決議につきましては、私どもは賛成いたしました。これらの決議は旧ユーゴにおける悲惨な状況を見逃すことができないという国際社会の共通の意思表示をしたものとして私どもとしては賛成した次第でございます。

118 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/118
清水澄子君 答弁になってない。過去の問題とどういう関連ですかと聞いたんです。  国連で決議されたことと、過去のこの慰安婦問題とはどういうふうな関連性がありますかと聞いているんです。

119 遠藤要
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/119
○委員長(遠藤要君) 澁谷国際連合局長、発言を求めるときはもっと手を挙げて元気よく。

120 澁谷治彦
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/120
○政府委員(澁谷治彦君) 失礼いたしました。
 もちろん私どもといたしましては、こういう決議に対する態度を決する際には過去の問題についても十分意識しておりましたけれども、例えば従軍慰安婦の問題につきましては別途調査が行われておりますし、こちらの決議については現在の悲惨な旧ユーゴの状況について国際社会が共通の意思表示をしようとしている、そういう決議案に対して私どもとしては賛成をしたということでございます。

121 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/121
清水澄子君 この決議は組織的な強姦の禁止、これは犯罪ということなんですね。ですから日本の外交には私は一貫性がないと思います。
 時間がありませんので次に参りますけれども、私はここで総理に四つの政策を提案したいと思うんです。
 総理はソウルで過去を直視する勇気を強調されました。私もそれ全く同感です。ですから、ぜひ歴史教育の中に従軍慰安婦問題を取り入れる努力をしていただきたい。
 それから第二には、第三者による中立公正な調査組織とそして歴史の研究機関、そういうものをはっきりつくっていく、そして民間の人の協力を得て、NGO等の協力も得ながらそこに政府が資金的にも援助をしていく、そういうことを考えたらと思います。
 そしてまた、ことしの政府予算では日本の戦没者のための戦没者追悼平和祈念館というのが二十億円で準備され、二年後に百二十三億円で完成することになっておりますけれども、日本には自国民の被害の記念館しかないというのが国際的にも非難を受けているわけです。ぜひこの加害的な責任を明らかにする歴史記念館の建設を私はここで希望いたします。そのことが後世に過去の問題を教訓として残すことになると思います。
 そして第四番目には、日本は戦後賠償は済んだと言われておりますけれども、ここに、実は外務省の資料の中に日本自身が第一次世界大戦のときにドイツに対して個人補償を求めた記録がございます。ですから、戦争の賠償問題というのはやはり個人の補償を含むのが一般的でありますので、ぜひ個人に届くようなそういう補償をしていただきたい。
 この従軍慰安婦問題というのが私は今後の日本のアジアの外交の試金石と考えておりますので、どうぞ総理、このことについての御見解をお願いしたいと思います。

122 宮澤喜一
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/117
国務大臣宮澤喜一君) 第一の問題につきましては以前にも申し上げておりますが、過去にありました事実は事実として後世の国民にも正直に伝えておく必要がある。それは学校教育の問題でもございますので、学習指導要領のことは昨日も文部大臣お答えでございましたが、そういうふうに考えます。
 それからあと三つの点は、先ほど官房長官が申し上げました我々のそういう謝罪の気持ちをどういう形で言い知れない苦労を、された方々に表明するかということを、この調査が済みましたときにやはり考えなければならないと思っております。

123 清水澄子
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/123
清水澄子君 終わります。

124 遠藤要
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323/124
○委員長(遠藤要君) 以上で清水君の質疑は終了いたしました。(拍手)

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↑第126回国会 参議院 予算委員会 第7号 平成5年3月23日 https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112615261X00719930323