Ob-La-Di Oblako 文庫

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(ロ)娼妓の契約条件 中央職業紹介事務局 『芸娼妓酌婦紹介業に関する調査』より 娼妓の契約条件 1926. 9

 

芸娼妓酌婦紹介業に関する調査

大正十五年九月

中央職業紹介事務局

 

    (ロ)娼妓の契約条件

 次に娼妓の契約証を掲ぐ。しかしてこれを時代的に観るべく、まづ大正三年横浜市において娼妓稼業をなせる娼妓の契約証を掲ぐることにする。

第一万三千七百八十二号

   金銭消費貸借証書謄本

 本職は嘱託人および代理人より聴取したる法律行為に関する陳述の趣旨を左に記載す。

第一条 清水ハツは、鈴木七五郎方において娼妓稼業をなすにつき、同人および清水音吉、志村春一、三名を連帯とし、大正三年三月二十五日、金参百八拾七円を鈴木七五郎より借り受けたり。(仮名)

一項 元金返済方法は清水ハツ、収入揚代金、一個のうち金参銭を座敷料として、金拾六銭を食費として貸し主に支払ひ、残金十六銭を清水ハツの所得とし、そのうち賦金ならびに日常要する諸費を支弁し、娼妓稼業許可の日より毎月月末に至り精算と同時に元金のうちへ金拾円あて月賦をもつて支払ひ、また臨時借用金は所得のうちをもつて第一に支払ふものとす

 ただし精算の上、収得金額月賦金に超過したるときは、その超過金全部も借用金の返済に充つべきこと。

ニ項 娼妓稼業期間は大正三年三月二十五日(許可の日)より六ケ年とす。この間に返済の義務完了せざるときは、さらに期間を延長し返済の義務を果たすべきこと。

第二条 債務者は左の場合においては月賦返還方を取り消し、年一割五分の利子を附し即時完済すること。

一項 月賦金を期日に支払はざるとき。

二項 清水ハツの逃亡もしくは疾病に罹りたるとき。

三項 清水ハツの廃業または転居したるとき。

第三条 清水ハツ所有衣類および一切の物件は前記借用金に対し質権を設定し、債権者の専有に属すること。

 ただし新調品ついても前項を準用す。

第四条 遊客のうち本人の不利益と楼主において認めたるときは登楼を謝絶するも異議なきこと。

第五条 本契約の事項に関する権利関係について債権者の住所をもつて裁判所の管轄とす。

以下略す。

 以上は今から十余年前における時代の契約である。さらに比較的最近における娼妓稼業契約証を見るに、左のごときものである。

第五万四千三百十四号

          金銭消費貸借証書正本

 本職は各嘱託人より聴取したる法律行為に関する陳述の趣旨を左に記載す。

第一条 大正十二年七月二十日、安藤金次郎は金弐千四百円なりを貸し渡し、黒田八兵衛、黒田サキは左の約定により連帯してこれを借り受けたり。(仮名)

一 元金は大正十二年八月二十日限り返済すること。

二 利息は年一割と定め、元金と同時に支払ふこと。

三 期限後といへども債務完際に至るまでは約定利率に準じ損害を賠償すること。

第二条 債務者は本契約による債務を弁済せざるときは直ちに強制執行を受くべきことを認諾したり。

 本旨ほか要件略す。

 この証書は大正十二年七年[→月]二十日、本職役場において作成し列席者に読み聞かせたるところ、各自これを承認したり。よつて本職とともに左に署名捺印す。

 この公正証書には娼妓稼業云々は片言隻語も表はさざるのである、すなはち単なる金銭消費貸借に関する証書にして、債務不履行の場合における強制執行の認諾を主なる要件となせるものごとく、しかるに同時に左記私署証書をもつて娼妓稼業をなすべきことを契約せるのである。

     契  約  書

 自分儀、貴殿方において娼妓稼業をなすにつき左の契約を締結す。

第一条 自分は、娼妓名簿に登録したる日より起算し満六年間、貴殿方に寄寓し貴殿の指揮監督に従ひ娼妓稼業に従事すべし。

第二条 自分は貴殿より金弐千四百円を借り受けたり。

第三条 前条の借用金は娼妓稼業による所得をもつて順次弁済すべし。

 この玉代(揚代金)一個につき弐円なり。内訳金壱円弐拾銭を貴殿の所得とし、残額八拾銭を自分の所得とし、そのうち金五拾銭をもつて借用金の弁済に充て、金参拾銭を小遣となすものとす。

第四条 第二条借用金のほか臨時借用金もしくは貴殿の立替金等生じたるときは、同条借用金に先だち前条ただし書きに準じ弁済すべし。

第五条 普通食費および座敷備品は貴殿の負担とし、自分身支度に関する四季の衣類その他の必要品は自己の負担とす。

第六条 自分疾病のため吉原病院以外において治療を受けたるときは、その費用は自分の負担とす。

第七条 自分の所有に属する一切の動産は、これを借用金の担保に提供し、自分の自由に処置することを得ざるものとす。

第八条 貴殿において貸座敷業を他人に譲渡したるとき、その他、他家に稼ぎ替へを要する事由生じたるときは貴殿の指揮に従ひ、自分は勿論、連帯保証人においても一切異議を申し出でざるものとす。

第九条 連帯保証人は本人の逃亡したる場合において直ちに捜索し、復業せしむべく、自分は逃亡日数を契約期間外に延長すべきことを認諾す。

第十条 連帯保証人は本人の死亡したる場合において引き取り、葬儀の手続きをなすものとす。

 ただし前項の義務履行を遅延したるときは、貴殿において適宜手続きを了し、その費用は連帯保証人において負担するものとす。

第十一条 本契約に違背したるときは、これにより生じたる一切の損害を弁償する責に任ず。

 第七条の動産は貴殿において任意に処分し、損害の全部もしくは一部に充当せらるることを認諾す。

 契約期間内に債務を弁済し能はざる場合もまた同じ。

第十二条 本契約に関する訴訟は東京区裁判所をもつて所轄裁判所となすことを合意す。

  大正十二年七月  日

        父   黒 田 八兵衞【印】

        母   黒 田 サ キ【印】

        娼妓  黒 田 タ ケ【印】

        貸座敷 安 藤 金次郎【印】

               (仮 名)

    (ハ)酌婦の契約条件 

 次に酌婦稼業に関しての契約は公証に依るよるもの稀れで、多くは私署証書をもつて約定をなすのである。ここに該契約証を掲ぐることにする。  

  雇 人 請 証

       原籍東京市本所区業平町二十番地

       住所同上

 

https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/978605/1

藝娼妓酌婦紹介業に關する調査

大正十五年九月

中央職業紹介事務局

 

https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/978605/37

     (ロ) 娼妓の契約條件

次に娼妓の契約證を揭ぐ然して之を時代的に觀るべく、先づ大正三年横濱市に於て娼妓稼業をなせる娼妓の契約證を揭ぐることにする。

第一萬三千七百八十二號

   金錢消費貸借證書謄本

本職ハ嘱託人及代理人ヨリ聽取シタル法律行爲ニ關スル陳述ノ趣旨ヲ左ニ記載ス。

第一條 淸水ハツハ鈴木七五郎方ニ於テ娼妓稼業ヲナスニツキ同人及ビ清水音吉志村春一三名ヲ連帶トシ大正三年三月二十五日金參百八拾七圓ヲ鈴木七五郎ヨリ借受ケタリ。(假名)

一項 元金返濟方法ハ淸水ハツ收入揚代金一個ノ内金參錢ヲ座敷料トシテ金拾六錢ヲ食費トシテ貸主ニ支拂ヒ殘金十六錢ヲ淸水ハツノ所得トシ其内賦金竝日常要スル諸費ヲ支辨シ娼妓稼業許可ノ日ヨリ毎月々末ニ至リ精算ト同時ニ元金ノ内ヘ金拾圓宛月賦ヲ以テ支拂ヒ又臨時借用金ハ所得ノ内ヲ以テ第一ニ支拂フモノ

 

https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/978605/38

トス。

但シ精算ノ上收得金額月賦金ニ超過シタルトキハ其超過金全部モ借用金ノ返濟ニ充ツベキコト。

ニ項 娼妓稼業期間ハ大正三年三月二十五日(許可ノ日)ヨリ六ケ年トス此間ニ返濟ノ義務完了セザルトキハ更ニ期間ヲ延長シ返濟ノ義務ヲ果スベキコト。

第二條 債務者ハ左ノ場合ニ於テハ月賦返還方ヲ取消シ年一割五分ノ利子ヲ附シ卽時完濟スルコト。

一項 月賦金ヲ期日ニ支拂ハザルトキ。

二項 淸水ハツノ逃亡若クハ疾病ニ罹リタルトキ。

三項 淸水ハツノ廢業又ハ轉居シタルトキ。

第三條 淸水ハツ所有衣類及一切ノ物件ハ前記借用金ニ對シ質權ヲ設定シ債權者ノ專有ニ屬スルコト。

但シ新調品ニ就テモ前項ヲ準用ス。

第四條 遊客ノ中本人ノ不利ト樓主ニ於テ認メタルトキハ登樓ヲ謝絕スルモ異議ナキコト。

第五條 本契約ノ事項ニ關スル權利關係ニ付テ債權者ノ住所ヲ以テ裁判所ノ管轄トス。

以下略ス。

以上は今から十餘年前に於ける時代の契約である、更に比較的最近に於ける娼妓稼業契約證を見るに左の如きものである。

第五萬四千三百十四號。

          金錢消費貸借證書正本

 

https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/978605/38

本職ハ各囑託人ヨリ聽取シタル法律行爲ニ關スル陳述ノ趣旨ヲ左ニ記載ス。

第一條 大正十二年七月二十日安藤金次郎ハ金貳千四百圓也ヲ貸渡シ黒田八兵衞黒田サキハ左ノ約定ニ依リ連帶シテ之ヲ借受ケタリ。(假名)

一 元金ハ大正十二年八月二十日限リ返濟スルコト。

二 利息ハ年一割ト定メ元金ト同時ニ支拂フコト。

三 期限後ト雖モ債務完際ニ至ル迄ハ約定利率ニ準ジ損害ヲ賠償スルコト。

第二條 債務者ハ本契約ニ依ル債務ヲ辨濟セサルトキハ直ニ强制執行ヲ受クヘキコトヲ認諾シタリ。

本旨外要件略ス。

「此證書は大正十二年七年[ママ]二十日本職役場に於て作成し列席者に讀聞かせたる處各自之を承認したり、仍て本職と共に左に署名捺印す」此公正證書には娼妓稼業云々は片言隻語も表はさゞるのである、卽ち單なる金錢消費貸借に關する證書にして債務不履行の場合に於ける强制執行の認諾を主なる要件となせるものゝ如く、然るに同時に左記私署證書を以て娼妓稼業をなすべきことを契約せるのである。

     契  約  書

自分儀貴殿方ニ於テ娼妓稼業ヲ爲スニツキ左ノ契約ヲ締結ス

第一條 自分ハ娼妓名簿ニ登錄シタル日ヨリ起算シ滿六年間貴殿方ニ寄寓シ貴殿ノ指揮監督ニ從ヒ娼妓稼業ニ從事スベシ。

第二條 自分ハ貴殿ヨリ金貳千四百圓ヲ借受ケタリ。

 

https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/978605/39

第三條 前條ノ借用金ハ娼妓稼業ニヨル所得ヲ以テ順次辨濟スベシ。

玉代(揚代金)一個ニツキ金貳円也。内譯金壹圓貳拾錢ヲ貴殿ノ所得トシ殘額八拾錢ヲ自分ノ所得トシ、其内金五拾錢ヲ以テ借用金ノ辯濟ニ充テ金參拾錢ヲ小遣トナスモノトス。

第四條 第二條借用金ノ外臨時借用金若クハ貴殿ノ立替金等生ジタルトキハ同條借用金ニ先チ前條但書ニ準ジ辨濟スベシ。

第五條 普通食費及座敷備品ハ貴殿ノ負擔トシ自分身支度ニ關スル四季ノ衣類其他ノ必要品ハ自己ノ負擔トス。

第六條 自分疾病ノタメ吉原病院以外ニ於テ治療ヲ受ケタルトキハ其費用ハ自分ノ負擔トス。

第七條 自分ノ所有ニ屬スル一切ノ動產ハ之ヲ借用金ノ擔保ニ提供シ自分ノ自由ニ處置スルコトヲ得ザルモノトス

第八條 貴殿ニ於テ貸座敷業ヲ他人ニ譲渡シタルトキ其他他家ニ稼替ヲ要スル事由生ジタルトキハ貴殿ノ指揮ニ從ヒ自分ハ勿論連帶保證人ニ於テモ一切異議ヲ申出ザルモノトス。

第九條 連帶保證人ハ本人ノ逃亡シタル場合ニ於テ直ニ搜索シ復業セシムベク自分ハ逃亡日數ヲ契約期間外ニ延長スベキコトヲ認諾ス。

第十條 連帶保證人ハ本人ノ死亡シタル場合ニ於テ引取葬儀ノ手續ヲナスモノトス。

但シ前項ノ義務履行ヲ遲延シタルトキハ貴殿ニ於テ適宜手續ヲ了シ其費用ハ連帶保證人ニ於テ負擔スルモノトス。

 

https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/978605/39

第十一條 本契約ニ違背シタルトキハ之ニ由リ生ジタル一切ノ損害ヲ辨償スル責ニ任ズ。

第七條ノ動產ハ貴殿ニ於テ任意ニ處分シ損害ノ全部若クハ一部ニ充當セラルルヽコトヲ認諾ス。

契約期間内ニ債務ヲ辨濟シ能ハザル場合モ亦同ジ。

第十二條 本契約ニ關スル訴訟ハ東京區裁判所ヲ以テ所轄裁判所トナスコトヲ合意ス。

  大正十二年七月  日

        父   黒 田 八兵衞【印】

        母   黒 田 サ キ【印】

        娼妓  黒 田 タ ケ【印】

        貸座敷 安 藤 金次郎【印】

               (假 名)

    (ハ)酌婦の契約條件 

次に酌婦稼業に關しての契約は公證に依るもの稀れで、多くは私署證書を以て約定をなすのである茲に該契約證を揭ぐることにする。

    雇 人 請 證

       原籍東京市本所區業平町二十番地

       住所同上

 

https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/978605/40
         渡  邊  ハ  ナ
           明治三十七年二月六日生
                 (仮 名)

一 金參百圓也

右渡邊ハナ儀身元確實ナルニツキ拙者保症證人ニ相立チ貴殿方ヘ本日ヨリ酌人座敷働キ雇人ニ避差遣シ候處相相違無之候就テハ本人身支度金ニ差支證人立會唯今前期之金圓正ニ請取借用仕候處確實也然ル上ハ返濟ノ方法ハ來客ヨリ貰ヒ受タル所得金ヲ以テ漸次皆濟可致候若シ雇中本人逃亡或ハ不得止事故ヲ以テ六ケ月以内ニ御暇申受候節ハ右借用返濟ハ勿論本人ニ係ル道中諸入費並ニ紹介人ニ支拂ヘル手數料共我等方ヨリ合テ償却可仕候前書ノ通御約定候上ハ本人ニ何樣ノ儀出來候共本人ニ不拘保證人ハ連帶ノ義務ヲ負ヒ貴殿ノ御請求ニ應ジ計算上異議無ク直ニ辨濟可仕候爲後日雇人引請如件。

第一條 本人ニ對シ給與トシテ毎月末日ニ金五圓宛雇主ヨリ支拂可被下約定ノ事。

第二條 此證書ニ對シ本人ガ滿六ケ月間勤務スル時ハ本人ニ係ル一切ノ費用 (前借金ヲ除ク) ハ總テ雇主ノ負擔タルベキ事。

  大正十年五月二十八日

      本 人  渡  邊  ハ  ナ 【印】

      保証人  渡  邊  藤  吉 【印】

 村  居  助  三  郎  殿

 

https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/978605/40

 

 

https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/978605/41



 

https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/978605/41