【軍事極秘】
昭和十四年七月
[第 70 部の内 第 5 号]
修水渡河作戦に於ける特殊煙使用概況
呂 集 団 司 令 部
修水渡河作戦に於ける特殊煙使用状況
要旨
南昌攻略戦に方り軍は修水右岸既設敵陣地帯に対し軍の所有戦力を統合発揮して之を一挙に突破せんとする方針の下に軍直轄部隊の大部を同河畔に集結すると共に化学戦部隊を各兵団に配属し且化学戦資材の大部を集中して特殊煙の統一且大規模の使用を企図して着々準備を進め三月二十日夕刻砲兵諸隊の攻撃準備射撃に引続き絶好の気象状件下に特殊煙を放射
し加之各種火砲の特殊弾射撃を併用と河岸陣地に拠る敵を震駭し之を制圧して修水河を渡河二十一日払暁主陣地を攻略して南方に向ふ追撃を開始す
一、化学戦準備
(1) 教育.軍は武漢攻略後一時戢翼爾後の作戦を準備するに方り一月初旬各師団及歩工兵連隊瓦斯係将校並び武漢攻略戦間に於ける特殊筒使用の経験者を武昌に集め実戦の経験に基く特殊煙の用法及成果利用に関し所要の教育を実施し各部隊
亦夫々少なくも三乃至五日間の再教育を実施して戦力拡張並其発揮に遺憾なからしめたり
(2) 気象情報
軍は南昌攻略戦の発起に先ち諸文献に依るの外特に修水河畔警備部隊に対しては一月より二月中旬に亘り局地気象の綿密なる観測を実施せしめ(別冊第一其の二の観測値を得)次で引続き攻撃担任部隊をして別冊第一の如く気象観測を実施せしめ別冊第一其の一の如き観測値を得たり
三月二十日に於ける気象観測報告別冊第三の如し
(3) 資材集積計画
特殊弾薬集積計画抜粋 三月七日
集積地
越山市/山口舗/徳安/計
弾種
九四式山砲あか弾
450/630/0/1,080
三八式野砲あか弾
700/700/1,400/2,800
四年式十五榴あか弾
430/1,700/430/2,560
九四式軽迫あか弾
3,700/9,900/1,300/14,900
化学戦資材集積現況表
十四年三月一日現在
第七野戦史瓦斯九江支廠
設置場所 員数
九江/徳安/計
品目
特殊発煙筒
15,769/9,015/24,784
催涙筒 甲
9,313/3,200/12,512
小発煙筒 甲
82,641/36,000/118,641
水上発煙筒
7,760/4,000/11,760
発射発煙筒
39,787/2,550/42,337
特殊発射発煙筒
649/―/649
消 函
4,320/402/4,722
晒 粉
2,436/20/2,456
斥候用探知機
920/60/980
物料探知機
31/13/44
一酸化探知機
6/10/16
防毒具修理箱
36/―/36
同 消耗品
20/―/20
人用消毒包
72,220/―/72,220
馬用消毒包
31,800/―/31,800
音響警報器
56/―/56
風 旗
20/―/20
検知器消耗品
10/―/10
大型発煙筒
60/―/60
代用発煙筒
200/―/200
小音響警報器
7/―/7
吸収缶検査器
13/―/13
長 柄 鎌
94/―/94
備考
1. 右の外特殊筒 10,000 漢口より 発射特殊筒 10,000 南京より九江に三月十九日以後到着せり
2. 九江 徳安の発煙資材は三月七日より逐次前送せり
修水河畔特種煙使用状況要図
_ 106D
(1) 主放射正面 約 5.5 km
(2) 重点 右放射隊
(3) 放射距離 300 m 〜 400 m
(4) 庇煙時間 約 10 分
(5) 使用資材 特/発/催/発射
右放射隊 5,860/1,130/60/10
左放射隊 3,800/456/0/0
右翼陽動 2,060/2,940/1,800/0
計 11,720/4,526/1,860/10
(6) 使用特種弾
LM 462
A 412
BA 276
軍砲兵隊
使用特種弾
SA 1,727
_ 101D
(1) 主放射正面 約 5.5 km
(2) 重点 左放射隊
(3) 放射距離 300 m 〜 400 m
(4) 庇煙時間 約 10 分
(5) 使用資材 特/発/催/水発/発射
右放射隊 2,500/1,116/0/55/20
左放射隊 4,096/351/621/0/582
右陽動 383/2,000/391/75/100
左陽動 31/61/40/0/0
計 7,010/4,128/1,052/130/702
(6) 使用特種弾
LM 617
A 259
BA 185
17/3 月に於ける支流渡河
(1) 陽動 特 106
催 94
発 99
水上 1
(2) 使用特種弾
LM 230
A 210
3 月 21 日
歩兵第 123 連隊 第 2 大隊
特種発煙筒 150
小発煙筒 45
歩兵第 123 連隊 第 1 大隊
特種発煙筒 120
小発煙筒 25
3 月 21 日
6Z(野戦瓦斯第 6 中隊(乙)?)
特種発煙筒 62
小発煙筒 16
特種発煙筒 52
小発煙筒 16
3 月 22 日
歩兵第 157 連隊
特種発煙筒 150
小発煙筒 100
備考
特 特種発煙筒
発 小 発 煙 筒
催 催 涙 筒
水上 水上発煙筒 甲
発射 発射発煙筒を示す
凸(黒塗り)は 3 月 20 日
凸(破線白抜き)は 3 月 17 日
凸(中斜め縞)は 3 月 21 日
凸(中縦縞)は 3 月 22 日の放射を示す
3 月 22 日
6Z(野戦瓦斯第 6 中隊(乙)?)
特種発煙筒 400
催涙筒 200
小発煙筒 200
(3) 敵に与へたる成果
敵の三月二十一日に於ける戦闘要報
羅卓英 宛
第七十九軍長 夏楚中 発
1. 第七十六師当面の敵は二十日夜より二十一日早暁に亘り修水北岸より我狗子嶺、長家舗、王家各処へ向ひ強行渡河を敢行せり 敵は毒瓦斯を放射し 本師第一線の将兵中毒するもの続出し 本師前方医
院に於て死亡するものは殆んど中毒患者なり
敵は機に乗じ渡河を完了し王家 鳳棲山 各所に進出し 我軍南岸陣地を突破せり 本師予備隊を以て午前三時以前に攻撃に参加せしめたるも 敵毒瓦斯弾猛烈を極め 守兵頗る苦戦に陥り退却の余儀なきに至れり 狗子下の第一線部隊死守せるも成らず
湾頭、王頭山、南◯家、皮家山、南岸山、狗子嶺の線に後退し 狗子嶺を以て主陣地とし抗戦に努
めたるも午後に至り敵砲火 又 激烈を加へ 我軍陣地殆ど破壊せらるるに至れるを以て 已むなく荷◯住嶺、上劉家、徐家山、高壠山の線に転移せり.当時 師長 王凌雲、瓦斯弾に中毒す.又 敵機の爆撃に依り灘渓電話線機 破壊せられ 通話不能に陥れり
2. 第一一八師戦闘報告
第一一師八二十一日 万家山、住頭山、◯家を連ぬる線に於て第七十六師長嶺東西之人治に連繫す
↑https://www.jacar.archives.go.jp/das/meta/C11112056400「別冊 修水河渡河戦に於ける特種煙使用概況細部計画抜粋 昭和14年7月 呂集団司令部」JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.C11112056400、https://www.jacar.archives.go.jp/aj/meta/result?DB_ID=G0000101EXTERNAL&DEF_XSL=default&IS_INTERNAL=false&IS_STYLE=default&IS_KIND=summary_normal&IS_START=1&IS_NUMBER=20&IS_TAG_S51=iFi&IS_KEY_S51=F2011112915552612750 第11軍中支那方面作戦経過の概要 昭和13年7月23日~14年3月15日(防衛省防衛研究所 支那-支那事変武漢-16)