Ob-La-Di Oblako 文庫

帝国日本の侵掠戦争と植民地支配、人権蹂躙を記憶し、再現を許さないために、ひたすら文書資料を書き取る。姉妹ブログ「歴史を忘れる民族に未来はない!」https://obladioblako.hateblo.jp/ のデータ·ベースを兼ねる。

「重点使用の観念薄く、徒に少量の使用を反復し、重要時期における集結使用を困難ならしむる場合あり。」「第一線部隊はガス放射に跟随して突入する観念薄く、突入期の遅延と少量使用と相俟つて、敵の斜射·側射による被害多く、被毒地帯の敵も再び射撃するに至る」 野戦ガス第13中隊現況 1938.8.5

野戦ガス第13中隊現況

8月5日、野戦瓦斯第13中隊長代理、坂東中尉の報告によれば、現況概ね左のごとし。

一、編成

長   1 小池歩兵大尉(負傷入院中)
小隊長 3 中尉1、少尉2
段列長 1 准尉
軍獣医部見習医官(獣医部准尉1)
合計  将校以下 343名
    現在員 将校以下 260名
       (戦死、入院その他により減少)
馬匹  120頭(乗馬16頭を含む)
車輌  96車輌
資材  特殊筒  300
    催涙筒 1000
    発煙筒 1000

[上部余白書き込み]

1馬

赤筒60本 1筒 2kg

緑筒60本 1筒 1.8kg

??筒   1本 2kg

1馬 60本

[書き込みここまで]

二、現況に基づく希望事項

1. 編成

イ、長江右岸地区の戦斗は車両の第一線部隊に追随すること困難なる場合多く、資材の車輌携行は不能に陥り、第一線部隊の要求に応じ得ざること多し。
 車輌の一部(20車輌を駄馬具と交換すれば可)を駄馬編成に変換せられたし。

ロ、人事係准尉なく曹長をもつてなすも、功績その他の書類の整理は能力上、曹長にては困難なるをもつて、准尉1名を増加せられたし。

2. 連繋部隊のガス教育

イ、連繋部隊の瓦斯教育は不充分なり。台湾歩兵第1連隊の教育は特に甚し。

 各級幹部の瓦斯使用および利用の観念の著しく誤るもの多く、特に大隊長以上に多し。

 例へば、

 気温の順逆を考慮せず昼間一局地の風向のみを考へて少量のガス使用を命ずるもの多く、意見具申をなすも採用せられず、反つて敵に好目標を程し第一線部隊の損害はこれがため増加し、責任はガス効力の無効に転嫁せしめられあり。

 また重点使用の観念薄く、徒に少量の使用を反復し、重要時期における集結使用を困難ならしむる場合あり。

 現在まで要求せられたる使用法は、内地の演習において使用せらるるごとく僅少の使用(巾100m以下を通常とす)のみ多く、連·大隊のガス兵をもつてして可能なる程度の用法を反復しあり。

 なほ第一線部隊はガス放射に跟随して突入する観念薄く、突入期の遅延と少量使用と相俟つて、敵の斜射·側射による被害多く、被毒地帯の敵も再び射撃するに至る。

三、判決

1.大隊長以上に正鵠なるガス放射の知識を付与するを要す。

2.山地戦の特異性を考察して駄馬編成の一部を段列に加ふるを要す。


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野戰瓦斯第十三中隊現況

八月五日野戦瓦斯第十三中隊長代理坂東中尉ノ報告ニ依レハ現况槪ネ左ノ如シ

一、編成

長   一 小池歩兵大尉(負傷入院中)
小隊長 三 中尉 一、少尉 二
段列長 一 准尉
軍獣医部見習医官(獸医部准尉 一)
合計  將校以下 三百四十三名
    現在員 將校以下 二百六十名
       (戦死、入院其の他に依り減少)
馬匹  百二十頭(乗馬十六頭を含む)
車輌  九十六車輌
資材  特殊筒  三〇〇
    催涙筒 一〇〇〇
    発煙筒 一〇〇〇

[上部余白書き込み]

1馬

赤筒60本 1筒 2kg

緑筒60本 1筒 1.8kg

□□筒 1本2kg

1馬 60本

[書き込みここまで]

二、現况ニ基ク希望事項

1. 編成

イ、長江右岸地区ノ戰斗ハ車輌ノ第一線部隊ニ追隨スルコト困難ナル場合多ク 資材ノ車輌携行ハ不能ニ陥リ第一線部隊ノ要求ニ應シ得サルコト多シ
車輌ノ一部(二十車輌ヲ駄馬具ト交換スレハ可)ヲ駄馬編成ニ変換セラレタシ

ロ、事係准尉ナク 曹長ヲ以テナスモ 功績其ノ他ノ書類ノ整理ハ能力上曹長ニテハ困難ナルヲ以テ准尉一名ヲ増加セラレタシ

2. 連繋部隊ノ瓦斯教育

イ、連繋部隊ノ瓦斯教育ハ不充分ナリ

台湾歩兵第一聨隊ノ教育ハ特ニ甚シ
各級幹部ノ瓦斯使用及利用ノ觀念ノ著シク誤ルモノ多ク 特ニ大隊長以上ニ多シ

例ヘハ

気温ノ順逆ヲ考慮セス 晝間一局地ノ風向ノミヲ考ヘテ 少量ノ瓦斯使用ヲ命スルモノ多ク 反テ敵ニ好目標ヲ呈シ 第一線部隊ノ損害ハ之カタメ増加シ 責任ハ瓦斯効力ノ無効ニ轉嫁セシメラレアリ、

又、重奌使用ノ觀念薄ク 徒ニ少量ノ使用ヲ反復シ 重要時期ニ於ケル集結使用ヲ困難ナラシムル場合アリ

現在迠要求セラレタル使用法ハ 内地ノ演習ニ於テ使用セラルヽ如ク 僅少ノ使用(中百米以下ヲ通常トス)ノミ多ク 聨大隊ノ瓦斯兵ヲ以テシテ可能ナル程度ノ用法ヲ反復シアリ

尚 第一線部隊ハ瓦斯放射ニ跟随シテ突入スル観念薄ク 突入期ノ遅延ト少量使用ト相俟テ 敵ノ斜射 側射ニ依ル被害多ク 被毒地帶ノ敵モ再ヒ射撃スルニ至ル

三、判決

1. 大隊長以上ニ正鵠ナル瓦斯放射ノ知識ヲ附與スルヲ要ス、

2. 山地戰ノ特異性ヲ考察シテ駄馬編成ノ一部ヲ段列ニ加フルヲ要ス、

 

↑第11軍中支那作戦覚書類綴(昭和13年7月15日~14年1月30日)より

野戦瓦斯第13中隊現況 https://www.jacar.archives.go.jp/das/image/C11112060400


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