【機密】 急
書記官長【村上】 書記官【印】【印】 理事官【野田】
別紙添付
米三機密合第 3777
昭和十二年八月三十一日
外務次官 堀内謙介
【外務次官之印】
枢密院書記官長 村上恭一殿
不良分子の渡支取締方に関する件
本件に関し今般、別紙写しの通り各地方庁に通牒いたしおきたるにつき、委細右にて御了悉の上、公務のため支那に派遣せらるる者に対しては、当分の間、右手続き乙号様式により身分証明書を発給相成る様、お取計ひ相成りたく、この段申進す。
【機密】 写 急
別紙添付
米三機密合第三七七六号
昭和十二年八月三十一日
外務次官 堀内謙介
不良分子の渡支取締方に関する件
従来支那に渡航するには旅券の必要なく自由なりしところ、今回の日支事変に関連し支那在留邦人は多数引揚げ、その遺留財産に対する保護警戒等も行渉り兼ぬる今日、あるいは残留せる邦人を煽動して事をなさんとし、あるいは混乱に紛れて一儲けせんとする等の無頼不良の徒の支那渡航は、この際、厳にこれを取締るの必要あり、すでに満洲国および関東州においてはそれぞれこれが措置をなし、また関係在支帝国公館よりも右取締方申越の次第ありたるについては、追って何分の義申進するまで、今後当分の間、支那に渡航せんとする (一) 一般邦人に対しては所轄警察署より、(二) また公務のため派遣せらるる者に対しては派遣官公署より、別紙手続により身分証明書を発給することとし、右身分証明書を有するか、または正式旅券の発給を受けたる者のほかは支那に向け乗船せしめざる様、御取扱ひ相成たし。しかして右身分証明書の発給に関しては、前記の趣旨により、業務上または家庭上、その他正当なる目的のため至急渡支を必要とする者のほかは、この際なるべく自発的に渡支を差控へしむることに御取計ひ相成り、もって在支皇軍の軍後方地区の治安確保に協力相成る様いたしたし。なほ本件の趣旨は一般に周知方、しかるべく御取計ひ相成りたく、右関係官庁とも協議の上、命によりこの段申進す。
本信送付先 警視総監、各地方長官、関東州庁長官
本信写送付先 内閣書記官長、法制局長官、賞勲局総裁、資源局長官、対満事務局次長、企画庁次長、枢密院書記官長、宮内次官、各省次官、社会局長官、貿易局長官、特許局長官、会計検査院長、行政裁判所長官、貴族院書記官長、衆議院書記官長、日本郵船会社長、大阪商船会社長
一、日本内地および各殖民地より支那に渡航する日本人(朝鮮人および台湾籍民を含む)に対しては、当分の間、居住地所轄警察署長において甲号様式のごとき身分証明書を発給するものとす。
ただし制服着用の日本軍人軍属に対してはこの限りにあらず。
前項の身分証明書は、公務のため派遣せらるる官吏その他の者に対しては、派遣官公署において乙号様式によりこれを発給するものとす。
二、警察署長第一項の身分証明書の下付願出ありたるときは、本人の身分、職業、渡航目的、要件、期間等を調査し左の通り取扱ふ。
(イ) 素性、経歴、平素の言動等不良にして、渡支後、不正行為をなすの虞ある者に対しては身分証明書を発給せず。
(ロ) 業務上、家庭上、その他正当のに目的のため至急渡支を必要とする者以外の者に対しては、なるべく自発的に渡支を差控へしむるものとす。
三、出発港所轄警察署は第一項の身分証明書または帝国政府発給の旅券を有する者にあらされざれば支那に向け乗船せしめざるものとす。
四、本身分証明の発給に対しては手数料を徴収せず。
五、本手続は支那行外国旅券の発給を妨くるものにあらず。
六、本手続は支那現地の事態の許す限り可及的速やかにこれを解除するものとす。
七、本手続は即時施行す。
ただし第三項に関する限り昭和十二年九月十日よりこれを施行するものとす。
(甲号様式)
身分証明書
本 籍
現住所
職 業
氏 名
生 年 月 日
昭和十二年 月 日
警察署長 官 氏 名 (印)
(乙号様式)
身分証明書
官 職 氏 名
生 年 月 日
右証明す
昭和十二年 月 日
(派遣官公署)官職 氏 名 (印)
【機密】 急
書記官長【村上】 書記官【印】【印】 理事官【野田】
別紙添付
米三機密合第三七七七號
昭和十二年八月三十一日
外務次官 堀内謙介
【外務次官之印】
樞密院書記官長 村上恭一殿
不良分子ノ渡支取締方ニ關スル件
本件ニ關シ今般別紙寫ノ通各地方廳ニ通牒致置タルニ付委細右ニテ御了悉ノ上公務ノ爲支那ニ派遣セラルル者ニ對シテハ當分ノ間右手續乙號樣式ニ依リ身分證明書ヲ發給相成樣御取計相成度此段申進ス
【機密】 寫 急
別紙添付
米三機密合第三七七六號
昭和十二年八月三十一日
外務次官 堀内謙介
不良分子ノ渡支取締方ニ關スル件
從來支那ニ渡航スルニハ旅券ノ必要ナク自由ナリシ處今囘ノ日支事變ニ關聯シ支那在留邦人ハ多數引揚ケ其ノ遺留財產ニ對スル保護警戒等モ行涉リ兼ヌル今日或ハ殘留セル邦人ヲ煽動シテ事ヲ爲サントシ或ハ混亂ニ紛レテ一儲セントスル等ノ無賴不良ノ徒ノ支那渡航ハ此際嚴ニ之ヲ取締ルノ必要アリ旣ニ滿洲國及關東州ニ於テハ夫々之カ措置ヲ爲シ又關係在支帝國公館ヨリモ右取締方申越ノ次第アリタルニ付テハ追テ何分ノ義申進スル迄今後當分ノ間支
那ニ渡航セントスル (一) 一般邦人ニ對シテハ所轄警察署ヨリ (二) 又公務ノ爲派遣セラルル者ニ對シテハ派遣官公署ヨリ別紙手續ニ依リ身分證明書ヲ發給スルコトトシ右身分證明書ヲ有スルカ又ハ正式旅券ノ發給ヲ受ケタル者ノ外ハ支那ニ向ケ乘船セシメサル樣御取扱相成度而シテ右身分證明書ノ發給ニ關シテハ前記ノ趣旨ニ依リ業務上又ハ家庭上其ノ他正當ナル目的ノ爲至急渡支ヲ必要トスル者ノ外ハ此際可成自發的ニ渡支ヲ差控ヘシムルコトニ御取計相成以テ在支皇軍ノ軍後方地區ノ治安確保ニ協力相成樣致度尚本件ノ趣旨ハ一般ニ周知方可然御取計相成度右關係官廳トモ協議ノ上依命此弾申進ス
本信送付先 警視總監、各地方長官、關東州廳長官
本信寫送付先 内閣書記官長、法制局長官、賞勳局總裁、資源局長官、對滿事務局次長、企劃廳次長、樞密院書記官長、宮内次官、各省次官、社會局長官、貿易局長官、特許局長官、
一、日本内地及各殖民地ヨリ支那ニ渡航スル日本人(朝鮮人及臺灣籍民ヲ含ム)ニ對シテハ當分ノ間居住地所轄警察署長ニ於テ甲號樣式ノ如キ身分證明書ヲ發給スルモノトス
但シ制服着用ノ日本軍人軍屬ニ對シテハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ身分證明書ハ公務ノ爲派遣セラルル官吏其ノ他ノ者ニ對シテハ派遣官公署ニ於テ乙號樣式ニ依リ之ヲ發給スルモノトス
二、警察署長第一項ノ身分證明書ノ下付願出アリタルトキハ本人ノ身分、職業、渡航目的、要件、期間等ヲ調査シ左ノ通取扱フ
(イ) 素性、經歷、平素ノ言動等不良ニシテ渡支後不正行爲ヲ爲スノ虞アル者ニ對シテハ身分證明書ヲ發給セズ
(ロ) 業務上家庭上其ノタ正當のに目的ノ爲至急渡支ヲ必要トスル者以外ノ者ニ對シテハ可成自發的ニ渡支ヲ差控ヘシムルモノトス
三、出發港所轄警察署ハ第一項ノ身分證明書又ハ帝國政府發給ノ旅
券ヲ有スル者ニ非ラサレハ支那ニ向ケ乘船セシメサルモノトス
四、本身分證明ノ發給ニ對シテハ手數料ヲ徴收セス
五、本手續ハ支那行外國旅券ノ發給ヲ妨クルモノニ非ス
六、本手續ハ支那現地ノ事態ノ許ス限リ可及的速ニ之ヲ解除スルモノトス
七、本手續ハ卽時施行ス
但シ第三項ニ關スル限リ昭和十二年九月十日ヨリ之ヲ施行スルモノトス
(甲號樣式)
身分證明書
本 籍
現住所
職 業
氏 名
生 年 月 日
昭和十二年 月 日
警察署長 官 氏 名 (印)
(乙號樣式)
身分證明書
官 職 氏 名
生 年 月 日
右證明ス
昭和十二年 月 日
(派遣官公署)官 職 氏 名 (印)
↑「不良分子ノ渡支取締方ニ関スル件」JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.A06050953600、枢密院文書・任免給与・昭和元年~昭和二十二年(国立公文書館 枢00141100)