Ob-La-Di Oblako 文庫

帝国日本の侵掠戦争と植民地支配、人権蹂躙を記憶し、再現を許さないために、ひたすら文書資料を書き取る。姉妹ブログ「歴史を忘れる民族に未来はない!」https://obladioblako.hateblo.jp/ のデータ·ベースを兼ねる。

「帝国の威信を毀け、皇軍の名誉を害ふのみに止まらず、銃後国民、特に出征兵士遺家族に好ましからざる影響を与ふると共に、婦女売買に関する国際条約の主旨にも悖ること無きを保し難きを以て」「醜業を目的として渡航する婦女…の募集、周旋等に際して、軍の了解又は之と連絡あるが如き言辞、其の他軍に影響を及ぼすが如き言辞を弄する者は、総て厳重に之を取締まること。」 内務省警保局長発 地方長官宛通牒「支那渡航婦女の取扱に関する件」 1938. 2. 23

甲   閲了:■拾参年弐月弐拾参日

    施行:■拾参年弐月□□□日

主管局号及び受付月日:【内務省/発警第5号/13.2.22】䓁

警保局警発乙第77号

起案 昭和13年2月18日

大臣 花押  次官 【羽生】 文書課長【数藤】 主任【宮崎】

 警保局長【富田】 

   警務課長【町村】 事務官【印】

   外事課長【豊島】 事務官【印】

   防犯課長【?野】 事務官【印】

【部外秘】 【秘】

庁府県長官宛通牒案(除東京)

      警保局長   

        花押      

   支那渡航婦女の取扱に関する件

 最近支那各地における秩序の回復に伴ひ渡航者著しく増加しつつあるも、これらのなかには同地に料理店、飲食店、カフェーまたは貸座敷類似の営業者と連係を有し、これらの営業に従事することを目的とする婦女、すくなからざるものあり。さらにまた、内地においてこれら婦女の募集·周旋をなす者にして、あたかも軍当局の了解あるかのごとき言辞を弄する者も、最近各地に頻出しつつある状況にあり。

 婦女の渡航は、現地における実情に鑑みるときは、けだし必要、やむを得ざるものあり、警察当局においても特殊の考慮を払ひ、実情に即する措置を講ずるの要ありと認めらるるも、これら婦女の募集、周旋等の取締りにして適正を欠かんか、帝国の威信をきずつけ皇軍の名誉をそこなふのみに止まらず、銃後国民、特に出征兵士遺家族に好ましからざる影響を与ふるとともに、婦女売買に関する国際条約の主旨にも悖ることなきを保し難きをもって、かたがた現地の実情その他各般の事情を考慮し、爾今これが取扱ひに関しては左記の各号に準拠することといたしたく、命によりこの段、通牒に及び候ふ。

       記

一、醜業を目的とする婦女の渡航は、現在内地において娼妓其の他事実上醜業を営み、満二十一歳以上、かつ花柳病その他伝染性疾患なき者にして、北支·中支方面に向ふ者に限り、当分の間これを黙認することとし、昭和十二年八月、米三機密合第 3776 号外務次官通牒による身分証明書を発給すること。

二、前項の身分証明書を発給するときは、稼業の仮契約期間満了し、またはその必要なきに至りたる際は速やかに帰国する様、あらかじめ諭旨すること。

三、醜業を目的として渡航せんとする婦女は、必ず本人自ら警察署に出頭し身分証明書の発給を申請すること。

四、醜業を目的とする婦女の渡航に際し身分証明書の発給を申請するときは、必ず同一戸籍内にある最近尊属親、尊属親なきときは戸主の承認を得せしむることとし、若しその承認を与ふべき者なきときは、その事実を明かならしむること。

五、醜業を目的とする婦女の渡航に際し身分証明書を発給するときは、稼業契約その他各般の事情を調査し、婦女売買または略取誘拐等の事実なき様、特に留意すること。

六、醜業を目的として渡航する婦女、その他一般風俗に関する営業に従事することを目的として渡航する婦女の募集、周旋等に際して、軍の了解またはこれと連絡あるがごとき言辞、その他軍に影響を及ぼすがごとき言辞を弄する者は、総て厳重にこれを取締まること。

七、前号の目的をもって渡航する婦女の募集、周旋等に際して広告宣伝をなし、または事実を虚偽若くは誇大に伝ふるがごときは、総て厳重これを取り締まること。また、これが募集、斡旋等に従事する者については厳重なる調査を行ひ、正規の許可または在外公館等の発行する証明書等を有せず、身元の確実ならざる者にはこれを認めざること。

 

   第二案

       警保局長      

 拓務省管理局長宛
 陸軍省軍務局長宛
 外務省条約局長宛
  〃 亜米利加局長宛(各通)

  支那渡航婦女の取扱に関する件

 標記の件に関し別紙の通り地方長官に通牒いたし置き候ふ。右、参考のため申進候ふ。


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甲   閲了 ■拾参年貮月貮拾參日

    施行 ■拾参年貮月□□□日

主管局號及受付月日 【内務省/発警第5号/13.2.22】

警保局警發乙第七七号

起案 昭和十三年二月十八日

大臣 花押  次官【羽生】 文書課長【數藤】 主任【宮崎】

 警保局長【富田】 

   警務課長【町村】 事務官【印】

   外事課長【豐島】 事務官【印】

   防犯課長【□野】 事務官【印】

【部外秘】 【秘】

庁府県長官宛通牒案(除東京)

       警保局長   
         花押      
 支那渡航婦女ノ取扱ニ関スル件


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最近支那各地ニ於ケル秩序ノ恢復ニ伴ヒ渡航者著シク増加シツツアルモ是等ノ中ニハ同地ニ料理店、飲食店、「カフェー」又ハ貸座敷類似ノ營業者ト聯繫ヲ有シ是等ノ營業ニ従事スルコトヲ目的トスル婦女寡カラザルモノ


f:id:ObladiOblako:20201012155147j:image
アリ更ニ亦内地ニ於テ之等婦女ノ募集周旋ヲ為ス者ニシテ恰モ軍当局ノ了解カルアノ如キ言辞ヲ弄スル者モ最近各地ニ頻出シツツアル状況ニアリ婦女ノ渡航ハ現地ニ於ケル實情ニ鑑ミルトキハ蓋シ必要已ムヲ得ザルモノアリ警察當局ニ於テモ特殊ノ考慮ヲ拂ヒ實情ニ卽スル措


f:id:ObladiOblako:20201012160017j:image
置ヲ講ズルノ要アリト認メラルルモ是等婦女ノ募集周旋䓁ノ取締ニシテ適正ヲ欠カンカ帝國ノ威信ヲ毀ケ皇軍ノ名譽ヲ害フノミニ止マラズ銃後國民特ニ出征兵士遺家族ニ好マシカラザル影響ヲ與フルト共ニ婦女賣ニ関スル國際條約ノ主旨ニモ悖ルコト無キヲ


f:id:ObladiOblako:20201012212648j:image
保シ難キヲ以テ旁現地ノ実情其ノ他各般ノ亊情ヲ考慮シ爾今之ガ取扱ニ関シテハ左記各號ニ準據スルコトト致度依命此段及通牒候

      記


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一、醜業ヲ目的トスル婦女ノ渡航ハ[✕已ムヲ得ザル事由アルトキハ✕]現在内地ニ於テ娼妓其ノ他事実上醜業ヲ營ミ、満二十一歳以上 且 花柳病其ノ他傳染性疾患ナキ者ニシテ北支、中支方面ニ向フ者ニ限リ 當分ノ間 之ヲ黙認スルコトトシ<昭和十二年八月米<三>機密合㐧三七七六號外務次官通牒ニ依ル>身分證明書ヲ発給スルコト


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二、前項ノ身分証明書ヲ発給スルトキハ[✕渡航✕]<稼業>ノ假契約期間満了シ又ハ其ノ必要ナキニ至リタル際ハ速ニ歸國スル様豫メ諭旨スルコト

三、醜業ヲ目的トシテ渡航セントスル婦女ハ必ズ本人自ラ警察署ニ出頭シ身分證明書ノ発給ヲ申請スルコト

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四、醜業ヲ目的トスル婦女ノ渡航ニ際シ身分證明書ノ発給ヲ申請スルトキハ 必ズ 同一戸籍内ニアル最近尊属親、尊属親ナキトキハ戸主ノ承認ヲ得セシムルコトトシ 若シ其ノ承認ヲ與フベキ者ナキトキハ其ノ事実ヲ明ナラシムルコト

五、醜業ヲ目的トスル婦女ノ渡航ニ際シ身分證

 

明書ヲ発給スルトキハ 稼業契約其ノ他各般ノ事情ヲ調査シ 婦女売買 又ハ略取誘拐等ノ事実ナキ様 特ニ留意スルコト

六、醜業ヲ目的トシテ渡航スル婦女其ノ他一般風俗ニ関スル營業ニ從事スルコトヲ目的トシテ渡航スル婦女ノ募集周旋等ニ際シテ軍ノ了解又


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ハ之ト連絡アルガ如キ言辞 其ノ他 軍ニ影響ヲ及ボスガ如キ言辞ヲ弄スル者ハ総テ嚴重ニ之ヲ取締ルコト
七、前号ノ目的ヲ以テ渡航スル婦女ノ募集周旋等ニ際シテ廣告宣傳ヲナシ 又ハ事実ヲ虚偽若ハ誇大ニ傳フルガ如キハ 総テ嚴重之ヲ


f:id:ObladiOblako:20201012222154j:image
取締ルコト 又 之●募集斡旋等ニ従事スル者ニ付テハ嚴重ナル調査ヲ行ヒ正規ノ許可又ハ在外公舘等ノ発行スル證明書等ヲ有セズ身元ノ確実ナラザル者ニハ之ヲ認メザルコト

 

   苐二案
       警保局長      
 拓務省管理局長宛
 陸軍省軍務局長宛
 外務省條約局長宛
  〃 亜米利加局長宛(各通)

  支那渡航婦女ノ取扱ニ関スル件

標記ノ件ニ関シ別紙ノ通リ地方長官ニ通牒致置候 右為参考申進候

 

↑件名:支那渡航婦女の取扱に関する件(庁府県)
https://www.jacar.archives.go.jp/das/meta/A05032040800 1~7/54
JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.A05032040800、支那渡航婦女の取扱に関する件(庁府県)(国立公文書館