Ob-La-Di Oblako 文庫

帝国日本の侵掠戦争と植民地支配、人権蹂躙を記憶し、再現を許さないために、ひたすら文書資料を書き取る。姉妹ブログ「歴史を忘れる民族に未来はない!」https://obladioblako.hateblo.jp/ のデータ·ベースを兼ねる。

「帝国は速やかに蔣政権の支那中央政権たることを否認すべし」「親日防共を標榜実践する政権の樹立を急務とす。而して斯くの如き政権の樹立は、帝国が毅然として蔣政権を打倒し、新政権擁護の旗幟を闡明せざる限り不可能なり。」 中支那方面軍司令官、松井石根大将の意見具申 1938.1.7

陸軍省受領 陸支密受第二一一号

陸軍省 大臣官房 昭和13.1.10 午後

陸軍省 軍事課 13.1.10 20

陸軍省 軍務課 13.1.11 15

陸軍省 新聞班 受領 13.1.12 18

閲 【大臣】【杉山元】 【次官】【梅津】 【軍軍事】【高瀬】 【軍務】 【新聞班】

中方参第十四号
    意見具申の件
  昭和拾参年壱月八日
      中支那方面軍 司令官 松井石根【印】
 陸軍大臣 杉山元殿

蔣政権に対する帝国の採るべき態度に就て、別紙の如く意見を具申す。

【宮本】別紙二部、軍務課保管す。

別紙は当課に保管す。主務者【高瀬】 1月17日 軍事課

【極秘】        昭和十三年一月七日
            中支那方面軍司令部

蔣政権に対する帝国の採るべき態度に就て

   判 決

帝国は速やかに蔣政権の支那中央政権たることを否認すべし。

   理 由

一、蔣政権を交渉対手として和を講ぜんと欲するに於ては、現に進展中の作戦を控制して作戦地域の拡大を防止し、又、簇生する治安維持会乃至地方自治政権等の樹立に制限を加へざるべからず。蓋し蔣政権を対手とする講和の議あるに於ては、健全なる地方政権の樹立不可能なるのみならず、万一和議成立の場合は此等知日親日支那人を犠牲とせざるべからざる結果、帝国に対する信頼は全く地を払ふに至るべく、更に徒なる作戦地域拡大は、撤兵に方り却て支那側をして勝利感を懐かしむるの虞あればなり。

ニ、翻て蔣政権を対手とする和議案を考察するに、蔣介石周囲の現状は、長期抗戦を固執せざる限り西安事件の再来を避くべからず、恐らく蔣の生命すら明日をも期し難し。累次の人事異動、軍隊の再編、遊撃戦法の奨励、狂奔的、第三国就中蘇連の利導等は之が反証にして、蔣政権の将来は 円石を山嶺より転ずるの勢を以て容共赤化の趨向を辿り、之と講和を議し有利なる成果を収めんとするも 蓋し木に拠りて魚を求めんとするの類のみ。若し強て和平の招来に焦慮せんか、其の結果たるや百害ありて一利なからん。

三、乃ち今や帝国の取るべき態度は、彼の長期抗戦に対し我も亦持久の方策を講じ、徐ろに支那民衆の自省を促し蔣政権の崩壞を図るの外なし。

 之が為には所要の作戦地域を占拠し、之に依りて欲する資源を利用し、市場を開拓し、内国民の負担を軽減するを要す。

 右目的の達成を容易にする為、親日防共を標榜実践する政権の樹立を急務とす。而して斯くの如き政権の樹立は、帝国が毅然として蔣政権を打倒し、新政権擁護の旗幟を闡明せざる限り不可能なり。蓋し帝国が一面、政権を対手として和を講ぜんとしある状態に於て、生命を賭し反蔣政権樹立に真剣なる努力を払ふ支那人は、皆無ならんとするも稀有なればなり。

四、帝国が蔣政権を対手とし、有利なる講和の成立に一縷の望を属し、荏苒、日を送り、作戦を控制し、目途なき新政権の樹立に力の空費を行ひある間、蔣政権の長期抗戦準備は愈〻完成し、此の間、或は第三国の干渉を惹起し、内国民の統一ある戦争意志を消磨し、事態の推移は予想を許さざるべし。

 茲に於てか帝国は断乎、蔣政権に対し支那中央政権たることを否認し、一切の交渉を断絶し、自主邁往するを目下の急務とす。

 右の根本決意確立せば、政戦両略は自ら其の向ふべきところ明かとなり、具体的策案、期せずして正鵠を得 、内国民の思想を統一強化し、長期戦争の覚悟は軈て敵の戦意を喪失せしむる結果となり、却て短期戦争を以て有終の成果を収むるに至るの可能性あり。即ち今や断の一字あるのみ。

 

f:id:ObladiOblako:20200917004206j:plain


陸軍省受領 陸支密受第二一一號
大臣官房 昭和13.1.10 午後
軍事課 13.1.10 20
軍務課 13.1.11 15
新聞班 受領 13.1.12 18

閲 【大臣】【杉山元】 【次官】【梅津】 【軍軍事】【高瀬】 【軍務】 【新聞班】

中方参第十四號
    意見具申ノ件
  昭和拾參年壹月八日
     中支那方面軍 司令官 松井石根【官印】
 陸軍大臣 杉山元殿

蔣政權ニ對スル帝國ノ採ルヘキ態度ニ就テ 別紙ノ如ク意見ヲ具申ス

 

【宮本】別紙二部 軍ム課 保管ス

別紙ハ當課ニ保管ス 主務者印【高瀬】1月17日 軍事課

 

f:id:ObladiOblako:20200917004254j:plain


【極秘】         昭和十三年一月七日
               中支那方面軍司令部

蔣政權ニ對スル帝國ノ採ルヘキ態度ニ就テ

   判 決

帝國ハ速ニ蔣政權ノ支那中央政權タルコトヲ否認スヘシ

   理 由

一、蔣政權ヲ交渉對手トシテ和ヲ講セント欲スルニ於テハ 現ニ進展中ノ作戰ヲ控制シテ作戰地域ノ擴大ヲ防止シ 又 簇生スル治安維持會 乃至 地方自治政權等ノ樹立ニ制限ヲ加ヘサルヘカラス 蓋シ蔣政權ヲ對手トスル講和ノ議アルニ於テハ 健全ナル地方政權ノ樹立 不可能ナルノミナラス 萬一 和議成立ノ場合ハ 此等知日親日支那人ヲ犠牲トセサルヘカラサル結果 帝國ニ對スル信頼ハ全ク地ヲ拂フニ至ルヘク 更ニ徒ナル作戰地域擴大ハ 撤兵ニ方リ 却テ支那側ヲシテ勝利感ヲ懷カシムルノ虞アレハナリ

ニ、翻テ蔣政權ヲ對手トスル和議案ヲ考察スルニ 蔣介石周圍ノ現狀ハ長期抗戰ヲ固執セサル限リ西安事件ノ再來ヲ避クヘカラス 恐ラク蔣ノ生命スラ明日ヲモ期シ難シ 累次ノ人事異動、軍隊ノ再編、遊擊戰法ノ奨勵、狂奔的 第三國 就中 蘇聯ノ利導等ハ之カ反證ニシテ 蔣政權ノ將來ハ 円石ヲ山嶺ヨリ轉スルノ勢ヲ以テ容共赤化ノ趨向ヲ辿リ 之ト講和ヲ議シ有利ナル成果ヲ収メントスルモ 蓋シ木ニ據リテ魚ヲ求メントスルノ類ノミ 若シ强テ和平ノ招來ニ焦慮センカ 其結果タルヤ百害アリテ一利ナカラン

三、乃チ今ヤ帝國ノ取ルヘキ態度ハ 彼ノ長期抗戰ニ對シ我モ亦 持久ノ方策ヲ講シ 徐ロニ支那民衆ノ自省ヲ促シ 蔣政權ノ崩壞ヲ圖ルノ外ナシ

之カ爲ニハ所要ノ作戰地域ヲ占據シ 之ニ依リテ欲スル資源ヲ利用シ 市場ヲ開拓シ 内國民ノ負擔ヲ輕減スルヲ要ス

右目的ノ達成ヲ容易ニスル爲 親日防共ヲ標榜實践スル政權ノ樹立ヲ急務トス 而シテ斯クノ如キ政權ノ樹立ハ 帝國カ毅然トシテ蔣政權ヲ打倒シ 新政權擁護ノ旗幟ヲ闡明セサル限リ不可能ナリ 蓋シ帝國カ一面 政權ヲ對手トシテ和ヲ講セントシアル狀態ニ於テ 生命ヲ賭シ反蔣政權樹立ニ眞劍ナル努力ヲ拂フ支那人ハ 皆無ナラストスルモ稀有ナレハナリ

四、帝國カ蔣政權ヲ對手トシ 有利ナル講和ノ成立ニ一縷ノ望ヲ屬シ 荏苒 日ヲ送リ 作戰ヲ控制シ 目途ナキ新政權ノ樹立ニ力ノ空費ヲ行ヒアル間 蔣政權ノ長期抗戰準備ハ愈〻完成シ 此間 或ハ第三國ノ干渉ヲ惹起シ 内國民ノ統一アル戰爭意志ヲ消磨シ 事態ノ推移ハ豫想ヲ許ササルヘシ

茲ニ於テカ帝國ハ断乎 蔣政權ニ對シ支那中央政權タルコトヲ否認シ 一切ノ交渉ヲ断絶シ 自主邁往スルヲ目下ノ急務トス

右ノ根本決意 確立セハ 政戰兩略ハ自ラ其嚮フヘキトコロ明トナリ 具体的策案 期セスシテ正鵠ヲ得 内國民ノ思想ヲ統一强化シ 長期戰爭ノ覺悟ハ軈テ敵ノ戰意ヲ喪失セシムル結果トナリ 却テ短期戰爭ヲ以テ有終ノ成果ヲ収ムルニ至ルノ可能性アリ 即チ今ヤ断ノ一字アルノミ

 

陸支密大日記 昭和13年 支受大日記(密)其2

昭和13年自1月14日至1月26日

意見具申の件
https://www.jacar.archives.go.jp/das/image/C04120160600