南京攻略に関する意見
昭和十二月[→年]十一月三十日
丁集団司令部
一、要領
南京攻略は、先づ敵が湖東会戦に於て蒙りし精神的打撃、及び指揮組織の混乱を未だ回復し得ず、且つ南京防禦の組織完成せざるの期に乗じ、神速果敢なる追撃に依り一撃に之を急襲奪取するを以て第一案とし、若し敵にて態勢を整頓し防備堅固にして要塞戦を惹起する虞あるに至りたる場合には、特種の方策を採るものとして之を第二案とす。
而して先づ第一案を敢行し、已むを得ざる場合に於て第二案の実施に移行するものとす。
[中略]
三、第二案
南京を急襲に依り奪取し得ざる場合の攻略案。
此の場合に於ても正攻法の要領に依り力攻することを避け、左記要領に依り攻略す。
急襲案と同一要領に依り、先づ南京に急追し包囲態勢をて完了し、主として南京市街に対し徹底的に空爆、特にイペリツト及焼夷弾を以てする爆撃を約一週間連続的に実行し、南京市街を廃墟たらしむ。
[中略]
2. 本攻撃に於ては徹底的に毒瓦斯を使用すること極めて肝要にして、此の際、毒瓦斯使用を躊躇して再び上海の如き多大の犠牲を払う如きは忍び得ざるところなり。
一方、軍としては南京攻略の際、敵の毒瓦斯使用及細菌散布は当然あるものと判断し、所要の準備あるを要す。
第10軍作戦指導に関する参考資料 其2(6)より
「南京攻略に関する意見」
https://www.jacar.archives.go.jp/das/image/C11111743000 p.22-p.28