判決
第四､國内ノ情勢
1. 事變発生以來 高潮セル國民ノ抗戰意思ハ 依然 繼続シ 目下ノ處 危虞ヲ要セスト認ムルモ 長期戰爭狀態ニ入ランカ 戰爭𢌞避ノ機運 漸次醞醸シ 惹イテハ反戰熱ノ擡頭ヲ見ルノ虞ナシトセス
卽チ產業組織ノ改變期間ニ於ケル失業者ノ發生､戰時景気ニ伴フ物價ノ騰貴等ニ基ク國民生活ノ不安ハ 轉シテ戰爭囘避ノ思想ヲ發生スル虞 大ニシテ 最モ警戒ヲ要スルハ 來年度以降ナリト判斷セラル 又 出征兵士 並 其家族ノ戰爭囘避熱 及 戰死者遺族 並 戰傷者ノ不滿等モ漸次 表面化スルノ傾向ニ在リ
右ノ如キ自然發生的戰爭囘避熱ニシテ漸次瀰漫スルトキハ共產黨 及 蘇､支､英､米等の惡質策動ヲ招來シ 惹イテハ反戰熱ニ轉化スルノ虞 極メテ多シ
然レトモ作戰ニシテ順調ニ進捗シ 施策ニシテ機宜ヲ得ンカ 本情勢ノ醞醸ヲ押制シ得ヘシ
2. 日滿 及 北支範域内ニ保有スル天然資源ノ總量ハ米､蘇ニ次キ 石油 ｢ゴム｣ 及 數種ノ關鍵金屬原料ヲ除クノ外 自給自足シ得ヘシ 然レトモ此等天然資源ヲ利用スル產業ノ情況ヲ觀ルニ 從來 我工業政策カ所謂平和產業ニ偏シ 軍需產業 卽チ重工業ハ未タ十分ナラサルヲ以テ 軍需產業ノ擴充ヲ圖ルコト絶對ニ必要ナリト認ム
対策
第四､國内施策
縦令 數年ニ亘ル長期戰ニ堕スルモ之ニ耐エ得ル各有形無形ノ抗戰力ヲ維持昂揚スルニ遺憾ナカラシム
一､全國民ノ繼戰意思ヲ維持昂揚スル爲 斷續的ニ清新ナル刺激ヲ與フルト共ニ 前途ノ光明ヲ失ハシメサラシムルコトヲ主眼トシテ國民精神ヲ指導ス 以下列擧スヘキ諸政策ノ遂行ニ方リテモ亦 右ノ着意ヲ加味スルモノトス
二､國内ノ不滿ヲ防遏スル爲ニ採ルヘキ方策
- 出生兵士､戰傷兵士 及 其家族 並 戰死者遺族ノ救援､優遇 及 職業保障ニ關スル方策
- 不勞利得者ノ制御ヲ目的トスル方策
- 暴利取締方策
- 浮華輕佻ヲ戒メ､銃後ノ後援ヲ旺ンニシ､｢働カサレハ食フヘカラス｣トノ精神ニ基ク勤勞主義ノ徹底ヲ圖ルヘキ方策
三､滿､鮮､灣諸民族ニ對シテ採ルヘキ方策
- 帝國實力ノ實相ヲ普及徹底セシム
- 爾後帝國ノ發展ニ伴ヒ諸民族ハ齊シク利益ヲ享受スル方策
四､國力充實ニ關スル方策
速ニ國家總動員ヲ實施シ 曩ニ立案セラレタル產業五年計畫（要スレハ一部ヲ修正）ヲ遂行ス
右ノ外 前ニ述ヘタル所ニ依リ 北支領有地域ニ於ケル產業開發ヲ實行ス
五､防諜 並 防共政策ノ徹底
↑支那事変関係一件 第十八巻
３８．支那ガ長期抵抗ニ入ル場合ニ対スル情勢判断
https://www.jacar.archives.go.jp/das/image/B02030551400
