Ob-La-Di Oblako 文庫

帝国日本の侵掠戦争と植民地支配、人権蹂躙を記憶し、再現を許さないために、ひたすら文書資料を書き取る。姉妹ブログ「歴史を忘れる民族に未来はない!」https://obladioblako.hateblo.jp/ のデータ·ベースを兼ねる。

【工事中】日本書紀 天孫降臨と天壤無窮の神勅

一書曰、天照大神、勅天稚彥曰「豐葦原中國、是吾兒可王之地也。然慮、有殘賊强暴横惡之神者。故汝先往平之。」乃賜天鹿兒弓及天眞鹿兒矢遣之。天稚彥、受勅來降、則多娶國神女子、經八年無以報命。故、天照大神、乃召思兼神、問其不來之狀。時思兼神、思而告曰「宜且遣雉問之。」於是、從彼神謀、乃使雉往候之。其雉飛下、居于天稚彥門前湯津杜樹之杪而鳴之曰「天稚彥、何故八年之間未有復命。」時有國神、號天探女、見其雉曰「鳴聲惡鳥、在此樹上。可射之。」天稚彥、乃取天神所賜天鹿兒弓・天眞鹿兒矢、便射之。則矢達雉胸、遂至天神所處。時天神見其矢曰「此昔我賜天稚彥之矢也。今何故來。」乃取矢而呪之曰「若以惡心射者、則天稚彥必當遭害。若以平心射者、則當無恙。」因還投之、卽其矢落下、中于天稚彥之高胸、因以立死。此世人所謂返矢可畏緣也。

 一書[あるふみ]に曰はく、天照大神、天稚[あめわかひこ]に勅[みことのり]して曰く、「豊葦原中国[とよあしはらなかつくに]は、是吾が児[みこ]の王[おう]たるべき地[くに]なり。然れども慮[おもひみ]るに、残賊強暴横[ちはやぶる]悪しき神者[かみども]有り。故[かれ]、汝[いまし]先づ往[ゆ]きて平[む]けよ」とのたまふ。乃ち天鹿児弓[あまのかごゆみ]および天鹿児矢[あまのかごや]を賜ひて遣す。天稚彦、勅を受けて来降[くだ]りて、則ち多[さは]に国神[くにつかみ]の女子[むすめ]を娶[と]りて、八年[やとせ]に経[な]るまで報命[かへりことまう]さず。故、天照大神、乃ち思兼神を召して、其の来[まうこ]ざる状[かたち]を問ひたまふ。時に、思兼神、思ひて告[まう]して曰さく、「且[また]雉[きぎし]を遣して問ひたまうべし」とまうす。是に、彼[そ]の神の謀[はかりごと]に従ひて、乃ち雉を使[つかは]して往きて候[み]しむ。其の雉飛び下りて、天稚彦が門[かど]の前ノ湯津杜樹[ゆつかつら]の杪[すえ]に居て、鳴きて曰はく「天稚彦、何の故ぞ八年[やとせ]の間、未だ復命有[かへりことまう]さぬ」といふ。時に国神[くにつかまみ]有り。天探女[あまのさぐめ]と号[なづ]く。其の記事を見て「鳴声[ねなき]悪[あや]しき鳥、此の樹の上[すえ]に在り。射[いころ]しつべし」といふ。天稚彦、乃ち天神[あまつかみ]の賜ひし天鹿児弓・天真鹿児矢を取りて、便[すなは]ち射[いころ]しつ。則ち矢、雉の胸より達[とほ]りて、遂に天神の所処[みもと]に至る。時に天神、其の矢を見[みそなは]して曰はく、「此[こ]は昔[いむさき]我が天稚彦に賜ひし矢なり。今何の故にか来つらむ」とのたまひて、則ち矢を取りて呪[ほ]キて曰はく、「若し悪[きたな]心を以て射ば、天稚彦は、必ず遭害[まじこ]れなむ。若し平[きよ]き心を以て射ば、無恙[さき]区あらむ」とのたまふ。因りて還し投[す]てたまふ。即ち其の矢落ち下りて、天稚彦が高胸[たかむなさか]に中[た]ちぬ。因りて立[たちどころ]に死[かく]れぬ。此[これ]、世人[よのひと]の所謂る、返矢畏るべしといふ縁[ことのもと]なり。

時、天稚彥之妻子、從天降來、將柩上去而於天作喪屋、殯哭之。先是、天稚彥與味耜高彥根神友善。故味耜高彥根神、登天弔喪大臨焉。時此神形貎、自與天稚彥恰然相似、故天稚彥妻子等見而喜之曰「吾君猶在。」則攀持衣帶、不可排離、時味耜高彥根神忿曰「朋友喪亡、故吾卽來弔。如何誤死人於我耶。」乃拔十握劒、斫倒喪屋。其屋墮而成山、此則美濃國喪山是也。世人惡以死者誤己、此其緣也。時、味耜高彥根、神光儀華艶、映于二丘二谷之間、故喪會者歌之曰、或云、味耜高彥根神之妹下照媛、欲令衆人知映丘谷者是味耜高彥根神、故歌之曰、

阿妹奈屢夜 乙登多奈婆多廼 汚奈餓勢屢 多磨廼彌素磨屢廼 阿奈陀磨波夜 彌多爾 輔柁和柁邏須 阿泥素企多伽避顧禰

又歌之曰、

阿磨佐箇屢 避奈菟謎廼 以和多邏素西渡 以嗣箇播箇柁輔智 箇多輔智爾 阿彌播利和柁嗣 妹慮豫嗣爾 豫嗣豫利據禰 以嗣箇播箇柁輔智

此兩首歌辭、今號夷曲。

 

既而天照大神、以思兼神妹萬幡豐秋津媛命、配正哉吾勝勝速日天忍穗耳尊爲妃、令降之於葦原中國。是時、勝速日天忍穗耳尊、立于天浮橋而臨睨之曰「彼地未平矣、不須也頗傾凶目杵之國歟。」乃更還登、具陳不降之狀。故、天照大神、復遣武甕槌神及經津主神、先行駈除。時二神、降到出雲、便問大己貴神曰「汝、將此國、奉天神耶以不。」對曰「吾兒事代主、射鳥遨遊在三津之碕。今當問以報之。」乃遣使人訪焉、對曰「天神所求、何不奉歟。」故、大己貴神、以其子之辭、報乎二神。二神乃昇天、復命而告之曰「葦原中國、皆已平竟。」時天照大神勅曰「若然者、方當降吾兒矣。」且將降間、皇孫已生、號曰天津彥彥火瓊瓊杵尊。時有奏曰「欲以此皇孫代降。」故天照大神、乃賜天津彥彥火瓊瓊杵尊八坂瓊曲玉八咫鏡・草薙劒、三種寶物。又以中臣上祖天兒屋命・忌部上祖太玉命・猨女上祖天鈿女命・鏡作上祖石凝姥命・玉作上祖玉屋命凡五部神、使配侍焉。因勅皇孫曰「葦原千五百秋之瑞穗國、是吾子孫可王之地也。宜爾皇孫、就而治焉。行矣、寶祚之隆、當與天壤無窮者矣。」

 既にして、天照大神[あまてらすおほみかみ]、思兼神[おもひかねのかみ]の妹[いろも]万幡豊秋津媛命[よろづはたとよあきつひめのみこと]を以[も]て、正哉吾勝勝速日天忍穂耳尊[まさかあかつかちはやひあまのおしほみみのみこと]に配[あは]せまつりて妃[みめ]として、葦原中国[あしはらなかつくに]に降[あまくだ]しまさしむ。是の時に、勝速日天忍穂耳尊、天浮橋[あまのうきはし]に立たして、臨睨[おせ]りて曰[のたま]はく「彼の地[くに]は未平[さや]げり。不須也[いな]頗傾[かぶし]凶目杵之[しこめき]国か」とのたまひて、乃[すなは]ち更に還り登りて、具[つぶさ]に降[あまくだ]りまさざる状[かたち]を陳[まう]す。故[かれ]、天照大神、復武甕槌神[たけみかづちのかみ]及び経津主神[ふつむさぬしのかみ]を遣はして、先づ行きて駈除[はら]はしむ。時に二[ふたはしら]の神、出雲[いづものくに]に降到[あまくだ]りて、便[すなは]ち大己貴神[おほあなむちのかみ]に問ひて曰はく、「汝[いまし]、此の国を将[も]て、天神[あまつなみ]に奉らむや以不[いな]や」とのたまふ。対[こた]へて曰[まう]さく、「吾が児事代主[ことしろぬし]、射鳥遨遊[とりのあそび]して、三津の碕[さき]に在り。今当[まさ]に問ひて報[かへりことまう]さむ」とまうす。乃ち使人[つかひ]を遣して訪[と]ふ。対ヘて曰さく、「天神の求[こ]ひたまふ所を、何[いかに]ぞ奉らざらむや」とまうす。故、大己貴神、其の子の辞[ことば]を以て、二の神に報す。二の神、乃ち天[あめ]に昇りて、復命[かへりこと]をもて告[まう]して曰[まうさ]く、「葦原中国は、皆已[すで]に平[む]け竟[お]へぬ」とまうす。時に天照大神、勅[みことのり]して曰はく、「若し然らば、方[まさ]に吾が児を降しまつらむ」とのたまふ。且将[まさ]に降しまさむとする間[ころ]に、皇孫[すめみま]、已に生[あ]れたまひぬ。号[みな]を天津彦彦火瓊瓊杵尊[あまつひこひこほのににぎのみこと]と曰す。時に奏[まう]すこと有りて曰はく、「此の皇孫を以て代ヘて降さむと欲[おも]ふ」とのたまふ。故、天照大神、乃ち天津彦彦火瓊瓊杵尊に八坂瓊[やさかに]の曲玉及び八咫[やたの]鏡・草薙[くさなぎの]剣、三種[みくさ]の宝物[たから]を賜ふ。又、中臣の上祖[とほつおや]天児屋命[あまのこのやねのみこと]・忌分[いみべ]の上祖太玉命[ふとたまのみこと]・猨女[さるめ]の上祖天鈿女命[あまのうずめのみこと]・鏡作[かがみつくり]の上祖石凝姥命[いしこりどめのみこと]・玉作[たますり]ノ上祖玉屋命[たまやのみこと]、凡て五部[いつものを]の神[かみたち]を以て、配[そ]へて侍らしむ。因り手、皇孫に勅して曰はく、「葦原の千五百[ちいほ]秋の瑞穂[みづほ」の国は、是、吾が子孫[うみのこ]の王[きみ]たるべき地[くに]なり。爾[いまし]皇孫、就[い]でませ治[しら]せ。行矣[さきくませ]。宝祚[あまつひつぎ]の皇孫、就[い]でませ治[しら]せ。行矣[さきくませ]。宝祚[あまつひつぎ]の隆えまさむこと、当に天壌[あめつち]と窮り無けむ」とのたまふ。

已而且降之間、先驅者還白「有一神、居天八達之衢。其鼻長七咫、背長七尺餘、當言七尋。且口尻明耀、眼如八咫鏡而赩然似赤酸醤也。」卽遣從神往問。時有八十萬神、皆不得目勝相問。故特勅天鈿女曰「汝是目勝於人者、宜往問之。」天鈿女、乃露其胸乳、抑裳帶於臍下、而咲㖸向立。是時、衢神問曰「天鈿女、汝爲之何故耶。」對曰「天照大神之子所幸道路、有如此居之者誰也、敢問之。」衢神對曰「聞天照大神之子今當降行、故奉迎相待。吾名是猨田彥大神。」時天鈿女復問曰「汝將先我行乎、抑我先汝行乎。」對曰「吾先啓行。」天鈿女復問曰「汝何處到耶。皇孫何處到耶。」對曰「天神之子、則當到筑紫日向高千穗槵觸之峯。吾則應到伊勢之狹長田五十鈴川上。」因曰「發顯我者汝也。故汝可以送我而致之矣。」天鈿女、還詣報狀。皇孫、於是、脱離天磐座、排分天八重雲、稜威道別道別、而天降之也。果如先期、皇孫則到筑紫日向高千穗槵觸之峯。其猨田彥神者、則到伊勢之狹長田五十鈴川上。卽天鈿女命、隨猨田彥神所乞、遂以侍送焉。時皇孫勅天鈿女命「汝、宜以所顯神名爲姓氏焉。」因賜猨女君之號。故、猨女君等男女、皆呼爲君、此其緣也。高胸、此云多歌武娜娑歌。頗傾也、此云歌矛志。