昭和十九年十月
國民動員計劃に伴ふ移入朝鮮人勞
務者並在住朝鮮人の要注意動向
（豫算說明資料）
【極秘】
内務省警保局 保安課
目 次
第一、概 說
第二、移入朝鮮人勞務者の要注意動向
（一）槪 況
（二）集團暴行事件中警察官に反抗せる事例
（三）思想分子の策動事件
（四）參考表
第三、一般在住朝鮮人の要注意動向
（一）槪 況
（二）思想運動の狀況
（三）勞務者の狀況
（四）各種犯罪の狀況
（五）朝鮮人問題を繞る民心の動向
（六）朝鮮人の農村方面轉進傾向
第一、槪 說
戰時下内地に於ける勞務事情は、朝鮮人勞務の活用を最高度に要請さるゝに至り、現に年[×二×]<年>十數万に餘る（本年は二十九万）多數の朝鮮人勞務者が、國民動員計畫に基き新に内地に渡來しつゝあり、而かも之等は一部青少年を除きしは槪ね鮮内に於ける所謂下層階級の小作農民、日稼人夫なる爲素質劣惡にして、且つ言語、習俗を異にし、その生活態度は鮮内のその儘を固執し、凡そ内地慣習に對する順應性に疎く容易に向上せさる等の事情より著しく内地人の指彈嫌悪を昂めつゝある實情なり。
而して多面内地に於ける旣住朝鮮人に在りても又槪ね叙上の如く素質劣惡にして、豫て各種犯罪を敢行し而かも暫々極悪兇暴犯を出し、或は借地借家問題其の他の諸紛議を醸し、或は不衞生極まる密住地域を構成する等内地人より嫌忌さ
るゝ幾多の事象を各地に於て續出せる爲、内地人の所謂朝鮮人觀を極めて蔑視的乃至嫌惡的ならしめ、一方之に對する朝鮮人の態度も又自から對立的、反抗的となりその反感は胸奥深かく相當深刻なるものあり寧ろ執念化し居るやの傾向顕顯著にして就中關東大震災當時に惹起されたる朝鮮人問題の如きは遮間の事情に强力なる楔的印象として殘碎し居り、戰局の緊迫に伴ひ叙上内鮮對立感情は、相互にその起 [ﾏﾏ] 趨を徒らに憶測危懼し、尠からず不安に驅られ居るものゝ如く極めて複雑微妙なる雰圍氣を抱藏しつゝあり前途眞に逆賭し難きものある實情なり。
卽ち斯ゝる情勢の下にて叙上の如く多數の朝鮮人而かも急激に增加するを餘儀なくせしめらるゝに於ては、銃後治安上は素より、内鮮協力乃至朝鮮人の皇民化誘掖上の問題よりするも之等朝鮮人に對する指導取締は特に關係機構を整備し、
强力適切なる施策を以て臨むの要極めて緊喫なりと謂ひ得べし。
第二、移入朝鮮人勞務者の要注意動向
（一）槪 況
豫て朝鮮人勞務者の素質的缺陷は、關係方面より種々指彈さるゝ所あり、現に昭和十四年以降國民動員計畫により移入せしめつゝある勞務者にありては、移入後逃走者の續出、勞□罷、怠業、各種犯罪の敢行、内地人との對立鬪爭、内地婦女子に對する如何はしき行爲等幾多警察事故を極めて頻繁に惹起しつゝあり之等素質の劣悪なるものゝ激增は、内地治安を著しく脅かしつゝあるところなり。而かも最近は鮮内に於ける勞務事情もまたは著しく逼迫を告ぐるに至り、當局に於ける供出勞務者の人選は自ら嚴選を期し難きは否み難く、從つて最近の移入者は素質劣惡なるに加へて不良不純分子の介入も又
相當あるべき事情に强られ之か取締は極めて戒心すべきものあるを痛感さる。現に之等移入勞働者は關係方面の强力、適切なる指導取締にも付拘之か就勞狀況は依然逃走者の續出各種紛爭議等警察事故を頻發しつゝある等極めて微々たる向上に過ぎざる狀況なり素より之は言語、習俗、民族性を異にする斯の種勞務者に對する勞務管理乃至取締の極めて至難なるによるものなるべきも、一面彼等の素質の劣惡なる一端を如實に呈示し居るものと謂ひ得べし。
而して最近に於ける之か要注意動向を槪觀せは、本年上半期に於ける各種紛爭議事件の發生は一八四件、參加人員七、六五九名の多數に及び、昨年同期に比すれは、件數に於て一〇件、參加人員に於て三、〇〇二名の增加を示し、特に之等紛争議事件に於て、彼等が多衆團結乃至附和雷同し棍棒其の他兇略を持つて事業主側内地人勞務係員或ひは取締警察官等
襲擊し、器物を損壞し甚しきは死傷者を出す等の騷擾を極むる事件も相當續出し、今年上半期に於ては叙上發生件數中斯の種衆團暴行事件は八一件にして總數の四四％を占め居れり。斯くの如く之等移入[朝]鮮人勞務者の惹起する紛爭議は極めて偏執狂的規模と性格を帶ふるものにして之が取締は僅少なる警察力を以てしては容易に鎭静し難く、現に一部職?者にありては、之が鎭壓を軍の出動に俟たんとするものあり、現に軍の出動ありたる事件も一、二に止まらざる狀況なり。
又最近の特異動向として思想的不穩分子の介在する傾向顯著となりたるは看過し難き事象たり。卽ち一部思想分子に在りては、之等勞務者の職域が戰力增强に直接密接なる關係あるに着想し、之を指導して生產阻害を爲し、日本の敗戰と朝鮮の獨立を畫策するものにして直接勞務者となりて潛入し又は外部に在りて意識分子を混入せしむる等巧みに勞務者に働き
かけ之か不平不滿を捉て之を民族的に組?織?煽動しつゝあり、而かも之等勞務者も又容易に之が扇動誘惑に乘ずる性格あり、旣に表面化し取締を加へたる事件は八件に及び居る狀況にして、斯の種不穩分子の策動は戰時下極めて危險にして之が策動の完封は刻下の喫緊事たりと思惟さる。
尚之等勞務者は一般に無知妄迷なる所より、時局に對すり辨別力に缺け、總じて徒らに利己的觀點に於てのみ物事を推斷する傾向露骨にして、時局の緊迫に伴ひ徒らに身邊を危懼し、或ひは國家の要請する事情等は全く度外視して職域を放棄して逃走し、各地を轉々として警察取締に脅へてつゝ所謂闇的生活に耽?るもの續出し、現に之等逃走による減耗は計畫移入數の三六％に當る高率にして、之等は勞務の適正配置を紊るは素より在住朝鮮人の動態をも著しく混迷ならしめ治安上にも至大なる障害を生じつゝある次第なり。
卽ち叙上動向に鑑み、當局に在りては、愈々取締機構の整備を遂ぐると共に一層の創意工夫を凝し、以て不良、不温分子の策動の完封を期しつゝあり。
而して最近に於ける主要なる要注意動向を摘録せは次の如し。
（二）集団暴行事件中警察官に反抗せる事例
(1) 北海道空知郡赤平礦業所（移入朝鮮人勞務者一、三〇五名就勞）に於ては、本年四月契約期間滿了したる移入朝鮮人勞務者十五名に對し當時定着を勸奬したる處、何れも一應了解し再契約に捺印せるも心底には相當不滿を抱藏し居りたるものゝ如く、其の後本年六月期間滿了となる同僚六十名を煽動し、是等と共に其の後の定着勸奬に應ぜず、若し會社が之を强行するに於ては力に訴へるべく謀議し、之が承認捺印を求め結束を固めんとする等と不穩なる動向を
↑https://www.jacar.archives.go.jp/das/meta/A05020292800 「国民動員計画に伴ふ移入朝鮮人労務者並在住朝鮮人の要注意動向」JACAR（アジア歴史資料センター）Ref.A05020292800、種村氏警察参考資料第１０７集（国立公文書館）
