Ob-La-Di Oblako 文庫

帝国日本の侵掠戦争と植民地支配、人権蹂躙を記憶し、再現を許さないために、ひたすら文書資料を書き取る。姉妹ブログ「歴史を忘れる民族に未来はない!」https://obladioblako.hateblo.jp/ のデータ·ベースを兼ねる。

第二十七回帝国議会 貴族院 朝鮮に施行すべき法令に関する法律案ほか十一件 特別委員会 議事速記録より 1911. 3. 10

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第二十七囘帝國議會貴族院
朝鮮ニ施行スヘキ法令ニ關スル法律案外十一件特別委員会議事速記錄第一號抄(明四四、三、一〇)

◯岡野敬次郎君 ‥‥‥第一ニオ尋ネシタイコトハ、朝鮮ヲ併合イタシマシタ當時カラ憲法ノ全部ガ直チニ朝鮮ニ行ハルルモノデアルト云フ見解ヲ採ラルルヤ否ヤト云フノデアリマス、是モ私ガ申上ゲルマデモナク學者ノ議論トシテハ二樣ノ說ガアルヤウデアリマスケレドモ、ソレハ私ハ問ハヌノデアリマス、唯政府ハ憲法ハ朝鮮ニ行ハルルト云フ見解ヲ採ラレタルヤ否ヤト云フコトヲ私ハ第一ニ御尋ネシタイノデアリマス、‥‥‥‥

◯國務大臣(侯爵桂太郎君)唯今、岡野君カラ數箇條ニ亘ツテ御質問ガゴザイマシタ、其ノ第一ノ御質問ハ卽チ憲法ハ全部朝鮮ニ施行セラレ

 

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テ居ルヤ否ヤ、斯ウ云フ御質問ニ對シマシテハ本官ヨリオ答ヘヲ致シマシテ、其他ノ箇條ニ於キマシテハ政府委員カラオ答ヘヲ致サセヤウト考ヘマス、是ハ政府ニ於キマシテモ二樣ノ見解ヲ採リ居ルノデゴザイマス、或ハサウ云フ見解ノ方ガ多數デアツタト云フコトモ其時ノ實感デアリマシタ、然ルニ旣ニ此前臺灣ノ併合ニ對シマシテ、政府ハ我ガ新領土ニ憲法ガ行ハレルト云フ解釋ヲ採リマシテ、彼ノ六十三號ナル法律ガ發布ニナツタ譯デゴザイマス、其後、日露戰爭ノ結果ト致シマシテ樺太ガ我ガ領土ニ編入ニナリマシタ、此時モ矢張リ同樣ノ見解ヲ採ツタノデゴザイマス、デ此時ノ政府ハ卽チ二個ノ政府デアリマス、各〻異ツタ政府ニ於テ此見解ヲ採ツタノデゴザイマス、デ本官

 

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ハ旣ニ新領土ニ於テ再度マデ斯ノ如キ見解ヲ採ツタニ拘ラズ此朝鮮併合、卽チ我ガ新領土ニ對シマシテ更ニ此見解ヲ異ニスルト云フコトハ宜シクナイト云フ考ヘヲ以チマシテ、卽チ憲法ガ行ハレルト云フ方ノ見解ヲ採リマシテ、而シテ此緊急勅令ヲ發布シテ置イテ而シテ唯今承諾ヲ求ムルニ至ツタ次第デアリマス、左樣ナ見解デゴザイマス

◯前田利定(本案ニ期限ヲ附スベシトノ意見ヲ述フ)

◯國務大臣(侯爵桂太郎君)此場合ニ於キマシテ一言申述ベテ置キタイト考ヘマス、唯今前田子爵ハ如何ニモ院議ヲ重ンジ、憲法ノ本議ニ基イテ喋々御議論デゴザイマスルガ、ドウカ曩ニモ申述ベマシタ如ク、本官ハ此見解ノ上ニ於キマシテ、旣ニ二ツノ異ナル政府ニ於キマシテ同ジ見解ヲ採リマシタモノヲ、此朝鮮ニ對シテ異ナル見解ヲ採ルト云

 

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フノハ穩カナラヌト云フコトカラシテ、憲法以外ノ論ノアルニモ拘ラズ、憲法範圍ト云フ解釋ヲ採ツタノデアリマス、然ルニ事實ハデス、臺灣ノ如キモノデナク、又樺太ノ如キモノデハ無論ナイノデアリマス、兎ニモ角ニモ千萬人以上ノ人口ヲ有シ、一國ヲ成シテ居ツタ所ノ韓國デアツシタノデアリマス、此國ヲ我ガ帝國ニ併合致シマスルニ際シテハ、事實ニ於キマシテハ無論爲シ得ルコトデアツタナラバ、憲法ノ範圍外ニモ置キタイト云フ希望ハ尤モナコトデアツタト考ヘルノデアリマス、實際ニ於キマシテ今後朝鮮ノ統治ヲ致ス上ニ付キマシテハ、朝鮮人ヲシテ疑惑ヲ生ゼシムルヤウナコトヲ成ルベクシナイ方ガ適當デアルト考ヘルノデゴザイマス、故ニ憲法上、若クハ院議ヲ重ンズルト云フ御議論ニ於キマシテハ些カ本官ハ之ニ喙ヲ挟ム次第デアリマセヌ

 

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ガ、一方ニ於テハ朝鮮ヲ統治スルト云フ點ニ重キヲ置カレマシタナラバ、無制限ト云フ‥‥‥此御協贊ヲ下サルコトニ御同意ヲ得能フコトデアラウカト考へマス、ドウカ其物、其異ツテ居ルト云フ所ヲ、ドウカ御洞察クダスツテ無制限ニ御協贊ヲ下サレ、併セテ憲法ノ範圍ニ在ルモノデアリマスカラ、將來統治宜シキヲ得テ内地ト同樣ニシテ宜シイ時期ガ參ツタナラバ、何時デモ廃スルコトガ出來ルノデアリマスガ、本官ノ見マス所デハ斯樣ナ容易イモノデハ朝鮮ノ統治ハナイト信ジテ居リマス、ドウカ其邊ハ御參酌クダサイマシテ、原案ニ御[贊]成アラムコトヲ偏ニ希望イタシマス

 

↑第 27 回帝国議会 貴族院 朝鮮に施行すへき法令に関する法律案外十一件特別委員会 第 1 号 明治 44 年 3 月 10 日 

 

第二十七回
帝 国  議 会
貴 族 院
朝鮮に施行すべき法令に関する法律案
外十一件
特別委員会議事速記録第一号

付託議案
 朝鮮に施行すべき法令に関する法律案
 明治四十三年勅令第三百二十六号(承認を求むる件)
 [以下略]

委員氏名[略]

  明治四十四年三月十日 (金曜日) 午前十時十九分開会

○ 委員長 (侯爵黒田長成君) 是より朝鮮に施行すべき法令に関する法律案外十一件の委員会を開きます

国務大臣 (侯爵桂太郎君) 唯今、委員会の御審議に上ぼつて居ります緊急問題の御審査に際して一言申述べまして御参考に供す考へでございます、此緊急勅令の朝鮮併合の際に裁可を経ました事柄に付きましては、昨日本会議場に於きまして、極簡単に申述べて置きました、要するに其時簡単なる意見を申述べましたので、殆ど全体の意は尽し居るやうに考へますけれどれども、尚ほ此委員会に於きましては重複ながらも、聊か茲に補塡いたしまするの必要があらうかと考へまする、此朝鮮併合のことは既に諸君に於かれましても御承知の如く早晩、併合の結果に至らざるを得ざる次第でございましたなれども、之を決行いたしまするに付きましては、又容易ならざぬ事件であつたのでございます、幸にも致しまして其併合の際は両国の条約に依り又は其時他の手続に於きましては寔に平和の中に運びました次第なれども、此事柄たるや最も迅速を要し、若し一歩を誤まりますれば事容易な

 

らざることに立ち至る次第でござります、最も至急に、最も慎重に其計算を要する次第でござります、尋いで緊急勅令を御発布に相成ることを仰ぎました次第でございます、依って此事後承諾を議会に提出いたしまして、御承諾を得るの次第に立ち至ったのでございます、大要斯の如き重大なる、又重大にして事最も緊急を要する……至急に其計画を致さなければならぬ重大事件であると云ふことは事実の上に於きまして諸君の御諒察くださることであらうと考へます、尚ほ、御質問等もござりますれば詳細に御答へ致しまするが、大要右の如き次第でござりまするからして、何卒御審議の上、速に御承諾あらむことを希望致しまする、尚ほ、本議場に於きまして申述べました如く憲法第八条関係を致しまする即ち此制令権のことに付きましては、衆議院に於きまして其性質上、何等変はることなき法律案へ提出がございまして、此緊急勅令の目的たる謂はゆる実質の上に於きまして最も必要と致す次第でござりまして、其法律と勅令との上に付きましては政府は敢て之に異議を唱ふるの場合ではござりませぬ、政府も此法律案には同意を致して居る次第でござります、此辺も併はしね申述べまして、何卒此法律案も御審議の上、併はして速に御協賛あらむことを希望いたします

○ 岡野敬次郎君 私は朝鮮に施行すべき法令に関する法律案と云ふものと、曩に緊急勅令として発布になりましたる四十三年勅令第三百二十四号との

 

関係に付きまして質問を致したいと思ふのでございます、宜しうございますか

○ 委員長 (侯爵黒田長成君) 宜しうございます

○ 岡野敬次郎君 四十三年勅令第三百二十四号なるものは、是は承諾を求みるが為に政府が議会に提出になって居るのであります、是は公然の事柄であるのであります、今日貴族院に於きましては此勅令第三百二十四号なるものは問題になっておらぬのでありまするけれども、之と全く内容を一に致して居る所の法律案が即ち今日の問題になって居りまするから、此二者の勅令と法律との関係に付きまして、聊か政府の見解を尋ねて見たいと思ふのであります、勅令第三百二十四号と衆議院より提出に相成りましたる所の法律案と云ふものを比較いたしますると云ふと、其内容に於きましては一字一句の差異が無いのであります、唯附則於きまして一は勅令なるが故に「本令は公布の日より之を施行す」とあり、一は法律なるが故に「本法は公布の日より之を施行す」とあるだけでありまして、其法法規の実質に於きましては一字一句の違ひが無いのであります、而して此緊急勅令第三百二十四号なるものは、衆議院に於ては未だ承諾とも何れとも未だ形式上の議決と云ふものは無いのであります、故に承諾するに至るか、或は承諾を拒むに至るかと云ふことは、今日は尚ほ未定の問題と申さねばならぬのであります、是に於きまして私は聊か疑問を懐いたのでありまして、即ち此の勅令と法律との関係に付きまして質問いたしたいと思ふのであります、その質問は聊か多岐に渉るのであります、格別むづかしいことでもございませぬけれども、極めて簡単なる事柄と致しまして順序上問題を少しく多くして政府の意見を質したいと思ふのであります、私は学説上の説明を元むる訳でありませぬ

 

し、又政治問題として之を攻究すると云ふのではありませぬ、私の問はむと欲する所は全く政府の所見如何と云ふ一点にあるのでありまふから、私の質問の意を諒して明瞭に御答弁を願ひたいのであります、第一に御尋ね致したいことは、朝鮮を併合いたしました当時から憲法の全部が直ちに朝鮮に行はゝるものであると云ふ見解を採らるゝや否やと云ふのであります、是も私が申上げるまでもなく学者の議論としては二様の説があるやうでありますけれども、それは私は問はぬのであります、唯政府は憲法は朝鮮に行はるゝと云ふ見解を採られたるや否やと云ふことを私は第一に御尋ねしたいのであります、それから第二に御尋ね致したいのは合併の当時……併合の当時に於ける朝鮮の法律上の状態如何、即ち朝鮮に於て行はれて居った所の我が国の法律は如何なるものであるかと云ふことを私は御尋ねしたいのであります、申上げるまでもなく韓国が尚ほ独立国でありました当時に於ては、我国は即ち治外法権を有って居ったのであります、治外法権を有って居った当時に於て我が法律は朝鮮に行はれて居ったのでありませう、全部ではないけれども一部分は行はれて居ったに相違ないのであります、而して統監府の設置せられた当時に於て、此の朝鮮に行はれるゝ法律に付いては格別影響を及ぼしたのではないのであります、第二次の協約以後に於ても矢張り同様であると私は思うのであります、而して勅令を以て朝鮮に施行すべき法律を定めた所の例もあるのであります、それで私の茲に御尋ねしたいのは、商法が併合の当時より、或は併合以前より朝鮮に行はれて居ったと云ふ見解を採らるゝや否やと云ふ点であります、是は世間で彼此れ喧しく論じており所の会社令であります、会社令と云ふ制令が関係を有つのであります、

 

此制令の当否を茲で彼此れ意見を申述べる