『太 [ふて] い鮮人』発刊に際して
日本の社会で会酷く誤解されている「不逞鮮人」が果たして無暗に暗殺、破壊、陰謀を謀むものであるか、それとも飽くまで自由の念に燃えている生きた人間であるかを、われわれと相類似せる境遇にある多くの日本の労働者諸君に告げるとともに、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□[¿ために、茲に我々?]は『太い鮮人』を發刊する。
勿論本紙を後援するのも自由なれば攻撃するのもまた諸君の自由だ。
｢太 [ふて] い鮮人｣發刊に際して
日本の社會で酷く誤解されて居
る｢不逞鮮人｣が果して無暗に暗殺、
破壞、陰謀を謀むものであるか、
それとも飽く迄自由の念に燃ゑて
居る生きた人間であるかを、我々
と相類似せる境遇に在る多くの日
本の勞働者諸君に告げると共に、
□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□[¿ために、茲に我々?]
は｢太い鮮人｣を發刊する。
勿論本紙を後援するのも自由なれ
ば攻擊するのも亦諸君の自由だ。
＿[¿不逞朝鮮人?] 取締法案
朴 烈
最近來た朝鮮の新聞に依ると日
本に來て居る我々朝鮮人をもつと
嚴重に取締る必要上堀田警視總監
(今は內務次官) と後藤內務省警保
局長とが秘密裡に共力して、今度
新しく [¿朝鮮人取締?] 法案とやら云ふ
ものを起草して夫れを內務大臣に
提出して、其の議決を待ちつゝ、
該法案の實施準備に忙殺されて居
るとの事であるが、是れは恐らく
事實であらう。或は単なる脅かし
かも知れぬ。併し何れにせよ是は
取りも直さず◯◯◯◯が是れ迄我
々朝鮮人に對して使用して來たあ
らゆる過酷な取締法案が失敗した
事を意味するものであり、□□□
□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□
見よ、◯◯◯◯では日本に來て居
る我々朝鮮人を取締る爲めに、一
昨年以来警視廳特別高等課に內鮮
係なる鮮人専門の取締機關を設置
して、內務省警保局と共力して所
謂嚴重な取締をして來たのではな
いか。次に其の實例を二つ三つ諸
君の御目に掛けやう。是れは日本
內地に來て居る朝鮮人取締の極く
目立つ一少部分に過ぎないのだ。
僕が昨年十月頃本鄕駒込で友達三
四人と間借して自炊生活をして居
た時、直ぐ其の隣に私等の爲め非
常に面倒を見て呉れた婆樣が居た
所が夫れを嗄 [ﾏﾏ] ぎ付けた警察屋樣タ
ダは置くものか？早速其の婆樣を
引つ張り出して、而して曰く『聞
くと御前は良く此の頃朝鮮人の世
話をするそうだが、夫れは何う云
ふ譯だ。キツト金でも貰つてやつ
て居るのだらう。若しそうだとす
れば御前は法律に違反して居るの
だ···し···そうでないとしてもだ···
考へて見るが良い。彼奴等は何時
も惡い事ばかり謀つて居る不逞鮮
人ぢやないか？日本人として、不
逞鮮人を世話すると云ふ事は怪し
からぬ事だ。又彼奴等が若し知らせて
呉れ､』萬事に用意周到なケイサツ
ヤサン間借をすれば矢張り判で捺
した樣に其の通り､剰へ『彼奴等が
引越したら轉居先を聞いて置け』
と頭から嚴命を降す。
鮮人が檢束されると一旦は『イ
ヤ』と云ふ程、イヂメて置いてそ
れから有り難くも無い御說敎·······
最新準備会 編『金子文子 朴烈 裁判記録』1977 年、黒色戦線社、p. 813
