［｢大日本帝国政府｣ 用紙］
【国家機密】
昭和一八､一､一四
占領地帰属腹案 大本営政府
連絡会議 提案
一､占領地の帰属に関しては左の基準に依り之を定む
(ｲ) 大東亜防衛の為帝国に於て確保するを必要とする要衝並に人口希薄なる地域及独立の能力乏しき地域にして帝国領土と為すを適当と認むる地域は之を帝国領とし其の統治方式は当該各地域の伝統民度其の他諸般の事情を勘案して之を定む
(ﾛ) 従来の政治的経緯等に鑑み之を独立せしむることを許容するを大東亜戦争遂行並に大東亜建設上得策と認むる地域は之を独立せしむ
(ﾊ) 独立及領土編入の時期に付ては諸般の情勢を考慮し決定す
二､右に基き差当り帰属腹案を決定すること別紙第一の如く其の条件を概ね別紙第二の如く予定す
三､情勢の推移に依りては本腹案を変更することあり
別紙一
地域｜将来の帰属｜備考
一､緬甸｜独立国｜シヤン諸州、カレンニ州に於ては別紙第二中一､の (二) 参照
二､比律賓｜独立国｜ミンダナオに付ては別紙第二中二､の (二) 参照
三､其他｜追て定む｜
備考
泰国の悉地恢復に付ては昭和十七、五、九、決定「タイ軍のビルマ進撃に伴ふ対泰措置に関する件」に依る
別表第二
独立の態様及条件
一､緬甸
(一) 帝国との関係
(ｲ) 軍事 帝国との間に共同防衛を約せしめ兵力の駐屯、軍事基地使用及設定等々を認めしめ特に軍事的結合を鞏固ならしむ
(ﾛ) 外交 緊密提携を約せしむ
(ﾊ) 経済 緊密協力を約せしむ
(二) シヤン諸州、カレンニ州に付ては特別の取扱を為す
二､比律賓
(一) 帝国との関係
(ｲ) 軍事 帝国との間に共同防衛を約せしめ兵力の駐屯、軍事基地使用及設定等を認めしむ
(ﾛ) 外交 緊密提携を約せしむ
(ﾊ) 経済 緊密協力を約せしむ
(二) 前項の外「ミンダナオ」に付ては更に特別の措置を執ることあり
【國家機密】
昭和一八､一､一四
占領地帰属腹案の説明
占領地諸地域の帰属決定の基準に関しては深く既往の実歴に鑑み将来の趨勢を稽へ殊に大東亜戦争の目的に鑑み帝国の存立及東亜の安定に対する禍根を芟除し東亜永遠の平和を確立し以て帝国の光を保全すると共に世界の平和に寄与するの国是を根本とし、これを実際に適用するに当りては軍事的、政治的、経済的其の他各般の要請を綜合し且各地域諸般の実情を篤と考慮に入れ各々其の所を得しむを本旨とし特に大東亜防衛の為帝国に於て確保するを必要とする要衝並に人口希薄なる地域及独立の能力乏しき地域にして帝国領土と為すを適当と認むる地域は之を帝国領とし又従来の政治的経緯等に鑑み之を独立せしむることを許容するを大東亜戦争遂行並に大東亜建設上得策と認むる地域は之を独立せしめ而して統治方式並に独立の態様、条件に付ては諸般の事情を勘案して定むるを適当とす
然れども本件は戦争指導上よりするも極めて機微且重大なるを以て之が発表及実行の時期を慎重決定すること必要にして又事の性質上情勢の推移に依りては変更することあるべきは当然なりとす
前記の趣旨の下に差当り決定すべき緬甸及比律賓の帰属腹案理由を
略述するに左の如し
一､緬甸
緬甸は西暦一八八六年完全ニ英国ノ支配下に帰したる以前に於ては政治的に独立の地位を有し又一九三七年以後印度より分離して英帝国内二於ける準自治的地位を認められたるものなるが一般に独立の希望を有し且概ね自治能力あり而して帝国の立場よりすれは緬甸は大東亜防衛上西方の（ [ﾏﾏ] 要衝に当るを以て帝国との間に特に軍事的結合を強固ならしむる要ある次第なるか右の如き事情及特に作戦開始以来緬甸民衆の帝国に対する積極的協力を篤と考慮に入れ適当の時期及条件の下に独立を許容することは帝国の公
［｢大日本帝國政府｣ 用紙］
【國家機密】
昭和一八､一､一四
占領地歸屬腹案 大本營政府
連絡會議 提案
一､占領地ノ歸屬ニ關シテハ左ノ基準ニ依リ之ヲ定ム
(ｲ) 大東亞防衞ノ爲帝國ニ於テ確保スルヲ必要トスル要衝竝ニ人口希薄ナル地域及獨立ノ能力乏シキ地域ニシテ帝國領土ト爲スヲ適當ト認ムル地域ハ之ヲ帝國領トシ其ノ統治方式ハ當該各地域ノ傳統民度其ノ他諸般ノ事情ヲ勘案シテ之ヲ定ム
(ﾛ) 從來ノ政治的經緯等ニ鑑ミ之ヲ獨立セシムルコトヲ許容スルヲ大東亞戰爭遂行竝ニ大東亞建設上得策ト認ムル地域ハ之ヲ獨立セシム
(ﾊ) 獨立及領土編入ノ時期ニ付テハ諸般ノ情勢ヲ考慮シ決定ス
二､右ニ基キ差當リ歸屬腹案ヲ決定スルコト別紙第一ノ如ク其ノ條件ヲ槪ネ別紙第二ノ如ク豫定ス
三､情勢ノ推移ニ依リテハ本腹案ヲ變更スルコトアリ
別紙一
地域｜將來ノ歸屬｜備考
一､緬甸｜獨立國｜「シヤン」諸州、「カレンニ」州ニ於テハ別紙第二中一､ノ (二) 參照
二､比律賓｜獨立國｜「ミンダナオ」ニ付テハ別紙第二中二､ノ (二) 參照
三､其他｜追テ定ム
備考
泰國ノ悉地恢復ニ付テハ昭和十七、五、九、決定「「タイ」軍ノ「ビルマ」進擊に伴ふ對泰措置に關する件」に依る
別表第二
獨立ノ態樣及條件
一､緬甸
(一) 帝國トノ關係
(ｲ) 軍事 帝國トノ閒ニ共同防衞ヲ約セシメ兵力ノ駐屯、軍事基地使用及設定等々ヲ認メシメニ軍事的結合ヲ鞏固ナラシム
(ﾛ) 外交 緊密提携ヲ約セシム
(ﾊ) 經濟 緊密協力ヲ約セシム
(二)「シヤン」諸州、「カレンニ」州ニ付テハ特別ノ取扱ヲ爲ス
二､比律賓
(一) 帝國トノ關係
(ｲ) 軍事 帝國トノ閒ニ共同防衞ヲ約セシメ兵力ノ駐屯、軍事基地使用及設定等ヲ認メシム
(ﾛ) 外交 緊密提携ヲ約セシム
(ﾊ) 經濟 緊密協力ヲ約セシム
(二) 前項ノ外「ミンダナオ」ニ付テハ更ニ特別ノ措置ヲ執ルコトアリ
【國家機密】
昭和一八､一､一四
占領地歸屬腹案ノ說明
占領地諸地域ノ歸屬決定ノ基準ニ關シテハ深ク既往ノ實歷ニ鑑ミ將來ノ趨勢ヲ稽ヘ殊ニ大東亞戰爭ノ目的ニ鑑ミ帝國ノ存立及東亞ノ安定ニ對スル禍根ヲ芟除シ東亞永遠ノ平和ヲ確立シ以テ帝國ノ光ヲ保全スルト共ニ世界ノ平和ニ寄與スルノ國是ヲ根本トシ、コレヲ實際ニ適用スルニ當リテハ軍事的、政治的、經濟的其ノ他各般ノ要請ヲ綜合シ且各地域諸般ノ實情ヲ篤ト考慮ニ入レ各々其ノ所ヲ得シムヲ本旨トシ特ニ大東亞防衞ノ爲帝國ニ於テ確保スルヲ必要トスル要衝竝ニ人口希薄ナル地域及獨立ノ能力乏シキ地域ニシテ帝國領土ト
爲スヲ適當ト認ムル地域ハ之ヲ帝國領トシ又從來ノ政治的經緯等ニ鑑ミ之ヲ獨立セシムルコトヲ許容スルヲ大東亞戰爭遂行竝ニ大東亞建設上得策ト認ムル地域ハ之ヲ獨立セシメ而シテ統治方式竝ニ獨立ノ態樣、條件ニ付テハ諸般ノ事情ヲ勘案シテ定ムルヲ適當トス
然レドモ本件ハ戰爭指導上ヨリスルモ極メテ機微且重大ナルヲ以テ之ガ發表及實行ノ時期ヲ愼重決定スルコト必要ニシテ又事ノ性質上情勢ノ推移ニ依リテハ變更スルコトアルベキハ當然ナリトス
前記ノ趣旨ノ下ニ差當リ決定スベキ緬甸及比律賓ノ歸屬腹案理由ヲ
略述スルニ左ノ如シ
一､緬甸
緬甸ハ西曆一八八六年完全ニ英國ノ支配下ニ歸シタル以前ニ於テハ政治的ニ獨立ノ地位ヲ有シ又一九三七年以後印度ヨリ分離シテ英帝國內二於ケル準自治的地位ヲ認メラレタルモノナルガ一般ニ獨立ノ希望ヲ有シ且槪ネ自治能力アリ而シテ帝國ノ立場ヨリスレハ緬甸ハ大東亞防衞上西方ノ（ [ﾏﾏ] 要衝ニ當ルヲ以テ帝國トノ閒ニ特ニ軍事的結合ヲ强固ナラシムル要アル次第ナルカ右ノ如キ事情及特ニ作戰開始以來緬甸民衆ノ帝國ニ對スル積極的協力ヲ篤ト考慮ニ入レ適當ノ時期及條件ノ下ニ獨立ヲ許容スルコトハ帝國ノ公
↑「４．占領地帰属問題（付）マライ独立問題（インド独立問題はA.7.0.0.9-56、ビルマ独立問題はA.7.0.0.9-39-1、フィリピン独立問題はA.7.0.0.9-96）」JACAR（アジア歴史資料センター）Ref.B02032868200、大東亜戦争関係一件／占領地行政関係（A-7-0-0-9_18）（外務省外交史料館）
https://www.jacar.archives.go.jp/das/meta/B02032868200
