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帝国日本の侵掠戦争と植民地支配、人権蹂躙を記憶し、再現を許さないために、ひたすら文書資料を書き取る。姉妹ブログ「歴史を忘れる民族に未来はない!」https://obladioblako.hateblo.jp/ のデータ·ベースを兼ねる。

大東亜政略指導大綱 第十回御前会議 内閣総理大臣説明 1943. 5. 31

          [「第日本帝国政府」用箋]

【国家機密】
  大東亜政略指導大綱(昭和十八年五月二十九日
            大本営政府連絡会議決定)
           (昭和十八年五月三十一日
            御前会議決定)

    第一、方針

一、帝国は大東亜戦争完遂のため、帝国を中核とする大東亜の諸国家·諸民族結集の政略態勢をさらに整備強化し、もって戦争指導の主動性を堅持し、世界情勢の変転※に対処す。
 政略態勢の整備強化は遅くとも本年十一月初項までに達成するを目途とす。

二、政略態勢の整備は帝国に対する諸国家·諸民族の戦争協力強化を主眼とし、特に支那問題を解決す。

    第二、要領

一、対満華方策
 帝国を中心とする日満華相互間の結合をさらに強化す。
 これがため
  (イ) 対満方策
 既定方針に拠る
  (ロ) 対華方策
 「大東亜戦争完遂のための対支処理根本方針」の徹底·具現を図るめ、右に即応するごとく別に定むるところにより日華基本条約を改訂し、日華同盟条約を締結す。これがため速やかに諸準備を整ふ。
 右に関連し、機を見て国民政府をして対重慶政治工作を実施せしむるごとく指導す。
 前項実行の時機は大本営政府協議の上、これを決定す。

二、対泰 [タイ] 方策
 既定方針に基き相互協力を強化す。特にマライにおける失地回復、経済協力強化は速やかに実行す。
 シャン地方の一部は泰国領に編入するものとし、これが実施に関してはビルマとの関係を考慮して決定す。

三、対仏印方策
 既定方針を強化す。

四、対方策
 昭和十八年三月十日、大本営政府連絡会議決定、緬甸独立指導要綱に基づき施策す。

五、対方策
 なるべく速やかに独立せしむ。
 独立の時機は概ね本年十月頃と予定し、極力、諸準備を促進す。

六、その他の占領地域に対する方策を左の通り定む。
 だたし (ロ)、(ニ) 以外は当分発表せず。
 (イ) マライ、スマトラ、ジャワ、ボルネオ、セレベスは帝国領土と決定し、重要資源の供給地として極力これが開発ならびに民心把握に努む。
 (ロ) 前項各地域においては原住民の民度に応じ努めて政治に参与せしむ。
 (ハ) ニューギニア等 (イ) 以外の地域の処理に関しては前二項に準じ追って定む。
 (ニ) 前記各地に於ては当分、軍政を継続す。

七、大東亜会議
 以上各方策の具現に伴ひ、本年十月下旬頃(比島独立後)大東亜各国の指導者を東京に参集せしめ、牢固たる戦争完遂の決意と大東亜共栄圏の確立を中外に宣明す。

 

※1942. 11. 7 米軍仏領アフリカに上陸。11. 20 スターリングラードソ連軍反抗開始。1943. 1. 11  英米、中国と新条約締結、在華特権を放棄。1. 14−26 ローズヴェルトチャーチルカサブランカ第三次戦争指導会議、無条件降伏強要の方針決定。1. 22 枢軸軍北アフリカトリポリ撤退。2. 1−7 日本軍一万一千余ガダルカナル島撤退。2. 2 スターリングラード独軍降伏。2. 14 独軍ロストフ撤収。5. 12 北アフリカ戦線の独伊軍降伏。5. 12 米軍アッツ島上陸、5. 30 日本軍全滅。5. 15 コミンテルン執行委員会幹部会、解散を決議。

 

https://www.jacar.archives.go.jp/das/image-j/B02032973300 1/2 右

        [「第日本帝國政府」用箋]

【國家機密】
  大東亞政略指導大綱 (昭和十八年五月二十九日
             大本營政府連絡會議決定)
             (昭和十八年五月三十一日
              御前會議決定)
    第一 方針
一、帝國ハ大東亞戰爭完遂ノ爲帝國ヲ中核トスル大東亞ノ諸國家諸民族結集ノ政略態勢ヲ更ニ整備强化シ以テ戰爭指導ノ主動性ヲ堅持シ世界情勢ノ變轉ニ對處ス 政略態勢ノ整備强化ハ遲クトモ本年十一月初項迄ニ達成スルヲ目途トス
二、政略態勢ノ整備ハ帝國ニ對スル諸國家諸民族ノ戰爭協力强化ヲ主眼トシ特ニ支那問題ヲ解決ス
    第二 要領
一、對滿華方策
 帝國ヲ中心トスル日滿華相互閒ノ結合ヲ更ニ强化ス

 

https://www.jacar.archives.go.jp/das/image-j/B02032973300 1/2 左

 之カ爲
 (イ) 對滿方策
  既定方針ニ據ル
 (ロ) 對華方策
  「大東亞戰爭完遂ノ爲ノ對支處理根本方針」ノ徹底具現ヲ圖ル爲右ニ卽應スル如ク別ニ定ムル所ニ據リ日華基本條約ヲ改訂シ日華同盟條約ヲ締結ス之カ爲速ニ諸準備ヲ整フ
  右ニ關連シ機ヲ見テ國民政府ヲシテ對重慶政治工作ヲ實施セシムル如ク指導ス 前項實行ノ時機ハ大本營政府協議ノ上之ヲ決定ス
二、對泰方策
 既定方針ニ基キ相互協力ヲ强化ス特ニ「マライ」ニ於ケル失地回復、經濟協力强化ハ速ニ實行ス

 

https://www.jacar.archives.go.jp/das/image-j/B02032973300 2/2 右

 「シャン」地方ノ一部ハ泰國領ニ編入スルモノトシ之カ實施ニ關シテハ「ビルマ」トノ關係ヲ考慮シテ決定ス 
三、對佛印方策
 既定方針ヲ强化ス
四、對緬方策
 昭和十八年三月十日大本營政府連絡會議決定緬甸獨立指導要綱ニ基キ施策ス
五、對比方策
 成ルヘク速ニ獨立セシム
 獨立ノ時機ハ槪ネ本年十月頃ト豫定シ極力諸準備ヲ促進ス
六、其ノ他ノ占領地域ニ對スル方策ヲ左ノ通定ム
 但シ (ロ)、(ニ) 以外ハ當分發表セス
  (イ)「マライ」「スマトラ」「ジャワ」「ボルネオ」「セレベス」ハ帝國領土ト決定

 

https://www.jacar.archives.go.jp/das/image-j/B02032973300 2/2 左

シ重要資源ノ供給地トシテ極力之カ開發竝ニ民心把握ニ努厶
 (ロ) 前項各地域ニ於テハ原住民ノ民度ニ應シ努メテ政治ニ參與セシム
 (ハ)「ニューギニア」等(イ)以外ノ地域ノ處理ニ關シテハ前二項ニ準シ追テ定ム
 (ニ) 前記各地ニ於テハ當分軍政ヲ繼續ス
七、大東亞會議
以上各方策ノ具現ニ伴ヒ本年十月下旬頃(比島獨立後)大東亞各國ノ指導者ヲ東京ニ參集セシメ牢固タル戰爭完遂ノ決意ト大東亞共榮圈ノ確立ヲ中外ニ宣明ス

28.大東亜政略指導大綱(昭十八、五、二十九連絡会議決定 昭十八、五、三十一御前会議決定)」JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.B02032973300、大東亜戦争関係一件/戦時中ノ重要国策決定文書集(A-7-0-0-9_52)(外務省外交史料館

 

      [「大東亜省」 タイプ複写用紙]

【国家機密】
弐拾部の内第十二号
  第十回御前会議(昭和十八、五、三一)
  内閣総理大臣説明

 ただ今より開会いたします
 御許しを得たるによりまして、本日議事の進行は、私がこれに当たります。
 まづ私より、本日の議題につきまして御説明いたします。
 大東亜戦争完遂の為の帝国の政略指導といたしましては、日独伊の緊密提携と大東亜の諸国家諸民族の結集とが最も重要なるものでありまして、従来もこの見地より色々と努力して参ったものでありますが、世界戦局の推移※に鑑み、機を逸せず速やかに、この戦略態勢をさらに整備·強化するの要、いよいよ緊切なるものがあると存せられるのであります。
 独伊との提携強化に関しましては、さきに派遣したる連絡使をして目下、伯林 [ベルリン] および羅馬 [ローマ] において大使および陸海軍武官を輔佐せしめ、独伊側と連絡協議中であります。
 大東亜諸国家諸民族の結集に関しましては、満州国を初めとし、諸国家諸民族は帝国の大東亜戦争遂行に同調協力致して居るのでありますが、更に之が結集を一段と強化ななさ緊要と認めまして本議題の御審議を煩はす次第であります。
 まづ議題を朗読致させます。
(議題朗読)

一、方 針

 大東亜の諸国家諸民族の結集は大東亜戦争完遂のため諸国家諸民族の戦争協力強化を示 [→主] 眼としたるものでありまして、特にこれが具現によって支那問題の解決に資せんとするものであります。
 一方世界情勢は、独ソ戦のいかんにより相当の変革あるべく、この見通しのつくは概ね十一月頃と予想せられ、かつ米英の反抗は逐次熾烈化すると思はれますので、速やかに大東亜の戦略態勢を整備強化し、世界情勢の推移いかんにかかわらず、帝国は大東亜団結の力をもって、毅然として戦争指導の主導性を堅持せんとするものであります。

一、対満華対策

(イ) 対満対策

 満洲国はその建国の精神において帝国と一徳一心の関係にあるのでありまして、建国以来十年を経て異常なる発展を遂げて居るのであります。
 大東亜戦争以後は直接これに参戦はいたしませぬが、物心両面にわたり全力を挙げて帝国に協力しつつあるのであります。
 特に戦争勃発時における詔書にも、また私が満洲国訪問の当時拝謁を許されたる時の陛下の御言葉にもこの御思召を拝察し得るのでありまして感激措く能はざる次第であります。
 要するに満洲国は帝国を視るに親邦をもってし、日満の関係はすでに同盟以上の関係でありまして間然する所のない状態であります。

(ロ) 対華方策

 さきにご決定を仰ぎましたる「大東亜戦争完遂のための対支処理根本方針」には、国民政府の充員強化ならびにその対日協力の具現等に照応し、適時日華基本条約に所要の修正を加ふることを考慮すべき旨、定められて居るのであります。
 国民政府は参戦以来各般にわたり自強の道を講じて居りまするとともに、帝国の真意を解して、大東亜戦争完遂に協力しつつありますので、この際帝国は「対支処理根本方針」をさらに徹底具現せしむるため、右に即応するごとく別に定むる所によりまして日華基本条約を改定し、日華同盟条約を締結せんとするものであります。
 また、対支処理根本方針には「帝国は重慶に対しこれを対手とする一切の和平工作を行はす状勢変化し和平工作を行はんとする場合は別にこれを決定す国民政府もまた帝国の態度に順応せしむ」るごとく定められたのでありますが、爾後、対支処理根本方針ならびにこれに基づく諸施策の結束は逐次浸透し、重慶側にも相当の動揺を与へて居る状況でありまして、過般、龐炳勲の国民政府参加もその一証左と観察せられるのであります。
 一方重慶側は経済的にもますます困窮を加へつつありますので、前述の対華諸方策等の進展に照応いたしまして、適時国民政府をして対重慶政治工作を実施せしむるごとく指導することといたしました。しかしながら重慶抗戦陣営の中枢が国民政府の政治工作に今、にわかに応じ来たることはなほ望み難く、かつそのの時期を誤るときはむしろこれによる害が少くないのであります。よってその時期に関しましては政府と統帥部との間において協議·決定することといたします。

二、対方策

 泰国に対しましてはその独立国たる対面を保持せしめつつ、これをして大東亜戦争の遂行に衷心協力し帝国の施策に積極的に協調せしむるごとく指導しつつありますが、国民一般は戦争による生活の不自由を、ややもすればピブン政権の親日政策および日本軍の駐屯に出来するがごとき考へを抱き、敵性諸国の日泰離間策、反政府分子の策動と相俟ち、一般の対日空気は必ずしも満足すべき状態にありとは言ひ難いのであります。
 帝国としてはピブン政権の困難なる立場と泰国民の心理的動向とに鑑み、日泰同盟条約付属秘密了解事項第一条に基づき、日本軍占領地帯たるマライの失地回復せしむるとともに、経済協力を一層強化することが肝要であります。
 また、シヤン地方の一部もこれを泰国領に編入するものとし、これが実施に関してはビルマに与ふる影響等をも較量の上、その時期および地域等を決定するを要するのであります。

三、対仏印方策

 仏印に関しては帝国の大東亜戦争遂行に実質的に利用するとともに、その静謐を保持し、敵側の策謀を封殺し、帝国に対する各般の協力を一層積極的ならしむるごとく施策中でありまして、今日までの所、仏印当局の対日協力は相当見るべきものがあるのでありますが、世界情勢※を反映し、かつ米英重慶側の執拗なる宣伝等諸般の事情により、仏印側の同調的態度、未だ十分には徹底するの域に達して居りませんので、ますます前述の方針を強化することが肝要であります。ただし仏印を本国より離脱せしむるごとき極端なる施策は、大東亜戦争の現段階においてはこれを避くるを要するのであります。

四、対方策

 対緬方策につきましては昭和十八年三月十日、大本営政府連絡会議決定「緬甸独立指導要綱」に基き施策中でありまして、五月八日、独立準備委員会を結成し、六月末準備完了を期し、準備促進中であります。

五、対方策

 比島においては、第八十一回帝国議会における比島独立の再確認に関する帝国政府の声明により俄然対日信頼の度を強め、行政府長官以下、帝国の真意を解し、治安の粛正、行政の浸透に鋭意努力中でありまして、大東亜共栄圏の一環として更生しつつあり、その一端は過般、現地に参りまして私も目のあたりにこれを見たのであります。
 よって帝国は屡次の声明に基づきこれを独立せしむることとし、その時期は治安未だ完からざるも、戦争指導上の要請と比島側の自発的協力促進の見地とより、概ね本年十月頃と予定し、準備を促進することといたしました。

六、その他の占領地域

 マライ、スマトラ、ジャワ、ボルネオ、セレベスは民度低くして独立の能力乏しく、かつ大東亜防衛のため帝国において確保するを必要とする要域でありますので、これらは帝国領土と決定し、重要資源の供給地として極力これが開発ならびに民心の把握に努むる所存であります。これらの地域においては当分の間、依然、軍政を継続いたしますが、原住民の民度に応じ、努めて政治に参与せしむる方針でありまして、現に政治参与を要望して居りまするジャワに対しては、特にこれを認める積りであります。しかして本帰属決定は、敵側の宣伝の資に供せらるる等のおそれがありますので、当分の間発表せざることといたしますが、原住民の政治参与に関しましては、適宜これを発表するを適当と考へて居ります。
 ニューギニヤ等、前述以外の地域の処理につきましては、すでに述べましたる所に準じて追って定むることといたします。

七、大東亜会議

 以上、各方策の具現に伴ひ、本年十月下旬(比島独立後)大東亜各国の指導者を参集せしめ、戦争完遂と大東亜共栄圏確立との牢固たる決意を闡明し、もって戦争完遂に邁進せんとするものであります。
 以上を以て私の説明を終ります。

 

https://www.jacar.archives.go.jp/das/image-j/B02032868200 7/18 左

 

[「大東亞省」 タイプ複寫用紙]
【國家機密】
貳拾部ノ內第十二號
  第十囘御前會議(昭和十八、五、三一)
  內閣總理大臣說明
唯今ヨリ開會イタシマス
御許シヲ得タルニ依リマシテ、本日議事ノ進行ハ、私ガ之ニ當リマス。
先ヅ私ヨリ、本日ノ議題ニ付キマシテ御說明致シマス。
大東亞戰爭完遂ノ爲ノ帝國ノ政略指導ト致シマシテハ、日獨伊ノ緊密提携ト大東亞ノ諸國家諸民族ノ結集トガ最モ重要ナルモノデアリマシテ、從來モ此ノ見地ヨリ色々ト努力シテ參ツタモノデアリマスカ、世界戰局ノ推移ニ鑑ミ、機ヲ逸セズ速ニ、此ノ戰略態勢ヲ更ニ整備强化スルノ要愈々緊切ナルモノガアルト存セラレルノデアリマス。

 

https://www.jacar.archives.go.jp/das/image-j/B02032868200 8/18 右

獨伊トノ提携强化ニ關シマシテハ曩ニ派遣シタル連絡使ヲシテ目下伯林及羅馬ニ於テ大使及陸海軍武官ヲ輔佐セシメ、獨伊側ト連絡協議中デアリマス。
大東亞諸國家諸民族ノ結集ニ關シマシテハ、滿州國ヲ初メトシ諸國家諸民族ハ帝國ノ大東亞戰爭遂行ニ同調協力致シテ居ルノデアリマスガ、更ニ之ガ結集ヲ一段ト强化スルヲ緊要ト認メマシテ本議題ノ御審議ヲ煩ハス次第デアリマス。
先ヅ議題ヲ朗讀致サセマス。
(議題朗讀)

一、方 針

大東亞ノ諸國家諸民族ノ結集ハ大東亞戰爭完遂ノ爲諸國家諸民族ノ戰爭協力强化ヲ示 [ママ] 眼トシタルモノデアリマシテ、特ニ之ガ具現

 

https://www.jacar.archives.go.jp/das/image-j/B02032868200 8/18 左

ニ依ツテ支那問題ノ解決ニ資セントスルモノデアリマス。
一方世界情勢ハ、獨「ソ」戰ノ如何ニヨリ相當ノ變革アルベク、コノ見通シノツクハ槪ネ十一月頃ト豫想セラレ、且米英ノ反抗ハ逐次熾烈化スルト思ハレマスノデ、速ニ大東亞ノ戰略態勢ヲ整備强化シ、世界情勢ノ推移如何ニ拘ラズ、帝國ハ大東亞團結ノ力ヲ以テ、毅然トシテ戰爭指導ノ主導性ヲ堅持セントスルモノデアリマス。

一、對滿華對策

(イ) 對滿對策

滿洲國ハソノ建國ノ精神ニ於テ帝國ト一德一心ノ關係ニアルノデアリマシテ、建國以來十年ヲ經テ異常ナル發展ヲ遂ゲテ居ルノデアリマス。

 

https://www.jacar.archives.go.jp/das/image-j/B02032868200 9/18 右

大東亞戰爭以後ハ直接之ニ參戰ハ致シマセヌガ物心兩面ニ亘リ全力ヲ擧ゲテ帝國ニ協力シツツアルノデアリマス。
特ニ戰爭勃發時ニ於ケル詔書ニモ又私ガ滿洲國訪問ノ當時拜謁ヲ許サレタル時ノ陛下ノ御言葉ニモコノ御思召ヲ拜察シ得ルノデアリマシテ感激措ク能ハザル次第デアリマス。
要スルニ滿洲國ハ帝國ヲ視ルニ親邦ヲ以テシ日滿ノ關係ハ既ニ同盟以上ノ關係デアリマシテ閒然スル所ノナイ狀態デアリマス。

(ロ) 對華方策

曩ニゴ決定ヲ仰ギマシタル「大東亞戰爭完遂ノ爲ノ對支處理根本方針」ニハ國民政府ノ充員强化竝ニ其ノ對日協力ノ具現等ニ照應シ適時日華基本條約ニ所要ノ修正ヲ加フルコトヲ考慮スベキ旨定メラレテ居ルノデアリマス。

 

https://www.jacar.archives.go.jp/das/image-j/B02032868200 9/18 左

國民政府ハ參戰以來各般ニ亘リ自彊ノ道ヲ講ジテ居リマスルト共ニ帝國ノ眞意ヲ解シテ、大東亞戰爭完遂ニ協力シツツアリマスノデ、此際帝國ハ「對支處理根本方針」ヲ更ニ徹底具現セシムル爲右ニ卽應スル如ク別ニ定ムル所ニ據リマシテ日華基本條約ヲ改定シ日華同盟條約ヲ締結セントスルモノデアリマス。
又對支處理根本方針ニハ「帝國ハ重慶ニ對シ之ヲ對手トスル一切ノ和平工作ヲ行ハス狀勢變化シ和平工作ヲ行ハントスル場合ハ別ニ之ヲ決定ス國民政府モ亦帝國ノ態度ニ順應セシム」ル如ク定メラレタノデアリマスガ爾後對支處理根本方針竝ニ之ニ基ク諸施策ノ結束ハ逐次浸透シ、重慶側ニモ相當ノ動搖ヲ與ヘテ居ル狀況デアリマシテ過般龐炳勳ノ國民政府參加モソノ一證左

 

https://www.jacar.archives.go.jp/das/image-j/B02032868200 10/18 右

ト觀察セラレルノデアリマス。
一方重慶側ハ經濟的ニモ益々困窮ヲ加ヘツツアリマスノデ前述ノ對華諸方策等ノ進展ニ照應イタシマシテ適時國民政府ヲシテ對重慶政治工作ヲ實施セシムル如ク指導スルコトト致シマシタ。然シナガラ重慶抗戰陣營ノ中樞ガ國民政府ノ政治工作ニ今遽ニ應ジ來ルコトハ尙望ミ難ク且其ノ時期ヲ誤ルトキハ寧ロ之ニ依ル害ガ少クナイノデアリマス。依テ其ノ時期ニ關シマシテハ政府ト統帥部トノ閒ニ於テ協議決定スルコトト致シマス。

二、對泰方策

泰國ニ對シマシテハ其ノ獨立國タル對面ヲ保持セシメツツ之ヲシテ大東亞戰爭ノ遂行ニ衷心協力シ帝國ノ施策ニ積極的ニ協調セシムル如ク指導シツツアリマスガ、國民一般ハ戰爭ニ依ル生活ノ

 

https://www.jacar.archives.go.jp/das/image-j/B02032868200 10/18 左

不自由ヲ動モスレバ「ピブン」政權ノ親日政策及日本軍ノ駐屯ニ出來スルガ如キ考ヲ抱キ敵性諸國ノ日泰離閒策、反政府分子ノ策動ト相俟チ一般ノ對日空氣ハ必ズシモ滿足スベキ狀態ニアリトハ言ヒ難イノデアリマス。
帝國トシテハ「ピブン」政權ノ困難ナル立場ト泰國民ノ心理的動向トニ鑑ミ、日泰同盟條約附屬祕密了解事項第一條ニ基キ日本軍占領地帶タル「マライ」ノ失地囘復セシムルト共ニ經濟協力ヲ一層强化スルコトガ肝要デアリマス。
又「シヤン」地方ノ一部モ之ヲ泰國領ニ編入スルモノトシ之ガ實施ニ關シテハ「ビルマ」ニ與フル影響等ヲモ較量ノ上其ノ時期及地域等ヲ決定スルヲ要スルノデ
アリマス。

三、對佛印方策

 

https://www.jacar.archives.go.jp/das/image-j/B02032868200 11/18 右

佛印ニ關シテハ帝國ノ大東亞戰爭遂行ニ實質的ニ利用スルト共ニ其ノ靜謐ヲ保持シ、敵側ノ策謀ヲ封殺シ、帝國ニ對スル各般ノ協力ヲ一層積極的ナラシムル如ク施策中デアリマシテ今日迄ノ所佛印當局ノ對日協力ハ相當見ルベキモノガアルノデアリマスガ世界情勢ヲ反映シ且米英重慶側ノ執拗ナル宣傳等諸般ノ事情ニ因リ佛印側ノ同調的態度未ダ十分ニハ徹底スルノ域ニ達シテ居リマセンノデ益々前述ノ方針ヲ强化スルコトガ肝要デアリマス。但シ佛印ヲ本國ヨリ離脫セシムル如キ極端ナル施策ハ大東亞戰爭ノ現段階ニ於テハ之ヲ避クルヲ要スルノデアリマス。

四、對緬方策

對緬方策ニ就キマシテハ昭和十八年三月十日大本營政府連絡會議決定「緬甸獨立指導要綱」ニ基キ施策中デアリマシテ、五月八日

 

https://www.jacar.archives.go.jp/das/image-j/B02032868200 11/18 左

獨立準備委員會ヲ結成シ六月末準備完了ヲ期シ準備促進中デアリマス。

五、對比方策

比島ニ於テハ第八十一囘帝國議會ニ於ケル比島獨立ノ再確認ニ關スル帝國政府ノ聲明ニ依リ俄然對日信賴ノ度ヲ强メ行政府長官以下帝國ノ眞意ヲ解シ、治安ノ肅正行政ノ浸透ニ銳意努力中デアリマシテ大東亞共榮圈ノ一環トシテ更生シツツアリ其ノ一端ハ過般現地ニ參リマシテ私モ目ノアタリニ之ヲ見タノデアリマス。
依テ帝國ハ屢次ノ聲明ニ基キ之ヲ獨立セシムルコトトシ其ノ時期ハ治安未ダ完カラザルモ、戰爭指導上ノ要請ト比島側ノ自發的協力促進ノ見地トヨリ槪ネ本年十月頃ト豫定シ準備ヲ促進スルコトト致シマシタ。

 

https://www.jacar.archives.go.jp/das/image-j/B02032868200 12/18 右

六、其他ノ占領地域
「マライ」「スマトラ」「ジヤワ」「ボルネオ」「セレベス」ハ民度低クシテ獨立ノ能力乏シク且大東亞防衞ノ爲帝國ニ於テ確保スルヲ必要トスル要域デアリマスノデ之等ハ帝國領土ト決定シ重要資源ノ供給地トシテ極力之ガ開發竝ニ民心ノ把握ニ努ムル所存デアリマス。之等ノ地域ニ於テハ當分ノ閒依然軍政ヲ繼續致シマスガ原住民ノ民度ニ應ジ努メテ政治ニ參與セシムル方針デアリマシテ現ニ政治參與ヲ要望シテ居リマスル「ジヤワ」ニ對シテハ特ニ之ヲ認メル積リデアリマス。而シテ本歸屬決定ハ敵側ノ宣傳ノ資ニ供セラルル等ノ虞ガアリマスノデ當分ノ閒發表セザルコトト致シマスガ原住民ノ政治參與ニ關シマシテハ適宜之ヲ發表スルヲ適當ト考ヘテ居リマス。

 

https://www.jacar.archives.go.jp/das/image-j/B02032868200 12/18 左

「ニユーギニヤ」等前述以外ノ地域ノ處理ニ就キマシテハ既ニ述ベマシタル所ニ準ジテ追テ定ムルコトト致シマス。
七、大東亞會議
以上各方策ノ具現ニ伴ヒ本年十月下旬(比島獨立後)大東亞各國ノ指導者ヲ參集セシメ、戰爭完遂ト大東亞共榮圈確立トノ牢固タル決意ヲ闡明シ以テ戰爭完遂ニ邁進セントスルモノデアリマス。
以上ヲ以テ私ノ說明ヲ終リマス。

 

↑「4.占領地帰属問題(付)マライ独立問題(インド独立問題はA.7.0.0.9-56、ビルマ独立問題はA.7.0.0.9-39-1、フィリピン独立問題はA.7.0.0.9-96)」JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.B02032868200、大東亜戦争関係一件/占領地行政関係(A-7-0-0-9_18)(外務省外交史料館)?ああいういいいあいうあいうういああああいあいあああああおぅあいうあ