Ob-La-Di Oblako 文庫

帝国日本の侵掠戦争と植民地支配、人権蹂躙を記憶し、再現を許さないために、ひたすら文書資料を書き取る。姉妹ブログ「歴史を忘れる民族に未来はない!」https://obladioblako.hateblo.jp/ のデータ·ベースを兼ねる。

第三問題 速に英を屈服せしめ、米の戦意を放棄せしむる為、既定計画の遂行のみを以て充分とすべきや

【国家機密】 4/65
第三問題 速に英を屈服せしめ、米の戦意を放棄せしむる為、既定計画の遂行のみを以て充分とすべきや
              昭和17.2.25
              連絡会議決定案

[書き込み]三月七日、提題を改め別に確定することとなる。

速に英を屈服せしめ、米の戦意を放棄せしむる為、既定計画の遂行のみを以て充分とすべきや。

[書き込み]
(一)今日迄の戦果の良□□□こと。(早□□□少し。)
(二)但し□に屈服し為しめず。

    判  決

現情勢下に於ては、短期間に英を屈服せしめ米の戦争意志放棄を期待すること困難なり。

[書き込み]「第一期作戦(緒戦)の実績は予定計画に対比し軍事的·政治的·経済的に如何なる差違ありや」に改めて再検討すること。

    説  明

一、帝国は既に米英の東亜に於ける拠点を覆滅し、一応、西南太平洋の制海並びに制空権を獲得したる外、米英の戦力に大打撃を与へ得たりと雖も、豪州、印度、其の他太平洋·インド洋方面には尚、幾多の敵拠点残存しあるを以て、米英は此等を基地として
(1) 我が海上交通の破壊
(2) 帝国中枢部に対する奇襲
(3) 南方被占領戦略要地奪回
等を策し、未だ尚、帝国の自存自衛を脅すのみならず、彼の戦力向上せる暁に於ては、蘇支と提携し此等の拠点を活用して大規模攻勢に転じ来る算、大なり。

ニ、米英は南太平洋よりする重要資源の流入を阻止せられ、其の打撃少からざるものあるも、貯蔵、代換等、適宜の措置に依り、戦争遂行能力には差し当たり大なる支障を来さざるべく、寧ろ其の戦力は当分の間、急速に向上するならん。

三、米英に対する海上交通の破壊は、大西洋方面に於て米英間直接の交通を遮断するに非ざれば大なる効果を期待し得ざるべく、米英と印豪相互間の海上交通遮断が軍事並びに政治上に与ふる打撃の大なるべきは勿論なるも、米英印豪何れも之のみに依りて直接、自滅の因となるがき大なる打撃を受くるに至るべしとは認め得ず。

四、米英の連繋、極めて密なるに対し、日独間の現状は、互いに分離しありて、総合戦力の発揮上、極めて不利なる立場にあり。
而して又、ソ連の対独持久消耗戦及び対日牽制乃至は参戦に相当の期待を繋ぎ得る現状に於ては、未だ尚、米英側をして最後の勝利に対する希望を失はしむること困難なり。

五、之を要するに、現情勢下に於ては、帝国の国力並びに大陸方面の現状にも鑑み、早急なる英の屈服乃至は米の戦意放棄を期待し得ざるのみならず、米英は其の雄大なる戦争遂行能力を以て飽く迄我を屈服せしめんとすべく、妥協により事態を収めんとするが如きは全く期待し得ざるところな<り>[✕るを以て、帝国は既得の戦果を基礎とし戦機を逸せず所要の新方策を講じ、速に不敗の戦略態勢を完成すると共に、国防弾撥力に努むるを要す✕]。(ここはこのままタイプして───をひいて下さい。)

14.速ニ英ヲ屈服セシメ米ノ戦意ヲ放棄セシムル為既定計画ノ遂行ノミヲ以テ充分トスヘキヤ(昭一七、二、二五連絡会議決定案)
https://www.jacar.archives.go.jp/das/image/B02032971900
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