【軍事機密】 20部の内第5号
第三問題 初期作戦の実績は予定計画に対比し軍事的·政治的·経済的に如何なる差違ありしや
昭和十七年三月十一日
連絡会議決定
初期作戦の実績は予定計画に対比し軍事的·政治的·経済的に如何なる差違ありしや
第一、軍 事
一、対米英蘭
初期作戦に於て陸海軍共に予期以上の大戦果を収めたる結果、差し当たり米英をして守勢に堕せしめ、我が国土の防衛、主要交通線の確保等に関し有利なる情勢となりたる外、現戦勢を活用せば長期戦完遂の為め、従来は守勢的戦略態勢を採るの已むなきを予期せしめたるに反し、今や攻勢的戦略態勢に転じ得るの気運となれり。
[書き込み]従来は防衛的、今後は少くとも当分攻勢的地位に在る。──タイプ。
[書き込み、判読困難]
説 明
(イ) 陸軍作戦は比島方面に於て若干停滞を見あるの外、全般に約一ヶ月の作戦期間を短縮·進展せしめたり。尚、我が兵力の損耗に於ても予想外に軽微なり。
殊に南方作戦の一段落後に予想せしビルマ作戦は、南方に於て早期に得たる余力に依り既に之を開始し得るに至りたり。
(ロ) 海軍作戦は緒戦に於て太平洋方面所在の米英艦隊主力に対し大打撃を与へたる外、在東洋敵海上兵力を殆んど撃滅したるに対し、我が兵力の損耗は予期以上に僅少にして、太平洋並びに印度洋方面に於ける彼我の兵力関係は、当分の間、攻守互に其の所を変じ得るに至りたり。
(ハ) 陸海軍航空作戦も亦、我が損耗比較的僅少、且つ多大の敵航空兵力を撃破し、予期以上の戦果を収めつつあるを以て、今後、太平洋及び印度洋方面に於ける敵大航空兵力の展開を対し得る<[書き込み]中型機の輸送を封ずることも□□す>に於ては、敵航空兵力の急速増勢に対応し得る情勢となれり。
特に緒戦に於て敵に与へたる人的打撃は甚大なるべし。
(ニ) 米英は将来、其の戦力向上せる暁に於て、尚残存せる反抗拠点を利用し大規模攻勢を企図し得べし。
二、対重慶
重慶側に対しては初期作戦の大戦果、就中予期以上に迅速なるビルマ·ルートの遮断に依り其の抗戦力に相当の影響を与ふべきを予想せしむるに至れり。
三、対ソ連
我が初期作戦の大成果は北辺防衛の措置と相俟て今日迄の処、日ソ関係の静謐維持を容易ならしめつつあり。
20.初期作戦ノ実績ハ予定計画ニ対比シ軍事的政治的経済的ニ如何ナル差異アリシヤ(昭一七、三、一一連絡会議決定)