Ob-La-Di Oblako 文庫

帝国日本の侵掠戦争と植民地支配、人権蹂躙を記憶し、再現を許さないために、ひたすら文書資料を書き取る。姉妹ブログ「歴史を忘れる民族に未来はない!」https://obladioblako.hateblo.jp/ のデータ·ベースを兼ねる。

「猶太人の民族的特性に鑑み、其の居住·営業に対し監視を厳重にする」 時局に伴ふ猶太人対策 1942.3.11


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【国家機密】  部の内第21号   【決定】
  時局に伴ふ猶太人対策
           昭和十七年三月十一日
           連 絡 会 議 決定

大東亜戦争発生に伴ふ猶太人対策は左記要綱に基づき実施するものとす。

    要  綱

一、日満支其の他我が占領地に対する猶太人の渡来は、特殊の事由あるものを除き一切之を禁ず。

二、日満支其の他我が占領地に居住する猶太人は原則として当該国籍人に準じて扱ふも、猶太人の民族的特性に鑑み、其の居住·営業に対し監視を厳重にすると共に、其の敵性策動は之を排除·断圧す。

三、猶太人中、帝国に於て利用し得るもの(同盟国に於て利用し得るものの中、帝国の政策に反せざるものを含む)は之を厳選し、之に適当なる待遇を与ふるも、猶太人民族運動を支援するが如きことは一切之を為さず。
備考 昭和十三年十二月六日五相会議決定、猶太人対策要綱は之を廃止す。

    説  明

帝国の従来執り来りたる猶太人政策の大綱は、昭和十三年十二月六日付五相会議決定による猶太人対策要綱に示され居る処、右対策は猶太人に対し好意的取扱を為すことに依り外資導入或は対英米関係悪化回避に資せんとする趣旨に出でたるものなり。然るに今や大東亜戦争等の発生により情勢の根本的変化を見るに至り、猶太人利用による外資導入或は対米英関係打開の如きは全く無意義となりたるのみならす、我が盟邦たる独伊は夙に排猶政策を執り、殊に独逸に於ては本年一月一日以降、海外在住猶太人の独逸国籍を一斉に剥奪するの措置に出でたるを以て、我が方としては猶太人の取扱に付、第三国関係を格別顧慮するの要なきに至れり。他方、占領地の拡大に伴ひ、我が権力下に在る猶太人の数は漸次増加の傾向にあり、此等猶太人に対しては、其の民族的特性に鑑み、至急、適当の警戒措置を執るに非ずんば、占領地行政上、不測の禍を残すの惧なしとせず。然れども全面的に猶太人を排斥するが如きは八紘一宇の我が国是に副はざるのみならず、必ずや英米の逆宣伝に利用せらるべきに付、原則として猶太人は当該国籍を有するものに準ずる取扱を為し、元独逸国籍猶太人は之を無国籍人と見做し、白系露人等に準じ取扱ふも(無国籍人の第三国国籍取得を容認せず)特に厳重なる監視を為すものとす。

参考資料
  昭和十三年十二月六日 五相会議決定
  猶太人対策要綱

独伊両国との親善関係を緊密に保持するは現下に於ける帝国外交の枢軸たるを以て、盟邦の排斥する猶太人を積極的に帝国に包容するは原則として避くべきも、之を独国と同様極端に排斥するが如き態度に出づるは、啻に帝国の多年主張し来れる人種平等の精神に合致せざるのみならず、現に帝国の直面せる非常時局に於て、戦争の遂行、特に経済建設上、外資を導入するの必要と、対米関係を悪化することを避くべき観点より、不利なる結果を招来するの虞、大なるに鑑み、左の方針に基き之を取扱ふものとす。

一、現在、日、満、支に居住する猶太人に対しては、他国人と同様、公正に取り扱ひ、之を特別に排斥するが如き処置に出づることなし。

二、新に日、満、支に渡来する猶太人に対しては、一般に外国人入国取締規則の範囲内に於て公正に処置す。

三、猶太人を積極的に日満支に招致するが如きことは之を避く。
但し資本家·技術家の如き特に利用価値あるものは此の限りに在らず。

↑重要国策決定綴 其2
昭和17年3月11日 時局に伴ふ猶太人対策 https://www.jacar.archives.go.jp/das/image/C12120213300