此変災に当りて各支部は 支部会長の命を奉じて各 応急の所置を執りしが、九月三日 本部に於ても会員指導の件を協議し、先づ麻布、本郷南支部に対して左の訓示を発したり。
帝国在郷軍人会急告
一、不逞鮮人暴徒 噂盛なるも、右は大いに事実相違し訛伝に過ぎず 鮮人の大部分は順良なるものに付 濫りに之を迫害し暴行を加ふる等 無之様 注意せられたし
但し真に不逞鮮人と認めたる時 亦 抵抗した場合に当りては、十分の処置を取り 万違算なきを期せられたし。
二、警戒 厳に過ぎ 制服を着したる将校迄を喰止め 誰何 又は取調に類する等の行動を為すものありと聞く、斯の如き行為は止められたし。
三、在郷軍人会員として地方民に安定を計り 警戒責任を負うべきものなるに、往々にして誇張の宣伝をなし 反つて地方民に恐怖の念をなさしむるもの在りと聞く、国民の中堅たる会員として戒むべきものと信ず。
警備に付て会員の言動 稍 規律を欠く者有りと聞く 注意を要す。
四、軍人会員の警備に関しては、将来 関東戒厳司令官の区署を受け 一警戒部隊と緊密なる連繫を以て其の任務に服することとなる筈。
五、在郷軍人会員に対し糧食の配当を受くることに目下 本部に於て尽力中なり。
六、支部の為 本部より非常費 壹百五拾円を配当す(現金 交付し能はざるに付 一時 立替えを乞ふ)
七、軍人会が団体として銃 及 剣を使用するは穏当ならず。
東京市 編 東京震災録 別輯