Ob-La-Di Oblako 文庫

帝国日本の侵掠戦争と植民地支配、人権蹂躙を記憶し、再現を許さないために、ひたすら文書資料を書き取る。姉妹ブログ「歴史を忘れる民族に未来はない!」https://obladioblako.hateblo.jp/ のデータ·ベースを兼ねる。

「性病予防等のため兵100人につき1名の割合で慰安隊を輸入す。1,400―1,600名。」 金原節三業務日誌摘録 前編 その一のイ(当時陸軍省医事課高級課員)より4月15日 医務局課長会報 1938. 4. 15

昭和一四、三、一三〜一四、五、三〇

金原節三業務日誌摘録 前編 その一のイ

       当時陸軍省医事課高級課員

 

〔4月15日〕医務局課長会報

 1。台湾状况(台湾總督府宮原技師談)。

 マラリヤにつき研究所を擧げて研究中なり。

 マラリヤ治療剤につきては医師のみでは不十分なる故,化学者,薬理学者等の合同研究を行いたし。合成剤製造の目途は前途遼遠なり。アラボリン、プラスモヒンの製造研究を実施中。なおア,プ以外の薬物につにても調査研究中なり。これらの研究につき軍の援助を依頼す(居校よりとりあえず3万円を援助す)。なお医事課長よりこれに対しアラボリンにつきては別途研究開発中につき他のものに重点を指向する様要望す。

 医務局長より台湾における今更のマラリヤ対策につきて問われたるに対し宮原技師は,大体において薬剤をもって制圧し得る筈なる故,主としてキニーネをもつてする予防治療法を促進するつもりなり。台湾のマラリヤ(熱帯熱)はキニーネをもつて治療するが,治療剤投與とともに安静を保持し,栄養をたかめることが必要である。この点軍は,安静栄養ともに戦時においては不良の状態となること夛し。戦争マラリヤにつきては從来の研究以外別途の考慮を必要とすべし。

 台湾はキナ樹の栽培に適す。ただし台産キナは樹皮薄きをもつて,同一面積におけるキナの製造量はジヤバの1/3なり。從つて台湾産のキナ皮をもつて充足するとせば、ジヤバより輸入する量の3倍量を輸入せざるべからず。(台湾におけるキナ適地は南部台湾)。

 局長より日本の從来のキナ皮輸入量は800トンで,だいたい,これで間に合っていたが,南支その他南方諸地域に進出すとせば,きわめて大量のキナ資源を必要とすべし。今よりこれが所要量を調査検討しおくべし。

 2。松村波集団軍医部長報告。

 波集団における防疫の重点は,パラA,赤痢及びマラリヤ三者なり。

 マラリヤにつきてはアラボリン,プラスモヒン,塩規を3ヶ月感毎別途に与えその予防効果の調査を行いつつあり。熱帯マラリヤはある程度塩規のみをもつて治療せしむることを得。

 香港にプラスモヒンの在庫あり。これを獲得せんとせしも為替監理のため購入し得ず。三井の手により若干量を取得せるも頗る高価なり。

 今后発生を予想する傳染病としては4,5月頃チフス系統疾患を主としその他赤痢アメーバ赤痢コレラは5,6月より9月頃まで。デング,広東熱は5,6月発生す。

 広東にはここ十数年ペストの発生なし。痘瘡も種痘の腐朽徹底のため流行なり[→し?]。これに反し海南島では年中ペストにから菌を検出す。先般も有菌鼠を捕獲せり。これがため部落を焼き拂わんとせるに宣撫上の理由により中止せり。

 海口、黄港にS.Kの中型2ヶ,野戦消毒車をを整備する要あり。

 寧波にペスト検索班を設け,将来これを検疫所となす予定なり。

 広東の水道消毒のためクロール消毒うつわを整備したし。南支各施設に顕微鏡不足(註,送付済)。野戦予備病院に車両を支給方希望す(本部には不要)。濾水器は小型のものを必要とす(車載)。騎載は更める必要あり。

 戦斗救護軍は目下のところ活動の余裕なし。

 土民に対する施設につきては材料不足しあるを以つて目下軍はこれを行わず主として博愛病院が行いつつあり。

 広東省内に5万のレプラ患者ありたりとのこと,一説によれば,その夛くが銃殺されたりともいう(支那軍の手により)。わが軍の前線電信所は鉄条網を周囲にめぐらし,彼等に残飯給与をなしあり。米国系のレプラ病院あり。

 㐧21軍に看護婦30名あるも不足なり。これがため現在台湾にある20名を熱地医學研究所に傭い、現在熱地医學研究所に勤務しあるものを病院に配属する要あり。(熱地医學研究所松野耕平軍医大佐)。

 台湾に広東軍の転地療養所を作ることにつき松村軍医部長としては将校だな限定し下士官には及ばずといふ意見。

 米は籾として貯蔵しあり。野菜は6,7月頃に内地より補給する用あり。魚介類は冷凍魚を輸入す。豚,鶏は現地にて飼育す。牛乳は台湾より乳牛40頭を輸入(4月中旬より患者に与えつつあり)。

 性病予防等のため兵100人につき1名の割合で慰安隊を輸入す。1,400―1,600名。治療は博愛病院にて行いその費用は楼主これを負担す。検黴は週2回。

3。衛生材料本廠長報告

 作戦緩和のためもあり、現在衛生材料の補給順調で、市支廠を通じ12万8千梱が集積しあり。
各廠[站?]共、おおむね所要の器械薬物を整備貯蔵しあり。

 現地調弁は外地においては止むを得ざるものに限定し、おおむねこの原則が守られておる
が、中には、内地品を現地で高価にて調弁するものがあり、注意を要す。

 南昌付近は激戦を予想され多量の戦傷用を追選せるも戦傷者は予想以上に尠かつた。

 衛生材料の修理班は現地の人員で編成出来るが、これに要する資材は中央より交付する要あり。石岡部隊より移動修理班の材料自動車の設計○を進達し来る筈なり。一般に器材の制式につきては各種の意見希望あり。