昭和十六年二月二十六日
北支那方面軍司令部
昭和十六年度粛正建設計画
第一 方針
治安第一主義を基調とする既往粛清建設の諸施策を継承して一層粛正を徹底し、速やかに治安を恢復して民生を安定し、重要国防資源の開発・取得を促進し、軍の自活力を向上し、以て日華緊密なる合作規範地帯を具現す。
前項に基づく施策は之を重点に集中し、日華軍・官・民の総力を統合発揮し、以て粛清建設に一段の飛躍を期す。
第二 要綱
一、速かに占領地域内共産勢力を剿滅す。
之が為、徹底的粛清討伐に依るの外、軍・政・民 各種機関の能力を有機的に総合発揮し、其の弱点に乗ずる如く万般の施策を集中す。
二、支那側機関をして積極的に治安に協力せしむ。
之が為、行政機関の実力を育成し、其の政治の浸透を図ると共に、之等機関ならびに支那側各界官民をして治安確保の責任を自覚せしめ、之に基づく自発的活動を促進す。
三、郷村は徒らに上部よりの行政の浸透を待つことなく、自力を以て建設するに努めしむ。特に堅実なる郷村自営を促進す。
四、経済建設は重要国防資源の開発取得、民生の安定、軍事活力の向上を図る為、生産の増加、物資の流動を重点として施策す。
対敵経済封鎖は益々之を強化す。
五、施策の分散・普遍を排し、重点に徹底せしむ。
模範地区、特に北部北支および重要国防資源存在地区に於けるものの治安は速かに之を確立し、建設を促進す。
六、愈々軍紀を振作し士気を昂揚して、皇軍の武徳を顕現す。
支那側に対しては恩威の併進を適正ならしめ、其の良民に対する愛撫と適性軍民に対する武威の発揚とを峻別し、以て適性を芟除す。
七、昭和十六年度粛清建設は、昭和十六年四月より昭和十七年三月に至る一年間とす。
八、方面軍に於て行ふ作戦に関しては、別に定むる所に拠る。
第三 要領
其の一 討伐・粛清に関する事項
一、討伐作戦は敵の動向、戦力の動態等を精察し、我が戦法に不断の修正・改善を加へて其の形式固定化を避け、常に主導の態勢を確保しつつ溌剌・果敢に之を反復し、以て敵戦力を撃滅し、其の根拠を覆滅す。
二、討伐・粛清は其の重点を共産軍および党に指向す。而して之が討伐に方りては、他の建設施策との連携・吻合をならしむ。
共産根拠地帯に対しては統制ある封鎖を併用して之を覆滅す。
三、分散配置は之を続行するも、過度の分散を避け、攻勢の拠点、治安の支持点たるの実を挙ぐ。
四、情報・諜報網を益々強化・拡充して、粛清建設上、各方面に必要かつ有効なる情報を獲得すると共に防諜の完璧を期す。
五、作戦地境付近の粛清は地境に拘泥することなく、兵団相互の緊密なる協同により実施す。
状況により上級部隊 之を統括し、或は某兵団の統一企画の下に実施す。
六、築城を防御、交通線保護、自営等、各目的に応ずる如く合理的に施設して、兵力の抽出ならびに機動を容易ならしむると共に、治安の確立に資す。
[以下略]
↑昭和16年度粛正建設計画 昭和16年2月26日 北支那方面軍司令部 https://www.jacar.archives.go.jp/das/image/C11110955600