同盟旬報 第1巻 第20号(No.12)
【昭和12年・10月中旬号】
922(24) 支那事変
敵陣跡に毒ガス弾発見
上海【10.16】(○○報道部午後4時発表)
大平橋付近において敵陣地へ奇襲せる際、敵の砲兵陣地跡に特殊の塗料を施した数個の迫撃砲彈を発見せるにより、厳密なる調査試験を行ひたる結果、四塩化チタニュームとホスゲンを混合填実せるガス弾たるの確認を得るに至れり。
▲当局談 上海【10.16】(○○当局談)
最近支那側は頻りに日本軍が毒ガスを使つたと宣伝し、某国大使館のごときはこれを世界に発表してゐるが、正義·人道を基とする日本軍が毒ガスを使用するがごときことは断じてなく、これに関して何らの証拠もないはずである。しかるに日本軍は去る14日、太平橋付近において奪取せる敵の砲兵陣地内より窒息性ガス弾を発見した。これは特に弾頭部に赤色の塗料を施し、弾尾の構造が幾分違つてゐるため、これを拾得、司令部に届け出た。司令部では試みに真[→信?]管の捻を除去すると、盛んに強烈な嗅気ある煙を発散せるため、厳密な理化学的実験ならびに動物試驗の結果、
1.D氏反応および嗅気によりホスゲンの混入を認め、
2.アニリンおよびアンモニア法によつて白濁を検出して、ホスゲンのあることを認む。
3.モルモツトのごときは僅か5分間にしてホスゲン特有の症狀を呈し一部斃死し、一部は肺出血を起こせり。これにより紛ふ方なき四塩化チタニュームならびにホスゲンを混入せる毒ガス弾なることを確認するに至れり。この砲弾はすこぶる巧妙を極め、発煙性あるチタニュームを多量に含む発煙弾と見せかけ、中には致死効果を狙ひ猛毒ホスゲンを含むものあり。ホスゲンは人も知るごとく欧州大戦において各種の形式で毒性の強烈な猛ガスとして使用されたものである。
8月23日、田上部隊が顔十房付近を攻撃中に[敵は]我が陣地内に嚔性ガス弾を打ち込み、中毒者を出したが、爾来我が軍は敵の不発弾および遺棄せる砲弾に特に注意し、変つた弾丸を発見した場合、直ちに司令部に報告せしめつつありしが、10月12日陳家宅、13日大塘南において、煙を伴へる弾丸が我が前線近くに落下したので、非常な注意を払つたのであるが、前述砲彈弾の実験の結果、これまで発射せる敵の砲弾中にはガス弾の混入せるを裏書きせるものである、最近支那側が頻りに我が軍の毒ガス使用を宣伝するのは、かかる己れの非を転嫁せんとする魂坦によるものにほかならない。
同盟旬報 第一巻 第二十號(No.12)
【昭和十二年・十月中旬號】
922(24) 支那事變
敵陣跡に毒瓦斯彈發見
上海【一〇·一六】(○○報道部午後四時發表)
大平橋附近に於て敵陣地へ奇襲せる際敵
の砲兵陣地跡に特殊の塗料を施した數個
の迫撃砲彈を發見せるにより嚴密なる調
査試驗を行ひたる結果四鹽化チタニュー
ムとホスゲンを混合塡實せる瓦斯彈たる
の確認を得るに至れり
▲當局談 上海【一〇·一六】(○○當局談)
最近支那側は頻りに日本軍が毒瓦斯を使
つたと宣傳し某國大使館の如きはこれを
世界に發表してゐるが正義人道を基とす
る日本軍が毒瓦斯を使用するが如きこと
は斷じてなくこれに關して何等の證據も
ない筈である、然るに日本軍は去る十四
日太平橋附近において奪取せる敵の砲兵
陣地内より窒息性瓦斯彈を發見した、こ
れは特に彈頭部に赤色の塗料を施し彈尾
の構造が幾分違つてゐるためこれを拾得
司令部に届け出た司令部では試みに眞管
の捻を除去すると盛に强烈な嗅氣ある煙
を發散せるため嚴密な理化學的實驗並び
に動物試驗の結果
一 D氏反應及び嗅氣によりホスゲンの
混入を認め
白濁を檢出してホスゲンのあることを
認む
三 モルモツトの如きは僅か五分間にし
てホスゲン特有の症狀を呈し一部斃死
し一部は肺出血を起せりこれぬより紛
ふ方なき四鹽化チタニューム並びにホ
スゲンを混入せる毒瓦斯彈なることを
確認するに至れり。この砲彈は頗る巧
妙を極め發煙性あるチタニュームを多
量に含む發煙彈と見せかけ中には致死
効果を狙ひ猛毒ホスゲンを含むものあ
りホスゲンは人も知る如く欧州大戦に
於いて各種の形式で毒性の强烈な猛瓦
斯として使用されたものである。
八月廿三日田上部隊が顏十房附近で敵
を攻撃中に我が陣地内に嚔性瓦斯彈を
打ち込み中毒者を出したが爾来我が軍
は敵の不發彈及び遺棄せる砲彈に特に
注意し變つた彈丸を發見した場合直ち
に司令部に報告せしめつゝありしが十
月十二日陳家宅、十三日大塘南に於て
煙を伴へる弾丸が我が前線近くに落下
したので非常な注意を拂つたのである
が前述砲彈の實驗の結果これまで發射
せる敵の砲彈中には瓦斯彈の混入せる
を裏書きせるものである、最近支那側
が頻りに我が軍の毒瓦斯使用を宣傳す
るのは斯かる己の非を轉嫁せんとする
魂膽によるものに外ならない。
https://www2.i-repository.net/contents/myc/chosakai/A02_0113_013.pdf