軍事極秘
晋察冀辺区粛正作戦開始にあたり
作戦参加将兵に与ふる方面軍司令官訓示
満を持して軍旅を整ふること月余、ここに起つて北部大行山脈、敵共産党軍に対する作戦を開始せんとす。
惟ふに北支建設の禍根は一に共産党軍の執拗、飽くなき蠢動に胚胎す。しかも聖戦歳を重ねて共匪の禍害未だに滋く、その党勢またにわかに楽観を許さず、明朗華北の顕現なほ遠きを思はしむるは、遺憾に堪へざるところなり。
今や精鋭を抜きて北部大行山脈に進攻し、敵根拠地を覆滅するの機を得たり。正に翹望の好機たり。
しかして今次作戦の目的は、共産党軍を撃砕してその根拠を覆滅し、もつて華北治安攪乱の根源を芟除せんとするにあり。
時未だ溽熱の候、山岳重畳せる峻険を踏破して神出鬼没、退避に巧みなる敵の撃砕を企図す。その作戦の容易ならざる[は]もとより想察するに難からず。しかも本作戦の成果は一に下級部隊の積極·果敢、熱烈·執拗にして、独断機を制する討伐の累積·統合によりて期待し得ると称するも過言にあらず。特に分駐配置後においてしかり。
将兵よろしく叙上の趣意を体し、旺盛なる志気と堅忍不抜の意思とを堅持して作戦に臨み、傲らず侮らず、よく皇軍の武威を宣揚し、もつて作戦目的の達成に寄与せんことを期すべし。
右、訓示す。
昭和16年8月14日
北支那方面軍司令官 岡村寧次
軍事極秘
晋察冀邊區粛清作戰開始ニ方リ
作戰參加將兵ニ与フル 方面軍司令官訓示
滿ヲ持シテ軍旅ヲ整フルコト月餘 茲ニ起ツテ北部大行山脈 敵共產黨軍ニ對スル作戰ヲ開始セントス
惟フニ北支建設ノ禍根ハ一ニ共產黨軍ノ執拗 飽クナキ蠢動ニ胚胎ス 然モ聖戰歳ヲ重ネテ共匪ノ禍害 未タニ滋ク 其ノ黨勢 亦 遽カニ樂觀ヲ許サス 明朗華北ノ顯現 尚遠キヲ思ハシムルハ遺憾ニ堪ヘサル所ナリ
今ヤ精鋭ヲ拔キテ北部大行山脈ニ進攻シ 敵根據地ヲ覆滅スルノ機ヲ得タリ 正ニ翹望ノ好機タリ
而シテ今次作戰ノ目的ハ 共產黨軍ヲ擊摧シテ其ノ根據ヲ覆滅シ 以テ華北治安攪乱ノ根源ヲ芟除セントスルニ在リ
時 未タ溽熱ノ候 山嶽重疊セル峻嶮ヲ踏破シテ 神出鬼沒 退避ニ巧ナル敵ノ擊摧ヲ企圖ス 其ノ作戰ノ容易ナラサル 固ヨリ想察スルニ難カラス 而モ本作戰ノ成果ハ一ニ下級部隊ノ積極果敢、熱烈執拗ニシテ 獨斷 機ヲ制スル討伐ノ累積統合ニ依リテ期待シ得ルト稱スルモ過言ニ非ス 特ニ分駐配置後ニ於テ然リ
將兵 宜シク叙上ノ趣意ヲ体シ 旺盛ナル志氣ト堅忍不拔ノ意思トヲ堅持シテ作戰ニ臨ミ 傲ラス侮ラス 克ク皇軍ノ武威ヲ宣揚シ 以テ作戰目的ノ達成ニ寄與センコトヲ期スへシ
右 訓示ス
昭和十六年八月十四日
北支那方面軍司令官 岡村寧次
↑訓示提出の件
https://www.jacar.archives.go.jp/das/image/C04123309700
JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.C04123309700、昭和16年 「陸支密大日記 第34号 3/3(防衛省防衛研究所)