真文写し
蓋し貴弊両国好を交えて以来、義は兄弟の孔懐に同じく、信は河山の帯砺の如し。和館を設置し専ら相憐れむを務む。これ大経なり、大法なり。この後三百年の間、何ぞ嘗て少なくも経法の上に忽せにせんや。これただ上行ふて下効[なら]ふのみにあらざるなり。また必ずしも両国幹旋人の経法を服膺し前修を渝[か]へざるに由らず。則ち今日その職に居りその事を掌るをなす者、これを捨てて何をか求めん。しかして今順付の書契館に到りて後積月、公幹ただにしばしば遭はず、しか一言を蔽[さだ]む。曰く、書契の徃復、重んずる所おのずから別る。大格式に違はざるを除き、いづくんぞ遅滞して捧げざるべけんや。貴船の来往、朝廷に転達するを例となす。則ち賚[たま]ひ来たる書契もまた当[まさ]に南宮に上送すべし。故に僕ら先づ取見をなせり。則ち外面上職銜の前と異なるあり。加級の称と知るといへども、姓字の下なる朝臣の二字に至りては、
これ何の格例なるや。これよりそれに回答するもまた、この例に俲[なら]へば問ひなきに似たりといへども、恐らくは各国の聴聞において嘲りを取らん。これなほ第二件の事なり。かつ書契の文字もまた格外の語多し。甚しきは私をもつて公を害するの句に至る。我が国鋳送の図書還納の説に至りては、覚えず口挙[こぞ]りて合はず舌挙りて下らざるなり。その初め鋳を請ふは、ただ貴邦の願ひのみならず、また我が国の寵錫に関はるとなす。しかるに忽焉変改し新造の印を着せんと要するは、これ果して旧章に率由してますます隣好を敦くするの意か。これみな捧出すべからざるの大旨なり。故にすでに即ち本府釜山両使道前に稟告し、同じく来船啓聞中に論を挙ぐるをなすなり。伏して回下を見るに及んで、ただ可也の教へを退却するのみにあらず、また聞くを煩はすの難なきの責あり。僕ら情地の惶隕、罪を待つ。顧[おも]ふに恤[うれへ]るに足らず。しかして和館僉公をもつてこれを言ふといへども、宜しく即ち事情に援拠し貴州に通報すべし。にわかに新印を着し、限りなく公幹を転生し、徒に事面の地を損ずるに至るなかれ。これ深く望む所のみ。