条二【松本】 ty 【懸案】
昭和 9 年 9 月 1 日接受
条約局 一【小林】 【結城】【松本】
官房機密第 1984 号の 2
昭和 9 年 8 月 31 日
外務次官殿
「戦地軍隊における傷者および病者の状態改善に関する 1929 年 7 月 27 日のジュネーブ条約」御批准方奏請に関する件
条一機密合 3091 号をもって照会の件、当省としては異存これなく候ふ。
追って「俘虜の待遇に関する 1929 年 7 月 27 日の条約」に関しては追って回答いたすべく候ふ。
条二【松本】
【印】 昭和 9 年 9 月 7 日接受
條約局
【秘】機密第521号
戦地軍隊における傷者および病者の状態改善に関する1929年 7月27日のジュネーブ条約および俘虜の待遇に関する1929 年 7 月 27 日の条約御批准方奏請に関する件回答
昭和 9 年 9 月 6 日 陸軍次官 橋本虎之助
【陸軍次官之印】
外務次官 重光葵殿
8 月 9 日付、条一機密合第 3091 号照会による主題の件中、「戦地軍隊における傷者および病者の状態改善に関する1929 年 7 月 27 日のジュネーブ条約」に関しては、御批准方奏請に異存これなきも、「俘虜の待遇に関する 1929 年 7 月 27 日の条約」に関しては、御批准奏請をなさざるを可とする当省の意見につきしかるべく取り計らひ相成りたし。
条二【松本】
【結城】昭和 9 年 11 月 16 日接受
条約局 条一【小林】
官房機密第 1984 号の 3
昭和 9 年 11 月 15 日
外務次官殿
「俘虜の待遇に関する1929 年 7 月 27 日の条約」御批准方奏請に関件回答
8 月 9 日付、条一機密合第 3091 号照会の主題に関しては、取り敢へず官房機密第 1984 号の 2 をもって回答いたし置き候ふところ、その後研究の結果、同条約は御批准方奏請そられざるを可としはる省の意見にこれあり候ふ。
(別紙意見書)
(終)
俘虜条約に対する意見
一、帝国軍人の観念よりすれば俘虜たることは予期せざるに反し、外国軍人の観念においては必ずしもしからず。したがって本条約の形式は相互的なるも、実質上はわが方のみ義務を負ふ片務的のものなり。
二、俘虜に関する優遇の保証を与ふることとなるをもって、例へば敵軍将士がその目的達成後俘虜たることを期して空襲を企図する場合には航空機の行動半径倍大し、帝国として被空襲の危険ますます大となるなど、わが海軍の作戦上、不利を招くに至るおそれあり。
三、第 86 条の規定により、第三国代表が立会人なく俘虜と会談し得る点は、軍事上支障あり
四、本条の俘虜に対する規定は帝国軍人以上に俘虜を優遇しあるをもって、海軍懲罰令、海軍刑法、海軍軍法会議法、海軍監獄令等諸法規の改正を要することとなるも、右は軍紀維持を目的とする各法規の趣旨に徴し不可なり。
右の理由により本条約は御批准方奏請せられざるを可と認む。
(終)
條二【松本】 ty 【懸案】
昭和九年九月 壹日接受
條約局 一【小林】 【結城】【松本】
官房機密第一九八四號ノ二
昭和九年八月三十一日
海軍次官【海軍次官之印】
外務次官殿
「戰地軍隊ニ於ケル傷者及病者ノ狀態改善ニ關スル千九百二十九年七月二十七日ノ「ジユネーブ」條約」御批准方奏請ニ關スル件
條一機密合三〇九一號ヲ以テ照會ノ件當省トシテハ異存無之候
追テ「俘虜ノ待遇ニ關スル千九百二十九年七月二十七日ノ條約」ニ關シテハ追テ囘答致スベク候
條二【松本】
【印】 昭和九年九月 七日接受
條約局
【秘】機密第五二一號
戰地軍隊ニ於ケル傷者及病者ノ狀態改善ニ關スル千九百二十九年七月二十七日ノ「ジユネーブ」條約及俘虜ノ待遇ニ關スル千九百二十九年七月二十七日ノ條約御批准方奏請ニ關スル件回答
昭和九年九月六日 陸軍次官 橋本虎之助【陸軍次官之印】
外務次官 重光葵殿
八月九日附條一機密合第三〇九一號照會ニ依ル主題ノ件中「戰地軍隊ニ於ケル傷者及病者ノ狀態改善ニ關スル千九百二十九年七月二十七日ノ「ジユネーブ」條約」ニ關シテハ御批准方奏請ニ異存無之モ「俘虜ノ待遇ニ關スル千九百二十九年七月二十七日ノ條約」ニ關シテハ御批准奏請ヲ爲ササルヲ可トスル當省ノ意見ニ付可然取計ヒ相成度
條二【松本】
【結城】昭和九年十一月拾六日接受
條約局 條一【小林】
官房機密第一九八四號ノ三
昭和九年十一月十五日
海軍次官【海軍次官之印】
外務次官殿
「俘虜ノ待遇ニ關スル千九百二十七年七月二十七日ノ條約」御批准方奏請ニ關スル件囘答
八月九日附條一機密合第三〇九一號照會ノ主題ニ關シテハ不取敢官房機密第一九八四號ノ二ヲ以テ囘答致置候處其ノ後研究ノ結果同條約ハ御批准方奏請セラレザルヲ可トスル當省ノ意見ニ有之候
(別紙意見書)
(終)
俘虜條約ニ對スル意見
一、帝國軍人ノ觀念ヨリスレバ俘虜タルコトハ豫期セザルニ反シ外國軍人ノ觀念ニ於テハ必シモ然ラズ從テ本條約ハ形式ハ相互的ナルモ實質上ハ我方ノミ義務ヲ負フ片務的ノモノナリ
二、俘虜ニ關スル優遇ノ保證ヲ與フルコトトナルヲ以テ例ヘバ敵軍將士ガ其ノ目的達成後俘虜タルコトヲ期シテ空襲ヲ企圖スル場合ニハ航空機ノ行動半徑倍大シ帝國トシテ被空襲ノ危險益大トナル等我海軍ノ作戰上不利ヲ招クニ至ル虞アリ
三、第八十六條ノ規定ニ依リ第三國代表ガ立會人ナク俘虜ト會談シ得ル點ハ軍事上支障アリ
四、本條ノ俘虜ニ對スル規定ハ帝國軍人以上ニ俘虜ヲ優遇シアルヲ以テ海軍懲罰令、海軍刑法、海軍軍法會議法、海軍監獄令等諸法規ノ改正ヲ要スルコトトナルモ右ハ軍紀維持ヲ目的トスル各法規ノ趣旨ニ徴シ不可ナリ
右ノ理由ニ依リ本條約ハ御批准方奏請セラレザルヲ可ト認厶
(終)
↑万国赤十字会議関係一件/赤十字条約改正並俘虜法典編纂ニ関スル寿府会議(一九二九年)関係/条約批准及加入関係 第二巻
分割1 https://www.jacar.archives.go.jp/das/meta/B04122508300 JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.B04122508300、
分割2 https://www.jacar.archives.go.jp/das/meta/B04122508400 JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.B04122508400、
分割4 https://www.jacar.archives.go.jp/das/meta/B04122508600 JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.B04122508600、
(外務省外交史料館 B-10-11-0-7_1_2_002)